みさの観てきた!クチコミ一覧

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INDEPENDENT:2ndSeasonSelection / JAPAN TOUR

INDEPENDENT:2ndSeasonSelection / JAPAN TOUR

インディペンデントシアタープロデュース

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/08/04 (木) ~ 2011/08/07 (日)公演終了

満足度★★★★

eはやぶさ
谷屋俊輔×美浜源八

2003年5月に地球を旅立ち、あらゆるトラブルに見舞われながらも小惑星イトカワのサンプルを採取して、2010年6月地球に帰還して燃え尽きた人工衛星はやぶさ。そのはやぶさを擬人化して演じ彼の困難な冒険と地球のスタッフたちとの交流を描いた独り芝居。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

舞台に響く人工衛星を表現した効果音が絶妙。ひとり芝居の場合、やはり、音楽や効果音を最大限使用して表現した方が、観客の聴覚を刺激して満足感が得られると思う。やっぱりひとり芝居は演者に相当な演技力がないと、荒行を強いられる修行のようなものだ、とも思う。

そういった独りの空間を見事に演じていたと思う。惜しむらくはスーツ姿で演じるのではなく貴金属を現す衣装のほうが良かった気もする。

物語はひじょうに解りやすく人工衛星を想像させる表現力も豊だった。

INDEPENDENT:2ndSeasonSelection / JAPAN TOUR

INDEPENDENT:2ndSeasonSelection / JAPAN TOUR

インディペンデントシアタープロデュース

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/08/04 (木) ~ 2011/08/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

fいまさらキスシーン
玉置玲央×中屋敷法仁

あまりにも素晴らしい舞台だったので、順番は違うが先にUP.
もうこの戯曲は何度も公演されているので既に荒筋はご存知の方も多いと思うが・・、スポーツ万能、頭脳明晰な新入女子高生は国道をひた走る。入学早々であった先輩に心奪われつつも短い女子高生ライフをエンジョイすべく、恋に部活に勉強にと奮闘する。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

相変わらず、玉置の身体能力と筋肉に圧倒される。舞台上に登場した玉置女子高生は真面目なのか、不良なのか、はたまたアニメ的なのか解らない容姿で奇想天外な行動を表現する。

しかも、しゃべりはハイスピードな上にコミカルかつ爬虫類的な動きまで加味する。笑
爆走系青春悲喜劇だが、その爆走っぷりが、これまた玉置の超人的しゃべりでかまずに、これだけしゃべって魅せるのだから、あっぱれ!としか言いようがない。

楽しくも可笑しい狂人的女子高生!
INDEPENDENT:2ndSeasonSelection / JAPAN TOUR

INDEPENDENT:2ndSeasonSelection / JAPAN TOUR

インディペンデントシアタープロデュース

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/08/04 (木) ~ 2011/08/07 (日)公演終了

満足度★★★★

dスクラップ・ベイビィ
Sun!!×坂本見花

外見はそっくりなのに性格はまるで正反対の良く似た捨て子オズとアズ。二人は即興の物語を街で演じ日々の糧を得ていた。毛布代わりの新聞紙から言葉を広い集めながらオズは世界の成り立ちと隠されたアズの秘密に近づいてゆく。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

きゃわいらしいマスクと実力のある舞台だった。悲しいファンタジーもので、捨て子を乗せる列車の場面や労働として登録される場面は美しい童話の世界だ。

音楽導入、演出で魅せた。惜しむらくはオズとアズの声音が同じトーンのシーンがあったこと。それでも素晴らしい舞台だった。
INDEPENDENT:2ndSeasonSelection / JAPAN TOUR

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インディペンデントシアタープロデュース

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/08/04 (木) ~ 2011/08/07 (日)公演終了

満足度★★★

i或るめぐらの話
山田百次

戦後に飲んだメチルアルコールでめくらになった主人公の半生の語り。自暴自棄になり自殺しようとするところを助けられ、それから精神的に立ち直っていく再生の物語。

ネタバレBOX

津軽弁丸出しの方言での公演だった為に、言葉が解らない箇所があった。それでも、いくつかの聞き取れる言葉と、俳優の佇まいだけで人情劇を演じたが、やはり、完璧に観たいワタクシには少々の不満が残った。
INDEPENDENT:2ndSeasonSelection / JAPAN TOUR

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インディペンデントシアタープロデュース

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/08/04 (木) ~ 2011/08/07 (日)公演終了

満足度

h赤猫ロック
ヤマサキエリカ×戎田竜冶
ウエディングドレスで失踪する女、貧しくても明るかった我が家、家族の優しかった記憶、失われつつある原風景に訪れる悲劇を背に嬉しい日も悲しい日も走り続ける。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

説明どおりに、ただただ、30分間をウエディングドレス姿で走りながら家族の事を語るだけの舞台。まったくうねりもなく、これといって面白い展開もなく、ただただ走る。たいした演出もないくだらなさ。

