ksdの観てきた!クチコミ一覧

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みえない雲

みえない雲

ミナモザ

シアタートラム(東京都)

2014/12/10 (水) ~ 2014/12/16 (火)公演終了

満足度★★★★

本との出会いと考え続けることの難しさ
 細かいところをあげればいろいろあるとは思いますが、原作の持つよさを損なうことなく活かしながら私(=瀬戸山さん)のドキュメンタリー的な要素を加味した構成力のバランス感、随所に見られる演出の工夫が冴え渡っていた舞台作品でした。上演時間は約2時間25分(休憩無)。

ネタバレBOX

 大事なことはなかなか見えてこないからこそ、しっかり自分の目でみて自分の頭で考えなければいけない。しかしそれをせず他人事として無知、無関心に徹しさらに他人にその判断を丸投げにしてしまう人々がいかに多いか、その憤りが最後の場面に集約され実によく表れていたと思います。
 また、ほとんど何もない広い舞台上で、それぞれメインの役以外に何役もこなし小道具のセットも行い縦横無尽の動きをされていた役者の皆さんは大変だったと思いますが、それによって舞台に躍動感のようなものが生まれていました。
 「ことばは発した瞬間から腐ってくだらないものになってゆく」というせりふにもあるように、世の不条理に何もできない自分に腹を立てことばの無力さに絶望しながらも自分には物語を書き続けることしかできないという私(=作者)の頭の中の葛藤をストレートにぶちまけて表現していた陽月さんの好演が印象に残りました(やや作りすぎの感はありましたが)。
桃色家族

桃色家族

桃と団地妻

Gallery & Space しあん(東京都)

2014/12/10 (水) ~ 2014/12/14 (日)公演終了

会場の雰囲気とよく合っていた作品
 紡ぎ出される物語世界が会場の古民家の佇まいとよくマッチしていていい雰囲気を生み出していました。上演時間は約2時間(休憩無)。

ネタバレBOX

 粗さがある展開と強引なエンディングではあったものの物語の方向性はよかったと思います。ただ全体としての演技力が物語にあともう少し追いついていれば作品がさらによくなっていくのではという印象を受けました。
 会場の古民家は庭もついていて趣がありなかなかよいのですが、観客側からみると、会場に合った作品の選定や上演時間の設定、用意する客席の高さや配置、演出面での工夫などが相当必要で、この会場を使いこなすのはかなり大変とも感じました(今回は観客の裁量で客席の方向等を周りの方の邪魔にならない範囲内で変えてもよいというアナウンスがありましたが)。そういう意味では、会場は違いますが、例えば、みそじんさんのお座敷公演「ドアを開ければいつも」は会場としての座敷を演出的にもうまく使っていました(ただ客席の方はやはりかなりきつい体勢になりましたが)。
 また旗揚げ公演ということなので当日パンフに役者さんの名前だけでなく配役も載っていれば役者さんの名前と顔が一致して初めての方にも優しくありがたかったのではと思います。
汽水域

汽水域

てがみ座

シアタートラム(東京都)

2014/11/28 (金) ~ 2014/12/06 (土)公演終了

新たな作劇への旅立ちの決意ともとれる作品
 ここしばらく続いた評伝劇スタイルを離れ新たなテーマ、モチーフを求める作劇へ旅立とうとする作者の並々ならぬ決意の表れともとれる舞台作品のように感じました。新作についてはしばらくは模索の旅が続くような予感がします。

ネタバレBOX

 長田さんの戯曲は長田さんの生真面目さがそのまま戯曲に出てしまい(このこと自体は美点なのですが)ややもすると一本調子になりがちになるところがあり、息の抜きどころがあまりなく緊張感を常に高く保つため観ていて疲れることがあります。肩の力を抜き緩急の落差をもっと大きく効かせた遊び心というかゆとりの要素が加われば、さらによりよい戯曲にそしてレパートリーの幅が広がることにもつながるのではと思います。
 また、長田さんのアイデアなのか扇田さんのなのかはわからないのですが、最初のほうの場面で賭け将棋もとい賭けチェスで紛失したクイーンの駒の代わりにメトロン星人のフィギュアが使われていた(かなり前方の席から観ないとはっきりわからないかもしれません)のにはニヤッとしてしまいました。ナベゲンの畑澤さんの「さらば!原子力ロボむつ」でもそうですが、演劇の方でもウルトラシリーズのファンは結構いるようです。
『さらば! 原子力ロボむつ ~愛・戦士編~』

