小野寺の観てきた!クチコミ一覧

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ネズミ狩り

ネズミ狩り

劇団チャリT企画

王子小劇場(東京都)

2008/09/12 (金) ~ 2008/09/16 (火)公演終了

満足度★★★★

ネズミはなんの風刺かな…
私がプロデュースを行っている劇団、WHATCOLORの記念すべき10回公演で、作・演出で参加してくれた楢原拓さんが主宰している劇団、チャリT企画の公演を観に、王子小劇場へと足を運んだ。

楢原さんとは、今年の12月にも、「あなたとは違うんです!」という企画公演でお世話になる事もあり、今回どんな作品なのか、とても楽しみだった。

とてもヘビーな題材なので、物語が始まるまではどうなる事かと思っていたのだけど、ある意味、チャリT企画らしく、またチャリT企画らしくないような(笑)、とても良い作品。

ネタバレBOX

父親を殺した少年の死刑判決をめぐって、家族や従業員達が対立していく姿や、無責任な噂に踊らされる近所の人々の姿。そして、その中にいる更生を誓い、必死に社会復帰しようとしている元犯罪少年の姿。

この物語では、何正しくて、何がいけないとか、そう言った陳腐な社会批判的な事は一切語られていない。

しかし、死刑制度の是非や、犯罪者の社会復帰の問題などを深く考えさせられた。私達は、もっと自分の目で確かめ、きちんと様々な事を感じ、自分の力で判断をしていかなければならないと思った。

裁判員制度の導入を目前に控えた今、この芝居が語っている意味は大きい気がする。

とはいえ、全体的にはチャリT企画らしく、随所に毒あり笑いありな作品となっていて、楽しみながら、この重い問題と向き合う事が出来た。

さて恒例の気になった俳優シリーズだが、今回は、空気を読まないけど、どこかムードメーカだったりもする近所のおばさん役を好演していた、内山奈々さん。

実は何げに難しい役どころを、とても素敵に演じていた。

前回拝見した作品でも、良い印象だった女優さんで、改めて彼女の演技に魅せられ、笑かして頂いた。

是非一度一緒に芝居を作ってみたいと思った。

今回の「ネズミ狩り」は、かなりいい脚本だった。単純に世の中を風刺しているだけでなく、重いテーマをポップに茶化しながらも、丁寧に深く描いていた。

今後、楢原さんがどんな作品を描いていくのかが、とても楽しみになった。今後に期待!

とその前に、12月の企画公演ヨロシクです。
ロマンシングガーデン

ロマンシングガーデン

東京凡人座

明石スタジオ(東京都)

2008/09/12 (金) ~ 2008/09/15 (月)公演終了

満足度★★★

ちゃんとばかばかしい…
先日行った、WHATCOLORの企画公演で、クールな(笑)刑事役を演じ、その笑いの間と相方の吉井由紀さんとの掛け合いが、各方面から多くの評価を得ていた、瀬戸宏一さん。

その彼が主宰している劇団、東京凡人座を観に行った。

彼らは本公演以外にも、環境をテーマとして、子供達が親しみやすいヒーローショー形式で行う芝居、「環境戦隊 エコレンジャー」の活動も行っている。

ちなみに今回の公演では、チケット料金のうち200円を「緑の東京募金~海の森への植樹~」へと募金するとの事だった。

フライヤーのあらすじを読んで、あまりのばかばかしさに笑ってしまった。

蜂に誘拐されて、ハエとバッタを従えてって一体どんな話しなんだよと、期待を込めて劇場に足を運んだ。

シンプルでわかりやすいストーリーで、安心して物語の世界観に引き込まれ、めいっぱい笑わせて貰った。

ネタバレBOX

ファンタジーのかなめは、なんと言っても衣装。その衣装によって物語にすんなり入れるかどうかが決まってしまう。

「ロマンシング・ガーデン ~飛んで火に入る夏の虫~」の衣装はとてもおしゃれで素敵だった。特に蜂チームとキリギリス。

そして出演していた俳優の皆さんが、とても個性的で、衣装によってその印象がよけいに強く見えた。

人間のカップル二人が、見事に浮いて見えたのは、衣装だけではなく、俳優の皆さんの個性の強さだと感じた。

さて、恒例の気になった俳優さんは、ハエを演じていた小林達明さん。間をはずした芝居とか、空気読めない感の芝居とか、結構ツボだった。

役として怠惰な感じなのか、本人が怠惰なのか(笑)、そのぎりぎり感がとてもよかった。

なんか一緒に飲んでみたい感じ(爆)。

瀬戸さんの描く世界観や、演出も私的にははまって、とても楽しい時間を過ごした。

難しい事を考えず、ただ芝居を楽しみたい方は是非。
真説・多い日も安心

真説・多い日も安心

柿喰う客

吉祥寺シアター(東京都)

2008/08/21 (木) ~ 2008/08/31 (日)公演終了

満足度★★★★

つかこうへいを彷彿とさせられた
くだらない設定の中(笑)、俳優達は熱く物語を紡いでいた。

40人近くの俳優達が、圧倒的な台詞量をたたみかけるように客席に浴びせ、舞台上を走り回り、踊り、そして歌う。

その迫力と疾走感は、むちゃくちゃ心地よかった。

先日、私がつかこうへいさんの芝居を観たばかりだから感じるのかも知れないのだが、彼らの芝居は「つか芝居」彷彿とさせる。

「生」のエンターテイメントの魅力を存分に味わった感じ(笑)。

スポンサーに依存しきった、現代のTVのビジネスモデルが衰退している中、「生」のエンターテイメントが持っている可能性は非常に高い。

柿喰う客の公演に足を運んでいる多くは、20代の若者。

目の前の俳優達が台詞を話し、汗をかき 涙を流す。そこには「生」だからこそ感じられる何かがある。「生」で感じられるその何かを求めて、20代の彼らは劇場に足を運んでいるのだと思う。

こうした若い世代が劇場に足を運んでいる現状は、この勢いを持ってパワフルな芝居を作り続ける劇団と、演劇の未来を期待させる。

ネタバレBOX

タイトルの「多い日も安心」は、王朝に君臨する女優が、常に新作を生み出す義務が課せられ、撮影の邪魔となる生理とどう向き合っていくのかというストーリーからつけられていると思われる(笑)。

ちなみに、観劇当日「多い日」の女性のお客様に、「多い日特典」として女の子の日の必需品を贈呈していたらしい(笑)。

私的には、そうしたばかばかしさ加減とか、物語に深みがないところとか、かなりツボだった。

そして、公演期間にあわせて、オリンピックや「24時間テレビ」をモチーフにした脚本はちょっと良い感じ。

さて恒例の気になった俳優シリーズは、今回も二人!

