アキラの観てきた!クチコミ一覧

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煙が目にしみる

煙が目にしみる

加藤健一事務所

本多劇場(東京都)

2018/05/03 (木) ~ 2018/05/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

演劇を見始めるきっかけになったのが加藤健一事務所のこの作品と言ってもいいかも。
堤さんの戯曲が見事な上に、役者さんたちのハマリ具合が素晴らしい。
一見不謹慎のように見えるのだが、不快にさせずに笑わせて、ホロリとさせる。

超満席の本多劇場が、ホントに笑いで揺れたのではないたろうか(笑)。
ストーリーを知っていても楽しめる演劇。

それにしてもタバコの取り扱いが、作品が生まれた時代と、こんなにも変わってしまうと、この作品の感じ方もこの先変わってくるだろうと思う。

iaku演劇作品集

iaku演劇作品集

iaku

こまばアゴラ劇場(東京都)

2018/05/16 (水) ~ 2018/05/28 (月)公演終了

満足度★★★★★

『人の気も知らないで』

3人のガールズトークが、いくつかのキッカケ(心の状態)により、互いへの今までの感情を乗せて噴出する会話。
関西弁ということを差し引いても(笑)、ユーモアを交えながらの会話のやり取り(バトル)が素晴らしい。
60分足らずの作品なのに見応え十分。

ネタバレBOX

互いに納得している部分と納得したくない部分が自分の中でせめぎ合っているような、そんな会話が繰り広げられる。観客の中にも彼女たちと同様な「納得する部分と納得したくない部分」がわき上がり、そして答えが見つからずに会場を後にする。
帰宅しながら考えることがいろいろあったりもする。

関西弁が会話のリアリティを増す効果となっていたのではないだろうか。

3人の女優さんたち(吉川莉早さん、橋爪未萌里さん、海老瀬はなさん)の会話の絡ませ方、間、が凄い! 「関西弁だから」とつい思いがちだけど、どんな言葉であっても完成された台詞として成立させるのにはかなり高度な技術が必要なのではないかと思う。

関西弁以外の「土地の言葉」で、いろいろな女優さんで観てみたいと思った。もちろんこの会話のテンポは関西弁のそれなので、その土地の言葉のテンポに変換する必要はあるだろうけど。
Q学

Q学

田上パル

アトリエ春風舎(東京都)

2018/05/25 (金) ~ 2018/06/03 (日)公演終了

満足度★★★★

高校生の演劇授業が舞台。
「楽そうな授業だから」と集まった女子高生たち。
しかし本心では「何かへの期待」があったのではないか、とも思う。

「演劇」のポジティブなところを熱く見せてくれた。
この作品、30、40年前だったら熱血教師が、みたいな話だったのではないだろうか。
でも今は違う。

ネタバレBOX

怒濤の後半に向けた前半の、時間の入れ替えが効いてるフリがとてもいい。演劇への応援歌。心にストレートに響く。

『走れメロス』との重ね方が上手い。王は残忍な王ではなかった、というあたりまで。
セリヌンティウスの側的な心の動きがあったのだから、メロス側のそれもあればなお良かったかな。
福島三部作 第一部「1961年:夜に昇る太陽」

福島三部作 第一部「1961年:夜に昇る太陽」

DULL-COLORED POP

こまばアゴラ劇場(東京都)

2018/07/21 (土) ~ 2018/08/05 (日)公演終了

満足度★★★★

三部作の第一部で、双葉町が原発を誘致した数日間を描く。
今後、大河的な広がりを予見させる。なので、登場人物たちをもっとじっくり描いてほしかった。

小さなトゲのような疑問を残したまま、誘致へ動く様を描く上手さ。

重苦しい作品になるかと思っていたが、子どものシーンにぶっ飛んだ。そして笑った。

1789‐バスティーユの恋人たち‐

1789‐バスティーユの恋人たち‐

東宝

帝国劇場(東京都)

2018/04/09 (月) ~ 2018/05/12 (土)公演終了

満足度★★★★

加藤和樹+神田沙也加+龍真咲Ver.

曲のノリも良くテンポも良くてサクサク進む。
歌の上手い人がピンポイントに配置されて出ているミュージカルはいい! 