これってどうよ?!観るのが苦痛で退場したかった芝居。きっついわ!
INDEPENDENT:2ndSeasonSelection / JAPAN TOUR

INDEPENDENT:2ndSeasonSelection / JAPAN TOUR

インディペンデントシアタープロデュース

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/08/04 (木) ~ 2011/08/07 (日)公演終了

満足度★★★

bマラソロ
加藤智之×山崎彬×伊藤拓
あれ?「最強の一人芝居フェスティバル」ってはずなのだけれど・・。
AV制作会社で働く童貞男のもとに、幼い頃から知っている隣の女子中学生が家出してくる。性欲と純愛の間に揺れる男。信頼と安心を隠そうとしない彼女の前で、はたして男はどう行動するのか・・。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

舞台上でオナニーシーンからオナニーシーンで終わる。苦笑!
「マラソロ」の意味はマラがちんこの隠語で、ソロが独り、だとか・・。
だから通してオナニーの意味だそうで、男がキモ満点で女子中学生とセックスしてる妄想を下半身とともに膨らますシーンを描写する。

いいのか、こんな猥褻な解説で!苦笑!

全体的に面白い芝居ではない。好みの問題なのだろうけれど、緩く普通な舞台。
「カリガリ紳士」+「ジュリアーノ警部2nd#2」

「カリガリ紳士」+「ジュリアーノ警部2nd#2」

劇団芝居屋かいとうらんま

OFF OFFシアター(東京都)

2011/08/05 (金) ~ 2011/08/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

終盤に起こるシリアスなどんでん返し
ひじょうに素晴らしい舞台だった。鉄橋下を根城とする一件ホームレスの男が、謎のノートを頼りにある事件を追う心理サスペンスだったが、屈折度の高い歪んだシリアスもの。この劇団は岐阜県から毎年、東京にやってきて年に一回の割合で公演するという。来年も必ず観たいと心に決めた。元)新宿芸能社で現)昭和芸能社の中山と高橋を観られて嬉しかった。

以下はネタばれBOXにて。。


ネタバレBOX

ある事件の張り込みの為に、電車の鉄橋下で暮らす刑事のレン。レンの手元にはいつ誰が何の為に置いたのか解らない一冊のノートがあった。そのノートにはこれから起こりうるレンの未来が書き綴られていた。ノートに引き寄せられるかのように、レンを中心に深く関ってくるホームレスらと同僚の刑事・山根。

やがてノートに書いてある通りに事が進むように登場人物たちが現われる。物語が進むうちにレンは暴力団・市川会と政治家・横田を利用する悪徳刑事で山根の妻・ミナに横恋慕する男のように描かれ、「ミナが自分の手に入らないなら、いっそ殺してしまおう」と決心する。またそのように思い込んでいたレンだったが、終盤に、精神病院にレンを見舞いに訪れた山根は狂人と化したレンに、「市川会と横田の内通者だったのは俺だ。それを嗅ぎつけたミナが俺を止めようとして事故にあって死んだ。」と耳打ちする。

しかし、自分がミナを殺したと勘違いして病み狂人となったレンは今も心の闇を抱えながら自分の妄想の世界で刑事として生きている。そこにはホームレスの仲間達と狂っているゴローが居る世界だ。だけれど現実の世界ではホームレスらとその他の登場人物の全てが狂人だ。ゴローは精神科医なのだった。

現実の世界では狂人でも妄想の世界では真逆なのだ。勘違いしながら生きるのも人生なら、どちらの世界が本当なのかも解らない。序盤に撒かれた伏線を終盤で見事に捩らせながらの回収だ。

ゴローの狂人ぶりも屈折した演技力も素晴らしかった。そうして脚本を書いた後藤卓也の物語りも素敵だ。終盤で狂人となったレン役もお見事だった。
前向きに生きようと思いながらも精神的に病んでしまう弱者の病巣の表現力も素晴らしかった。来年も観たい。

君の為にシジョウの円卓

君の為にシジョウの円卓

劇団総合藝術会議

小劇場 楽園(東京都)

2011/08/04 (木) ~ 2011/08/07 (日)公演終了

満足度★★★

宴会芸かと思った!
<宴の終わり>を観劇。正直申し上げて演劇レベルとかけ離れた宴会芸を観ているようで「失敗したな・・」と後悔する。観れば解ると思うが身内ネタの連打で、アドリブも身内ネタ。しかも舞台はコメディ調で演技力も上手いとは言えない軽さだ。終盤になってようやく、物語の伏線が繋がったものの、そこまで行くのに観客を引っ張る力が少々、弱い気がした。相変わらず、娯楽の姫君役の小坪快が美しい。笑) 俳優、小説家、映画監督で鶴のような名前の大鶴 義丹の父・唐十郎の娘である大鶴美仁音が今回の主役・由美だ。
当日パンフにはキャスト名しか載ってない。イマドキたま~に役柄を載せない劇団もいるのだ。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

