りいちろの観てきた!クチコミ一覧

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エアスイミング

エアスイミング

カリンカ

小劇場 楽園(東京都)

2024/02/28 (水) ~ 2024/03/03 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

翻訳劇ではあるのだろうけれど、それを忘れてしまう人物の抱く想いの生々しさがあった。

観ていて訪れる日々のタイトさに加え、観終わって浮かび残る彼女たちの人生への思索がある。一過性ではない俳優たちが紡ぐものの見応えに感心。

新ハムレット

新ハムレット

早坂彩 トレモロ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2024/03/22 (金) ~ 2024/03/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

太宰治の原作が青空文庫で読めるとは事前にきいていて、でもw最初だけ齧ったところで観劇。ハムレットは何度か観たことがあるけれど、この作品への予備知識はほぼ持たずでの観劇だった。

ネタバレBOX

始まりから惹きつけられる。冒頭の男の語り口が観る側を太宰の紡ぐ視座に導き、中に招き入れられ、そこには既知のシェイクスピアの世界を型紙にしつつ新たな質感の物語が解けだし、自然に新たにその顛末を追いかける。名シーンたちの語られ方がかなり違って感じられたり、既知の人物間の関係のメリハリが滅失していたり、新たな距離で描かれていたり、でもそれが違和感とならずにとても親しみやすく感じられることに繋がれていく。照明にも、回り舞台が編む場面の移ろいの美しさにも目を奪われ、これまでに観たものとは違う人物たちの見せ所に繋がれて、ボリューム感がありつつ時間があっという間だった。

冒頭からの語り口に染められたとはいえ、前半はやっぱり昔ながらのハムレットとの比較で観ていた。でも気が付けば、この世界が醸すというか、なんだろ、シェイクスピアの筋立てに対峙するのではなく、ハムレットの世界を受け取る自然体のようなものに浸された感じがする。新たなハムレットの世界の満ち方だとも思った。

これはもう一度観たいなぁ。俳優たちにしっかりと世界を渡されていてなんだけど、過去の記憶に縛られず、舞台にあるものをその語り口のままにもう一度味わいたい気がする。
いちごオレ飲みながらアイツのうわさ話した

いちごオレ飲みながらアイツのうわさ話した

ロロ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2017/03/04 (土) ~ 2017/03/13 (月)公演終了

満足度★★★★

シリーズの四作目、今回同時上演された他のシリーズと物語が同じ空間に綴られていくことを観る側に感じさせるしたたかな仕掛けが随所にあって・・・。

その膨らみと、訪れるものの立体感と、だからこその時間のリアリティと磨かれないリアリティをもったルーズさと、想いの渡され方がありました。

このシリーズ、続きがすごく楽しみです。

遠くから見ていたのに見えない。

遠くから見ていたのに見えない。

モモンガ・コンプレックス

BankART studio NYK 3C gallery(神奈川県)

2017/03/18 (土) ~ 2017/03/19 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/03/19 (日) 15:00

相変わらずの遊び心を力いっぱい演じることにも惹かれる一方で、
後半、作品を作り上げていく過程を描き出していくその姿には
観ていて震えがきました。

美術などにも、豊かにラフな研がれ方を感じる。
見応えがありました。

際の人

際の人

文月堂

阿佐ヶ谷アートスペース・プロット(東京都)

2016/10/04 (火) ~ 2016/10/09 (日)公演終了

満足度★★★★

こういう語り口だからこそ描きうる凡庸さ
気負わずに観ることができて、素敵にラフな物語の展開や踏み出しもあって、ドキッとするような色香も差し入れられて・・・。
でも、そうして描き出されるものが、やがてフォーカスを定め、ステレオタイプにならず、しっかりと、実存感をもって、ある意味凡庸な登場人物の生きる感覚を浮かび上がらせることに惹かれる。

こういう、どこかコミカルで、遊び心をもち、ちょっと緩めななかに、キャラクターが抱くものがぶれずにクオリティをもって、削ぎ出されていくのは、実はとてもしたたかだとおもう。