『さらば! 原子力ロボむつ ~愛・戦士編~』

渡辺源四郎商店

にしすがも創造舎 【閉館】(東京都)

2014/11/28 (金) ~ 2014/11/30 (日)公演終了

満足度★★★★

プロアマ混成のお手本のような舞台作品
プロ(劇団員、客演)とアマ(高校演劇部員)の混成で演劇を行う場合の手本の一つといえるようなとてもバランスがよくとれていた舞台作品だったと思います。

ネタバレBOX

 演出もさることながら、台本も、ヤマト、ロボットアニメ、ウルトラセブンなどからのマニア向けの小ネタを詰め込みながらもとても素晴らしい出来ばえだったと思います。
 また余談ですが、畑澤さん扮するダース・ヴェイダー似の将軍はライトセイバーを握った途端やられてしまいみかけ倒しで弱すぎました。
トーキョー・スラム・エンジェルス

トーキョー・スラム・エンジェルス

Théâtre des Annales

青山円形劇場(東京都)

2014/11/14 (金) ~ 2014/11/24 (月)公演終了

資本主義経済の行く末
 人間に本来備わっている思考や行動のクセから自然と発生してきたとするprimitiveなところから経済を説き現代資本主義経済の来し方行く末を扱っていますが、あくまで人間中心の物語でした。この先資本主義経済は衰退、消滅も含めどのような方向へ向かうのでしょうか。

ネタバレBOX

 扱うテーマに関してprimitiveなところをベースにしている限り、ドラマとしては確かにわかりやすく面白いです。ただ、そこからさらに深く触れようとすると、観る側にも高度な専門知識が要求されたりまたテーマの重要概念がレトリックのごとく散りばめられるだけで本質を外れ表層的な扱いをされたりすることもあり、ドラマで扱うにはハードルが上がりすぎて困難になってしまうことが多い。風琴工房の「hedge」を観た時も同じような印象を受けました。
 やはり扱うテーマによっては、テーマとドラマとしての演劇との相性というか演劇の限界のようなものを感じざるを得ないような気がしました。



よるべナイター

よるべナイター

FUKAIPRODUCE羽衣

青山円形劇場(東京都)

2014/10/30 (木) ~ 2014/11/02 (日)公演終了

代打ver
 妙ージカルも演劇の一つのスタイルだということがなんとなくわかりました。約1時間50分のほとんどの時間役者の皆さん歌って踊っているので相当大変ですが、観る方としても円形劇場の囲いの中で、否この球場で発散されまくる剛速球並みのあの熱気とパワーをスタンドでキャッチャーのごとくじっと座りながら受け止め続けるのはかなりしんどかったです。

ネタバレBOX

 代打verの意味が最初よくわからなかったのですが、9回裏FUKAIPRODUCEの攻撃で本当に代打が出てきてホームランをかっ飛ばしてようやくわかりました。代打はFさんでした。
近未来能 天鼓

近未来能 天鼓

文学座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2014/10/24 (金) ~ 2014/11/02 (日)公演終了

満足度★★★★

テンコ病
 国家による高度な情報操作の行き着く先にある人民の有様は...という近未来的なそしてミステリー色もある一種の寓話劇と呼べる作品。ストーリー構成にやや無理がかかったかなという感はありましたが、開帳場のシンプルな舞台上で、能の所作や様式などの要素を随所に取り入れながらもスリリングな物語が展開する、伝統的な面と斬新的な面を併せ持った(美術衣装の点でも)とてもcoolな舞台作品になっていたと思います。

ネタバレBOX

 上演時間は休憩無しの約2時間。
 近未来能ということで、区切りのときに舞台前方の床面に序、破、急の文字が投影されているようにみえたのですが、照明がちかちかしすぎてどうもはっきりしませんでした。
 サザンシアターでの一つ前の劇団民藝の公演「コラボレーション」も舞台は開帳場のシンプルな舞台だったことをふと思い出しました。
 ホールの方では青年座の「地の乳房」がちょうど上演中で、今ならホールとサザンシアターで老舗劇団のまったくタイプの異なる舞台作品を観ることが出来ます。

出演者総勢27名!地の乳房

出演者総勢27名!地の乳房

劇団青年座

紀伊國屋ホール(東京都)