後から教えてもらったけど、マリーアントワネットがラストに出てくるときの衣装にも意味があるんだってね。

グッド・デス・バイブレーション考

グッド・デス・バイブレーション考

サンプル

KAAT神奈川芸術劇場・中スタジオ(神奈川県)

2018/05/05 (土) ~ 2018/05/15 (火)公演終了

満足度★★★★

町の様子が語られときに前のエピソードと絡めて「ヒルコ?」と思ったり、老人たちの話に「補陀落渡海?」と思ったが、まさかアフタートークで両方が出るとは! それらもミックスされての「楢山節考」なんだけど、&「1984」だった。そして「731」的な陰もありの。

ネタバレBOX

「頭が良くてもいいことは何もない」を望む為政者がいる世界はデストピア。
人の動物的・人間的な成長を歪め、家族を破壊した世界は静かに終焉を迎えつつある。(そこに)「神様ではなく」「人間」がいると老人は言う。
「神はいない」。
それが救いになるのか。


私の極々個人的な意見なのだが、「(文化の自由が)抑圧されているときには(社会主義の国のような)、より深い文化が生まれる」が、そこでまさに起こりつつあるような予感がした。

……そしてラップが生まれた(というわけではないか・笑)。

『グッド・デス・バイブレーション考』と『1984』『731』、なんだか最近観た別の演劇作品と一体となっているように感じてしまった。

女優・戸川純さんがとてもはっきりとして通る声。
歌がある。
歌は人の心をかき立ててしまう。
音楽が、その世界の音楽に聞こえてきた。
プリミティヴなやつ。
ワレワレのモロモロ  ゴールド・シアター2018春

ワレワレのモロモロ ゴールド・シアター2018春

彩の国さいたま芸術劇場

彩の国さいたま芸術劇場・NINAGAWA STUDIO(大稽古場)(埼玉県)

2018/05/10 (木) ~ 2018/05/20 (日)公演終了

満足度★★★★

ハイバイ版に比べると面白度・ペーソス度よりビター度が増していた。
と言うよりは、リアル「ひどいこと」なので、もう少し「軽い」ひどいことだったほうが良かったように思える。

さらに(いわゆる)演劇度もマシマシの印象。

岩井さんに脚本として個人から引き出す力と演出の力を感じた。

『パミー…』にはかなりグッときた。青☆組でやってもいいなと思ったぐらい。

途中ヒヤヒヤしたところもあったのだが、互いに助け合いながら上演を進行する姿にも、「演劇」を感じた。
高齢者が行う(ゴールド・シアター)演劇の面白さのひとつかもしれない。

個人的に遭ったひどいことを「面白ひどいこと」として演劇とする『ワレワレのモロモロ』。ゴールド・シアターでやるという発表を聞いたときに、「これは上手い組み合わせ」と思ったがその通りだった。どこかで岩井さんの言葉を読んだのだが、全国にこれを展開するのは面白いと思う。『なむはむだはむ』のように子どもたちとも。

AN UND AUS|つく、きえる

AN UND AUS|つく、きえる

shelf

The 8th Gallery (CLASKA 8F)(東京都)

2018/12/14 (金) ~ 2018/12/17 (月)公演終了

満足度★★★★★

shelfの舞台は、いろいろなものを削ぎ落としてシンプルにすることで、観客のイマジネーションを刺激する。
それはイプセンの戯曲でも同じなのだが、前回の『Die arabische Nacht|アラビアの夜』で見せたように、shelfとローラント・シンメルプフェニヒとの相性はかなり良い。
そもそも、ローラント・シンメルプフェニヒの戯曲は、イマジネーションの上に成立しているようなものだからだ。
つまり、下手をすると単にリーディングになってしまうような戯曲を、考え込まれたアイデアで形にしてくれる。

ネタバレBOX

今回で言えば、影踏みごっこや横断歩道のライン避けのような「裸足」が、その世界を物語る。

『AN UND AUS|つく、きえる』は、シンメルプフェニヒが東日本大震災を戯曲にしたもので、確かに震災そのものを描いているのだが、同時に月曜日に閉じ込められていた世界を露わにした。
その世界とは、日常と息苦しさのある世界。
彼らは「月曜日」にいる。金曜日ではない。彼らは裸足である。