まずは、私の知人の「七味まゆ味」さん。

立ち姿の美しさもさることながら、演技力の高さで、圧倒的な存在感をかもし出していた。

そして、主演の「深谷由梨香」さん。柿喰う客の専属フライヤーモデルでもある。

むちゃくちゃ美人なのに、思い切りの良い捨て身の演技を、ハイテンションで強烈している姿は、ムッちゃかっこよかった。

彼女たちには、是非うちの劇団、WHATCOLORに出演して欲しいと思った。

芝居全体的にとても良い感じだったのだが、やや脚本の構成の甘さが目についた。

評判によると、作・演出の中屋敷法仁氏の脚本は、深さはないが劇構成がとてもいいと言われているのだが…。

エンディングに心地よく帰結しないエピソードを、ちりばめ過ぎていた感じがした。

とはいえ、20代の劇団の中で、これほどクオリティが高く、個性的で、人気がある劇団に私は出会った事がない。

何度も繰り返してしまうが、この劇団に本当に将来性を感じる。

今後の彼らの活動に期待したい!
幕末純情伝

幕末純情伝

松竹

新橋演舞場(東京都)

2008/08/13 (水) ~ 2008/08/27 (水)公演終了

満足度★★★

つかワールド満載!
戯曲のベースは残しつつ、出演する俳優や時代によって、台詞や物語が変化していくのは、つかさんの芝居の魅力の一つ。

政治や社会が弱いものに対し、圧迫を強いる構造がまかり通るこの時代に、あえて「幕末純情伝」をつかさんが自ら演出する事の意味を勘ぐってしまう。

石原さとみさん、真琴つばささんを主演に据えた、今回の公演がどうなるのか、本当に楽しみに劇場に足を運んだ。

幕が上がる直前まで、ワクワクして、血がかゆくなるような感触。

いざ幕が上がった瞬間、私はあっという間につかワールドへと引き込まれた。

歌有り、ダンス有り、殺陣有りと、俳優達を徹底的に魅せようという演出は、私にとってはとても心地よかった。

石原さとみさんのエロいシーンばかり、マスコミで取り上げられているが、そうしたシーンは確かに良かったのだが(笑)、それ以外にも彼女がよい演技をしているシーンは結構あった。

そしてこの芝居には、つかさんのメッセージが至る所にあふれていた。幕末という時代から、明治維新、そして現代と、俳優達の台詞は次から次へと時間軸を飛び越えている。

単なる幕末モノだと思って、ゆらり劇場に足を運んだら大変な事になる(笑)。

しかし、そこに一本の線として描かれているメッセージは明確だと思った。

そのメッセージとは…

ネタバレBOX

今回上演された「幕末純情伝」は、良くも悪くも、つかさんらしい作品だった。なんだか80年代の小劇場な感じ(笑)。



つかさんの芝居は、過激で過剰な人情劇だと思う。ひどく攻撃的な台詞を機関銃のように浴びせられる事を、必ずしも良しとしない人は多いのかも知れない。

今回の公演では、様々な演劇レビューのサイトで、批判的な意見が多く投稿されている。

だけど私は、この芝居がとても温かく、優しく、心に響いてきた。

もちろん一部の俳優の滑舌の悪さだとか、ダンスのつたなさとか、私だって「うーん、どうだろう」と思う点はままあった。

だけど分からないなら、それでいいのだと思う。この芝居の良さを感じられたのが、万が一私一人であったとしても(笑)、それはそれで良いと思った。

私にとってこの作「幕末純情伝」は珠玉のエンターテイメントな作品だった。

ラスト近く、なぜ子どもが欲しいかと、真琴つばささん演じる坂本龍馬に問われて、石原さとみさん演じる沖田が答えるシーンがある。

私はそのシーンがたまらなく好きだ。

お年寄りが信号渡るまで手を引いてあげられる子どもに育てたいと思ったんだよ。立派な人間にならなくていいんだよ。ただそういうことが出来る子どもがいなきゃ日本がだめになると思ったんだよ。
(戯曲&小説「幕末純情伝」つかこうへい/著 販売:トレンドシェアより)

私は間違いなくこの芝居を観て、勇気や元気を貰った。

さて最後に、この私が感じた「幕末純情伝」で、一本の線として描かれているメッセージとは…。

それは、男と女の愛情のすばらしさだ。
ペダルをめっちゃ漕ぐ

ペダルをめっちゃ漕ぐ

Theatre劇団子

赤坂RED/THEATER(東京都)

2008/08/20 (水) ~ 2008/08/25 (月)公演終了

満足度★★★★

自転車がいい!
私がプロデュースを行っている劇団、WHATCOLORの第8回公演「カメコが笑った日」と第9回公演「フィルムと夕凪」の作・演出を担当してくださった石山英憲氏が主宰する劇団「Theatre劇団子」を観に行った。

今回は、劇団員のみの公演という事で、どのようなチームワークになるのか、また、新人オーディション出身組がどのような役どころで、どのようなお芝居をするのかを、とても楽しみにして会場の赤坂RED/THEATERに足を運んだ。

上演の前のアナウンスで、上演時間が2時間20分と言われた時、かなり驚いたけど、いざ舞台が始まってしまえば、あっという間に物語に引き込まれ、長さを全く感じなかった。

この物語の重要なアイテムになっているのが自転車。

多くの人が一度は自転車に乗った事があって、それぞれの中にきっと思い出が残っている気がする。坂を上るつらさとか、風を受けてペダルを漕ぐ気持ちよさとか。

そうした事すべてが、この芝居を観ながら頭の中に蘇ってくる感じ。

「ペダルをめっちゃ漕ぐ」は、心がじんわり優しくなって、ちょっぴり熱くなるとても素敵な芝居だった。

個性豊かな俳優達の魅力を生かし切り、全員の見せ場をしっかりと描かれた、Theatre劇団子らしい群像劇で、石山さんならではの心に響く台詞が、随所にちりばめられていて、笑い、泣かせて頂いた。

