yocyaの観てきた!クチコミ一覧

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死に顔ピース

死に顔ピース

ワンツーワークス

赤坂RED/THEATER(東京都)

2016/03/18 (金) ~ 2016/03/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

涙が止まりませんでした!
後半は涙が止まりませんでした。
文句なしの五つ星です!

今はただただ、ワンツーワークスさんと出会えた事に心から感謝です。
もっとたくさんの方に是非観て欲しい舞台です。

素晴らしい舞台を本当にありがとうございます。

取り急ぎ、感謝をこめて。

【以下 追記】

自分が最後に心から笑ったのはいつだろう? 最後に誰かを笑わせたのはいつだろう?

「人は幸せでなければ、健康にはなれません。幸せになるためには、笑うことです。」
この言葉がずっと心に残り続けています。

渡良瀬先生と出会えて、暖かい家族に見送られて、楠美さんは幸せだったんだと思います。

独り身の自分があんな風に笑顔で最期を迎えられる事は、恐らく無いでしょう。思えば、今まで色んな大切なものに背を向けて生きて来てしまいました。今からそれを悔やんでも仕方ありませんが、せめてこれからは誰かを笑顔にしたい。そして、自分も笑顔でありたい。そう思わせてくれる作品でした。

ロビーで、この作品のモデルとなった岡原仁志先生にハグして頂きました。力強く、慈愛に満ちたハグでした。

雨と夢のあとに

雨と夢のあとに

演劇集団キャラメルボックス

サンシャイン劇場(東京都)

2013/07/27 (土) ~ 2013/08/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

まさに滂沱の涙
中盤からは涙が止まりませんでした。
キャラメルボックスの舞台はどれも心に残る作品ばかりです。
吉田里琴さんの演技も素敵でした。

「ずっと二人で歩いてきた」もぜひ観たいです。

ザ・空気

ザ・空気

ニ兎社

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2017/01/20 (金) ~ 2017/02/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2017/01/22 (日)

あまりの緊迫感に硬直しっ放しだった。しばらく立てなかった。涙が流れた。震えが止まらなかった。手が痛くなるまで拍手した。本当は星10個付けたい、今までに観た中でも最高峰の作品。

放送開始直前の突然の番組内容変更に混乱する報道現場を描いた作品と聞き、てっきりドタバタのコメディかと思っていたら、下手なホラーよりもよほど怖かった。

例え映像化されてもテレビでは放送されないと思う。この作品が劇場上演できるだけ、日本はまだ大丈夫なのか。それとも、いつかこの作品も上演できなくなる日が来るのか。この国の行く末を憂わずにはいられなくなる。

世界が不安に覆われる中、改めて感じた演劇の力に、一条の光を見た気がした。

明日の君とシャララララ

明日の君とシャララララ

劇団ハーベスト

シアター711(東京都)

2015/03/25 (水) ~ 2015/03/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

STEP UP TO THE NEXT STAGE
劇団ハーベストとは、その名の通り劇団であり、定期的な演劇公演を活動の主とする演劇集団です。数ある劇団の中で際立つ最大の特異性としては、メンバー全員が高校生から20歳以下の若い女性であるという点が第一に挙げられます。

「劇団」と名乗ってはいるものの、ルックスにも恵まれた若い女の子たちのグループである以上、世間からある程度はアイドルグループであるかのような眼差しを受けてしまう事は免れません。実際、Twitterに公演の感想を書いているアカウントのプロフィールを見ると、アイドルグループのファンと想われる方が多く見受けられます。また、開演を待つ間の客席ではアイドルに関連した会話が聞こえてくることも多く、劇団ハーベストは特にアイドルファンの間で愛好されている劇団と言えそうです。

今日のアイドルという芸能ジャンルを特徴づけるものの一つに、ファンとメンバーとのコミュニケーションが楽しまれているという点があります。多くのアイドルグループでは、握手会をはじめとしたイベントでの直接の会話や、SNSやブログのコメントなどを通じたやりとりによって、ファンはメンバーにライブの感想や励ましの言葉を送り、またメンバーもそれに応えるというように、ファンとメンバーとの間で生じるコミュニケーションが大きな楽しさの一つとなっています。