閉塞感のある現実がさらに増していくような感覚。

彼らのグロテスクさが生きている者の私たちに問いかける。

「死者」となるには「何か」が必要だ。唯一くじらと呼ばれる男だけは、ミツバチと言う娘との「関係性」で「死者」となれた。
白鳥の湖

白鳥の湖

新国立劇場

新国立劇場 オペラ劇場(東京都)

2018/04/30 (月) ~ 2018/05/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

小野絢子&福岡雄大のコンビver.。

白鳥たちのコール・ド・バレエは美しい。
何度観ても楽しめる。
2幕の王子とオデットは夢見るよう。演奏がとても良く、バレエの世界に包まれた。

メリー・ポピンズ

メリー・ポピンズ

ホリプロ/東宝/TBS/梅田芸術劇場

東急シアターオーブ(東京都)

2018/03/18 (日) ~ 2018/05/07 (月)公演終了

満足度★★★★

濱田めぐみ+大貫勇輔+山路和弘+島田歌穂等々のバージョン。
映画版とは異なるストーリーだが、ワクワクしながら観た。
楽しく心躍るミュージカル! 
メリー・ポピンズはクールな感じ。
島田歌穂さんは異なる2役でさすがの上手さ。
宙乗り楽しい!

きれいごと、なきごと、ねごと、

きれいごと、なきごと、ねごと、

キュイ

アトリエ春風舎(東京都)

2018/04/06 (金) ~ 2018/04/15 (日)公演終了

満足度★★★★

青臭さが爆発。
綾門優季さんの書く台詞は凄い。

台詞と役者との関係からも、台詞はすべて自分の中で完結しているようだ。眠れぬ夜の妄想のように。

物語は女子の視線にしていたが、男子(作者の側の性)のそれだったほうが、ヒリヒリ度は増したと思う。

ネタバレBOX

役者が常に動いていることもあるが、台詞が流れてしまう。その場に台詞を固定できれば、感じ方は確実に違ったと思う(それができる役者であったのならば、あるいは、それができるまで稽古すれば)。

思春期には緩くて見えない地獄にいるのだと、皆が思っている。そこにいるのは誰かのせいだ、という被害者意識がある。
私(たち)は私(たち)の物語のラストシーンを目指す。
そして、そのラストシーンは(自分のストーリー(物語)だから)必ず祝福されなければならないのだ。

小中はもちろん高校生ぐらいまでは、地元の地場どころか家庭の地場から逃れることはできない。
なので「そこ」が舞台とならざるを得ない。

女子の話にしていたが、男子の視線からのほうがヒリヒリ度が増したように思う。
泣き言は言ったほうがいい。
鉄とリボン

鉄とリボン

キコ qui-co.

座・高円寺2(東京都)

2018/05/02 (水) ~ 2018/05/03 (木)公演終了

満足度★★★★

前半の「まち」ってこういうこと? と思っていたらその通りだった。
休憩を挟んだ、前半と後半をきれいに重ねながら進む物語が見事! 

BGMではなく物語の一部分としての音楽もいい。歌は鳥肌モノ。
笑いの部分とグッとくる部分の案配の上手さ。 

「“呪い”によって……(怪物になって、とも言っていたと思うが)」については、私は不快に感じた、女性の観客はどう感じたのだろうか?

由記子役の相馬有紀実さんが印象に残る。

グッド・バイ

グッド・バイ

地点

吉祥寺シアター(東京都)

2018/12/20 (木) ~ 2018/12/27 (木)公演終了

満足度★★★★★

やっぱり地点は最高に面白い! 

空間現代が演奏する音楽劇、というよりは「音楽ライブ」だった。

バーからグッドバイに帰結。
酒瓶片手に、酔っ払いの戯言か。

音楽に乗って賑やかだけど、どこか虚無感あり。

彼の身体にまとわりつく、死 死 死 グッド・バイ グッド・バイ グッド・バイ。



LPを久々に買ってしまった。

そこまで言わんでモリエール

そこまで言わんでモリエール

笑の内閣

こまばアゴラ劇場(東京都)

