なしかの観てきた!クチコミ一覧

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はたらくおとこ

はたらくおとこ

阿佐ヶ谷スパイダース

本多劇場(東京都)

2016/11/03 (木) ~ 2016/11/20 (日)公演終了

満足度★★★★

初日観劇
阿佐ヶ谷スパイダース20周年、本多劇場34周年の誕生日な初日祝日に観劇。
10年前はまだ青年で通用してた人達も今は立派な中年だけど、機敏な動きは変わらず。渡英前のギラついた?時代の長塚作品。
12年前の初演の時とは日本の事情も変化し、話が進むにつれ、結末の受け止め方が違う事を自覚してしまうが、ヒステリックなコメディでもある狂騒っぷりな出来事の泥沼にはまっていく様はやっぱ好き。
約140分。

ネタバレBOX

最後のアレは以前だったら「産業廃棄物」で理解したが、2016年の今はどうしても「放射性物質」のなにか、に見えてしまうんだな。
かもめ

かもめ

東京芸術劇場

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2016/10/29 (土) ~ 2016/11/13 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2016/11/04 (金)

劇場のサイズが大きすぎるような…
つい最近、ケラさん演出でコクーン版の同作を見たな〜と思っていたら、それが3年前だった事に軽く驚く。ケラ+コクーン版と比べると幾分落ち着いた、現代感覚で喋った今回の「かもめ」といった印象。

ネタバレBOX

もしもロシアの小劇場で人気劇団が日本で公演したら〜みたいなアングラ劇団舞台のような可笑しみが出ていたが、昔のロシアなのに現代的な世界観。恋愛抑鬱な若者達と達観した大人達の二分化されたような舞台というか。
オリエさんのアルカージナと圭くんのトリゴーリン、単体だと腑に落ちる人物像なのに、2人揃っていると恋愛関係というよりパトロンの関係のような(もともとそういう狙いの設定なんだろうけど)やや違和感。
三つに連なる布が頭上から垂れ下がっており、ほかはステージの端にピアノ、奥にはキャストが座る椅子など。そこに寝そべったり座り込んだり、で照明もあまり明るくなる事はなく、台詞の発声法もやや聞き取りずらくと、この演出に対し劇場が大きく過ぎて、観る距離感があった。


調べたら、今回の「かもめ」は04年にtptで上演されたものと同じ翻訳者と演出家だったので、それに近かったのかな?
役者さんは今作に合ってて良かったんだがなー。
遠野物語・奇ッ怪 其ノ参

遠野物語・奇ッ怪 其ノ参

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2016/10/31 (月) ~ 2016/11/20 (日)公演終了

満足度★★★★

プレビュー日観劇
奇ッ怪 其ノ参、という事で、其ノ壱が小泉八雲の怪談を基にし、其ノ弐は能と狂言を取り入れ話を考えていたそうだが、震災を経て、非日常が日常になった世界を描いていたと記憶している。

今回の其ノ参にあたる主軸は柳田文学の遠野物語、そこから派生した田舎の信仰心や事柄を作家が語り部的に話すが、話していく内に語り部にあたる人物もその都度変わっていく。
言い伝え=伝承の複雑さに、一度見ただけではすぐに理解は出来なかったけど、この世界観は嫌いではない。
プレビュー初日の観劇だったが、今後も舞台は更に変化し、伝承していくのでしょう。
約2時間。

ネタバレBOX

東北の御国言葉(方言)に民話、日本の昔話要素と、生と死が間(はざま)の立ち位置に現代(少し昔の昭和?)の世界が入り交じる為、イキウメ的な異世界話がお好きなかたはやや混乱するかも、ってそんなん思うのは私だけだと思う。
治天ノ君【次回公演は来年5月!】

治天ノ君【次回公演は来年5月!】

劇団チョコレートケーキ

シアタートラム(東京都)

2016/10/27 (木) ~ 2016/11/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

2日目観劇
初演観劇済みだが、劇団の持つ質の高さを確信した一作。初演時の感動をが忘れられず「再演」の一報を目にした時から観劇日を心待ちにしていた。また感想をあげるのも蛇足のような気もするが、すでに観劇済みの皆さん同様、今回も感動したのは確か。
初演の駅前仕様の舞台セットから、少し広めのトラム仕様になった(がセッティングにはあまり変化ない)事や側近の所作など多少の変更はあった気もするが、場面の改変などはあまりなかったような気がする。