由美は兄との許されない愛を進行中だったが、妊娠していることに気付く。兄にそのことを打ち明けるも兄は逃げ腰になり、由美と離れようとしたのだった。これを許せなかった由美は兄に危害を加えてしまう。由美の私情は空間を捩れさせ、闇の世界で蠢く妄想劇のような世界に入り込んでしまう。

その世界では由美一人の為に脚本を書き様々な役者が寸劇を打つが、これがどうにもこうにも、ぐだぐだ感が強くまとまりがない。まるで壊れて捩れたテント小屋の芝居を観ているよう。闇夜からピエロが由美を嘲り笑うシーンはこの舞台で唯一の妖しく美しい場面だ。そうしてピエロは「君の為のシジョウの円卓だ」とのたまうのだが、終盤にやっとこういった種明かしがあるのだ。ここまで来るのにめっさ、グダグダが長い、長すぎる。笑

物語をもうちょっと削ぎ落とししても良かったような気がするし、遊びすぎた感が強い。マンマミーアの歌はテキトーだし。笑
また弁護士役の野田の声が大きすぎる。大きな舞台向きの発声だ。克舌は素晴らしいのだから箱に見合った声で演じて欲しい。演技力は◎

会場がエラク煙草臭いのには参った!
ブループリントの岬

ブループリントの岬

ナマイキコゾウ

「劇」小劇場(東京都)

2011/08/03 (水) ~ 2011/08/07 (日)公演終了

満足度★★★★

人種差別を扱った作品
この劇団は初見だった為、どんな舞台を見せてくれるのか興味津々ではあった。結果、観て良かったと思える舞台だった。哲夫の叔父役の宋英徳の自然な演技力は流石!またリズ役の石塚理恵を久しぶりに観たが、相変わらずの存在感のある演技だった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

小説家・哲夫は韓国人として日本に生まれ小さな頃から差別を受けてきた。彼が4歳の頃に母親は父親の暴力に耐えかねて家出し、酒乱の父親はその後、自殺した。哲夫は両親から捨てられたと思い込み、彼らの遺伝子として自分の体にブループリントされた自分自身も好きにはなれず、屈折していた。

そんな彼を9年間支えてきた日本人女性で恋人の美恵子。これらを主軸に韓国人が日本で差別を受けながら生きるという環境をモチーフに、哲夫と美恵子の結婚、哲夫と母親の捩れた空間での出会いを綴った物語だ。

哲夫の母親が哲夫に会いたい一心であの世とこの世の狭間から会いに来た場面、時間の捩れが作り出す空間はやはり親子の密な情景で落涙した。ただ、笑いを取る為だろうが、美恵子を「ブス!ブス」と詰る場面が多く、人種差別を扱ったテーマなら、こういった差別行為や言葉はやはり慎むべきとも思う。

終盤、哲夫の叔父が放つ言葉の数々にジーン・・と胸打たれる。
全体的に序盤は大丈夫か?!と心配になるほど、舞台の空気感に馴染めなかったが、中盤から終盤にかけての物語のうねりは、時として涙を誘い、また笑いのネタの散らし方も絶妙で素敵な物語だった。
パール食堂のマリア

パール食堂のマリア

青☆組

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2011/07/29 (金) ~ 2011/08/07 (日)公演終了

満足度★★★★

昭和47年横浜港町のとある食堂
を舞台に描いた群像劇。この時代の横浜港町はワタクシには解らないが、たぶん、路地裏では犬や猫が徘徊し、米軍人を相手に如何わしいバーや大衆飲み屋やストリップ劇場などが盛んな色町と同居するように、高級とは言えない人々が暮らす下町の混在した香りのする街だと推測する。だとしたら・・・

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

今回の云わば整然とした人間臭い香りのしないセットにどうも違和感を感じてしまう。薄ぼんやりと照らす灯篭のようなライトや照明や天から下がった真新しいカラードアはあまりにも下町にそぐわない幻想的で優美なのだった。セット自体は本当に素晴らしいセットだと思うがこの物語には合わないセットのような気がする。

説明 には「なにもかもが流れ着く港町の片隅に、小さな食堂を営む一家があった。」とあるのだから、どう想像しても賑やかで猥雑な港町の風景しか想像できないのだ。また物語もミッキーや牧田のような黒い肌の混血児が望まれないまま生まれてしまうのだから、色町で起こる事柄や、港町の女たちが外人に強姦されて出来た子らだと考えると、やはりセットと物語が合っていないように感じた。

物語にパール食堂の近くで営業するオカマバーの店主・クレモンティーヌ、娼婦のメリーなどが登場する。今までの青☆組は家族を中心に温かな物語を綴ってきたが、「家族」から「町」に風景は広がったものの、最終的にはやはり家族愛を主軸に描いていたと思う。だから、姉が妹を詰るシーンは落涙し、姉独特の家族を思い遣る犠牲的精神と妹の性格との対比が絶妙だった。

また片乳を取ったユリの涙がバックライトに反射して煌めきながら落ちる粒の美しさに鳥肌が立ち、これに感動して泣かされた。泣き所は数か所あったが、こういった物語の構成ははやり見事だと思う。

横浜メリーを演じた木下裕子はワタクシの大好きな女優の一人だが、彼女はなまじ品がある為に、売春婦のメリーではなく、王妃のように感じてしまうのだから、生まれ持った品性というものは動かしがたいのだなと改めて感じる。

この物語に人間臭さや街独自のアジア的香りや下町の裏路地で匂ってくる酸っぱい匂いが混じっていたなら港町の群像劇としては傑作だと感じたがいかがだろうか?