こういう語り口でなければクリアに描きえないであろう凡庸さの肌触りを、あっと驚くリアリティとともに受け取り、素敵に得心させられてしまいました。

ネタバレBOX

冒頭に編まれる「有言不実行」のありようが物語の基礎になっていて、いくつかのエピソードがそことの重なりや対比となって歩むことで、終盤には描かれるキャラクターの肌触りが死んでも変わらないみたいな感じとともに、とてもビビッドに浮かび上がってきました。

それは、多分正攻法で役者がひとりで描こうとしてもなかなか表現しえない感覚なのだとおもう・。
さまざまな貫きを持った人物たちや主人公と同じ匂いをもつ女性を配したその先だからこそ、初めて観る側が感じうるものであった気がします。

斬新さはなく、ちょっと古風な手作り感満載のお芝居なのですが、その世界から歩みだしてくるものが、やがて息をのむほどにしなやかな実存感として残る。

こういう作り手の表現力は、地味ではあっても、じつはなかなかに巡り合えないものだし、貴重だと感じました。

ちなみに初日の観劇でしたが、回を重ねるにしたがって、この凡庸さの実存感は更に際立っていくような予感もありました。

カタナデッドオアアライブ

カタナデッドオアアライブ

AnK

Neuro Cafe(東京都)

2016/09/10 (土) ~ 2016/09/10 (土)公演終了

満足度★★★★★

前回とは真逆の表現の歩み
昔の講釈のごとく、回を重ねて物語を紡いでいく。初回は痛恨の見逃しだったのですが、2回目を観て、紙芝居のような語り口と壁の向こうの平面的な表現の態に、物語が膨らんでいくことに驚愕。それが、今回はまた異なり、まったくちがく質感で物語が刻まれました。

いやぁ、予想とはかなり異なって、でもそのことも含めて、ほんとおもしろかったです。

ネタバレBOX

昼夜2回の公演、
どんなに詰めても20人もはいらないであろうスペース、
その中央の、ラフに扇型に作られた場所で
紡がれる物語は、ちょっと魔法のように思えた。

3人の演者が、語りで物語を紡ぎ、身体の歩みで時間を刻み、所作や、距離や、絶妙な呼吸で、空間に大きさや質感を編み上げていく。
ちょっとした小道具なども使われ、凄く緻密に作られたラフさもあって、観る側に一瞬ごとのシーンが流れ込んでくる。
しかも物語の顛末がちゃんと律儀に残る♪

観終わって、物語のシンプルさと、それを観る側に組み上げるための
多層的な表現の積み上げが、表現としてこの上もなく豊かなものに思えた。

来年初めの4回目で完結だそうですが、こんどはどんな形で作り手が仕掛けてくるのか。
1日限りの公演なのでしょうが、これは見逃せないと緊張感すら感じました。
SQUARE AREA【ご来場ありがとうございました!】

SQUARE AREA【ご来場ありがとうございました!】

壱劇屋

王子小劇場(東京都)

2016/04/06 (水) ~ 2016/04/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

関西弁Verも観たかった
動きではなくタッチですっと引き出すような彼らが作る壁のしなやかさに一気に引き込まれ、様々な動きの創意に目を奪われたが、作品自体の一番の勝因は、物語を解いていく歩みのバランスの良さではないかと思う。

関西弁での上演もあったようだが、観に行くことかなわず。言葉が編むさらにふくよかな奥行きの予感があり、至極残念。

是非に東京で定期的に公演を打っていただきたい劇団がまたひとつ増えた。

ネタバレBOX

舞台上のちょっとした精度にはまだ研がれる部分を感じつつ、初日のアフターイベントで紐の扱い方を劇団員が改良する姿を観て、作品自体の完成度の高さをさらに歩ませる力がこの劇団にはあることを実感。
しかもここからの進化は足し算ではなく掛け算で舞台にある種のグルーブ感を与えていく予感があり、今後が楽しみになりました。
K.U.N

K.U.N

月刊「根本宗子」

BAR 夢(東京都)

2015/12/29 (火) ~ 2015/12/30 (水)公演終了

満足度★★★★★

ペラペラな重さを表現する作り手の力量
公演の大楽を。実は大楽にイベントがついていることを知らずに予約した罰あたりなのですが、トークを聴くことができたのもよかったです。