天皇一家の家庭劇、と例えるのも変だが、与えられた運命の重さに身構え、フィクションでありながら、さながらノンフィクションの舞台を見ているかのような錯覚。奇しくも前回と同じ場面から涙がつらつらと。
話の重厚さから身体の芯から硬直しそうになるが、見飽きる事なく物語の中に入り込ませた話の巧みさに、140分近くがあっという間に過ぎる。良舞台を見せて戴き、感謝。

全体を見たい場合、上手側からの観劇が良いかも。

るつぼ

るつぼ

Bunkamura

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2016/10/07 (金) ~ 2016/10/30 (日)公演終了

満足度★★★

言葉の暴力が招く不信感
新国立版観劇済み。座って見てるだけなのに、緊張感がありすぎる展開にそれを緩和するような場面もあまりなく、終演後には物語の硬質さにグッタリ。つまらない、というわけではない、緊張の途切れない舞台で集中して見られたのは、やっぱり見せ方が上手かったのかな。
同じ作品を見ていたつもりだが、新国立版が女性の視点なら、コクーン版は男性視点といった感じ。イエスの神様とその宗教観が生まれた時から骨身に沁み付いている国のことだから、信念を貫くこと、それこそが17世紀の正義だったんだろうけど、そんな世界観が背景にあるのに、どことなく現代世相も透けて見える。

固定化されたセットの中で俳優が演技しているだけなのに、オランダやイタリアの印象派絵画を鑑賞している気分になり、脳内が勝手に美の巨人の解説の声が聞こえてきそうな錯覚も。衣装や美術がこれまで見た海外戯曲作とは雰囲気が違い、この作品にあって良いなーと思ったら演出家同様、本家イギリスのかたが担当されてた。それも一因か。

ネタバレBOX

女子集団心理の行動から弾かれ、疎外感を味わう恐怖って思春期に女子クラスを経験している人は特にくるもんがありそうな話。
プロクターはレベッカおばあさんと一緒に刑に処せられるが、浮気許さずの姿勢を貫き、こうなることを予想して、あの場でああいう風に仕向けたのなら、エリザベスも大した女、っつーか、こぇ〜女だなっ。いや、嘘をついたことのない、正直な女の優しさが招いた嘘だと思いたい。
でも、あそこの村人達はあのような結果になってしまい、その後は村民同士で疑心暗鬼で暮らすハメになって、最終的に滅びるのでは。

黒木アビゲイルは、少女というより幾分大人びて見えた。溝端ヘイルは研鑽を積んだ牧師にしては少し若すぎるような。
あたま山心中 ~散ル、散ル、満チル~

あたま山心中 ~散ル、散ル、満チル~

近藤公園・平岩紙 二人芝居

駅前劇場(東京都)

2016/10/12 (水) ~ 2016/10/19 (水)公演終了

満足度★★★★

2日目観劇
中通路なし、壁際までほぼぎっしりの満員御礼客席。
照明ある天井にまで這うような巨大な桜の樹、日本語として触れた事のある童話「青い鳥」と古典落語「あたま山」が絡み、次々と変わる2人の演技。
狂気と清濁な間柄に、観ている者の深層心理を更に深みにハマらせるようなシュールだけど幻視的で清らかな舞台でした。
当日パンフ、感想アンケートなし、約95分。

青

ツチプロ

OFF OFFシアター(東京都)

2016/09/21 (水) ~ 2016/10/02 (日)公演終了

満足度★★★

好き嫌いの分かれそうな話
再演だけど初見、
演出が千葉さんということでチケット確保。
どちらかというと苦手な分野な展開でした。

弁明

弁明

文学座

文学座アトリエ(東京都)

2016/09/07 (水) ~ 2016/09/21 (水)公演終了

満足度★★★★★

相手に理解されるのに時間がかかる弁明
多分70年代前半と思われるが、その華々しい時代背景のアメリカン気質というかフェミニズムや反戦運動にのめり込んでいた女性も美術史家となり名声や友も得るも、自分の家族となるとそう上手くはいかず。対面に置かれた美しく輝いていた過去写真と小さな老女の対比の無情さよ。

舞台「弁明」の戯曲を書いたのは映画「黄金のアデーレ」を書いたアレクシ・ケイ・キャンベル。映画見てないので、今度見よう。

クレシダ

クレシダ

シーエイティプロデュース

シアタートラム(東京都)

