ヨーコさん 公演情報 ヨーコさん」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.7
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  • 実演鑑賞

    佐野洋子さんのことは名前を聞いたことがあるくらいで、この劇を観に行ったのは演劇集団「円」の作品だからである。皆さんが書かれているように完成度は高い。主演の谷川清美さん(現在の演劇集団円の代表取締役)はさすがの圧倒的演技で会場を制圧していた。休憩なしの1時間50分

    しかしながら佐野さんのことをほとんど知らない私は最後までとうとう入り込めなかった。何も書けないので佐野さんのことを調べていて気が付いた不思議なループを書いておく。

    佐野洋子はジュリー(=沢田研二)のファン(とこの劇の冒頭で言っていた)
    ジュリーのファンと言えば悠木千帆(後の樹木希林)
    悠木千帆の夫は岸田森(その後離婚、岸田森さん懐かしい!)
    岸田森の父の兄は岸田國士
    岸田國士の娘は岸田衿子(と岸田今日子)
    岸田衿子の夫は谷川俊太郎(その後離婚)
    谷川俊太郎の妻は佐野洋子(その後離婚)

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    『100万回生きたねこ』も作者の佐野洋子さんも全く知らずに観劇。役者も全く分からない。お父さん役が『ペリクリーズ』の主演・石原由宇氏だったのは判った。
    主演の「ヨーコさん」役の谷川清美さんは圧倒的。桃井かおりみたいな感じで好き放題ステージに君臨する。ガチガチに構築された空間を縦横無尽に泳ぎ回る魚。参った。
    もう一人の「ヨーコさん」、6歳の自分であり同じ名前の猫役の大橋繭子さん。いや凄え女優がいるなあと驚いたが、『ペリクリーズ』で一番気になったヴァンプだった。うわマジか?同一人物か?この劇団に恐れをなす。
    「ヨーコさん」が憎んで憎んでどうしようもなく憎んだ母親役は清水透湖(とうこ)さん。堪らなく胸が痛む。例えそれが母親ではなかったとしても、観客一人ひとりがそれぞれの痛みの記憶を喚び起こす。
    早逝した天才の兄役は岩崎正寛(まさのり)氏。「蛙を窓から飛ばせ!」「時間の尻尾を捕まえろ!」、名言多数。
    中野風音(ふうね)さん演ずる岸田今日子がドッカンドッカン受けた。
    音楽の西井夕紀子さん作曲の名曲揃い。歌と踊りは最高。ジョリー!

    作品の完成度が物凄い。西原理恵子✕80年代小劇場。作家や『100万回生きたねこ』を知っていればもっと楽しめた筈。やはり帰りに絵本を買ってしまった。
    母親との関係にトラウマ(のようなもの)を抱えている女性は絶対観た方が良い。この圧倒的な演劇空間は体験して全く損はない。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    80年代の演劇っぽい感じ。もう既に古典芸能の感すらある。演劇定型文のような展開。「ここテストに出るぞ」みたいな。
    『100万回生きたねこ』の内容を作品内でだぶらせて、カタルシスに持って行くべきか。猫の存在が母親と同等ぐらいに重要。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2023/08/30 (水) 14:00

    「100万回生きたねこ」で知られる作家・佐野洋子の物語。この絵本はよく知っているが、作者については知識がなく、このような波乱の人生だったとは。演劇集団円のこどもステージは幾度か見たが、このステージの作者も務めていたと、今回のパンフレットで知った。

    中国東北部で生まれて内地へ引き上げた。父や兄弟を早くに亡くして苦労してきた半生だが、そんな波乱も笑い飛ばしてしまうような豪傑だったようだ。冒頭、愛煙家の佐野がソファで紫煙をくゆらせながら寝転んでテレビのリモコンを操り、「地球と平行に生きてきた」と叫ぶ場面が印象的だ。編集者たちに囲まれる場面も出てくるが、愛されキャラだったことも分かる。
    子ども時代のエピソードもふんだんに盛り込まれているが、子どもらしい場面を大人だけで演じていても違和感がない。大小二人の「ヨーコ」を登場させて会話劇に仕上げた工夫もいい。生演奏の歌あり踊りあり影絵あり。基本的には明るいステージで貫かれている。

    テンポよく、完成度が高い舞台だった。

    ネタバレBOX

    母親との葛藤を抱え、認知症になった晩年は施設に入れたというくだりも。母親と同じ布団にくるまり、「ぼけてくれてありがとう」と泣く場面には深く感じるものがある。丁寧に作られた台本だと思う。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    絵本作家の佐野洋子の一代記である。佐野洋子の作品はミリオンセラーの「百万回生きたねこ」など、絵本に触れる年代がかみ合わず、その作品は読んでいないが、作者キャラはメディアで知っている。その作品群から角ひろみが音楽劇にした。
    まず、原作を丁寧に読みこんで構成した角の戯曲がよくできている。一言で昭和畸人傳と言えるような中身なのだが、家族劇として普遍的な深みに達している。満州で生まれ、帰国して苦労し、一般的には規格外の父母とのそれぞれの葛藤を抱え、七人兄弟の長女として兄弟の死にも遇い、結婚生活は二度。認知症になった母を看取り、晩年ガンにかかって余命わずか、というところからの回想形式である。音楽に絡んで、踊りや影絵もあるが、ドラマはよくできた困った家族の中の長女モノである。笑ってしまうエピソードもたくさんあるが、それが家族で生きる生の哀歓につながっていく。ぶれていない。往年のよくできた井上ひさし作品のようだ。
    作者の角はたしか神戸の大学演劇の出身で、もう何十年も前に新宿で小さな公演を打ったときに見た記憶がある。中身は忘れてしまったが、今時(小劇場全盛期)ずいぶん素直な作品と思った。その後、結婚して今は岡山在住という。芝居は捨てていなかったのだ。
    今回の本は素材の面白さに支えられているとは言え、流行のねこという飛び道具をしっかり押さえこんで優れた家族劇に仕上げている。岸田戯曲賞を上げてもいい。
    演劇につける音楽は難しいモノで、井上ひさしの宇野誠一郎のように、難しくない、素直に観客の心に入っていくのがいい劇伴だ。今回はナマのリズム楽器を使いながら、作曲は西井夕紀子。曲が独立して踊りもあるナンバーもあるが、これが、出過ぎず、俳優の歌とおどりで収まるように出来ていて秀逸だった。
    主演のヨーコさんには今回就任したという劇団代表の谷川清美。母役の清水透湖は若いが大健闘。周囲もガラにもよくはまっている。当然、再演ということになるだろうが、言いたくない改善点は演出(作者の角)である。さらに踏み込んで今は団子刺しになっているエピソードを大きなダイナミックな流れに作れば劇団の財産になる市、もっと大きな劇場でも上演できる。栗山民也を連れてくるのは無理かも知れないがこの劇団出身の森新太郎なら、もっと面白くなる。劇団の柱になる作品としても期待できる。ほぼ満席。



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