2014/10/24 (金) ~ 2014/11/03 (月)公演終了

満足度★★★★★

青年座らしさが存分に出ていた重厚な作品
 若狭の一寒村で大正から昭和を生きた女主人公 愛をとりまく家族の物語。紀伊國屋ホールはこんなにも広かったのかと改めて気づかせてくれるほど空間全体をめいいっぱい使った演出が特徴的で、特に俳優陣の演技力の高さで青年座らしさが存分に出ていた舞台でした。ラインナップとしてもAct3D公演の新鮮さの後で青年座のtraditionalな面でのポテンシャルの高さをうかがわせてくれる見応えのある作品をもってきたと思います。上演時間は約2時間50分(15分休憩含)。

ネタバレBOX

 水上節炸裂の悲哀に満ちた波瀾万丈といっていい主人公やそのまわりの人々の人生をとても丁寧に描いており、最初はもたつき感のようなものも感じたのですが、丁寧に描くことで実は知らず知らずのうちに観る者の心にじわじわと、後半の見せ場となる原発論議の終盤で愛が発することばが大いに重みと説得力をもって届いてくる、細部も含め全体的な流れといったものが非常にうまく演出されていた舞台であったようにも感じました。


匂衣(におい) ~The blind and the dog~〈当日券あり!〉

匂衣(におい) ~The blind and the dog~〈当日券あり!〉

劇団印象-indian elephant-

シアター711(東京都)

2014/10/22 (水) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★★

コミュニケーションの階層性
 舞台の高さの問題や演出面で、例えば、あそこでなぜ踊りだすのかといった疑問が残るところはありました。しかし、シンプルな物語構成の中で、匂衣と記憶の介在を前面に押し出して、いわばコミュニケーションレベルの階層性といったものを観る者に強く意識させてくれる見事な舞台作品だったと思います。

ネタバレBOX

 内容からいえばしゃがみこんでの演技がかなりの見せ場ということになるのですが、その肝心なところの演技(特に舞台前方での演技)が後方の席からだと舞台の高さが低すぎるため埋没してほとんどみえなくなっていました。いくらよい演技でも観客にみえなければなんの意味もありません。




「ダム」

「ダム」

メメントC

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2014/10/22 (水) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★★★

ダム建設事業をめぐる人々の物語
 ダム建設事業をめぐる人々の、特に、建設予定地にある民宿を経営する女主人公の母娘二代(三代?)の関わりを軸とした物語ですが、きちっとした構成のもとで骨がありながらドラマ性豊かな見応えのある作品になっていたように感じました。また、本格的な舞台セット、力のある俳優陣の演技、山の息吹を感じさせてくれる凝った演出も見所になると思います。

ネタバレBOX

 プレビュー公演での上演時間は休憩無しで約2時間20分でした。
 リーディングを拝見しておらず今回の公演ではどこがどのくらい変わったのかよくわからないのでなんともいえないのですが、最後はこうしめくくってきたかといえるエンディングでした。
 また、「鴎外の怪談」(現在、上演中。しげさんの倍返しは消滅しましたが。)でも話に出てきたドクトル大石を扱った「太平洋食堂」の再演が来年の夏に予定されていて、嶽本さんと藤井さんとのコンビの作品がまた拝見できるのが楽しみです。


御ゑん祭

御ゑん祭

バンダ・ラ・コンチャン

青山円形劇場(東京都)

2014/10/09 (木) ~ 2014/10/13 (月)公演終了

満足度★★★★

構成のよさが際立つユニークな企画公演
 近藤さんの独り舞台の感もありましたが、各々20分の短い持ち時間にエッセンスが凝縮されたあれだけカラーの異なる劇団の作品群をその持ち味を損なうことなく全体として一つの作品にまとめ上げてきたその構成力の手腕が際立っていた、演劇ならではの醍醐味満載のユニークでおもしろい企画公演になっていたと思います。

ネタバレBOX

 轟天張りの先輩のアドバイス的な実況中継が印象に残るナカゴー作品はナンセンスワールド炸裂の舞台で、一撃でカオスをつくり出すその破壊力が衝撃的でしたし、現実世界から作品世界へそしてまた現実世界へとその揺れ動きの中へ観客を誘っていたチームオールドの自然体の演技は見事でした。
落伍者。

落伍者。

ラチェットレンチ

小劇場てあとるらぽう(東京都)

2014/09/26 (金) ~ 2014/09/30 (火)公演終了

満足度★★★★

絶妙な距離感で紡ぎ出される孤高の男の生き様の物語
 筋立てにやや粗さと強引さはありましたが、物語というか現実の話と落語の世界が適度な距離感で重なり合いながら謎解きも含めて絶妙な展開でみせてくれた、変わり者の天才落語家の生き様の物語だったと思います。