まあ、見方によっては非生産的で軽い世界でもあるのですが、キャラクターたちにとっては人生を賭するほどに重大なことであることが、舞台からガッツリと伝わってくる。そこには、作り手と彼女とともに世界を紡ぐことに長けてきた役者達ならではの個性や底力を感じました。

こういう軽重のギャップというかペラペラな重さが牽引するビビッドさはこの作り手しか描きえないものだと思う。

大きなハコでの公演などをみるまでもなく、、このベクトルは作り手の作劇の引出しの一つに過ぎないことは十分に理解しているそのうえで、作り手のこの語り口の先におとずれる世界をぜひに観たいとも思いました。

ネタバレBOX

今回の公演で、強いて気になった部分を上げるとすれば、自転車を漕ぐマイムですかねぇ・・・。
結構ばらついていて、そのばたばたぶりは面白いといえば面白いのですが、でも、その身体の動きが物語の推進力というか突抜け感を丸めてしまっていたように思います。
出来ないことはしょうがないのだろうけれど、きちんと説得力のある身体の使い方をしてた役者さんもいるので、そこは他の役者も踏ん張って合わせたほうがよいかと。

コンテンツにすごく良い方向に似合わない演劇的なクオリティを役者たちがすでに舞台に立ち上げ満たしてしまっていたので、そのルーズさが妙に目立ってしまっていたようにも感じました。
ただいま

ただいま

劇団こふく劇場

こまばアゴラ劇場(東京都)

2015/12/19 (土) ~ 2015/12/23 (水)公演終了

満足度★★★★★

様々な表現のこなれた使い方
様々な表現がさりげなく使われて、でも気取ることなく、登場人物の日常が描かれていくことがとても興味深かった。

その日常がとてもよくこなれていて、だからこそ、人生の非日常が大上段に振りかぶることなく、その歩みの一歩として訪れるような感触もあって。

やんわりと深くとりこまれてしまいました。

ネタバレBOX

開演後すぐに板張りの舞台に、足袋を履いた役者が能の所作で膝を曲げて歩み出してきたときには、何が描かれるのかと身構えてしまいましたが、その印象がすっと人々のリアルな日々に解けていくことに、拍子抜けしつつ感心したりも。

ひとつずつのエピソードとその歩み出しが、とてもこなれた様々な表現とともに、大仰になることなく、でも確実にそこにあるものとして伝わってきました
海の五線譜

海の五線譜

青☆組

アトリエ春風舎(東京都)

2015/12/05 (土) ~ 2015/12/14 (月)公演終了

満足度★★★★★

新しい血の力
作り手の紡ぐ時間の透明感は今回も健在で、それゆえに浮かび上がる心の揺らぎや因果の係りのようなものにも強く惹き込まれました。

その一方で客演の役者が新たな血を流し込んだような印象も残る舞台でした

ネタバレBOX

FUKAIPRODUCEには劇団員が以前に客船したりもしていて、繫がりもあったのだと思いますが、今回日高さんの醸すものがとても良い意味で劇団員が踏み込まなかった感情の汚れのようなものを編みこんでいたように思います。

そのことで、時間の質感が、より物語から観る側がリアルに抱く感触に近いものに感じられました。
ドアを開ければいつも

ドアを開ければいつも

演劇ユニット「みそじん」

atelier.TORIYOU 東京都中央区築地3-7-2 2F tel:03-3541-6004(東京都)

2015/12/24 (木) ~ 2016/01/12 (火)公演終了

満足度★★★★★

それぞれの家族
シーズンごとに役者を変えながら年間を通してのロングラン公演。梅雨のころ、盛夏の頃に観て、今度は師走の公演。
戯曲も季節に合わせて絶妙にディテールを変えながら、なによりも役者の異なりが、その家族の色に変わっていくことが面白い。