2018/11/21 (水) ~ 2018/11/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

時事ネタを突っ込んで笑わせる社会派(か?)的な劇団だと思っていた笑の内閣。「「え? モリエール?」って思ったが、モリエールと彼の劇団を軸に、現代の演劇と劇団にいい感じに突っ込みを入れる。
しかし根底には演劇&劇団loveが詰まっていた。
そして終始笑った、笑った。

予定調和とならないメタな感じまで面白度高し!
(照れ隠しか? などとも思ってみたが)


見終わって、モリエールをほとんど知らないことを恥じるワタシであった。

ネタバレBOX

で議員? 笑。
人造カノジョ~あるいは近未来のフランケンシュタイン~

人造カノジョ~あるいは近未来のフランケンシュタイン~

劇団鋼鉄村松

萬劇場(東京都)

2018/11/28 (水) ~ 2018/12/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

毎回毎回、面白さ度を更新していく鋼鉄村松。
今回も確実に面白い。
グイグイ引き込まれた。幾重にも張り巡らされた台詞と仕掛け。
あの短編がこうなるのか! の驚き&スピーディな演出。

ネタバレBOX

この作品は、高橋里帆さんを配したことで、すでに125%ぐらいの成功だったと思う。

ボスさんのノリノリの感じもよかったし、高橋役の鈴木拓也さんが物語をうまく支えていたし、町田役の氏家愛弥さんの感じも面白し。

それと、鋼鉄村松には珍しく(? 笑)何気に衣装に気を使っていた。ボスの上下の色合いとか。そのお陰で物語に入りやすい。
セットも非常に効果的。

こうやって普通の劇場で観る鋼鉄村松は、やっぱ格別なものがある。
春母夏母秋母冬母

春母夏母秋母冬母

FUKAIPRODUCE羽衣

吉祥寺シアター(東京都)

2018/05/24 (木) ~ 2018/05/28 (月)公演終了

満足度★★★★★

なんと愛おしくて、切なくて、哀しくて、残酷で、悲しい。
「母」という絶対的な愛を中心に、じんわりだったり、ズシンだったりが心に来た。

2人の唄にも感動。
セットも良いし。本当に素敵な作品。
作品が優しすぎて泣きそうになる。

前半、劇中の歌が終わって拍手したくなったのだが、すこしためらってしまった。
しかし劇場では拍手が起こった。同じ気持ちの人がいたというだけでうれしいし、観客も含めての一体感を感じた。優しい世界での一体感を。

母さん、たぶん俺ら、人間失格だわ

母さん、たぶん俺ら、人間失格だわ

劇団 短距離男道ミサイル

北千住BUoY(東京都)

2018/04/19 (木) ~ 2018/04/22 (日)公演終了

満足度★★★★★

2011年4月、震災を受け誕生した劇団だという。

『人間失格』を見事にベースとし、おもしろうてやがてかなしき、懺悔・後悔・罪悪感・自己嫌悪、そして自戒からその先へ。
太宰の『人間失格』が内在する虚実と、本作のフィクション&ノンフィクションの呼応。「道化」が目の前にあった。

ネタバレBOX

仙台で一番勢いがあるとも言われているし、この作品はCoRich舞台芸術まつりで グランプリを受賞している。

太宰治の『人間失格』を見事にベースとし、おもしろうてやがてかなしき、懺悔・後悔・罪悪感・自己嫌悪、そして自戒からその先へ。
太宰の『人間失格』が内在する虚実と、本作のフィクション&ノンフィクションが呼応する。

前説から笑わせながらそのまま本編に入るスタイル。
それは、彼ら自身の体験が作品内で語られているからだ。
その「体験」の内容はかなり重いものがあったりするし、家族からの生のメッセージもあったりもする。
「普通に仕事をして結婚して子どもをつくって……」という家族の切実な想いだったりする。
サイコロトークで『人間失格』を見せたりして、結構笑わせるところもあるのだが、それは『人間失格』で主人公が言う「道化」が目の前にあったのだ、とも言える。
笑いながら彼ら自身の内面に降りていくことになり、かなり辛い作業になっていくのがうかがえる。

先日観た、京都の劇団、烏丸ストロークロック『まほろばの景』でヒリヒリするような凄い姿を見せていた小濱昭博さんは、ここの役者である。『まほろばの景』は3.11を扱った作品。
その彼が白ブリーフ一丁で舞台にいるのには違和感があったのだが(え? 同じ人?)、作品が進むことでその姿は一致していく。