ネタバレBOX

後半のレースのシーンでは、いろんな意味で(笑)はらはらし、一瞬「素」に戻ってしまいそうになったが、俳優の皆さんの熱い演技で物語に引き込み直させて頂いた。

ローラーの上で、文字どおりペダルをめっちゃ漕ぎつつ、きちんと芝居をする。

リスクの高い演出をあえて取り入れた石山氏の勇気は、ホントスゴイと思った。また、劇団員のみで作った座組の強さみたいなものを感じ、うらやましくもあった(笑)。

恒例の気になった俳優シリーズだが(いつから恒例になったかは謎)、今回も二人。

まずはストーリーテラーの犬、「ペス」を演じた田澤佳代子さん。

人なつっこそうな笑顔と、良く通る声がとても役にはまっていた。

私自身が、実家で犬を飼っていた事もあって、次第に衰えていく「ペス」の姿は、涙なしでは見られなかった。

「ペス」が生きた記憶を、そして、一緒に過ごした時間を忘れないでと語るシーンは、とても気に入ったシーンの一つ。

ずっと舞台上にいる役だったから、稽古を含めとても大変だった思うが、明るく元気に演じている彼女の姿は、とても素敵だった。

そして、亡くなった先代社長の妻で、二人の子どもの母親役、「車田富子」を演じた斉藤範子さん。

会社の再建に奔走し、娘や息子に無関心に見えるのだが、実は、静かにしっかりと自分の子ども達を愛している母親「車田富子」の姿は、物語の大きなファクターとなっていて、印象的だった。

特に、娘の姫子が自転車に乗るのを手伝うシーンでは、暖かい母親の姿がすごく素敵に描かれていて、いつも自分の母親を泣かせてばかりいる私は号泣(笑)。

私的には今回のベストシーンとなった。

静かに感情表現を行いつつも、物語のキーとなっていて、少し自分より年上という難しい役どころを、斉藤範子さんはとてもうまく演じられていたと思う。

このTheatre劇団子を初めて観た時から、私は彼女のファン。前作「遥かなる山でヤッホッホ」で、とても存在感のある、素敵な演技をしていたので、今回はどんな姿を見せてくれるのかを楽しみにしていた。

終始着物姿の斉藤範子さんは、今回もとても美しく、素敵だった。

演劇プロデューサーとしていつも言っている事なのだが、私は群像劇を舞台で行うときに一番大切なのは、俳優同士の信頼関係だと思っている。いくらきちんと芝居をしても、出演者同士の距離感というか、空気感がうまく作れなければ、お客様の心には届かないと思う。

そう言う意味で、Theatre劇団子の劇団員だけしか出演しなかった今回の公演は、その空気感がとてもうまく作られていた。

とても楽しい時間を過ごさせて頂いた。

数日後、記念パンフレットのキャスト紹介のページを観て、にやり。

布袋寅三郎と氷室恭一。早見優子に堀ちえり。そして田原俊雄。

石山氏の冗談さかげんに拍手(笑)。
ツチノコ村 〜深き欲望の果て〜

ツチノコ村 〜深き欲望の果て〜

神保町花月

神保町花月(東京都)

2008/08/05 (火) ~ 2008/08/10 (日)公演終了

満足度★★★

夏らしいブラックユーモア
WHATCOLORの第10回記念公演の総合演出を担当してくれた、ブラジリィー・アン・山田(ブラジル)さんが、神保町花月で脚本・演出を担当すると聞いて足を運んだ。

ブラジリィー・アン・山田さんが神保町花月の芝居に関わるのはこれで2度目。前回は、演出だけだったのだが、今回は脚本も担当するという事もあり、とても楽しみに劇場に足を運んだ。

ブラジリィー・アン・山田さんらしい、ブラックな物語になっていた。

平和そうに見える家族の裏に潜む様々な感情を、ストーリー展開の中で丁寧に織り上げて行く構成は見事で、単なるお笑い芝居にとどまらない、とても良い作品になっていた。

ブラックユーモアという世界観が、この劇場のお客様に受け入れられるのかという事も含め、アン山田氏の果敢に責める心意気が伝わってきた。

実際お客様は見事に物語に引き込まれていたように思うし、その中で良く笑っていた。

驚いたのは、このシュールな脚本の中で、芸人さん達が役を演じながら、ちゃんと自分達らしい笑いをとろうとしていたこと。その芸人根性に感動した。

しかし本当におもしろい脚本だった。

これを私の周りの俳優達でやったら、それはそれでずいぶんおもしろくなりそうだなと思い、勝手なキャスティングを妄想して楽しませて頂いた(笑)。

今回は、ブラジリィー・アン・山田氏の底力を感じた作品だった。

山田さん、うちの作品もヨロシクです。

ネタバレBOX

父親を失い、兄に逃げられ、懸命に畑を守ろうとする次男の葛藤を中心に、三男の嫁が心に秘めた長男への思いや、ツチノコを使って一儲けしようと企む長男のしたたかさなど、アン山田氏らしい人間の描き方はさすがだった。

恒例の気になった俳優シリーズだが、今回はほとんどのキャストが芸人さんだったので、女優の二人、岡田亜矢さんと鈴木亜季さんをあげたい。

客席の9割以上が女性、しかも芸人さん達のファンというアウェイの中、その彼女たちにも嫌われず、かつ、物語を素敵に見せていくというのは、本当に大変だと思う。

もちろん、脚本や演出にもよると思うのだが、彼女たちはとても素直にそれをやれている感じがとても良かった。

岡田亜矢さんの魔性の女ぶりは、とてもかわいらしかった(笑)し、鈴木亜季さんの老け役のお母さんぶりは素敵だった。
旧歌

旧歌

熱帯倶楽部

新宿シアターモリエール(東京都)

2008/07/30 (水) ~ 2008/08/03 (日)公演終了

満足度★★★

線香花火のような芝居
観終わったあと、ほっこりとやさしい気分になれた。それぞれの俳優が描いた人物達が、ふんわりと胸に残る感じ。

家族だったり、大人同士だったり、お互い照れて口に出せないような思いや言葉。そうした大人の情感を、とても丁寧に描いた脚本、演出だった。

また、ベテランから、中堅、若手としっかりと世代を意識したキャスティングはとても素晴らしく、すんなり世界観の中に入り込む事が出来た。

母親を演じていた劇団民藝の別府康子さんを観ながら、田舎にいる年老いた自分の母を、思い浮かべてみたり…。

打ち上げ花火のような派手さはないけど、線香花火を静かに家族で楽しむような、しっとりとした大人の芝居だったと思う。

さて恒例の気になった俳優シリーズだが、まずは今村有希。主人公の妹で、要所要所でストーリー展開のキーマンとなっている役どころを丁寧に演じていた。

台本上の設定は分からないのだが、彼女の年齢そのままの役っぽくて、新鮮な感じだった。

彼女のお姉さんの主人公を演じていた、ふるたこうこさんとのバランスもとても良くて、安心してみられた感じ(笑)。

彼女の演技の幅が、また一つ広がったなと思う。

そしてもうひとかたは、モダンスイマーズの古山憲太郎さん。とてもカッコ良かった。なんというか重ねた年齢をきちんと演技に載せられている感じ。大人が抱えるめんどくさい複雑な感情を、うまく殺しながらも、その感情をちゃんと観ている人が感じられるような芝居をされていた。