2016/09/04 (日) ~ 2016/09/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

俳優の気品を感じさせる舞台
1630年代、2本の丸い柱や舞台上の木造バルコニーに扉、舞台中央の奈落部分から役者が出入りするなど、たぶんその当時に繁栄していたグローブ座を彷彿させる舞台セットに、そこでシェイクスピア劇を上演しているバックステージが舞台。
かつての名優シャンクがスティーブンを身振り手振りで指導する姿はさながら男子版「ガラスの仮面」の一コマのようだったが、それを受ける少年俳優達の成長過程がお見事。その平さんと対等に演じられる若手俳優さん達の熱演の凄さにも感嘆。
最後の場面のシャンクの表情、あそこまで悔いの無い人生を送れるかはわからないが、でも最期にあの表情を見せられるのは舞台役者としては素晴らしい人生の幕引き方なのでは。
劇中からわかったものだけだと「ロミオとジュリエット」「ハムレット」「リチャード3世」などなどのセリフが聞かれたが、あくまでさらっと、極自然な流れで発せられるので、そこらへんも古典文学エンタメ演劇作品を見ているようで、先日亡くなられた蜷川さんにも捧げられたような上質な舞台でした。

原作者のニコラス・ライト氏の名前は今回初めて見聞きしたが、このかたが他にどんな作品を書いているのか知りたくなった。
権利関係の都合もあると思うが、映像として残すべき舞台なのでは、とも思った。

ネタバレBOX

高橋洋さんが経理のディッキーと寝取られ男の2役をされたが、まさかここでフォルスタッフ風の洋さんが見られるとは!タイトルロールの一部「トロイラスとクレシダ」や、その他の劇中劇のようなものも見たかったが、ある意味、あの場面が劇中劇のそれに近かったのかな。

シャンクを慕う少年俳優のグーフィー、トリッジ、ハニー。少年俳優が女性役を演じ、またその役を愛せるお芝居好きの若人、そこへスティーブンが出現したことで、思春期特有の人間関係の揺らぎが出てきたり、俳優としてのプライドや葛藤があったりして。また若手俳優の組合やライバルの劇場との駆け引き、若干のBL風味も感じつつ、若手組の人間ドラマの展開も面白かった。


テレーズとローラン

テレーズとローラン

地人会新社

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2016/09/09 (金) ~ 2016/09/19 (月)公演終了

満足度★★★★

心理の根底にある怖さがむき出し。
凸型のステージ配置、舞台に映える灯りはかなり控えめ。場面が切替るごとにメリハリの効いた色使いの衣装と次第に分かっていく会話、オープニングから衝撃が走る展開だが、この逆回転なやり方は演じる方も上手い人達だから出来る見せ方なんだなーと。
母親の存在感、愛情が破滅へ向かうまで、脳が痺れるような舞台だったけど堪能。
今は亡きベニサンピットで上演されていたような舞台気分になった。面白かった。
約90分。

DISGRACED ディスグレイスト 恥辱

DISGRACED ディスグレイスト 恥辱

パソナグループ

世田谷パブリックシアター(東京都)

2016/09/10 (土) ~ 2016/09/25 (日)公演終了

満足度★★★

演者は良かったんだが
生まれて育って暮らしている地では、人種に宗教などが多様過ぎて受け止める度量も大きかったら、この人達の幸福ももっと違っていたのかなぁ、と考えてしまうのは温い育ち方をしている日本人だからかな。時折訪れる静寂すら重い。
難しい。舞台劇として何かが足りないような気もするが、それが何なのかよくわからん。
海外で高評価された戯曲だけど、どこかの舞台で見たような擬似感もあって、最後まで展開に入り込めなかった。
約105分。

あなただけ元気

あなただけ元気

箱庭円舞曲

ザ・スズナリ(東京都)

2016/09/08 (木) ~ 2016/09/15 (木)公演終了

満足度★★★★

※画像はイメージです
チラシ写真から家庭劇と勝手に想像し事前情報はスルーしていたが、予想を覆す感想を目にしチケット確保。
舞台となったこの会社も夜遅くまで灯り点けて仕事してたんだろうが、現実社会でも遅くまで灯る明かりが目につく、数多の貴社は大変なんだろな。
個人的に会社組織が海外に及ぶような職種につく事はなく、想像の範疇ではあるが多少誇張が過ぎる場面もあったように見えた。しかし、この手の職場あるある舞台は好きだ。
悲しいかな、観劇日には空席も多かったが、宣伝の仕方をもう少し考えたほうが良いのでは。また、なるべくなら現役の会社員に観てほしい舞台と勝手に思った。
面白かったです。
約2時間。