劇団ハーベストでも、特にそれを外部に向けて訴求してはいないものの、メンバー自身によるグッズ販売や、終演後のメンバー全員によるお見送りといった、観客が直接メンバーと会話したり、公演の感想を伝えたりという機会が用意されています。公式ブログは高い頻度で更新され、メンバーの公演に対する意気込みや、公演直前直後の率直な心情の吐露などがファンに共有されています。演劇公演そのものだけでなく、メンバーの心情や成長過程を見守ったり、メンバーの奮闘を垣間見たり、メンバーとコミュニケーションしたりという楽しまれ方が劇団ハーベストの特徴の一つでもあり、それは劇団というよりもアイドルグループのそれに近似しています。

では、劇団ハーベストとは歌やダンスではなく演劇をメインの活動としたアイドルグループの一種なのでしょうか? 今作「明日の君とシャララララ」は、同劇団がその問いに対して改めてNOを表明した公演でした。

アイドルグループが行う演劇、所謂アイドル劇は、通常の演劇とは異なり、作品そのものよりも出演するメンバー自身を訴求力とし、企画そのものがメンバーの出演ありきで成り立っているものが多くあります。そのため、セリフ量に差はあったとしても、大抵はメンバー全員に役が与えられ、何らかの見せ場が用意される場合が殆どです。(劇団ハーベスト初期の作品である第3回公演「位置について!~girls start up!~」はそちら寄りの構成だったように思えます。)

しかし本作では、メンバー全員に役が与えられる事はありませんでした。オーディションにより出演者を選考し、その結果、本編の舞台に立てたのは13人のメンバーのうち8人のみでした。劇団員である以上、本当は一人の例外なく全員が本編の舞台に立ちたかった事でしょう。しかし、メンバー全員を出演させることよりも作品の完成度を第一としたこのストイックさは、決してアイドル劇のものではありません。

これまでの同劇団の公演とは大きく方向性を変え、出演者を絞り込んだというのは、かなり思い切った決断であったと推測します。しかし、この公演を通して観客に何を伝えたいか、何を創りたいかという、一本芯の通ったブレない軸があったからこそ、作り手もメンバーも恐れるものは無かったのでしょう。考えてみれば、劇団員全員が毎公演で必ず役を得られる訳では無いのは普通の劇団なら当然です。オーディションに落選して前座のみの出演となったメンバーも、自ら裏方を志願したメンバーも、皆が一丸となって作り上げた本作品を通じて、劇団ハーベストは美少女演劇集団と呼ばれるような存在ではなく、当たり前の、普通の劇団へと大きく歩みを進めたと言えるでしょう。

もちろん、本公演がアイドル劇ではないという裏づけはそれだけに限りません。もしもアイドル劇を想像しながら劇場を訪れた人、あるいは女の子だけの劇団というだけでクオリティに疑問符をつけながら観劇に臨んだ人がいたなら、本公演の完成度の高さに必ずや驚いたことでしょう。脚本にはメンバーへの当て書きやファン向けの内向きの要素などは一切ありません。本作で重点が置かれているのは純然たるメッセージ性であり、描かれているのは「命」と「自立」の物語です。実際に公演を観た人の感想は、アイドル劇にありがちな、どのメンバーが可愛かったとか、誰々が頑張ってたなどというところに収斂するものではありません。物語が進行するにつれて、客席のあちこちで聞こえてくるすすり泣く声。それに交じって自分も中盤からは涙が止まりませんでした。ラストシーンの満開の桜と共に、この作品を観て流した涙はいつまでも心の奥に咲き続ける事でしょう。

これだけ演劇ファンにも充分届き得るようなクオリティの高い公演を打ちながら、ある一定の客層だけが客席を占めている現状は非常に勿体無い。次回の夏の公演が開催される中野の劇場MOMOの客席数は90席で、今回のシアター711と同程度です。ここのところ小さな劇場での興行が続いているのは、単に劇団の台所事情なのか、それとも何らかの意図があっての事なのかは判りません。しかし、メンバーとのコミュニケーションをはじめとした、アイドル的な楽しみ方をするファンには、同じ公演を何度もリピート観劇するという特性があります。ここから危惧されるのは、もしこのまま小さな劇場だけでの公演を続けているのでは、既存のファンで客席が占められたまま、新しいファンを劇場に入れることができないのではないか、また、アイドル的な楽しみ方を求めるファンが多くなれば、一般的な演劇ファンに敬遠されやすいのではないかという事です。

