KUDAN 公演情報 TOKYOハンバーグ「KUDAN」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2017/04/14 (金) 19:00

    この作品、2013年12月に新井薬師前のウエストエンドスタジオで観た記憶があるが、今回はぐぐっと大きな座・高円寺での日本劇作家協会プログラムとしての公演である。 

    この作品の初演時には、従来のTOKYOハンバーグとはちょっとイメージが異なる作品に戸惑ったものだ。3.11震災の問題は、その1年後に上演された「愛、あるいは哀、それは相。」でも取り上げられていたが、この作品では原発による汚染をもっとストレートに、だが牧場から逃げ出して森で暮らす牛たちを主人公にして描いている。
    テーマが重いだけに、いつものようなテンポでの展開は影を潜めるものの、いかにも大西弘記らしい真摯な舞台となっている。因みに“件(くだん)”とは半人半牛の妖怪で、予言能力を持つと伝えられている。 

    6分遅れで開演、上演時間2時間強。初演時は1時間40分弱だったから25分程長くなっている。 

    (以下、ネタバレBOXにて…)

    ネタバレBOX

    開演と同時にやや暗い舞台に黒づくめの男女の一群が登場。中央奥の一際高くなったところで苦しみながら這う女を、その横でやはり黒づくめの2人が見守る。女はどうやら出産中らしい。舞台上で交わされる会話は「モー」という牛の鳴き声だけ。声の調子で心情を推測する。やがて子が産まれ、傍にいた一人がその子を取り上げて高々と差し上げると、全員が喜びの声をあげる。この場面はディズニー・アニメ及び「ライオンキング」(とそのミュージカル版)そのままだ。ただ1点、母親が産まれた子を見て恐怖の叫びをあげている以外…。 

    これらの牛は以前は牧場で飼われていたのだが、その地域が原発事故による警戒区域となって強制的に殺処分が行なわれることとなり、その前夜、牧場主によって解き放たれたのだ。牛たちは森へと逃げ込み、そこにいた鳶、犬、猫と共に暮らすこととなったのだった。この経緯が演じられた後で、動物たちの会話は人間の言葉で表現されるようになる。
    そして、冒頭の出産シーンも再び人間の言葉で繰り返される。が、飼われていた時から妊娠していた牛が産んだのは人間の赤ん坊だった…。 

    人間たちの安全と身勝手のために命を奪われる動物たち、そして豊かな自然も原発事故の後始末のために失われていく…。震災と原発、その復興を違った一面から捉えた舞台としては劇団東京フェスティバルの「泡」(ソープランドを舞台に物語が展開し、今年は福島県内5ヶ所での上演でも好評だったという)が異色だったが、この作品も動物たちの目を通して描くことで、直接的に声高に叫ぶよりもより一層悲惨な現状が伝わってくる(念のために言っておくと、私はただ闇雲に原発廃止を主張するのには与しない)。 

    ただ、後半の展開がいまひとつ物足りなさを感じさせる。ラストに一人残った少女(牛が産んだ子供)の「なぜ私は生まれてきたの…」というモノローグは印象的だが、劇全体を通した中でその存在意義が効果的だったとは言い難い。 

    今回の舞台で最も印象的だったのは鳶のブランキを演じた鷹野梨恵子だ(“トンビが鷹を産んだ”ではなく“トンビを鷹が演じた”訳だ。笑)。無名塾の女優だが、幼少時からクラシックバレエやコンテンポラリーダンスを学んでいるだけに踊りにキレがあり、その佇まいにも冷たく、他を寄せ付けない凛とした空気が漂っている。
    また、光藤依里は退団したと聞いており、このCoRichでの出演者の欄にも名前がないが、当日パンフには顔写真があってびっくり。“ハンバーグファミリー”として出演となったらしい。思わぬ喜びだった。

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    2017/04/23 07:59

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