今後の活動をチェックしていきたいと思った。

そしてもう一人、笹峯あいさん。彼女が演じた独特のキャラクターはとても魅力的で、大笑いさせられた。

彼女の今後の活動もチェックさせて頂こうと思った。

私の劇団も作家がいない劇団。この「熱帯倶楽部」の芝居の作り方には、かなり興味が湧いた。

特に今回のキャスティング。役どころとして年齢的にかなり幅があるキャスティングを、説得力のある俳優さんでまとめている事に、とても感心させられた。当たり前といえば当たり前の事だが、様々な条件の中で、様々な年齢のキャストをキャスティングするのは、実はかなり大変な事。

このユニットの、今後の活動に注目したいと思う。

新宿番外地

新宿番外地

椿組

花園神社(東京都)

2008/07/12 (土) ~ 2008/07/22 (火)公演終了

満足度★★★

外波山文明さんみたいになりたい
今回の椿組は、私が好きな劇団、毛皮族とのコラボレーションという事で、むちゃくちゃ楽しみだった。

物語の舞台は、30年後の歌舞伎町。隔離された無法地帯に集められた人々がおりなす泥臭い物語。主題歌に、山崎ハコさんの曲が使用されたりしていて、未来という設定なのに、むしろ「昭和」の臭いを感じてしまった。

芝居全体に流れていた俳優達のエネルギーは、とても心地よく胸に届いてきた。

この公演のプロデューサーでもあり、椿組の主宰でもあり、俳優でもある外波山文明氏が、30年後の外波山文明という90歳の役で登場していたのが、とてもおもしろかった。彼の芝居にかける情熱が、そのまま役として演出されていたのがとても良かった。

彼が1960年代のアングラ芝居の事を語るシーンとかは、なぜかじーんとしてしまった(笑)。

挿入劇として演じられた「混乱出血鬼」のワンシーンでは、客席からアングラ演劇さながらのかけ声がかかり、まるでその時代にタイムスリップしたかのようだった。

また、毛皮族の江本純子さんが手がけた、劇中劇のショウの場面は、とても華やかで楽しいモノだった。まあ、いってしまえば毛皮族そのものみたいな(笑)。

江本純子さんの天才ぶりが、見事に発揮されていて、そのクオリティーの高いパフォーマンスに私は大満足だった。

特にフラッシュダンスのラストのダンスを完全コピーしていた場面や、荻野目洋子の六本木純情派やダンシングヒーローを歌うシーンは、本当にすごかった!(笑)

恒例の気になった俳優シリーズは、おおかたの皆さんの予想通り(笑)、毛皮族の町田マリーさん。そのかわいらしい姿に、釘付けになってしまった。

もちろんかわいらしいだけではなく、存在感のある演技、華麗なダンスなど、改めて魅力あふれる女優だと思った。

物語が終了して、カーテンコール。

主題歌のイントロが流れ始め、幕が再び開いた時、舞台上にはなんと山崎ハコさんがいて、生で主題歌を歌ってくれた。

パワフルな声量と表現力を誇る歌い方は健在で、もの凄く感動した。

そして最後は、その歌にあわせて、出演者全員が踊るという、素敵なエンディングだった。

脚本や演出は、賛否いろいろ別れそうな作品だったが、空気感と共に、夏ならではの娯楽として、私は単純に楽しむ事が出来た。

アルケミスト

アルケミスト

少年社中

ザ・ポケット(東京都)

2008/07/16 (水) ~ 2008/07/21 (月)公演終了

満足度★★★★

夢は絶対に傷つかない
先日行った、WHATCOLORの企画公演で、暗い過去を背負った殺し屋兄弟の兄を演じ、各方面から多くの評価を得て、女優陣からも大人気(笑)だった岩田有民。

その彼のホームグランド劇団が、劇団 少年社中だ。

大好きな劇団なのだが、なかなかタイミングが合わずに、観る事が出来ず、今回は久し振りの観劇となった。

夢に導かれ、宝探しの旅に出た少年の愛と勇気の冒険の物語で、「これぞ少年社中!」、「これぞ王道ファンタジー!」といった冒険活劇に仕上がっていた。

旅の途中に、少年は一人の錬金術師「アルケミスト」に出会う。

彼と出会った事で、少年は少しずつ成長していく。

出会い…。別れ…。

様々な思いを胸に少年は駆け抜ける。

この物語のテーマともなっている「…世界のすべてを味方につけろ。夢は絶対に傷つかない」という台詞は、とても心に強く残った。

聞くだけで、悲しくなってしまうような事件が多い今の時代。

心がじわじわと温かくなるような物語をみて、ほんの少し元気になって、劇場をあとにした観客は、私だけではないはずだ。

この【アルケミスト】という作品に出会えたのは、幸せな出来事だった。

久しぶりに観た少年社中の成長ぶりと、その世界観のすばらしさに本当に感激した。

そんなわけで恒例の気になった俳優シリーズ。今回は特別2名(笑)

主役のサンチャゴを演じていた、堀池直毅さんんと、ヒロインのファティマを演じていた秋山えりさん。

サンチャゴという主人公は、どこか頼りなく、格好悪く、だけど懸命に夢を目指す少年。そんな役どころを、堀池さんはとても素直に、楽しく、気持ちよく演じているように見えた。

彼が見せる表情がとても魅力的で、年甲斐もなく主人公に感情移入してしまった(笑)。

また、跳躍やダッシュ、ダンスといった演出部分では、とても高い身体能力をかいま見る事が出来た。

今とある舞台のプロジェクトを進行しているのだが、そのプロジェクトの主演で、彼を呼んでみてはと思った。

そして、ヒロインを演じていた秋山えりさん。実はわたしは初めて少年社中を観た時から、彼女のファンだった。

最近、彼女は芸名を変えていたようで、フライヤーやホームページを観た時、彼女が出演していないと思っていたので、彼女の姿を舞台に発見した時はうれしかった。

っていうか、羊の姿はムッちゃかわいかったし…。(笑)