同じフォーマットを供する戯曲に内包された企みが、役者達によって同じ筋立ての異なる豊かさに解かれていくことに強く惹きつけられました

ネタバレBOX

みるたびに四人姉妹のそれぞれの個性に加えて、登場しない父母の人物像までが導かれる戯曲のうまさに感歎。

それが、単に役者達それぞれの演技にとどまらず、それぞれの色の重なりのなかで、家族の肌触りとなり、翻ってその中にキャラクターそれぞれの個性を映えさせていく。

公演としては四季を一巡したそうで、この先どこまで続くのかはわからないけれど、長女、次女、三女、四女、役者ごとのそれぞれの描かれ方とその重なりの異なりを見続けることでの豊かさにも更に惹かれました。


消失

消失

ナイロン100℃

本多劇場(東京都)

2015/12/05 (土) ~ 2015/12/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

ラストシーンにまたもや凌駕される
初演も観ていますが、今回のほうが混沌がなくすっきりと物語が歩んでいく印象がありました。

とはいっても、ラストシーンの印象は強烈、物語をより明確に受け取ることができた分、強く鋭く時間の喪失感に突き刺されたような気がします。

ネタバレBOX

そのラストシーンの、この世からいなくなった人々が去ったあとの影の鮮やかさと残された人々の表情がしっかりとそこまでに語られた物語の重さや軽さで焼きつくことに、知っているはずなのに初演時同様息を呑みました。

洗濯物展覧会

洗濯物展覧会

くによし組

新宿眼科画廊(東京都)

2015/11/27 (金) ~ 2015/12/02 (水)公演終了

満足度★★★★★

観る側が抱く枠をすっと乗り越えてしまう
出演者の方の何人かは他の舞台で拝見したことがあるのですが、団体としては初見。

観る側の展開に観る側の感覚をすっと乗り越えて訪れる感覚があって、それが不思議でありとても魅力的で、食い入るように舞台を見つめました。

なんか、とてつもなく面白かったです。

鵺的第一短編集[全日程終了・ご来場ありがとうございました]

鵺的第一短編集[全日程終了・ご来場ありがとうございました]

鵺的(ぬえてき)

新宿眼科画廊(東京都)

2015/12/18 (金) ~ 2015/12/23 (水)公演終了

満足度★★★★★

かみ合わないのに
登場人物たちそれぞれの抱くものや想いがなにひとつ噛み合っていないのに、その閉塞感や行き場のなさの先に、観る側を満たすものがあって心を惹かれました。

表層の事象の面白さ、それを紡ぎ上げる役者の緻密な演技を堪能しつつ、その奥にある繋がりのようなものに惹かれました

ネタバレBOX

ベクトルがばらついても、愛情の形や対象はちがっても、誰かを想うことの禍々しく御しがたいコアの感覚がしっかりと残る。

観終わって暫く、その余韻に浸りこんでしまいました。
橙色の中古車

橙色の中古車

FUKAIPRODUCE羽衣

こまばアゴラ劇場(東京都)

2015/10/30 (金) ~ 2015/11/01 (日)公演終了

満足度★★★★★

アラフォー女性の歩みの感触に瞠目
前半は離婚直後のアラフォー女性のはじけ方が恐ろしくビビッド。それが後半、ロードムービーの世界に歩みだすと、作品が彼女自身の歩んだ道と重なっていくことに目を瞠った。

役者の身体と台詞を一元化して観る側に供するその表現力のすごさに改めて感歎。

ネタバレBOX

終盤、サイドブレーキを外して、車が海に入り沈んでいく情景が、ひとりの女性の佇まいに重なる終盤がとても美しく、切なく、でも凛として、がっつりと捉われた。

ラストシーンで、南極に行っちゃうという一言に、生きていく彼女の少々収めきれないアラフォーパワーを感じて、それがまたこのうえもなくビビッドに思えた。

舞台全体を使って、身体の動きを研ぎ、それに引きずられることなく台詞を差し込んでいく役者の力は圧巻。

出色の一人芝居だった。
くろねこちゃんとベージュねこちゃん

くろねこちゃんとベージュねこちゃん

DULL-COLORED POP

王子スタジオ1(東京都)