青年団から独立した「青☆組」に荒井志郎, 福寿奈央, 林竜三, 藤川修二が入られたようで嬉しい限りだ。
東京モダンガールズ

東京モダンガールズ

おおのの

シアター711(東京都)

2011/08/03 (水) ~ 2011/08/08 (月)公演終了

満足度★★★★

コミカルな描写
もっと真面目な舞台なのかと思いきや、全体的にコミカルな演出だった。主軸は1911(明治44)年9月に『青鞜』が発刊されることになった経緯、また廃刊になるまでの経緯を綴った物語。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

自己の思想を実生活の上で嘘いつわりなく表現し、奔放に恋をして、22歳の時に“塩原事件”で世間を騒がせ、やがて作家として開眼。1911年、女性だけの手による文芸誌「青踏」が発刊され、ここで当時25歳の平塚らいてうは。「元始、女性は太陽であった」から始る文章を発表した。

「青鞜」は、青鞜社概則第一条「本社は女子の覚醒を促し」にはじまる力強い文言のもとに、当時の女性が抱えていた問題に正面から向き合い、自らの意見を社会に発信していった。当時一般的であった良妻賢母の思想に反する「青鞜」の出版は注目を浴び、賛否を交えて「新しい女」論争を引き起こしていきつつも、5歳年下の奥村との恋に溺れ、女として目覚めたのをきっかけに「青鞜」から離れ、伊藤野枝がこれを引き継いだ。しかし野枝自身も自らの不倫沙汰で波乱な人生を送り「青鞜」は1916(大正5)年の第6巻第2号を最後に無期休刊となり5年の歴史を閉じたのだった。

全体的な感想としては、コメディタッチで描かれていたので楽しく観られた。個人的には伊藤と姑・ミツのバトルが面白く、いつの時代も嫁姑問題が解決することはないのだ。ミツ役の吉田は、こういった役がハマリ役で絶妙だった。

結局薬局、“新しい女”の元祖だった平塚も伊藤も自らの恋によって、大義名分だった「青鞜」から外れ、ただの一人の女としての生き方を選んでいるのだから、日本の女性の在り方にさまざまな疑問を投げかけはしたものの、落ち着くところに落ち着いちゃってるのだ。笑

辻(野枝の夫)役を演じた江戸川の演技力に魅せられた。どちらかというと、辻の家族の情景にハマッタ!



花と魚

花と魚

十七戦地

シアターバビロンの流れのほとりにて(東京都)

2011/07/28 (木) ~ 2011/07/31 (日)公演終了

満足度★★★★★

仮想未来、そして回帰
開演前、丹念に当日パンフレットを熟読する。これを怠るとほとんどのお芝居の重要部分が見え難くなるからだ。しかし観客の中で当日パンフを見ようともしない観客のいかに多いことか。更には観劇後、椅子の上に置いて行ってしまうのだから、なんとも情けない。

さて、今回の舞台は序盤から引きづり込まれワクワクドキドキの連続だった。苦笑するような場面もあり、キャストらの演技力でも魅せられ、全体的な構成力、照明で更にサスペンス度が強まって終わってみれば桟敷童子のような、いやそれ以上の世界観だったと感じた。だから勿論、ワタクシの好みのど真ん中だったのだ。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

舞台は宮崎県の小さな漁村。干物や野菜が正体不明の怪物に喰い荒らされ、集落支援センター職員の妻・那美江がその怪物に手を噛まれた、と騒ぎ出す場面から始まる。こういった物語に引き込ませる手段が上手い。

これらの被害を止めるべく、漁師たちは怪物退治を主張する一方で、町役場の出先機関・集落支援センターは県のたてた野生動物保全方針に従い、怪物の調査・保護を主張する。対立する両者の打開策として民間の野生動物調査員・酒田が招かれ、どんな結論になろうとも酒田の決断に対して両者とも従うように、と釘を刺されるのだが・・。

酒田は怪物の調査・保護を結論付けるも、これに同調できない那美江と村人、漁師たちはまるで怪物たちが村民を喰ったかのような噂を流してしまう。この風評被害に揺れる村。しかし怪物たちはただただ、卵を産む鮭のようにこの村の生まれた川に戻ってきているだけだったのだ。