久し振りに観た彼女は、とても良い女優に成長していて、「華」の部分とか、「艶」の部分をとてもうまく表現していたと思う。

人間としても、女性としても成長している事を演技から感じる事が出来た。

是非、一緒に芝居を作ってみたいと感じた。

ちなみに、今回の舞台、【アルケミスト】は、ブラジルの作詞家で小説家のパウロ・コエーリョ(Paulo Coelho、1947年8月24日 - )の『アルケミスト―夢を旅した少年』が原作となっている。

1988年に出版したこの『アルケミスト - 夢を旅した少年』はブラジル国内で20万冊を超えるベストセラーとなり、38ヵ国の言語に翻訳された。

10年も前に、この本を原作に芝居を作ろうと思った、少年社中の主宰で、作・演出の毛利亘宏という人はどんな人なんだろうかと、今夏の芝居を観てとても興味を持った。

そんなわけで(笑)、終演後は、打ち上げの席にお邪魔させて頂き、彼と話をさせて頂いた。

今後機会があれば是非一緒にという話は、もちろん忘れずにさせて頂いた。(笑)

VOICE ACTOR

VOICE ACTOR

劇団6番シード

萬劇場(東京都)

2008/07/16 (水) ~ 2008/07/21 (月)公演終了

満足度★★★★

中年俳優がんばれ!(笑)
ワンシチュエーションという舞台の特徴を、非常にうまく使ってコミカルに物語をつづるのが得意な劇団、「6番シード」。

今回も非常におもしろいシチュエーション・コメディに仕上がっていた。

「Voice Actor」の舞台は、架空のアニメーションのアフレコ現場。40歳を目前に控えた中年俳優が、人生初めての「声優」に挑むという、業界バックステージの物語。

私が、6番シードを前回拝見した時も、業界バックステージ物だった。ラジオの生放送中というシチュエーションを物語にした芝居で、緻密な取材により、綿密にラジオの現場が表現されていた。

現場を知っている私が観ていても、全く違和感を感じずに、物語を楽しむ事が出来た作品だったので、今回もとても楽しみに劇場に足を運んだ。

この「劇団6番シード」との出会いを作ってくれたのは、私の劇団、WHATCOLORの女優、山岸里江だった。

彼女は以前、劇団6番シードに出演した事があって、その後も作品を見続けていた。また、6番シードの方々もWHATCOLORの作品に足を運んで頂いていた。

山岸里江に誘われるまま、6番シードの舞台に足を運んだのだが、脚本・演出の松本陽一氏が描く、スピード感あふれるストーリーと世界観にすっかり惹かれ、その後も拝見し続けている。

コメディを取り入れたポップなスタイルや、テンポの良い台詞の掛け合いなどがこの劇団の魅力なのだが、私は何より緻密な脚本と個性豊かな俳優陣のパワフルな演技に惹かれている。

さて、今回の「Voice Actor」。セットといい、台詞といい、演出といい、とてもリアルにアフレコの現場を再現していたのには、とても驚かされた。

出演者も、全員のキャラが際立っていて、とても魅力的な舞台だったし、アフレコの現場を経験している私にとっては、「いるいるこんな人!」というキャラクターが何よりもおかしかった。

観ているうちに、主人公の行動に本気ではらはらしたり、イライラしたり(笑)。とてもお馬鹿な中年俳優のがんばりは、とても強く印象に残った。

脚本的には、シンプルでわかりやすいストーリーだった。

売れない40間近の中年俳優が初めてのアフレコの現場で、人気声優やベテラン声優達の中、孤軍奮闘していくストーリー。

主人公に感情移入しやすくて、無警戒に芝居を観ていられた感じ。

ただ、主人公以外のキャラクター、例えば人気若手声優やベテラン声優とかのバックボーンとか、葛藤とかを、もう少し脚本的に描いてもおもしろかったのではないかと思った。

まあ、芝居の上演時間を考えてみると、バランスとしては良かったんではないかとも思ってみたり(笑)。

さて恒例の気になった俳優シリーズだが、今回は主人公を演じていた小沢和之さん。

全編ハイテンションな芝居を続けていた小沢さん、本当に素敵だった。彼が演じていた「前田」という俳優のお馬鹿さとか、懸命さとかに、とても素直に感情移入する事が出来た。

小沢さんの演技テンションで、この作品全体のテンションが決まるといった、とても難しい役どころだったと思う。彼が演じた「前田」というキャラクターを、本当に素直におもしろいキャラクターとして拝見できたのは、小沢さんのパワーだと感じた。

本当に楽しい時間を過ごさせて頂いたと思う。

実はこの6番シードの次回作に、私の劇団、WHATCOLORの山岸里江が出演させていただくことになっている。

どんな作品になるのかが楽しみな事はもちろん、機会があれば、是非プロデューサーとして絡んでみたい、脚本・演出家の一人である松本陽一氏が、山岸里江をどのように描いてくれるのか、とても興味がある。

今後とも注目の劇団。

青葉の足音

青葉の足音

Jungle Bell Theater

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2008/04/25 (金) ~ 2008/04/27 (日)公演終了

満足度★★★★

自然との会話をしよう!
これまで、小さな劇場で公演を続けてきたジャングルベル・シアターが、BIG TREE THEATERに挑戦と聞いて、うらやましくもあり、少し悔しくもあった(笑)。

私の劇団に客演してくれた野上敦美さんが所属する劇団で、世界観や描かれる登場人物が、とても私好みなのが、このジャングルベル・シアターという劇団だ。

大きな劇場に挑戦と言うことで、劇団的にも、大きな勝負であったろう今回の作品は、完成度が高い、とても良い作品だった。

浅野泰徳という人が持つ、独特の世界観は、とてもドラマチック。今回も、よく笑い、泣いた。

ストーリーが深く、ていねいに張られた伏線が、徐々にまとまっていく様は、本当に見事だった。

偶然にも今私は、エコロジーにまつわる番組を作っている。そこで感じた「自然との距離感」や「自然との会話」の重要性は、自分の中に深く刻み込みたいと考えていた。

そんな中、人間と自然ということがテーマになった、今回の物語。おそらく、運命(笑)。

自然と神、そして人。とても素敵な物語だった。

さて、私の劇団に客演してくれた野上敦美さんの今回の役、とてもはまっていて素敵だった。彼女が演じた、少し闇を抱えた女性は、物語の中で重要なポジションの人物。時に寂しく、時に熱く、大きく揺れ動く彼女の気持ちを、敦美さんはとても素直に、ていねいに演じていた気がした。