Vamp Bamboo Burn 〜 ヴァン!バン!バーン!〜

Vamp Bamboo Burn 〜 ヴァン!バン!バーン!〜

劇団☆新感線

赤坂ACTシアター(東京都)

2016/08/17 (水) ~ 2016/09/18 (日)公演終了

満足度★★★★

ステージ映像のクリアさにも感嘆。
笑いと歌と役者などなど、全てが並列に楽しめる舞台は新感線ならでは。
ジャンボタクシーの歌詞がやたらと気になる中年世代、夫に聞かせてやりたい。
今回も衣装は伊賀さんが担当だったが、黒霧島と赤霧島のツートップのスーツ立ち姿がカッコ良かった。
ヒメ京次郎さんは、いつか沙霧役やってくんないかなw
面白かったです。

ネタバレBOX

血に飢えたら劣化ゾンビまがいの形相やら、それらにまつわる展開に宮藤さんの作風だな、とも思ったが、転性を繰り返していったのちの愛情が、強烈な憎しみに変わっていくような戦いの構図が判明すると、徐々にテンション高くなり気がついたらいつも通りの新感線舞台だった。
欲しくってもスムーズに手に入れられない事が永遠に続く運命って辛いな。
ヴァンパイア対エイリアン
Vamp/吸血鬼にしてビジュアルバンドボーカル
Bamboo/かぐや姫だけどエイリアン
Burn/好きになったら炎上
いいタイトルだと思いますw。
家族の基礎 ~大道寺家の人々~

家族の基礎 ~大道寺家の人々~

森崎事務所M&Oplays

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2016/09/06 (火) ~ 2016/09/28 (水)公演終了

満足度★★★

2日目観劇
展開が動く毎に舞台も回る廻る、この話の基盤が家族の元である「家」ならば、そのセットの見せ方もリカちゃんハウス並みの可愛さ。
テレビや映画で活躍してる著名俳優が出ているので、その辺も舞台初見者には受け入れやすそうなキャスティングに、デートムービーならぬデートで見るには最適なロマンティックかつ気持ちよい笑いを巻き起こす雑多なホームコメディというか。
いかにも小劇場なチームの活躍が面白く、不条理抜きにした、かつて上演された「審判員は来なかった」や「鎌塚氏」シリーズみたいなバランスのよい倉持舞台でした。
休憩15分込み、約2時間50分。
公演始まって2日目のマチネだった為か、劇場内の2階座席に空席が目立っていたことが残念でした。もっと宣伝頑張れ。

八百屋のお告げ

八百屋のお告げ

グループる・ばる

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2016/09/01 (木) ~ 2016/09/05 (月)公演終了

満足度★★★★★

面白かった!
真空圧縮袋とラーメンとそのブログが恋しくなる、名作落語かと思うような舞台。役者も盤石のウェルメイドコメディ。
つい♪鬼のパンツは〜と口ずさみそうになるあの歌が挽歌にならずにホッとするが、よくよく考えてみれば、言うだけ言って、とっととお遍路行く八百屋のオヤジひでぇ。
チラシの文面とチラシ絵のモデルは、その八百屋のオヤジの風貌と話し口調なんだろうな。
笑って泣いて、笑って劇場を後に出来る素敵な舞台だった。

宮本武蔵(完全版)

宮本武蔵(完全版)

Age Global Networks

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2016/08/19 (金) ~ 2016/08/29 (月)公演終了

満足度★★★

チョンマゲ抜きの現代セリフ
劇場着くまで前田、慈、廣太郎イメージしか覚えてなかったので、ロビー内の女子率の多さにあれ、これ五反田団だよな?劇場間違ったか?とアウェイ感を感じたの私だけでいい。
吉岡一門後〜巌流島直前までの話だが、決して吉川英治の小説やマンガ「バガボンド」などでは味わえない、ユルく何かに翻弄されながら、生きる意味を考えるようで考えてない武蔵像、とでも言えばいいのか。