今回の公演で劇団ハーベストは普通の劇団に一歩近づいたと先ほど書きました。しかしその事と、終演後のお見送りや自ら物販を行うようなアイドル的な振る舞いを続ける事とは些かの齟齬を感じます。観劇後に直接メンバーに感想を伝えられるのは得がたい機会ですし、この上なく楽しいものです。自分自身それを楽しんでいますし、メンバー達も楽しんでいるものと信じます。しかし、彼女達の魅力はコミュニケーションの往還にこそあるわけではないはず。そういった要素が無くとも、これだけクオリティの高い公演を見せることができるならもう充分なのではないでしょうか。

劇団ハーベストはどこへ向かい、今後どうなっていくのか。遠からぬ将来、女優として巣立っていくメンバーも出てくることでしょう。メンバーの卒業・加入を繰り返しながらさらなる高みを目指していくのか、それともいつか泡沫の夢として消えてしまうのか、それは誰にも判りません。

劇団ハーベストの創る舞台のクオリティは非常に高いものですが、それだけでなく、メンバーとのコミュニケーションの楽しさも大きな魅力の一つとなっています。しかし、そうした要素を楽しみながらも、彼女らがそれを訴求力としない場所へと早く歩みを進めることを、作品のクオリティのみで勝負できる、当たり前以上の劇団になることを心から願って止みません。

反重力ガール

反重力ガール

劇団ハーベスト

SPACE107(東京都)

2014/03/26 (水) ~ 2014/03/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

楽しかった! もう一度観たい!
「楽しかった! もう一度観たい!」
お芝居を観て、ここまで純然たる気持ちで楽しいと思えたのは、本当に稀有な観劇体験です。

何か難しいテーマを押し付けたり、メッセージや感動が心に残るような作品ではありません。それでも、舞台上の「劇団ハーベスト」メンバーたちは本当にキラキラと輝いていて、その眩しさに思わず涙がこぼれました。女の子たちが最も輝くのはお芝居をしている時なのではないか、とさえ思います。

今回も山本萌花さんを中心としたメンバーの溌剌としてテンポの良い演技は観ていて気持ちが良く、物語のスピード感とも相俟って、観客を舞台に惹き込む大きな推進力となっていました。

青山美郷さんの貫録には驚きました。初めは青山美郷さんだとわからず、どこの客演女優かと思ったぐらいです。

前作で感じたような映像の使い方の不自然さもなく、あっという間の約2時間でした。

作品を重ねるごとに格段の進化を遂げていく彼女たちを、早くもう一度観たい。
次回公演を心から待ち遠しく思います。

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開演前には客席でメンバーによるグッズ販売があったのですが、弓木菜生さんらが僕の前でTシャツを見せてくれた時には、あまりに可愛くて、危うくお財布を出すところでした。今思えば買えば良かったかな。この次は何か買ってあげよう。

音楽劇 夜のピクニック

音楽劇 夜のピクニック

水戸芸術館ACM劇場

水戸芸術館ACM劇場(茨城県)

2016/09/17 (土) ~ 2016/09/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

観に行って良かった
凄く良かったです。はるばる水戸まで観に行った甲斐がありました。ずっと心に残り続ける作品になりそうです。

吉川友さんは歌声も演技も素晴らしいし、目鼻立ちもはっきりしていて綺麗だし、そろそろ本格的にミュージカル女優の道を進んで欲しいと思います。

小林日奈子さんも可愛くて印象的でした。

MIRACLE8

MIRACLE8

劇団ハーベスト

劇場MOMO(東京都)

2015/08/05 (水) ~ 2015/08/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

大きな壁乗り越え掴んだ奇跡を
どうして演劇をやっている女の子たちはあんなに輝いて見えるんだろう?