とても彼女は、良い役に巡り会えたと思う。今後にますます期待したい。そして、いつかまたうちの劇団の芝居にも出て欲しい。

さらに、作・演出の浅野泰徳さんとは、是非一度一緒に芝居を作りたいと思った。

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ

ニッポン放送

新宿FACE(東京都)

2008/04/04 (金) ~ 2008/05/06 (火)公演終了

満足度★★★★★

インパクトは最高!
ロックミュージカルというジャンルは、私の中で特別な存在。大好きなロックと芝居の融合なんて、うれしすぎてしょうがない(笑)。

ロックのライブ感と、芝居のライブ感を一度に楽しめる事は、私にとってこの上ない幸せだ。

この「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」という作品は、数あるロックミュージカルの中でも、とびきり「ロック」な作品だった。

主人公「ヘドウィグ」の、熱く悲哀に満ちた生きざまは、「ロック」そのもの。全身からあらゆる情念をまき散らしながら、自分の「カタワレ」を探し熱唱する、山本耕史さんが演じる「ヘドウィグ」は、最高にかっこよかった。

そして、「ヘドウィグ」の相棒、「イツァーク」を演じていたのが、韓国の実力派ロックアーティスト、ソムン・タクさん。彼女の爆発的な破壊力を持った歌声には、衝撃を受けた。

ネタバレBOX

1960年代、まだ世界が東と西に別れていた頃。主人公は愛と自由を手に入れるために、性転換手術を受ける。しかし、手術の失敗により、股間に「アングリーインチ(怒りの1インチ)」が残ってしまう。

男でもあり女でもあると同時に、そのどちらでもないロックシンガー「ヘドウィグ」。

傷つき倒れそうになりながらも、己の存在理由を問い続け、愛を叫び求める「ヘドウィグ」の姿は、全ての人に勇気を与えてくれる気がした。

琴線を直撃するメロディーライン、ストレートな歌詞と台詞は、ガンガン胸に突き刺さってきた。

むずかしい曲が多い中、山本さんはいとも簡単にその曲を歌っていた。改めて彼の歌唱力の高さを感じた。

また、ソムン・タクさんの声質がとても山本さんの声とマッチしていて、気持ちが良かった。

時に、悲しく切なく愛を淡々と語り、時に、激しく歌う山本さんの姿に、ぐいぐいと気持ちが引き込まれていった。

最後の曲、「MIDNIGHT RADIO」で、気分は最高潮!

「LIFT UP YOUR HANDS!」という歌詞と共に、劇場中が一体となり、そこにいる全ての人たちが、ステージに向かって自分の手を掲げた。ステージからのライトに照らされた、そのたくさんの手を観た時に、私は身体が震えだし止まらなくなった。本当に美しかった。

さらに、私が観た日は、ダブルカーテンコールがおこった。それに、山本さんは、突然「アングリーインチ」をもう一度歌うといいだし、私は初めて、ロックミュージカルでアンコール曲を体験した。

今回は、多くのソムン・タクさんファンが、韓国からツアーで訪れていた。この事を機会に、山本さんが、もっと韓国で知られ、また世界で知られ、大きく羽ばたくきっかけになればいいなと思った。

「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」は本当に素晴らしい作品。山本耕史ファンは、見逃すわけにはいきませんよ(笑)。
junkie sista vs junkie bros

junkie sista vs junkie bros

junkiesista×junkiebros.

アトリエフォンテーヌ(東京都)

2007/12/14 (金) ~ 2007/12/20 (木)公演終了

満足度★★★★

junkie brosはかっこよく演じていた!
junkie sistaが演じた脚本を、男子バージョンに修正し、ほぼ同じ内容を男性が演じるという junkie bros。とても面白いダブルキャストの企画。

実は、brosの方に私の知り合いであるキンヤさんが出演することが縁で、こちらの劇中映像の一部を制作させていただいた。そんなこともあって、 junkie brosの方を先に見る予定だったのだが、いろんな事情があって、sistaを先に見ることになってしまった。

しかしおかげで、楽しみが広がった(笑)。元々は、この作品はこちらのsistaバージョンが本家なのだから、それはそれで正しい気がしてきた(笑)。

随所に、女性ならではの台詞がたくさんあったので、これをどのように、男性バージョンにするかというところが、本当に楽しみだったのだが、本当に素晴らしい脚本になっていた。

ちなみに、作・演出を担当したのは、天然スパイラルの金房実加さん。もの静かでとても素敵な方だった。女性のために書かれた脚本を、見事に男芝居の脚本に書き換えていた。

私の友人のキンヤさんは、相変わらずかっこよくて、歌もダンスも魅力的だった。熱い男だと感じた。今後の活躍がますます楽しみになってきた。

sistaバージョンもそうだったのだが、この作品のキーの役は「戦国」と言う役。全体の空気感を止め、流れを変える重要な役だった。

brosバージョンでこの「戦国」を演じた、向野章太郎さんの演技もとても良かった。本人に聞いたところ、役作りや歌などとても苦労したそうだ。しかし、舞台上での彼の演技はとても存在感があり、脚本に描かれた難しい役を表現していたと思う。

彼は、とても良い俳優だと思った。

今後brosのほうも続けるとのことで、こちらも楽しみな感じ。

junkie sista vs junkie bros

junkie sista vs junkie bros

junkiesista×junkiebros.

アトリエフォンテーヌ(東京都)

2007/12/14 (金) ~ 2007/12/20 (木)公演終了

満足度★★★★

junkie sistaは艶やかに舞っていた!
あれだけの高い技術のダンスや歌を間近で観られたのは、本当に良かった。そして、物語に描かれている一人一人の人間がとても魅力的だった。

エンターティメントとして、とてもレベルが高い作品だったと思う。

ダンスや歌のレベルの高さはさることながら、皆さんの演技がとても良かったと思った。皆がとても丁寧に自分の役を演じていた。

正直、ずるいと思った(笑)。ダンスや歌を武器に、演技まで素敵にこなされてしまったら、ストレートプレイをがんばっている俳優達はやばすぎる(笑)。

自分のまわりの俳優達に是非見せたかった。

物語はシンプルながら、それぞれの葛藤に感情移入しやすく、どんどん引き込まれて行った。

物語で描かれているレディス達の葛藤は、さながら、アーティストとして舞台に立ち続ける将来の彼女たちの葛藤に、エンターティメントビジネスを続ける私自身の葛藤に見えてきた。