幕引きには最後までいた登場人物2人が礼し、その後のカテコも特になく客電ついたが、前田さんらしいちゃ、らしい、〆方。

第一幕では展開の行方に面白さもあったけど、二幕の展開は自分が見落とした部分があるのか、やや散漫なまとめに思え、惰性で生きてる武蔵像にしか見えなかった。
そのためか舞台全体もいくらか簡素にも思えたが、この話の内容には劇場が綺麗で少し広すぎたのか、小劇場みたいな密着感があったらもっと違う印象を持ったかも。
この武蔵だったら、のちに五輪書を書くにしても誰かの下書きを勝手にコピペして世に放ってても平然としてそう。
映像綺麗だった。

ネタバレBOX

今時風に例えるなら腐女子BL風味というのか、衆道をイメージする場面も(ほんとに極々だけど)あるが、最近の若手のイケメン俳優さんはなんでもやるんだなぁ、と感心。いや、それが仕事なんだけどw。
いま、ここにある武器

いま、ここにある武器

風姿花伝プロデュース

シアター風姿花伝(東京都)

2016/08/13 (土) ~ 2016/08/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

葛藤
10年ほど前に発表されたイギリス戯曲が、2010年に俳優座劇場で「兵器のある風景」として上演されて、今回の風姿花伝版では翻訳と演出、演者、邦題を変えたもの、らしい。

一歩違えばノーベル賞ものの貢献になるとこなのに、哀しいかな、いざそれを発揮出来るとなったら武器としての抑止力かはたまた殺傷力の効能か。出演者が4人だけど、2人芝居で進行する場面も多いが演者の巧みさと会話の面白さ、話の進展にあっという間に世界観にのめりこめた。
前方席で見ていたので舞台上のパソコン画面がよく見えたが、設計図面が手まり柄みたいで綺麗だった。

ネタバレBOX

エンジニアが開発したものは新兵器として例えても良いような製品だった。それによって得るもの、失うものはお金だったり、名誉だったり、身近な愛する人たちだったり。
真に迫った台詞のやり取りの濃密さとバトル、暗闇からの圧迫感に見ていてくたびれもするが、実に面白い。
極めて私人であるエンジニアの事情だったのに、世界を相手にしてしまう怖さにやや戦慄。

仕事が出来る女なのに、なぜ万年筆じゃないんだろ?安物に見えるボールペン使ってるんだろう、と思っていたら、ああなるほど…と腑に落ちる場面あり。あの着メロは彼女の可愛さポイントだな。
年を取っても兄弟ケンカは側で見てると滑稽で呆れもして面白くもあるが、終盤のあのシリアス場面でバールのようなものが出るとは。

確か、初めての仮チラシの段階では「ここにある武器」だったと思うが、「いま」が追加することによって、2016年の世界を考えることにもなるいいタイトルだな、と思ったり。
傑作な舞台でした。
ヒトラー、最後の20000年~ほとんど、何もない~

ヒトラー、最後の20000年~ほとんど、何もない~

キューブ

本多劇場(東京都)

2016/07/24 (日) ~ 2016/08/21 (日)公演終了

満足度★★★★

久しぶりに見たナンセンスな芝居
要所要所要所(3回言うのが大事)で洗練されたナンセンスが襲いかかってくるので客席にいても油断ならない。
もう出演者の衣装がブリーフから紙オムツに変化しても、なんら違和感なく成立しそうな舞台。役者の巧みさに笑えるやら呆れるやら、でも演劇的な描写もあって、例えるならケラさんメソッドというのかな。
「奥様〜」同様、今回もアラータ、アルジャーノン、神様の3人は鉄板の登場。冒頭の映像は今回もカッコ良い。
ブラックユーモアとナンセンスに徹底したプロの本気度が伺える、贅沢すぎる中身のない内容、観客は楽しんだ者が勝ちのような舞台でした。
休憩なし、約140分。

ネタバレBOX

一応、筋はある。当たり前だが。
第二次大戦中にタイムスリップした、探偵兼弁護士のアラータ(3人の人格を持つ)と助手のアルジャーノンと時々腹話術の人形。どういうわけかヒトラーの大量虐殺を阻止するようとすることになるが、そこに日本人の男と黒人の親子や屋根裏で隠れているフランク家が登場して、アルジャーノンとアンネの恋愛関係とかも入っちゃたりする。あと、神様とかも結構大事なんだけど、一緒にデタラメっぷりを炸裂している。
タイトルに使われてるヒトラーに対するブラックユーモアは少し薄めに感じたが、この手の風刺劇というのか、お笑いや演劇はめっきり目にしなくなったので見終わったあとは心地よい疲労感しか残りませんでした。チケット代と交通費を無駄にしたとは思わないよw。
レディエント・バーミン