千秋楽で広瀬咲楽さんの歌う自作主題歌を聴きながら、全てを出し切ったメンバーたちの清々しい表情を見ながら、今この時がいつまでも続けばいいと思いました。この公演期間は本当に楽しかったです。

舞台は基本的には一期一会。それでも今回は5回観劇しました。その楽しさの成分には確かに舞台そのもの以外の部分も含まれます。しかし、恒例だった終演後のお見送りが無くても楽しさに些かの陰りも感じなかったのは、その演劇公演としてのクオリティの高さの何よりの証でしょう。今回も、彼女たちがまた一つ大きな壁を乗り越えるのを目の当たりにしました。そして、それは涙が出そうなほどに眩しいものでした。

季節が変わる度に、劇団ハーベストは更なる輝きを魅せてくれます。それは回を重ねるごとに眩しさを増していきます。眩しくて眩しくて、何だか少し切なくなります。

次回公演を心から待ち遠しく思います。

真っ向ガール

真っ向ガール

劇団ハーベスト

ザ・ポケット(東京都)

2016/08/03 (水) ~ 2016/08/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

彼女たちの輝きを見逃さないで
もしも劇団ハーベストをアイドルだと思っている人がいるなら、是非一度、彼女たちの公演に足を運んでみて頂きたいと切に思います。彼女たちが織り成す殺陣の迫力はもちろんの事、メンバーのほとんどがまだ10代である彼女たちが、どれだけストイックでクオリティの高い演劇作品を創っているのかに、きっと驚かされる事でしょう。

確かに物語として多少の展開の強引さはあります。青臭い青春劇と思われる方もいるかも知れません。それでも、舞台上から放たれる彼女たちの輝きは何物にも代え難く、彼女たちも言うように、きっと「何かを始めたい」と思わせてくれるきっかけになるはずです。

演劇を観て、楽し過ぎて涙が出るという経験をさせてくれたのは、後にも先にも劇団ハーベスト以外にはありません。

季節が変わる度に、劇団ハーベストが魅せてくれる新たな輝き。もっともっと多くの人に届いて欲しいと願って止みません。

怒りの旅団-アングリー・ブリゲード-

怒りの旅団-アングリー・ブリゲード-

ワンツーワークス

赤坂RED/THEATER(東京都)

2017/03/16 (木) ~ 2017/03/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2017/03/18 (土)

面白かったです。役者たちのレベルがとても高く、舞台美術も素晴らしいものでした。
上演時間は確かに長いですが、無駄に長いわけではなく、確かに必要な2時間40分でした。
長くても、これ程までに中弛みも無く、全くテンションが落ちない作品を他に知りません。
休憩さえあれば、3時間でも良かったぐらいです。

岡田あがささんは柿喰う客の公演で何度も見たことがありましたが、今回は特に良かったです。
終盤の長台詞の場面では、自然と涙が流れました。
心に残る台詞が多く、戯曲の販売が無いのがとても残念です。

ネタバレBOX

チラシの台詞が交わされる場面では鳥肌が立ちました。
杜町ペッパージャム

杜町ペッパージャム

劇団ハーベスト

アトリエファンファーレ東新宿(東京都)

2017/03/22 (水) ~ 2017/03/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2017/03/25 (土)

後半は涙が溢れて止まりませんでした。今はただただ、劇団ハーベストに出会えたことに感謝です。本当に、本当にありがとう。【後日、追記します。】

撃鉄の子守唄 2016年版

撃鉄の子守唄 2016年版

劇団ショウダウン

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2016/09/01 (木) ~ 2016/09/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

血沸き肉躍る冒険活劇
正に「血沸き肉躍る」とはこの事だと思いました。最初に上演3時間と聞いてちょっと怯んだのですが、全く長さを感じませんでした。

確かに、少々台詞の聞き難い役者さんや、最後まで何がしたいのか伝わりにくいキャラもいましたが、たいそう面白かったです。

終演後の劇場前の温かい雰囲気も、この劇団ならではのものだと思います。

やはり劇団ショウダウン、今後も見逃せませんね。もっと関東で有名になって、もっと大きな劇場で上演して欲しいです。

次回公演も楽しみにしております。

ミュージカル「雪のプリンセス」

ミュージカル「雪のプリンセス」

Zero Project

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2016/03/30 (水) ~ 2016/04/02 (土)公演終了