2015/08/26 (水) ~ 2015/08/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

こんどの猫はしなやかな筋肉質
何年か前にアトリエ春風舎で初演を観ています。
そのときには作り手や役者達がいろんな手さぐりをしながら作品の爪をとぎ、観客を招いている、いわば子猫の印象もあったのですが、今回の猫は筋肉質。

難解さはまったくなく、誰もが舞台の世界にすっと導かれるような平易さや上質のウィットもあり、その一方で、場ごとにもれなく様々な彩でのクオリティが作りこまれていきます。

シーンのひとつずつにくっきりとした意図があり、そこに血液を送り込む場の鼓動や歩みがあり、それをひとつずつ支えるストラテジーを感じるミザンスの作り方があって。初演と比べても、エピソードが滲みなく高い解像度をともなって観る側に入り込んでくる。

家族劇でもあるのですが、不要なべたつきがなく、冷徹でもあり、でも存在するコアのぬくもりが滅失しているわけでもなくて、解け出してくるものに息を呑み、その歩みだしのシニカルさと暖かさの織りあがりにも心を捉えられる。
演劇をあまり観ることがない観客から、観劇経験の豊富な観客までを、それぞれに満たす間口がある舞台だなあと思う。

もたれない軽質さに身を委ねているうちに、シーンの記憶やキャラクターが抱くものや、物語の顛末にがっつりと満たされておりました。

「捨てる。」終演しました!

「捨てる。」終演しました!

エビス駅前バープロデュース

エビス駅前バー(東京都)

2015/07/26 (日) ~ 2015/08/05 (水)公演終了

満足度★★★★★

同じ戯曲の一味もふた味も異なる世界
従前に観たものと同じ筋書きに設定が少々変っていて、
それが舞台に新しい面白さをかもし出していくことに感嘆。

見応えがあったし、新しく面白かったです

ネタバレBOX

最初のエピソードは女性のいとこの年齢設定が上下からタメに変っていて、そのことで、女優二人のがっぷりよつでのお芝居が現出する。

二つ目のエピソードは姉弟が兄妹の設定に変っていて、それぞれが担うものや、東京の質感に新しい感触が生まれていた。

戯曲から引き出されたそれらの新しい面白さにもがっつりと嵌りました。
蜃気楼ト走るハイバネトランチ

蜃気楼ト走るハイバネトランチ

ハイバネカナタ

新宿眼科画廊(東京都)

2015/07/24 (金) ~ 2015/07/29 (水)公演終了

満足度★★★★

企てに満ちたラフさとふれ幅
入場してからの、どこか気楽な場の空気、
開演してからも暫くはまとまらないシーンが続く。

でも、それがふれ幅となり、観る側をぐぐっと引き込む引力が生まれる。

チープでラフな部分がそのまま物語のインパクトや密度に翻ることに目を瞠りました。

ネタバレBOX

冒頭から暫くは、物語うまくまとまって感じられないし、
台詞の意味もすっとは伝わってこないし
噛み合わない部分もあって。

でも、よしんばそうであっても、役者たちのお芝居がしっかりとしていて、
とりあえず観る側を信じさせるに足る力があって、
前半を見てしまう。
すると、それが3人姉妹の日々に繋がり、
距離感となり渡された台詞にも意味が生まれ、
前半に置かれたものが舞台の質量に翻っていく。

作り手の企てが見えると、ダンボールの小道具も
シーンの重ね方も、会話の切り出し方も
とても強かだと思うし、
役者達の、ロールに対してのへたれない貫きを感じたりもする。

ラストの、登場人物たちの家族であることのありようを
観る側に得心させる作劇の力に感心。
終演時には、それを支えた役者ひとりずつの個性も
とても魅力的に感じました。
僕の中にある静けさに降る、騒がしくて眩しくて赤くて紅い雪

僕の中にある静けさに降る、騒がしくて眩しくて赤くて紅い雪

天幕旅団

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2015/07/09 (木) ~ 2015/07/13 (月)公演終了