レディエント・バーミン

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2016/07/12 (火) ~ 2016/07/31 (日)公演終了

満足度★★★★

光るゴミ
前回の白井+一生+〜の「マーキュリー〜」は観劇日に私用が生じたため観られず。今回の舞台も翻訳劇だし洋楽曲使用しているし、映像化は難しいんだろうな。
それにしても、光るゴミとは良い例え。若夫婦とセールスレディしか出ないのに、終盤、怒涛の展開で見せる巧妙な演技に釘付け。多少、演じ分けの切り替えの難しさも見えたが、面白かった。筒井康隆の読後感というか。
大事件後の観劇だった為、意気消沈に陥りやすい場面もあったが、まぁこれはお芝居だから!と頭を切替えて見た。
日本と海外での、家を持つ認識の違いを把握していないと違和感は生じるかもしれない。
舞台上には白い背景、そこに色々と映し出されるが、舞台と客席を一体化させた巻き込み型舞台で面白かった。

ゴーゴーボーイズ ゴーゴーヘブン

ゴーゴーボーイズ ゴーゴーヘブン

Bunkamura

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2016/07/07 (木) ~ 2016/07/31 (日)公演終了

満足度★★★★★


舞台の2階部分に邦楽集団「綾音」の皆さんが整列、その中央にはおなじみの伊藤ヨタロウさんが正座して長唄を吟じる。これがまぁ、お上手なこと!その歌詞に合わせて物語りは進行するが、口では助けますよ、という割には案外無責任な日本とその世界情勢が垣間見えるような、複雑夫婦な間柄で他人にはわからない残酷模様かと思いきや。登場人物たちの運命が苦しく辛く、グロくて、でも笑えて、取り巻く環境はかなり辛辣だけど、各々の愛情がジワジワと胸の内に浸出してくるような(松尾さんご自身で戯曲本のあらすじで書かれていた単語の)エレジー舞台でした。
役者さん達もみんな素晴らしかったし、おもしろかったです。

ネタバレBOX

異国の砂漠の土地であっても、政争に勝とうが負けようが、圧倒的な力が介入していれば、終わったあとには粛正が始まる。中東やヨーロッパでのテロやら聖戦、何処かの国でやっているらしい人身売買、女性蔑視に性差別…きりがないくらいの言葉が思い浮かんでは消える複雑さ。トーイが死後、自ら椅子になることを望むのは、それによって天国に逝けるという願望でもあるのかな。だからって聖戦という名の下に、自爆テロを起こされても困るが。

遠い国で起こる紛争には対岸の火事の出来事で、と傍観していたら、いつの間にか、その渦中に入り込んでいた日本人というワードは現実世界で触れるようになったが、宣伝文句の「ボーイズラブ」に意識がいってしまったせいか、当初はそちらの方を見過ぎており、話が進んでいくうちにそれは永野の些細な片思いに見えてきた。永野の妻、ミツコの嫌がりながらも「夫婦だから」「会い(助け)に行く」という行動は突飛な行動でもなく、2人の間柄を思ったら、むしろ合点がいった行動と思った。
八木さんであって、死後、山羊に転生する世界では、疑問は考えず思考は停止する。セリフの中で「自由がない安全」や「夢を見ない気楽」だったか、そのようなことを発するが、生け贄となるヤギの存在に永遠の罰を与える(だったと思うが)聖書の「異教の排除」を思い出したりして。

PPMの「花はどこへ行った」だと思うが、その音楽も爽やかだけど、実は心寂しく壮大過ぎず、あの場面に適して聞こえた。
現地通訳ワギーの岩井さんがかなり良かった、松尾さんの舞台にあんなに似合うとは。今後も松尾さんの作品に出て欲しいなー。
音羽屋さんの時々キャタピターだわ、ねじ式だわ、和服で踊りまくる姿には、生まれ持った技巧の凄さなのか可愛げがありつつ凄さも感じた。
ほか、大人計画の役者さんたちは安定していましたが、特に村杉さんの上手さが抜きんでて見えました。

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