本当にいい作品だと思った。

恒例の(笑)気になった女優シリーズだが、今回は皆さんレベルが高く、魅力的だったので迷ったのだが、伊藤有希さんをあげたいと思う。

彼女が演じていた、「戦国」と言う役は、とてもむずかしい役なのだが、とても良い空気感をもって、演じていたと思う。

機会があれば是非、一緒に作品を作ってみたいと思った方だった。

今後、この集団がどんな作品を作っていくのかが、とても楽しみ。

権利的なモノとか、様々難しい問題もあると思うのだが、そこを乗り切ったときの彼女たちはもの凄いビッグになっていくと思った。もちろん縁があれば、そういったことの処理に関してはアドバイスさせていただきたいと思っている。

真価を発揮するのは、まさにそこからだと思う。ホント楽しみ。

お台場SHOW-GEKI城「センチメンタル☆草津」

お台場SHOW-GEKI城「センチメンタル☆草津」

ブラジル

フジテレビメディアタワー マルチシアター(東京都)

2007/12/15 (土) ~ 2007/12/19 (水)公演終了

満足度★★★

エログロだよ山田さん!
賛否がはっきり分かれる作品になったと思う。ちなみに私は好き(笑)。

演劇祭、しかも特殊な観客が想定される今回のような企画に、あえてこの作品で挑んだブラジリィー・アン・山田さんは、すごいと思った。

セットの無い舞台上。観客は、演じる俳優に注目するしかない状況。俳優を徹底的に追い込んだ脚本や演出は、ホント観客に対する挑戦だった。

そして、初期のブラジルの作品だけあって、たしかにエログロだった(笑)。それにしても「○盛り」って(笑)。

「センチメンタル☆草津」と言う物語には、ブラジリィー・アン・山田さんの脚本らしい、魅力あふれる人物がたくさん描かれていた。

劇団員の辰巳さんの役なんかは、とても「ブラジル」らしいなと思った。また、辰巳さんもちょっと不思議な役を魅力的に演じられていたと思った。

また、中川さんの芝居は、いつも安定しててすごく印象に残る。良い俳優だと改めて感じた。

少し気になったのは、70分という時間の中には、収まりきれないほどの人間模様だった気がしてしまったことと、俳優のテンションがもっとあっても良かったのではと感じてしまったこと。

いろいろ良かっただけに、もったいないなーと思ってしまった。

28

28

劇団お座敷コブラ

ラゾーナ川崎プラザソル(神奈川県)

2007/12/06 (木) ~ 2007/12/09 (日)公演終了

満足度★★★★

大きな可能性を感じる集団!
きっと賛否は分かれる作品だ。シーンがテンポ良く進むので、そのテンポについて行けない方や、ファンタジーの世界観を知らない人にとっては、ストーリーが全く理解出来なかったと思う。なんだかゲームみたいだねと言う結論で終わってしまったと思う。しかし、ファンタジーやロールプレイングゲームなどを日頃から楽しんでいる人にとっては、とても楽しい作品だったと思う。

ちなみに、私は後者。とてもよい芝居だと思った。

まずは脚本、ストーリーの質の高さ。彼の描きたかった世界観がとても魅力的なモノであった。その魅力的な世界観を、とても旨く構成していた。脚本に落とし込んだ台詞がとても輝いていたと思った。

そして、アクションがとても上手く構成させれている上、とてもかっこうよかった。最近、アクションは小劇場で流行っているが、私は雑なモノが多いと感じていた。中には、私が観ていても危険を感じるモノもあって、その制作責任者の感覚を疑うことさえあった。しかし、この作品のアクションはとても考えられていて、とてもレベルが高かった。

このお座敷コブラの主宰で、作・演出の伊藤裕一さんは、なんと23歳。背が高く、なかなかかっこいい奴で(笑)、脚本や演出、そして芝居のセンスなど、とても将来が楽しみになった。

若いキャストが多く、若干雑な部分が目につくが、それを補う様々な魅力的な部分があって、まとまった良い芝居だったと思う。

劇団の方向性「かっこいいファンタジー」は私もとても好きな世界観なので、今後しばらく動向に注目したい。

また、WHATCOLORにも出演してくれた、岡田の演技は久しぶりに観たのだが、彼女はこうした動きのある芝居が向いているのだと思った。ダンスも殺陣もなかなかなモノで、彼女らしさがとても出ている役だった。若い相手役の、少し雑な演技に引っ張られることなく、しっかりとそのシーンを彼女の世界観に持っていく存在感は、とても良かった。

そしてもうひとり、気になる俳優が。それは、私の劇団WHATCOLORとも縁のあるジャングルベル・シアターの神田英樹さん。存在感のある飛び道具的な役だったけど、本当におもしろかった(笑)。

彼は本当に見るたびに、成長している。

是非彼らには、私たちの劇団に出てほしいと思った。

とにかく、将来性を感じられた公演で、とても気持ちよく劇場をあとにした。

ときめき都内

ときめき都内

劇団チャリT企画

OFF OFFシアター(東京都)

2007/11/27 (火) ~ 2007/12/02 (日)公演終了

満足度★★★★

レッツ○○○!草○!そこかっ!(笑)
端的に言って、笑った。もの凄く楽しかった。

劇場に入ったとたんくすぐられるBGM。そして公演がスタートしてから、続々と繰り広げられるパロディー。80年代に青春時代を送った私にとって、全てがストライクゾーンのど真ん中にはまりまくった。

短いセンテンスのシーンを、テンポ良く構成しているあたりは、さすが楢原さんだと感じた。もちろんそこには、細かい時代風刺が有り、「チャリT企画」らしい構成となっていた。

だんだん、ちりばめられた細かいストーリーを、どのようにまとめていくのかに興味が移っていったのだが、その強引ともとれる(笑)結末への展開は、とてもおもしろかった。

今回、楢原さんが書きたかったのは、そこ(ネタばれBOX参照(笑))だったのかと、いろいろな意味で納得した。

おなじみ(笑)、気になる俳優シリーズ。一見地味ながら、物語の主軸となっていく女性を公演していた内山奈々さんの演技がとても印象に残った。彼女には、以前この劇団を拝見したときも感じたのだが、インパクトがあって、しっかりした存在感を残す演技をしているところに好感が持てた。とても素敵な女優だと思う。これまで、私が携わってきた女優にはいないタイプの演技をする方なので、もの凄く興味が湧いた。機会があれば是非、一緒に芝居を作ってみたい。

それから、松本大卒さん。彼のキレ系の演技はホント絶品。私は実は、つっこみ系の俳優が好き(笑)。彼のような演技には、ついつい引き込まれてしまう。うちの劇団のちょーすけや古泊明敏と、是非一度組ませて芝居を作らせて頂きたいと思った。

ホント、楽しい芝居だった!