満足度★★★★

ミュージカル女優 吉川友の開花
楽しかったです。

主演の吉川友さんは演技はもちろんのこと、歌唱力も素晴らしかったです。目鼻立ちもはっきりしていて、ミュージカル向きだと思いました。また主演舞台が観たいです。

子供向けのミュージカルではありますが、環境問題を次の世代に伝えるには良い作品だと思います。根っからの悪人が出てこないのにも、脚本家の優しさを感じました。

昔、TM NETWORKのファンだったのですが、木根尚登さんの歌声が健在で嬉しくなりました。

本作のような子役のたくさん出てくる舞台の客席は、出演者の家族や関係者と思しき方が多くなるようですが、他では考えられないほど遅刻者が多かったり、観劇中に体を動かし過ぎる人がいたりと、マナーの良くない方が見られました。そうした、普段演劇を観慣れていない層への観劇マナーの啓蒙は、今後もファミリー向け作品上演時における課題だと思います。

猥り現(みだりうつつ)

猥り現(みだりうつつ)

TRASHMASTERS

赤坂RED/THEATER(東京都)

2016/02/18 (木) ~ 2016/02/28 (日)公演終了

満足度★★★★

そこに客席との対話はあったのか
恐らく、TRASHMASTERSという劇団が観客に投げかけ続ける最も重要なテーマの一つが、「対話の大切さ」なのだと思います。前作『そぞろの民』と同様、本作でも登場人物たちは激しく議論を戦わせ、互いの意見をぶつけ合います。それは時には会話の自然な流れとしては、幾ばくかの不自然さや唐突さが感じられることはあるものの、激しい論戦は観客を舞台に惹き込み続けるに充分な魅力があり、この舞台の大きな推進力となっています。しかし、今回は前作と比べると、その不自然さを感じる度合いが高かったと同時に、一方の意見に肩入れし過ぎないバランス感が不足しているように思えました。

不自然さとは、例えば後半の討論の場面で話題が宗教史に及んだ際、 不動産屋の御手洗がテンプル騎士団の資産没収について当然のように話し出す事などです。 歴史の専門家でもなければ熱心なカトリック信者ですらない彼の発言としては、唐突に感じました。

不自然さを感じたのは台詞だけではありません。イランと日本のハーフであるラシードが、警官に「カード出して」と永住許可証の提示を求められた際、彼は「持ってません」と答えます。しかし、もとより国籍が日本であるなら、その返答はおかしい。その場で国籍を明かして堂々と身分証を出すのが自然な行為の筈です。彼の素振りは、いかにも怪しんでくださいと言わんばかりにも見えました。

役者が台詞を発するには、まず気持ちの流れがあり、その先に口から言葉が出るという行為がある筈です。その気持ちの流れと行為に齟齬が感じられてしまうと、観客には、役者が台詞を「言わされている」ように見えてしまいます。

劇中で描かれる主義主張についても、気になった点はあります。

冒頭の場面でハサンが戸辺に話す「(自爆テロを)発明したのは日本ですよ。」という台詞。一体、いつ日本が自爆テロを発明したというのでしょうか? これがまさか神風特攻隊の事を指しているのであれば、あまりに不見識です。仮に自爆攻撃という手段のみを指しているとしても、そのような攻撃手段が歴史に登場したのは何も日本が最初ではありません。中国地方を毛利氏の前に治めていたのが大内氏である事を知っている程に歴史に造詣の深いハサンという人物が、このような間違いをするとは思えません。

そして何より、終盤での「自衛隊=人殺し」であるかのような表現。これは呆れるほどの暴論です。能力の無い役立たずが生きていく為には自衛隊に行って人を殺すしか無いというのは、あまりに自衛隊を冒涜しています。中津留さんには自衛隊をそこまで貶めなければならない何か理由があるのでしょうか?

「 憲法には戦争が出来ないと書いてあるのに出来ると解釈しようとする男たちにはヘドがでるわ。 」という台詞を、終始絶対的正義として君臨する女性弁護士に強い口調で言わせているのは、恐らく中津留さんの主張であり、怒りなのでしょう。政治的主張を演劇に盛り込む事は大いに結構だと思います。しかし、意見の別れる事案については一方に肩入れし過ぎるのではなく、観客に考えさせる余地も残して欲しい。そうでなければ、そこは演劇鑑賞の場というよりも、劇作家の主義主張を聞かされる場にもなりかねません。今回は特にそうしたバランス感の不足を感じました。