満足度★★★★

ファンタジーを纏った今を想起
細かい部分はいろいろとあるのですが、良く構成されていたし、作品には観る側をその結末まで引っ張り切る力がありました。

ネタバレBOX

白雪姫の枠組みを根底から覆すことはありませんでしたが、一方で現代の家族や心を病むもののありようへの寓意を込めた作品であるようにも感じました。

シンプルな小道具での表現などもしっかりと機能していたし、動きの速度などにはニュアンスを織り上げるためのしたたかコントロールを感る部分もありました。
ただ、場に役者が作る密度が音楽をかぶせることで平板になったり、ひとつずつの台詞にも、物語の描こうとするものを際立たせるためのもう少しの精度があればと思う部分もあってあって少々もったいない気がした。

作品には白雪姫という既知の物語を観る側にとっての新しいニュアンスとともに供する力があったし、役者達の身体の使い方にしても、会話の織り上げにしても、意図は理解しうるのです。
でも、その世界の内外を逆転させ、ロールそれぞれが抱くものを観る側に理屈ではなく感覚として晒すためには、役者たちがその身体や台詞で刹那の肌触りや空気の濃密さを更に高い解像度を維持しつつ編むことが求められているように思う。それは、前述の音の使い方とか美しい場面の言い回しの凡庸さでもあり、役者達の台詞の小さな抑揚の抜け方だったり、舞台の外の所作のミザンスだったりもするのですが、舞台に描かれ語られるべきことはもっと強い浸透力で訪れるべきものであるようなするのです。

物語を観客に繋ぎとめラストシーンまで導く力を感じつつも、白雪姫の物語と現代が重なる時、それぞれが互いの世界にボーダレスに入り込み、組みあがり、膨らむためには、研がれるべき要素がまだいくつか残っているように思えたことでした。









もっと超越した所へ。

もっと超越した所へ。

月刊「根本宗子」

ザ・スズナリ(東京都)

2015/05/09 (土) ~ 2015/05/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

面白さを組み上げる骨太で繊細な仕掛けたち
ラストシーンをずるいと思わせることなく、
それを「超越」として観る側を得心させる舞台の底力に凌駕されました。

ほんと、面白かったです。

ネタバレBOX

4つの部屋の物語のどれにも、絶妙な塩梅での語り口のバイアスがかかっていて、それぞれの色ですっと観る側に訪れ、大雑把な事実関係と刹那を作りこむ繊細な表現が、そこに暮らす男女の印象を少しずつ広げていく。
観る側に其々の世界が、雑になることも、重くなることも、抱えきれなくなることもなく置かれ、それぞれの世界の異なる質感に交じり合うことなく取り込まれていく。

そうして、作り手の世界観が観る側にも定まったこと上で、時間を動かし、物語をきゅっとひねって、キャラクターたちに別の光をあて、それぞれの個性を描き出していく。
その企みには、一時の思いつきではないしっかりとした意図が裏打ちされていて、骨組みが歪むこともアイデア倒れになることなく、それまでの、表層のイメージの先にしなやかな厚みと風景が生まれ、従前のシーンの記憶とリンクする新たな気づきが訪れる。
だからこそ、再び戻った時間でのロールごとに異なる閉塞や行き詰まりに理が生まれ、概念でなく観る側の行き場のなさにまで歩みを進めラストシーンの超越へと突き抜けるバネになり、観る側を凌駕してしまうのです。

あのラストシーンをずるいと感じさせないのは実は凄いことで、観る側にロールに抱かた想いが吹き飛ぶことなくついてこないとないと成り立たないことなのだと思う。役者たちがその力を解き放ち4人ずつの男女の異なる個性を導くことができる戯曲の仕掛けを随所に感じ、観終わって高揚感の中でも霧散することのない物語の骨組みの確かさに舌を巻き、観終わってと引きこまれたその「超越」感に更にはまってしまったことでした。

思い返してみれば、これまでの作り手の公演もいろんな超越に溢れていたのですが、今回は、これまでの、その世界までたどり着いたことへの簡単に加えて、ここから何が訪れるかの期待がより大きく膨らみました。
作り手がこの「超越」で至った場所はたどり着いた場所である以上に、新たに作り手が様々な作品をt紡ぎ出すスタートラインの姿のようにも感じられたことでした。

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