ネタバレBOX

上演時間は約2時間です。
初萩ノ花

初萩ノ花

演劇集団円

ステージ円(東京都)

2014/09/19 (金) ~ 2014/09/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

作者の、人に対する鋭いながらも優しいまなざしと繊細な感性を感じさせてくれる作品
 衝突して傷ついたり、ごまかしたり、癒し癒されたりしながらどう生きてゆくのか、人の営みの根本的なところを鋭くとらえると同時にどこか心に痛みや傷を抱えながらも不器用で実直に生きている人へ向けるまなざしの優しさ、温かさがじわっと伝わってくる作品です。笑って、少しほろっとして、誰もが普段は恥ずかしくて人前ではさらけだせないような屈折した思いや心のもやもやしたものを登場人物がぶちまけてくれることで、観ている者の傷が癒されたり心の重荷が少し軽くなったりしてencourageしてくれているようにも感じました。
 また、普通の何気ない会話で交わされるせりふ、照明による一日の移ろいの表現や季節感のある作品作りなどから作者の繊細な感性をうかがい知ることができる作品という印象も受けました。

ネタバレBOX

 上演時間は、約1時間50分です。
 また、長女役の谷川さんとフルート(正確には長女の娘が吹いているのですが)の組み合わせを観ていて、谷川さんが下田和歌代(通称ばかよ)役で出演されていたナミギン作品「サニー・コースト・セレナーデ」をなんとなく思い出してしまいました。

サバイブ!

サバイブ!

自転車キンクリーツカンパニー

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2014/09/13 (土) ~ 2014/09/21 (日)公演終了

満足度★★★★

互いの自立へ向けて一歩進み出そうとする母娘の物語
 お互いに過保護ぎみで自立できない母娘がそれぞれ自立へ向けて一歩踏み出し始めようとする物語ですが、わかりやすくやんわりとじわじわくるタッチで主人公の家族やその周辺がうまく描かれていました。母親に対して気が弱くて優しく優柔不断なところがある主人公の長女役を歌川さんがその雰囲気をうまく出して演じられていたと思います。上演時間は約1時間50分です。

ネタバレBOX

 ローソンのお団子が人それぞれ好みが違うアイテムのひとつとしてうまく使われていました。
 新国立で上演された「鳥瞰図」では、親子、夫婦、姉弟などのいろいろな家族の間の関係が取り上げられていましたが、今回は主に母と娘の間の関係に話の焦点が当てられています。また、「鳥瞰図」で保険の営業員役だった弘中さんが今回は主人公の妹である次女役を好演されています。


マナナン・マクリルの羅針盤

マナナン・マクリルの羅針盤

劇団ショウダウン

シアター風姿花伝(東京都)

2014/09/05 (金) ~ 2014/09/07 (日)公演終了

満足度★★★★

一人語りのラジオドラマを観ているような感覚
 一人語りの長編ラジオドラマに耳を傾けながら観ているような新鮮な感覚を持ちました。一つの物語を長時間続けるという様式上、語りの部分が多く単調ぎみになったり、語り部と多数の登場人物の役の間をめまぐるしく切り替わる際にぎこちなさが出てしまうところはありましたが、ハードなタイムスケジュールで公演を重ねる俳優の熱演が光るexciting performanceだったと思います。

台所の女たちへ

台所の女たちへ

劇団青年座

青年座劇場(東京都)

2014/08/21 (木) ~ 2014/08/31 (日)公演終了

満足度★★★★★

新しい試みで青年座のポテンシャルの高さを感じさせてくれたAct3D企画公演
 ONEOR8の田村さんの描く作品世界と青年座の持ち味がとてもよくマッチングしていて、今回の企画連続公演の中で最も青年座らしい約2時間の公演でした。この作品を観ながら、田村さんの作・演出で以前他で拝見したレディースクリニックが舞台の「おしるし」という作品につながるところもあるかなと思ったりもしました。
 また、今回の三者三様のおもしろいAct3D企画公演を通して観て、各作品の作・演出をセットで外部の同じ方が行っている新しい試みやAct.1からAct.2、Act.3へとよく考えられた演目順序、そのレパートリーの広さなども含め、新しい風を入れたいというこの企画の目的は大いに達せられたのではないでしょうか。