とは言え、主張の強烈さ、そして、誰もが目を背け、見て見ぬふりをするような心の内を引っ張り出して突き付けてくる手腕は、この劇団の大きな魅力でもあります。テーブルを囲んだ討論の場面では、相手の欠点をあげつらう事でしか自我を保てない大学院生が、区議会議員らの反論にあっけなく沈みます。典型的な日本人として描かれるその大学院生をあえて客席に背を向けて座らせる事によって、観客は否応なしに彼に同化させられます。「世界を動かす言葉を探せ!」という区議会議員の言葉はその大学院生の背中を貫き、観客の胸にまっすぐに突き刺さりました。

「日本人は宗教に寛容なのではなく無関心なだけだ。」というハサンの言葉には、成る程と思いました。確かに、日本人でイスラムの教えを理解している人はそう多くはいないでしょう。自分もこの作品を通して初めて知る事ばかりでした。

ラストの展開を荒唐無稽と感じるか、現実と地続きの出来事として感じるかはその人次第でしょう。自分には、それが全くあり得ない非現実的な話とも言い切れないような、一抹の怖さを感じました。

己の言葉も持たない日本人に警鐘を鳴らしたという点で、この作品が上演された意義は大いにあったと思います。

レドモン

レドモン

カムヰヤッセン

吉祥寺シアター(東京都)

2016/04/06 (水) ~ 2016/04/10 (日)公演終了

満足度★★★★

もう少しリアリティが欲しい
人類と宇宙人との地球上での共生という題材は、否応なしに現実の人種差別やヘイト問題を思わせます。

本作で描かれる、人類社会にいつの間にか紛れ込んだ「レドモン」と呼ばれる宇宙人たちも、発見され次第、故郷の星に強制送還させられるという設定です。赤い尻尾があること以外は人類と全く変わらない姿と知能を持ちながら、市民権を得られず、差別され、排斥されようとしているという設定から、現実の社会問題を想起させられた観客は少なくないでしょう。

しかしどういうわけか、登場するレドモンたちからは、いつ捕まってもおかしくない、捕まれば強制送還させられるという緊張感が全く感じられません。悠々と食事やおしゃべりを楽しんでいたり、レドモンと人類の混血である「マジリ」専用の塾に子供を通わせたりと、レドモンである事を秘匿している様子すら全くありません。

恐らく、宇宙人という設定に気をとられがちですが、そこに必然性は無く、本作の真のテーマは家族愛だったのではないかと思います。家族の絆の物語としては、本当に良い作品です。ただ、設定にもう少しリアリティと必然性が欲しい。そうすれば、物語はより説得力を持ち、もっと泣ける作品になったでしょうし、主人公が最後にとった選択にも納得がいったのではないでしょうか。

再再演して頂ける事を強く希望します。ただ、その際はもう少し設定に深みを与えた上でお願いしたいと思います。

名もなき男

名もなき男

幸福魂

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2016/04/16 (土) ~ 2016/04/17 (日)公演終了

満足度★★★★

是非、舞台のある劇場で再演を
会場の「絵空箱」へ行く途中に道に迷ってしまい、電話する事に。会場前を気付かずに通り過ぎてしまっていたので、もう少し看板を目立たせて欲しかったですが、おそらく強風の為に立て看板が使えなかったのでしょう。ともあれ、電話に出てくださった方に親切かつ的確にご案内頂いたおかげで、無事に開演に間に合いました。ありがとうございます。

三つのエピソードから、一人の男の姿が徐々に浮かび上がって来る様は面白かったです。ただ、女性が男性を演じる部分はあまりそう見えなかった事もあり、複雑な人物関係が余計に複雑に感じてしまいました。

どう見ても客席から死角になる位置まで演技スペースとして使われていたりと、表現したい事と会場の大きさが合っていないのを感じました。いつか舞台のある小劇場で再演されたなら、もう一度観たいです。戯曲も読みたかったのですが、物販に無かったのは残念です。

それにしても、喜多村千尋さんは本当に華があって可愛いです。彼女が見せる繊細な表情と演技には、時折ハッとさせられました。彼女の次の出演舞台が心から待ち遠しいです。

走馬灯株式会社

走馬灯株式会社

アリー・エンターテイメント

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2016/03/09 (水) ~ 2016/03/13 (日)公演終了

