『天才バカボンのパパなのだ』『マザー・マザー・マザー』 公演情報 『天才バカボンのパパなのだ』『マザー・マザー・マザー』」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
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  • 満足度★★★★

    堪能しました
    30年くらい前自分が学生だった頃、別役実さんの芝居はたくさんの学生劇団・アマチュア劇団で取り上げられていました。「新劇」と呼ばれていたすでに新しくもなくなった芝居ばかりの演劇界に、新しい風を吹き込んだのが、別役実であり、寺山修司であり、唐十郎でした。その後の世代が、つかこうへいです。まだ、つかさんも若手と呼ばれた時代です。野田秀樹以前の演劇界です。
    別役さんのお芝居は「不条理劇」とされて「日本のサミュエル・ベケット」と呼ばれていましたが、そのような「括り」に収まりきれないたくさんの引き出しを持った作家であったと思います。

    今回この2作品を見て、あらためてその思いを強く持ちました。
    別役さんのお芝居を本格的に観たのは本当に久しぶりです。奇をてらわずに、別役さんらしく仕上げてくれていて、うれしくなりました。

    「天才バカボン・・」の方は、ある論点についての会話なのに、その末端の「ずれ」をもとに、次の論点に発展し、一つの会話からどんどんずれていって本来の論点がわからなくなっていく、別役さんのお得意の作劇法で成り立っている芝居で、その「ずれ」の面白さを堪能しました。
    別役さんの芝居で登場人物に固有名詞がある芝居は極めてまれです。
    この芝居に関しては、あえて天才バカボンの登場人物の「すでに確立された人物像」という造形を取り入れることで、それに付加価値をつけていったものです。
    その点ではバカボンのパパは最も赤塚不二夫の造形に近く楽しくなりました。作劇意図を最も反映した人物像になったと思います。

    「マザー・マザー・マザー」はセリフの奥の奥を深読みしないと全体像が見えてこない難解な構造の芝居で実に面白かったです。短時間の芝居なのに、奥が深くて、持っている内容の重さを感じます。どんなひとの心にも潜む、排他的な部分と依存的な部分とを微妙に操った内容であったように思います。
    脚本をあらためて読んでみたくなりました。

    当時は、こんな、見終わってもすぐには理解できずに、何度も何度も反芻するうちに脳に染み入ってくる芝居がたくさんありました。
    しかし、こんな芝居ばかりになると、「何も、芝居でそんなに難しく考えることはないじゃん。芝居は楽しければいいんだよ。見終わってハッピーな気分になればいいんだよ」というアンチテーゼが出現し、今やそんなバカ芝居ばっかりになってしまいました。

    演劇はもっと知的好奇心をinspireしてくれるものであるべきであると再認識させてくれる舞台でした。

  • レレレのおばさんと飴の人。
    観たのは先週だのにだのにっ 私にはなんだか言葉にするのが難しいのです。『天才バカボン〜』はバカボンの強引な流れそのままにカラフルな衣装であの、バカボンっぽくはあるのだけど、レレレノおじさんはレレレのおばさんであり、主役がバカボンパパではなく署長であったのもあり、例えば韓国版バカボン、とかそういうよその国での芝居のような面白さがありました。
    『マザー・マザー・マザー』は実際に起きた78年のガイアナ人民寺院集団自殺事件をモチーフにした作品とのこと。バカボンからあったステージ左よりの電信柱がここでもそのまま使われていて、神に背く人をその電信柱に縛り付けられたり音楽がない中、一定の速度でボールを壁に投げ続ける音が妙な不気味さがあり。後半人形の首吊りを見せしめのように狐の嫁入り行列っぽく運ぶ絵は本当にゾクッとします。人形なのに自分の子供と思い込んで悲鳴をあげる女もまた同じく。集団心理が引き起こす連鎖反応が気持ち悪いはずなのだけど、なぜか清いものを観た感じがします。
    しかし役者も良いですねえ。あの空間でできるって自慢ですよやっぱり。

    そしてまたいつもの飴を食べる人がいらっしって・・・・袋から出しておいて小さいプラスチック容器に入れておくってどうですか。台詞がない時だからいいかといえばそうではなく、その「間」も演技は続いているのです。後ろのお客さんは顔を覚えているらしく「あの人アチャコで開始10分で帰った人だ」と・・・(笑)

  • 満足度★★★★★

    恵まれた環境
    桜美林大学には演劇を専攻するコースがあって、淵野辺駅の近くの立派なホールで日頃の成果を発表出来るここの学生は非常に恵まれています。また、あのへんには実験的な作品を上演する会場はなかったので、都内まで足を伸ばさずともそういう演劇を見れるようになった地元の人間にとってもメリット大です。

    今回の作品に限って言えば、違う作品を2つ楽しむというよりは、相違点より共通点が多く感じられる不思議空間と化していました。決してとっつき易い作品ではありませんでしたが、2作品を同時上演して対比することで、同一テーマに対する表現の多様性がよく理解出来ました。目から鱗が落ちるとはこのことです。

    バカボンのパパ役の人がまさに適所適材といった体型と顔つき!15年くらい経ったらいぶし銀の俳優になっていそう。

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