ワークショップ公演 穴ヲ食ベル 公演情報 ワークショップ公演 穴ヲ食ベル」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
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  • 満足度★★★

    面白かったが、後味の悪い結末が…
    舞台上は宇宙船(潜水艦と言っていた人もいたが)という設定。
    しかし、それらしい様子は特になく、舞台には遠くから見ると、
    白と茶の石敷きのように最初は見えたのだが、
    近くで見ると、一部茶色に変色した紙の束であった。

    この紙は、この話が日本文学を素材としているものであり、
    「原稿」「書籍」「文献」を象徴しているように思われる。
    例えば、登場人物中の「ダダイ」は、太宰治のモジリであろう。
    彼はしきりに権威に反抗するニヒリスト。

    ピアノの生演奏もあることと、男役を女優が、女役を男優が演じる趣向で、
    女優の男役は結構見られるのだが、
    男優の女役は、登場時は笑いを買っていた
    …しかし劇の進行とともにそういう可笑しさは感じなくなってきた。

    さて、環境汚染?疫病?のため、女性は昔に絶滅してしまい、
    生き残っているのは男性のみ。

    そして、ここには「総統」と呼ばれる者がいて、
    彼が艦長のような立場であり、
    ほとんどの者は彼に多大な敬意を表する。

    また、「博士」と呼ばれる者がいて、過去の「文献」を頼りに、
    「子供」(チビオ)や「女性」(自分の妻・チビオの母役「ミチヨ」と、
    もう1人?より若い「ユリエ」)を作ってみる。
    しかし、作りものであるだけに、イマイチ出来が悪く、
    例えばミチヨは、シチュエーションが違っても同じセリフを口にしたりし、
    これで観客の笑いを取ったりする。

    ネタバレBOX

    まあ、この辺りは良かったのだが、
    「閉鎖的空間」という設定には、少々難を感じた。
    狭い艦内であれば、多少不満はあっても、組織内秩序というものは、
    それなりに重んじられると思われるのだが、そういう雰囲気はない。

    また「水戸先生」(水戸黄門のパクリであろう)が時々登場して
    皆、長老として敬意を表するのだが、彼は「滅多に会えない人」で、
    宇宙人らしい。しかし、これも、艦外から出入り自由ということなのか、
    艦のどこかにこもっているのかよく分からない存在。
    これなら、例えば、地球がひどい環境汚染となり、
    地下やシェルターに住んでいる、という設定にした方が自然に思われた。

    さて、「総統」は、ユリエに好意を寄せるようになるが、
    しかし彼女は彼を避ける一方、自分の作者「博士」に好意を寄せる。
    ところが博士は妻役のミチヨに夫婦愛を感じている。
    そして、最後は、これらから破局が生じ、死屍累々とまではいかないが、
    舞台上に数体の死体が転がることとなる。

    この時のミチヨの母親的ワンパターン台詞に、
    登場人物は皆ホロリとはするのだが、
    ただ、この結末も、それまでのコミカルさや、
    知的好奇心をくすぐる台詞が散りばめられていたことからすると、
    私的にはちょっと後味の悪さと違和感が…。
    この結末しかなかったのかなあ?…という気がしてならない。

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