満足度★★★★

まさか泣かされるなんて!
漫画は普段読まないので、原作も知りませんでした。自分が、主演の中江友梨さんの所属する東京女子流のファンで無かったら、恐らく気づきもしなかった舞台でしょう。中江さんが出演しているからという軽い気持ちでチケットを買いましたが、結果的に、観に行って本当に良かったです。

正直言って、開演してしばらくは、滑り気味のギャグの連続に少々辟易しましたし、不要なボケも多過ぎに感じました。竹林を表現する竹を持った黒子たちが、人物の歩く方向に合わせて移動しようと右往左往するメタ的なギャグなども、ドタバタして台詞を聴きづらくしているだけで、たいした笑いも生んでいなかったし、もしかしてこれは外したかな? と思いながら観ていました。

ところが、後半から舞台は急展開。それまでのエピソードに巧みに張られた伏線が次々と結合し合い、予想もしなかった結末へとなだれ込みます。コメディかと思って観ていたら、突如出現したのは、親子の情愛の物語。そこで描かれる親が子を思う気持ちの貴さに、気が付けば自然と涙が流れていました。キャスト目当てで観た舞台でしたが、思いがけない良作と出会えたことに感謝です。

中江さんは、ラストシーンの感情を露わにする場面の演技は充分に説得力があったものの、それ以外の場面では、リアクションや台詞のトーンの変化に乏しさを感じたりと、少々一本調子なところがありました。その辺りの細かい演技力を磨いていけば、さらに良い女優になれるのではないかと思います。

チェリーボーイズ

チェリーボーイズ

バードランドミュージックエンタテインメント

博品館劇場(東京都)

2016/04/13 (水) ~ 2016/04/17 (日)公演終了

満足度★★★★

限りなく★5つに近い
確かに青臭い青春劇かも知れません。ありきたりな泣かせの手法かも知れないし、どこかで聞いたようなエピソードもあったかも知れません。それでも、この作品を観て流した涙はきっといつまでも忘れないし、この作品から貰ったものはずっと心に残り続けるでしょう。

涙が止まらなくなったあの場面を何度も思い出します。今までにあんな風に大切な人の為に命を燃やした事があっただろうか。誰かを思いやったり、誰かを心から信じた事があっただろうか。仲間と一緒に、あんな風に輝いた事があっただろうか。誰かの為に祈った事があっただろうか。

こんな世の中だし、生きていれば悲しい事もたくさんあるけど、それでも人はこんなにまでも輝ける。何歳になろうと、人は青春時代のように輝く事ができる…。

大切なものをたくさん頂きました。まさに今の自分に必要な作品でした。

女優・新垣里沙さんを追い続けて数年、『チェリーボーイズ』は今までに彼女に出逢わせてもらった中でも屈指の舞台です。

そして、『殺人鬼フジコの衝動』に続いて『チェリーボーイズ』でも新垣さんの新たな魅力を引き出してくれた林清プロデューサーに感謝します。ありがとうございました。

雲ヲ掴ム

雲ヲ掴ム

秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2016/04/21 (木) ~ 2016/04/30 (土)公演終了

満足度★★★★

確かに人肌の温もりはありました
公式サイトから当日券を予約する際、「劇場に来られなかった場合も代金はお支払い頂きます。」とか、「売り切れの場合以外は返信致しません。」などと書いてあるのを見て、何だか居丈高な印象を受け、予約するのを少々ためらいました。あれはあまり感じが良くありませんね。予約しても確認のメールが来ないのでは、本当に席が用意されているのか不安になります。(実際には「ご予約確かに承りました。」という丁寧なメールを頂けましたし、希望通りの席をご用意頂けました。本当にありがとうございました。)

しかし、暗号化もされていないページで個人情報を入力するのは抵抗があります。特に老舗の劇団では、素人さんがホームページビルダーで作ったような、古き良きテイストのWebサイトがたくさん残っている現状を見ると、よほど演劇界にはWebサイトにかけるお金が無いのだなと残念に思います。

あと、上演時間が3時間近くもあるなら、その旨も明記して頂きたいですね。もっとも、TRASHMASTERSのように休憩なし2時間半よりは、本作のように休憩あり3時間の方が余程良いですが。