足の生えた古代魚を思わせる像、汐留教授のウイルスと遺伝子研究の結果、海を守る一族の子孫、「お神楽」と言われる蛭子神の神話を絡ませながら、村の罪と人の業を描いた作品だった。

終盤に、村民が魚に回帰して泳いで行ってしまうシーンと、怪物の正体が像として祀られているシーンは大自然を操る地球の意志のようにも思えた。そうして、終わりの時、地球の浄化が始まり、いつしか、丘には人間の像が現れ「丘には人間と言う変わった生き物がおった」と括られる描写はあまりにも素晴らしい。

宇宙の創生を感じさせる壮大にして静謐な物語で、日々の人間の営みを神が天から見下ろしてるような感覚にもなった。神話にはこういった描写が多いのだが、地球の再生はこうして始まった!みたいな幻の創世記だ。
蒼空~空どこまでも蒼く~

蒼空~空どこまでも蒼く~

演激集団INDIGO PLANTS

d-倉庫(東京都)

2011/07/29 (金) ~ 2011/08/03 (水)公演終了

満足度★★★★

散った英雄たち
この物語は過去に何度となく、他の劇団でも公演していたので観る機会に恵まれていた。福留食堂を主軸に描いていた劇団もあれば、片目弱視の特攻隊員・倉橋を軸に描いていた劇団もあった。それほどまでに有名な物語なのだ。

しかしだ、時は戦時中だというのに、今回の「蒼空」は平成のメイクばりばりのKAOROSEが狸メイクで濃い化粧のまま、演じていた為、その世界観に入れなかった。女優になにもすっぴんで演じろとは言わない。しかし演出家は時代に見合ったメイクの指導をしなかったのだろうか。


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

時は終戦間際。片道分の燃料と爆弾を抱え敵艦に体当たり攻撃を行った神風特攻隊らの今と彼らを支えた人々の物語。

キャストらの演技力は秀逸で殆ど欠点はない。特に倉橋を演じた藤田の生真面目さや悲壮感漂う演技力に感服したほど。しかし、女学生の初島が吐血した血の色はオレンジ色で、どうみても軽い。やはりこの場合、どす黒い血糊でいくべきだと感じた。ちなみに赤黒い血糊は下北沢で売っている。

更に特攻隊員と一緒に飛ぶ前田聡子のシーンはやはり、ありえるはずもなく、ここでトン引きしてしまう。それでも終盤の展開で倉橋が母と妹に逢うシーンは泣けずにいられなかった。重いテーマの中、西田と足立のコミカルなタッグは一時の笑いを誘うシーンで構成としては上手いと思う。全体的には上記の課題さえなかったら完璧に近い舞台だったと感じた。それだけに惜しいのだ。
愚鈍起承転浪漫譚

愚鈍起承転浪漫譚

シンクロナイズ・プロデュース

吉祥寺シアター(東京都)

2011/07/28 (木) ~ 2011/07/31 (日)公演終了

満足度★★★★

絵画のように美しい
舞台のひとこまひとこまの描写が絵画のように美しい。それはキャストらの配置と衣装、照明スポットの当て方が計算されているからだ。また姫路役の早川毅の演技があまりにも素晴らしい。相当な実力派だ。物語は劇中劇。会場は半分以上が空席だった。惜しいと思う。311の大震災以来、吉祥寺シアターが満席になることはなくなってしまったのだが・・。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

ある劇団を舞台に、ここの演出家・姫路を軸にして他の役者らの情景を綴った物語。
姫路は自分自身を「遍歴の騎士ドン・キショーテ」だと思い込んでいた。彼は余命いくばくもないが、妄想の世界で理想を追い求めて旅に出ることにした。劇団員達は彼の最後を華やかに見届けようと団結し、彼に合わせて一世一代の「お芝居」を打つことに決めたのだった。

「ドンキホーテ」の物語を「ドン・キショーテ」として演じ続ける姫路。彼に付き合って姫路を支えながら演じきる劇団員。現実と理想に苛まれる男のロマンを可笑しくも切なく綴っていた。これを劇団員や演出家が観たら相当、共感するだろうと思う。姫路を狂人だと言っていた劇団員自身も、この狂人的お芝居に参加し、デタラメを言って主人を信じ込ませ、ドン・キショーテの従者として従ってしまうのだ。

こうして劇団員らは姫路を最後までとことん劇的に騙し、今の世界は現実なのか、永遠に覚めない夢なのかも解らないまま、夢うつつでいられた姫路は本当に幸せなのだとも思う。一人理想を掲げても無力なのだが、こういった後押しする団結力こそが明日への大きな糧となる。

『どんな困難な状況にあっても、解決策は必ずある。救いのない運命というものはない。災難に合わせて、必ず一方の扉を開けて、救いの道を残している。』といったドン・キホーテ

この物語は「現代版ドン・キホーテ」だが、独特の滑稽さと美しさのバランスが見事な舞台だった。現代を生きるワタクシ達も、独自の滑稽さと美しさで生きているのだから、そう変わらない。
ヒューマンエラー

