ヒトハミナ、ヒトナミノ 公演情報 企画集団マッチポイント「ヒトハミナ、ヒトナミノ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2019/04/20 (土) 18:00

    初見の団体。といってもこれが2回目の公演で、前回は13年の春に文学座の坂部文昭を主演に迎えて行なっているようなので、なんと6年ぶりということになる…。
    今回も舞台のみならず、映像や声優として活躍している出演者を揃えている。例えば崎田役の加藤虎ノ介は時折坂上忍にちょっと感じもするが、NHKテレビ小説「ちりとてちん」で徒然亭四草役をしていたのをはっきり覚えているし、所長の田所役の緒方賢一は名探偵コナンの阿笠博士の声を吹き替えている。麻紀役の尾身美詞は舞台は勿論のこと、キネマ旬報ベスト10でアニメが邦画第1位となったのは「となりのトトロ」以来2回目という「この世界の片隅に」で義姉・径子役が印象的だった。 

    横山拓也の作品は11年の8月に「エダニク」を観ているだけだが、東京近郊の屠殺場の別屠室に接する休憩所が舞台の男優3人だけの会話劇で、畜産家と屠場従業員のギャップなどがうまく取り扱われており、重いテーマながらも楽しめる作品となっていた。今作品の演出は文学座の松本祐子。 

    (以下、ネタバレBOXにて…)

    ネタバレBOX

    舞台となるのは障がい者(現在は“障害者”と書くのは望ましくないとされている)就労支援施設・フラットワークスのワークハウス。ここでは黒インゲンマメにチョコをかけたお菓子を作るための前作業として豆から胚芽を取る作業を窓岡から請け負っていた。
    窓岡がぞっこんのスタッフ・美並愛と主任の安澤喜代美が作業をしながら同じスタッフの崎田秀一の噂話をしている。美並が外部研修に行った折に、他の施設の職員から、崎田が障がい者に性的な手伝いをしていると聞かされたというのだ。脳性マヒかつ車椅子の麻紀は崎田に夢中で、崎田の顔を見ると「崎田さんかわいいねえ、けっこん(しよう)」とばかり言っているが、美並は崎田が麻紀にも性的な手伝いをしているのではないかと疑う。そんな崎田は「仕事でも家庭でも介護三昧だなぁ」と、自分と同じく親の介護もせねばならぬ美並のことを気遣っている。
    この施設では請け負う作業量と人員のバランスがとれておらず、ブラック企業並みの、時にはそれ以上の超過勤務が常となっていた。この日も夜勤明けの崎田は帰ろうともせずに作業を続けていたが、所長の田所がやってきて、無理に帰してしまうし、頼りにしていた脊髄損傷で車いす生活の忍野は外出許可をとっているからと出かけてしまう。が、その忍野が門限の午後9時になっても戻ってこない。そして、窓岡が新宿・歌舞伎町の風俗店街で崎田と忍野を目撃していたことから、崎田は解雇寸前の大騒動となる。が、実は忍野が風俗店で性的サービスを受けようとしていたのではなく、彼が事故で下半身不随となる前に恋人だった風俗嬢を探し回っていたのだった…。 

    障がい者と性欲の問題が一躍クローズアップされたのは05年に「私は障害者向けのデリヘル嬢」(大森みゆき著)が出版された時だろう。その後はこうした障がい者や老人の“性”といったものに対する問題意識が高まっている。
    実は私もちょうど7年前に事故で脳挫傷・クモ膜下出血(後でX線写真をみせてもらったが、頭蓋骨と脳の間の空間が内出血で完全に満たされていた…)、そして2ケ所の脊椎骨折を負っており、ひとつ間違えば命を失うところだったし(救急車が来るまでAEDをかけられていたそうだ)、下半身不随になってもおかしくなかった。それに年齢的にも“老齢”に入りかかっている。決して“ひとごと”ではないのだ。

    この作品も序盤こそ客席から笑いが起こっていたものの、中盤以降はしわぶきひとつ聞こえないほどだったし、胸を詰まらせて舞台に集中している様子がうかがえた。 

    役者陣は全員が熱演であり、真摯に作品に取り組んでいることが感じられた。いいかげんな人間ともみえた所長が、実はよくできた人間で、終盤の崎田との会話がそれを滲ませて、緒方賢一は好演。 

    個人的には麻紀役の尾身美詞(青年座/On7)の出番が少なく、台詞も少なかったのが残念ではあったが、役づくりにかなり苦心の跡が見て取れたし、ラストをしっかりと締めていた。それを観ながら私は今世紀初頭の俳優座劇場プロデュース「高き彼物」のラストを、青年座の座長であった森塚敏がなにげない一言でしっかりと余韻を残しつつ締めてみせたことを思い出していた。

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    2019/04/23 14:47

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