さて、開演前からロビーには「憲法9条を守ろう」とか「アベ政治を許さない」などのメッセージを身につけた人(公演関係者なのかお客さんなのかは判らず)を見かけたりし、もしかしてそちら寄りの観客だけが喜ぶような、現政権への批判など、政治的主張だけが強いような作品を見せられてしまうのかなと思いましたが、実際にはそんなことはありませんでした。

確かに、先日のTRASHMASTERSの『猥り現』同様、不自然な台詞や、会話の流れよりも主張を優先しているかのように感じた台詞も何度かありました。しかし、『猥り現』とは違い、主張を強く押し付けるわけではなく、観客に考えさせる余地を十分に残しており、TRASHMASTERS作品よりも遥かに好感を持ちました。

劇中何度も涙が流れました。「正論だけで生きて行くことは出来ない。人肌の温もりのある言葉を。」といったやり取りは、深く印象に残っただけでなく、それは中津留さんご自身に向けられた言葉のようにも思えました。

巣穴で祈る遭難者

巣穴で祈る遭難者

一色洋平×小沢道成

Geki地下Liberty(東京都)

2016/03/26 (土) ~ 2016/04/04 (月)公演終了

満足度★★★★

あぁ 未来が楽しみだ
面白かったです。

二人の役者が役を入れ替えた2パターンの公演を行うというのも、面白い試みだと思います。しかし、個人的にはそれがこの作品を楽しむ上での良い効果とはなりませんでした。

白、黒の順に1回ずつ観たのですが、先に観た白がとても印象深かったので、黒を観た時には「ええと、今度はこっちが医者で…」と、少々迷いました。役を固定して、同じ役をより深めていっても良かったかなと思います。

ただ、それが自分が2公演分のチケットを予約する切っ掛けにもなりましたし、結果的には2公演観て良かったです。

エントランスのドアを開けて地下の劇場へと階段を降りていく、その過程までもが既に作品の一部のようでした。舞台美術だけでなく、客席中に施された装飾は、よりいっそうこの舞台世界を完全なものにしていました。

ネタバレBOX

意思を持った者だけが、自分の望む明日を手に入れる事が出来る。

スロープの少女を救う為、地上に出た二人はいずれ革命を起こすのでしょうか? 目盛さんの命は救えたのでしょうか? 二人のその後がとても気になります。
夢も希望もなく。

夢も希望もなく。

月刊「根本宗子」

駅前劇場(東京都)

2014/01/10 (金) ~ 2014/01/19 (日)公演終了

満足度★★★★

あの繊細さを最後まで持続できれば
本作品では、登場人物の過去と未来が時系列に描かれるのではなく、舞台の下手上手に設置された同じ間取りの部屋で、同時並行で描かれます。つまり、同じ人物の過去と未来を、それぞれ二人の役者が、時にはシンクロしながら同時に演じるという、独特の手法がとられています。下手(10年前)での行動が、上手(10年後)にいかに作用するかや、登場人物の10年間の変化(もしくは変わらなさ)を同時に見つめるその手法は、ある時は未来の暗示のようでもあり、ある時は回想シーンのようにも見えます。「テレビや映画じゃ観られないものを作りたくて演劇をやっている」という、パンフレットの根本宗子の言葉通り、まさに演劇以外では成し得ない表現方法といえるでしょう。

舞台が二つに分かれている以上、観客の意識は常にそのうちどちらか一方に向けられていることになりますが、スポットが当たっていない方の舞台でも芝居は続行されます。その、台詞の無い「間」の部分に至るまで行き届いた細かい描写は、複数回観劇することでさらに気付くこともあり、作品の奥行きを増していました。何気ない台詞や所作の一つ一つまで繊細で丁寧なのもまた、根本宗子作品の魅力の一つでしょう。だからこそ、最終場面の、「今、私は~と感じています!」と、まくし立てるように半ば強引に纏めてしまう締め方は本当に勿体ない。あの繊細さを最後の最後まで持続できるか。そこだけは今後に残された課題なのではないかと思います。

次回作は是非、もっと大きな劇場で、もっと多くの人の目に触れて欲しい。これからも根本宗子作品は一作品たりとも見逃したくありません。

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