ヒューマンエラー

643ノゲッツー

OFF OFFシアター(東京都)

2011/07/28 (木) ~ 2011/08/02 (火)公演終了

満足度★★★★★

たった一つの汚点で空回る
今回の舞台はとにもかくにも本が素晴らしい。そして和太鼓を使った音響、トルコ行進曲なども。過去に起こしてしまった罪を題材に主人公の人間関係が崩れていくさまの描写はやはり現代社会が持つ残酷さだ。また全てのキャストらの演技力で舞台を盛り上げたし、主人公・松井役の伊藤毅が演じた何処にでもいるような平凡さはやはり秀逸で見事だった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

松井の部屋になにかと集ってくる同僚と友人達。彼らは松井に相談をしたり、頼みごとをしたりと身近な存在だった。ところがある日、松井の過去の犯罪歴を暴露した記事が掲載されてからは、この人間関係が崩れてしまう。今まで松井が積み上げてきたものが一気に崩壊してしまうシーンだ。

一方、松井の姉の不倫をきっかけに、姉の持つ闇までもが吐露されてしまう。これもそれも過去に松井が起こした暴行事件を理由に、家族が「犯罪者の家族」と罵られ加害者の家族が受ける被害の構図だ。松井自身は14年前に少年院に送られ罪を償ったものの、世の中というのは、中々その罪を許してはくれないものだ。

こういった経緯もあって松井は部屋に電灯を灯すことは避けてランタンを灯しひっそりと生きていたはずだったのだ。そんな松井は自分に関る人たちが不幸になってしまうのを嫌い一度は死のうと考えるも、思いとどまるのであった。

終盤にかけての松井の独白で落涙する。弱い人間も一生懸命生きている、という独白だ。人生に於いて一人でも理解者がいてくれるというのは生きる希望だとも思う。そうして松井は「これからは堂々としていよう。失敗しても堂々としていよう。」と部屋の灯りを燈すのだ。

風船を使った演出はこの舞台を幻想的に魅せていたと思う。そうして最後のトルコ行進曲はこの物語の悲哀を乗り越え、これからの人生の応援歌のように思えた。人生の影をさりげなく描写しながらも、その実、現実の社会を真正面から取り上げていたと思う。

ある意味、衝撃的で素晴らしい作品だった。
spelling09『縁の鵺(よすがのぬえ)』

spelling09『縁の鵺(よすがのぬえ)』

VARNA -The Another Words-

TACCS1179(東京都)

2011/07/28 (木) ~ 2011/07/31 (日)公演終了

満足度★★

練習不足
ワタクシの観た回は役者がよくカミ、とちり、そして出だしを間違え、更に全員でセリフる場面では合わずにバラバラだった。だから何を言ってるかが聞き取れないシーンもあり、折角の舞台が台無しだった。公演時間2時間20分という長さは本の削ぎ落としが甘かったように思えるし、キャストらの舞台レベルを考慮するとこの長さは無理だろ・・とも思った。

ネタバレBOX

舞台は「縁(よすが)」を中心に、多くの縁が生きていた時代、そして最後には一人になった経緯を表現しながら、それでも死を畏れる人々が最後に縁を頼るという物語だ。そんな奇妙な夜を背景に人間たちと帝都の闇夜に蠢く怪しい者達・縁の関係性を描いていたが、なんにせよ、とにかく「大丈夫か?」とワタクシが心配するほど役者らの口から吐き出されるセリフがカミカミ、ガチガチだった。その為、いちいち現実に引き戻されて妖しい世界感に入れなかった。

きっとこの舞台で記憶に鮮明に残るのは「ヤドカリ」 のお話だ。これが一番面白かったように思う。更に公演時間も長かったために本が完結にまとめられてなかったことと、観客を引っ張る力量が今回のキャストらには未熟だったことが舞台を酷く助長させていた。

次回はきっちり練習してから舞台に上がって欲しい。これは基本中の基本だ。
実験都市『ご来場ありがとうございました。』

実験都市『ご来場ありがとうございました。』

演劇ユニットG.com

劇場MOMO(東京都)

2011/07/27 (水) ~ 2011/07/31 (日)公演終了

満足度★★★★★

「滅びの都」からの再生
あまりにも素晴らしい舞台だった。どんなふうに褒めてもきっと足りない。物語は未来都市で生きる人々を扱ったSFものだが、舞台セットは椅子のみで殆どない。音響と照明、衣装とキャストらの演技力でもって、観客にそのシーンを想像させるという技。しかし、ワタクシには、風の吹きすさぶフカイの砂漠の真ん中にひょっこり現われた実験都市の情景が目に見えるようだった。またこの壮大な物語を書いた三浦剛の頭脳に改めて驚かされる。
序盤で撒いた伏線の回収も終盤できっちり掴み取る。主役は案内人(佐藤晃子)だったが、彼女の衣装はどことなく「風の谷のナウシカ」の旅人のようで、ひじょうにさまになっていた。また、案内人が肉の塊となるラストは一枚の切なくも美しい絵を観てるような芸術的シーンで泣きたいほど狂おしい場面だった。そうしてあまりの感動に泣けた。