ネタバレBOX

今回楢原さんが言いたかったことは、ラストシーンに集約されるのだと感じた。「NO MORE 地デジ!」

低所得者層に「地デジ」はいらない。全くその通りだと思った。

実はわたしは某局で「地上デジタル放送」の推進番組を担当しているので(笑)、今回のテーマはいろんな意味で考えさせられた。地デジに移行することで、数兆円の経済効果があると言われているが、結局のところ「勝ち組」の論理だという議論は、さんざんされ続けてきた。

この芝居を観て、そんなことを改めて感じられたことは、とても良かった。

そんな私は偶然にも、今週末放送する番組で、草○さんと一緒にお仕事をする予定(笑)。本人の顔を見たら、この芝居を思い出して吹いてしまいそうな危険が!(笑)

最後に「ときめきトゥナイト」の主人公の名前は、一応復習していったのだが(笑)、それがとても良かったと思った(笑)。
グレイッシュとモモ

グレイッシュとモモ

激弾BKYU

北沢タウンホール(北沢区民会館)(東京都)

2007/11/24 (土) ~ 2007/11/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

10年前の感動が蘇る!
この作品「グレイッシュとモモ」の初演は、1996年。当時、私はこの作品の記録映像のディレクターとして公演に携わっていた。

作品のチカラ、俳優達のチカラに、何とか負けない映像をとろうと何度も台本を読み、稽古場に足を運んだ。

しかし、そのうち勝ち負けなんてどうでも良くなった。

この魅力あふれる芝居を自分の感じるままに切り取っていこうと思った。

その結果はあえてここには、書かないが(笑)、自分の中で、とても大切な作品となったことは確かだ。

そんな作品を10年ぶりに観て、ちっとも古くならない、強烈なメッセージに本当に感動した。

私たちの劇団の旗揚げメンバーだった小林博さんが、とても良い演技をしていた。彼の魅力たっぷり詰まったNo.7の役は、初演の方とは全く違うキャラクターで、とても心に残る演技だった。

そして、なんと言っても主演の「モモ」を演じた東野醒子という女優のすごさには、舌を巻いた。10年前とちっとも変わらず、イヤむしろ数段素晴らしい演技になっていた。

いずれ遠からず縁がありそうな予感もするのだが、彼女とはまた、是非一緒に芝居をつくってみたいと思った。

来年9月には、山梨甲府で、11月には神奈川県葉山で公演が行われるらしい。

親子で楽しめるとても良い作品なので、是非足を運んで欲しい。

ネタバレBOX

居酒屋のベッポさんが42才という設定なのだが、初演の時には年相応のおやじさんの役と感じていたのに、今回その年齢に限りなく近づいている自分にぎょっとしてしまった(笑)。

もうすぐ厄年なのね。わたしも。

そして最後のモモの長台詞は、私は大好きな台詞。

悔しいけど、今回も泣いてしまいました。
大正デモ・クラ

大正デモ・クラ

Will-o'-the-Wisp

ウッディシアター中目黒(東京都)

2007/11/16 (金) ~ 2007/11/18 (日)公演終了

むずかしい題材
私たちの劇団に何度も参加していただいている、宮内洋さんが出演されているということもあり、本公演を拝見させていただきました。

大正デモクラシーをキーワードにした完全なフィクションなのですが、史実とフィクションのバランスが少しアンバランスに見えました。

大正時代という、あまり有名ではない時代を扱っているので、観ている側がフィクションである部分を受け取りづらい脚本だったかなと思いました。

出演している俳優に方々が、とても魅力的な方が多く、観ていて楽しいお芝居だっただけに残念でした。

シンプルな舞台装置に、照明効果をとても上手く使って場面を見せるのがこの劇団の特徴のようで、時代考証がむずかしい時代の芝居ながら。上手くセットを省略し、とてもかっこよく舞台を見せてくれていたと思います。

この劇団のもう一つの演出的特徴とも言える、照明効果と効果音による場面転換は、とても良いアイデアだと思ったのですが、今回は、あまりにも数が多かった(笑)。効果音や照明効果のプログラムを変えるなど、工夫がほしいと思ってしまいました。

俳優の中でとても印象に残ったのは、「ともえりん」さんという女優さん。最初の登場の時は、若干緊張しているように見えたのですが、物語が進んでいくと、とても良い表情や台詞回しの演技を見せてくれていました。

特にアクションのシーンでの彼女はかっこよかった。

機会があれば、是非私たちの劇団の公演にも参加していただきたいと思いました。もしこのクチコミを観た関係者の方がいればお伝えください(笑)。

私の友人の宮内さんは、とても熱い政治家の役でしたが、細かい演技が面白く、役柄もとても彼に合っていたと思います。

いみじくも、我々の劇団の次回公演と同様に、この劇団の今回の公演は、10回公演となるそうです。それをあえて「特に記念しない」というスタイルは、面白かったです(笑)。

遥かなる山でヤッホッホ

遥かなる山でヤッホッホ

Theatre劇団子

紀伊國屋ホール(東京都)

2007/11/15 (木) ~ 2007/11/18 (日)公演終了

満足度★★★

さすが石山氏
私たちの劇団と一緒に作品づくりを行ってくれた石山氏の自らの劇団公演。

紀伊國屋ホールというバリューのある小屋での公演に、どのような作品で彼が挑むかはとても興味がありました。

ロビーには、私たちの劇団公演で出演していた方が数名、受付のお手伝いをされていて、なんだかとてもくすぐったい感じ(笑)。

作品としては、石山さんらしいテイストの作品で、とても安心してみることが出来ました。脚本としても、演出面でも、とても関し度が高い作品だったと思います。派手ではないけれど、「安心してみられる芝居」に仕上がっていました。

紀伊國屋という小屋で、あえてこの作品を選んだということで、石山さんが、「シアトル劇団子」という集団を、どのように導こうとしているのかが、少しだけ伝わってきたように思いました。

特に印象的だったのは、「斉藤範子」という女優のすばらしさ。彼女の魅力的で、存在感ある演技を楽しめたことで、改めて良い女優だと言うことを認識しました。

この劇団の次回作、そして今後の活動が、とても楽しみになりました。

ネタバレBOX

登山と人生、そして人間の誕生をシンクロさせた台本は、とても素晴らしいものでした。

途中の15秒の休憩とその直後に流れる映像は、もうひとひねりあっても良かったかなと思いました(笑)。

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