荒いところもあるが、ものすごい作品だ。
しかもとても真面目だ。


実は、演劇ウオッチャー・高野しのぶさんの一連のツイートから(ありがとうございます!)この公演に行くことを決めた。それらを読まなければノーチェックの劇団だった。仙台の劇団なので、今回見なければ次は相当先になってしまったと思う。

短距離男道ミサイル『母さん、たぶん俺ら、人間失格だわ』のラストはレナード・コーエンの名曲『ハレルヤ』で、先日のキュイ『きれいごと、なきごと、ねごと、』もラストは『ハレルヤ』(ヘンデル)。歌は違うがこれは偶然ではなく必然。赦しと讃えはセットだ。
731

731

パラドックス定数

シアター風姿花伝(東京都)

2018/04/24 (火) ~ 2018/05/02 (水)公演終了

満足度★★★★★

タイトル通り「731部隊」を描いた作品。
パラドックス定数らしい、濃厚な会話劇。
シンプルなセットが効果的で、観客は会話に集中する。

ネタバレBOX

終戦数年後、元幹部たちは焼け残った陸軍軍医学校に、誰から送られたかわからない届いた空封筒によって集まってくる。

彼らはもともと互いを監視するために定例で集まっていたのだ。
そこに日本を騒がせたある事件が起こる。

元副官役の関村俊介さんが、今までのパラドックス定数にはなかったキャラにより、重さや力だけではない感覚の、独特のリズムが出た。
どの役者も前のめりな感じで上手い。
野木萌葱さんの脚本は見事だ。

飄々とした姿にヒエラルキー。
微妙なイスの位置。

カーテンコールが「闇に消えていく731」だった。

シアター風姿花伝プロミシングカンパニー公演として来年までの1年間に7本の公演を行うキックオフの作品として、これからが期待できる内容だった。
肝っ玉おっ母と子供たち

肝っ玉おっ母と子供たち

無名塾

世田谷パブリックシアター(東京都)

2018/03/28 (水) ~ 2018/04/05 (木)公演終了

満足度★★★★★

仲代達矢さんを取り上げていたテレビのドキュメンタリーで、台詞覚えに苦戦していた、肝っ玉おっ母を演じる、85歳の仲代達矢さんがどこまで演じきれるのかが、失礼ながら気になっていたのだが、そんなことは舞台を観て吹っ飛んだ。

確かに台詞を言い間違えたらしいところはあったが、まるで最初からそうだったように、何事もなかったように演技を続けるしたたかさもあったのだが、舞台上の存在感が「肝っ玉おっ母」そのものだった。力強い。

この年齢だからこそできる「肝っ玉おっ母」があるのだと納得した。

ブレヒトによって1939年に書かれた戯曲は、その台詞の1つひとつが今の世界に響いてくるようだった。
戦争の怖さ、醜さとともに、それで生活していく人もいるということ。

無名塾の俳優さんたちはやっぱり上手い。
最初から最後まで舞台の上から目が離せなかった。

できれば「能登演劇堂」で観たい。

秘境温泉名優ストリップ

秘境温泉名優ストリップ

猫のホテル

こまばアゴラ劇場(東京都)

2018/04/03 (火) ~ 2018/04/11 (水)公演終了

満足度★★★

1人の役者が複数の登場人物を、意図的に演じることで、その世界観を上手く醸し出す。

ネタバレBOX

年老いた時代劇俳優(テレビドラマ『水戸黄門』の助さん、格さんを何年も演じてきた俳優設定)の、夢と現が混濁していくような話。

秘境の温泉宿に到着した主人公が、秘境と自分の記憶との狭間に落ちてしまったのではないか、というラストが演劇的でとても良い。

元が千葉雅子さんが柳家喬太郎さんに書き下ろした新作落語だったのは頷ける。

落語であれば、あっという間のシーンの展開や世界のズレのようなものを語り口ひとつで上手く見せて(聞かせて)くれたのだろう。
中村まことさんの、年老いた俳優の感じと、福田転球さんの年老いた大女優がいい感じ。
千葉雅子さんのとぼけた感じもいい。

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