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

実験都市の中で生かされている人々は全人類の幸福を実現するため、割り当てられた仕事に従事している。空には人工の太陽が輝き,この都市にある研究所がこの世界の中枢だ。この実験都市から裏都市へ案内人と共に亡命を決行する三人の男女が通ることから物語りは大きくうねり出す。

アルカージィが連れていたボーランドと呼ばれている者は、実験によって生み出された装置で、これは見た人によって切実な顔にみえることから、恋人だったり、娘だったり、母親にだって見えてしまうのだから、考えたら人々を崇拝させ世界を支配することだって出来てしまう存在だ。しかし、この者の使命は皆を幸せに導くという運命を持っていることから、他人の幸せを見て己の幸せを感じるという、云わば幸せの原点でもあるのだった。

一方、この実験都市と対極にある裏都市は既に滅びているのだった。そうしてこの実験都市も既に滅び行く運命なのだが、これを知っているのは案内人こと、マルガリータだ。彼女こそは何回も再生し、そして何回も落日の彼方に向かって歩く案内人だったのだ。

幸福の議論で、相対的な幸せと、絶対的な幸せの説明の構図が実に面白かった。またこの都市全体がアルカージィの書いた小説どおりに動かされてしまうというSFチックさも絶妙な面白さだ。結局薬局、人間は何処に居ても身近な幸せを求めて彷徨うのだ。そうしてやはり身近な幸せで満足し世界をみつめることが出来ないのも人間だ。しかし、ワタクシはこうしたちっちゃな蟻のような人間が好きで堪らない。

人々の思い出が消えてしまうシーンの放心状態の演技力はお見事だった。脇役は居ない。それぞれのキャラクターの立ち上がりも秀逸で見応えがあった。

ラストで繰り返す世界と繰り返されるマルガリータのくだりの展開は次に訪れる再生の場面も想像されて赤い太陽が眩しかった。やがて・・二人が家を作り家族を作り、町を作り都市を作ることから、人々の営みは始るのだ。

ここに関った全員に拍手を贈りたい。素晴らしいものを観ました。それは喜びです。



ミス・ユウ ~不在~

ミス・ユウ ~不在~

劇団アルターエゴ

OFF OFFシアター(東京都)

2011/07/21 (木) ~ 2011/07/26 (火)公演終了

満足度★★★

心温まるファンタジーコメディ
というキャッチだったけれど、コメディ的な要素はあまりない。どちらかというと心の再生のような内容。しかしながら今回はあまりインパクトがなかった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

それぞれの愛する人を失って心に闇を抱えた三人の女。しかしこの三人のうち、二人の女には彼女を愛し支えてくれる男が居た。そんな彼らが住む集合住宅に、ひょっこり現れた一人の旅人は彼らを癒す存在として扱われながら、三人の女たちは旅人に惹かれるようになってしまう。

一方で二人の男は今まで支え愛してきた女たちから振られる形になってしまう。そうなると今までのうわべだけでも平穏な日常を送ってきた秩序やバランスが崩れ、人間関係が崩壊してしまうのだった。

これを危惧した旅人はこの場所から出ていくことを決心する。そんな折、三人の女たちは、「いつまでも自分を甘やかして嘘の世界に逃げ込んでいた。まわりの優しさに甘えて利用していた。大人になれなかった自分から脱皮して本当の自分を取り戻したい。」と気づくのであった。

これらの物語に天使になりきれない不思議な白い猫を絡ませ、ファンタジーっぽく構成させていたが、全体的な構図は心の闇をどうやって解放していくかに焦点される物語だと思う。結果的に旅人は出ていって(逃げて)しまうのだから、案外、短絡的なのだ。

旅人が人間を癒す存在にも関わらず、女たちはその旅人に精神的に寄りかかり甘え、挙句に特別な好意をもってしまうところは旅人の善意の行為を利用した女たちの愚かさなのだが、こういった構図は精神科医と患者の構図に似ており、むしろ女たちの愚鈍さを強調したような作品だった。

舞台とはあくまでも虚構の世界のことなのだが、現実の人間は生きてる限り、どこかしら傷つき闇を持ちながらも、そこに触れないように、うわべだけは平穏に暮らしているのだと思う。それでも女が狂うほどに傷つくという光景にはちょっとした違和感を感じた。どちらかというと精神的に病むのは男性のほうが多い。女性は儚そうにみえても逞しいのだ。女だから言えることだが・・笑
ドラゴンハンター

ドラゴンハンター

劇団仲間

座・高円寺2(東京都)