ネタバレBOX

 二代目の葬儀のときに起こった出来事の回想シーンでは、三代目の姉妹とその関係者等の娘たちがそれぞれの母親の役を演じており、娘役の俳優さん達の今と昔の演じ分けや取り囲んで配置された母親たちがあたかもその場面を見ながら昔話をしているような構図が実によくできていました。
 青年座さんのそのカラーを活かした作品はとてもすばらしいのだが新しいスタイルのものや翻訳ものはどうかなという思い込みというか偏見のようなものがあったのですが、このAct3D企画公演を拝見してかなりそれが払拭されたような気がしました。
 また、新しい風を入れようという試みとしては、他では、例えば、今年の俳優座の公演「七人の墓友」などはとてもうまくいっていたと思います。
ハイキングフォーヒューマンライフ2014

ハイキングフォーヒューマンライフ2014

劇団PATHOS PACK (パトス パック)

「劇」小劇場(東京都)

2014/08/06 (水) ~ 2014/08/10 (日)公演終了

満足度★★★★

バランスがよくとれている作品
 一方的に思いや考えを押し付けたりまた観客の想像力に完全に丸投げすることもなくそのぎりぎりのところで話が展開されていてバランス感にすぐれた作品になっていたと思います。

終の楽園

終の楽園

文学座

文学座アトリエ(東京都)

2014/07/26 (土) ~ 2014/08/09 (土)公演終了

健闘されているとは思うのですが。
 長くそばにいるのになかなか分かり合えないやっかいな代物である家族や切れない血のつながりをモチーフに、愛憎渦巻く複雑な家族関係を通して命のつながりといったものを問いかけている作品で、ドラマとして難しいテーマに挑み健闘されていたとは思うのですが、個々の人物設定やその描写も含め全体として断片的になりそのつながりがスムーズでなくどこか運びが重たくなっている印象を受けました。

ネタバレBOX

 家族や思索、信仰といったものを扱った前回アトリエ公演「信じる機械」や近いところでは「proof(プルーフ)-証明-」、「ボビー・フィッシャーはパサデナに住んでいる」などといった公演から受けた強烈な印象に私自身が相当影響されているところからきているとは思うのですが、今回の公演では物語が表層的で深みがなく、登場人物たちが精彩を欠き、人と人とのぶつかり合いや葛藤が弱くなっていてドラマとしての息づかいがあまり感じられないという印象が拭えませんでした。



箱舟の行末

箱舟の行末

トゥルースシェル・プロデュース

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2014/07/17 (木) ~ 2014/07/21 (月)公演終了

満足度★★★★

難しいテーマに果敢に挑んでいる作品
 主人公が紡ぎ出す過去の物語と未来の物語が次第に交錯しそれが主人公の現在とも交錯しながら展開してゆくお話で、最後はちょっと急ぎ足になったような感がありますが、ストーリー的にもよくできていたと思います。

ネタバレBOX

 若年性認知症と診断された主人公ヒロが周りの人々の協力を得ながら物語を創りあげてゆく過程とその物語自体が交錯してゆくという設定で、話の組み立てもテーマとしてもなかなか難しい作品でしたが、果敢に挑まれていたと思います。ただ、劇中劇として過去と未来の物語を同時に進めるという話の構成上の制約もあったのでしょうが、主人公の病気の進行具合と主人公が紡ぎ出す物語の進行がもう少し同期連動できたのではという印象も受けました。
「廃墟の鯨」

「廃墟の鯨」

椿組

花園神社(東京都)

2014/07/12 (土) ~ 2014/07/23 (水)公演終了

満足度★★★★

躍動感に溢れ疾走感のあるみずみずしい野外劇
 ストーリー的にやや粗さはあるものの、作り込まれた舞台上でリズミカルでテンポのあるセリフや音楽を効果的に織り込んで見事に展開された、随所に笑いの要素も交えながら、躍動感に溢れ疾走感のあるまさにライブ感満載の群像劇になっていたと思います。

ネタバレBOX

 例えば、緊張感漂う場面でも、不自然な登場をするヤクザの親分役の辻さんがこのままだと出番が少ないと言い、そんなのありかと言ったその子分役 嵯峨野を演じる粟野さん(文学座)に向かって「だってアングラなんだもの、新劇やないんやで」とさらっと言い、粟野さんが苦笑いするシーンなどは、いろいろなバックグラウンドをもつ役者さん達が集まるこの野外劇だからこそできるなかなか遊び心に溢れた場面だと思いました。

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