三月大歌舞伎 公演情報 三月大歌舞伎」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    「円熟の『御浜御殿』」

     真山青果が徹底した資料考証をもとに創作した『元禄忠臣蔵』は新歌舞伎の名作として知られている。なかでも1940初演年の「御浜御殿」は科白劇の傑作である。本作をたびたび手掛けた当代仁左衛門による綱豊を観るのは17年ぶり2回目である。

    ネタバレBOX

     江戸城松の廊下で浅野内匠頭が吉良上野介を刃傷に及んでからおよそ1年あまり、次期将軍と目される徳川綱豊(仁左衛門)の別邸の浜遊びに、赤穂浪士の富森助右衛門(幸四郎)がやってくる。助右衛門の目的は、浜遊びに招かれている吉良上野介の顔を見ることだった。綱豊は助右衛門を呼び寄せ、浪士たちは浅野家再興を望んでいるのか、あるいは主君の仇を討とうとしているのか探りをいれる。この二人のやり取りが本作の白眉である。

     仁左衛門の綱豊は上の幕のお浜遊びでゆったりほろ酔いの様子の登場がまず周囲を華やかにさせる。中の幕で屋敷にブレーンの新井勘解由(歌六)を呼び寄せ浪士たちに討ち入りをさせたいと本心を打ち明ける、そのときに歌六の勘解由が「したり!」と返すその間が絶妙だった。

     いよいよ下の幕で綱豊と助右衛門のやり取りとなる。ここは幸四郎の助右衛門がいいから盛り上がる。この助右衛門はごく普通の朴訥な青年であり、彼が意地を張るほどに仁左衛門の綱豊がおおらかに包み込むような、遊ばれることを遊ぶような大きさを見せていて面白い。終盤で助右衛門が吉良と思い飛びかかろうとするところを静止するくだりも二人のイキが合っており、かつ仁左衛門のキレイさが際立って見応えがあった。

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