2011/07/25 (月) ~ 2011/07/26 (火)公演終了

満足度★★★★

流石に楽しい!
夏休みだからか子供が多い。公演時間1時間にしてはチケット代3000円は高すぎる。庶民のワタクシとしてはイマドキな価格とは思えないのだが、価格設定に問題があるのではないだろうか。そのためか、客席は半分以上が空席なので、すごくもったいない!と感じてしまった。
さて、肝心の舞台は童心をそそるような内容。つまり、こどもでも大人でも、楽しめる。一番楽しめるのは大人になりきれない大人だと感じた。笑

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

ある日の夕方、康男と同級生の優樹は、忘れものを取りに放課後 の学校へ忍び込んだ。 教室にたどり着くと、そこには、ラマンチャ風の騎士が居た。「おれはドラゴンハンター、竜退治の騎士やねん。」 と何故か関西弁で話すのだった。笑

二人は信じられないものを観たように驚くも、騎士の話を聞くうちに、本当に火を吐くドラゴンが見えてきたのだった。ドラゴンと戦う騎士。その体験は不思議な出来事だったが、騎士の教訓的な言葉を聞いているうちに、優樹は昼間の教室で先生が宿題に出した「夢」への希望が現実味を帯びてくるのだった。

小学生ながら両親の離婚という現実に打ちのめされ、尚且つ、母親が不在がちになっておこる孤独感や閉塞感、将来への不安を、正義の騎士の登場によって、少しずつ歪んだ精神が矯正されてゆく。「相手の普段の行動から、その人の気持ちになって考えてみる。」という実にシンプルな課題だが、あの夜の教室で起こった出来事は確実に二人を変えたのだった。

優樹は次の朝、宿題を提出する。「私は竜退治の騎士になります。その為にトイレのスリッパを揃えます。」

あれから15年、康男は本屋の店員に、優樹は役者となったのだった。

ジェラルド騎士を演じた鎌田睦大の騎士っぷりが実に楽しい。コメディかと思ったほど笑った。流石にどのキャストも演技力にソツがない。いい年したオヤジが小学生役を演じるのだが、観ているうちに不思議と小学生に見えてしまうから、やはり演技力なのだろう。
5人とも歌は下手だ。歌はもっと勉強して欲しい。イマドキの小学生でももっと上手い。ゼンマイ仕掛けの人形が動くような演出は素晴らしかった。
また観たいと思わせる舞台だ。
FESTA-1000 ~フェスタ-サウザンド~

FESTA-1000 ~フェスタ-サウザンド~

しげっちん企画

SPACE107(東京都)

2011/07/21 (木) ~ 2011/07/25 (月)公演終了

満足度★★★★★

あまりにも素晴らしい!
黒木崎六九(劇団さるしげろっく)の本で一番好きなのが 「ZiN-Ki」だ。あの時も鬼物語だったが、今回も鬼物語だ。どうやら黒木崎はこういったあの世とこの世の狭間を書くのが得意なのかもしれない。更に個人的に猿山のぼる(劇団さるしげろっく)の演出が好きだ。この二人のタッグに今回の舞台でこれでもか!というほど魅了された。また鬼平を演じた
清水宏(炎の演劇部)、樹役を演じた白井悟(マーベルプロモーション)、菊乃を演じた丘崎杏の妖怪的な演技が光っていた。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

田舎町の封金神社を舞台に伝説の陰陽師「安倍道満(あべのどうまん)」の生誕1000年祭を町おこしとして祝うことになった。そんな喉かな町の風景に突如として現れた1000年ぶりに蘇った鬼たち。この鬼たちはかつて2000年前にも安倍道満が封印した鬼たちだったのだ。

いにしえの儀式として行われるはずの「生誕1000年祭」は安倍道満らと悪霊との1000年越しの因縁をかけた戦いとなってしまう。悪霊たちは人間どもの愚行を嘆き、負の強い人間の身体を乗っ取って憑依し操り、更に負のエネルギーを増大させてしまう。刹那的で脆い憎悪を持った人間こそを大好物にする悪霊たち。

鬼平に憑依された樹はまるで鬼平そのものになったかのように荒れ狂うのだが、この場面での二つの鬼の魂の壮絶さはお見事だった。更に鬼平(清水)のやりたい放題のアドリブの連発は相当面白かったし、清水の自由にやっちゃってる姿は他の舞台でも同様なので毎度のイベントなのだ。笑

安倍は悪霊たちに結界を張りながら実体のない怨霊を閉じ込めその魂を葬り、うつつの世を浄化させて己自身もあの世に戻るのだが、現代に生きる町民らの様々な物語と蘇った魂を交錯させながらの舞台描写は実に楽しく見応えがあった。メイク、衣装、音響、照明、舞台構成、どれも秀逸で見事なまでのプロっぷりだった。特に音響ではキャストがセリフる場面に音量を少し下げる作業は綿密だったと思う。

今回の舞台は大いに笑い、妖艶たる鬼っぷりに度肝を抜かれ、時空を超えたロマンに酔いしれ、全体的に美しく楽しい舞台だった。大満足で満たされた。

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