ルドンの黙示 公演情報 ルドンの黙示」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.6
1-5件 / 5件中
  • 満足度★★★★★

    壮大なテーマでしょう。
    初めて新国立劇場小劇場に行ったけれど、本当に素晴らしい空間ですね。
    とにかくどの席からも見やすい。
    前の席の頭が気にならない。あれならメットを被った人が目の前に座っても怒らないです。。


    で、芝居。

    いあいあ、思っていた以上に素晴らしい作品でした。
    この作品はルドンが作り上げた小説が軸になっています。

    ルドンの死後、今度はルドンの母親が未完成だったルドンの小説を受け継ぎ、書き続けます。



    以下はネタバレBOXに。。




    ネタバレBOX

    ルドンの死を自分の責任だと感じていた母親もルドン同様、「この世の終わり」をテーマに不幸な小説を書き続けていましたが、精神疾患で入院中に、ある担当医のお陰でその闇から開放されます。

    そうして閉ざされた心が開放された母親は「世界の終わり」から「終わらない世界」を書けるようになります。


    少年ルドンの小説から母親が書いた小説に沿って演じられた芝居です。

    それから、役者の衣装が素敵です。
    そしてそして極めつけはかりんさん奏でる二十五弦箏の幻想的な調べと、玉井夕海さんが歌う繊細で透き通るような美しい声です。

    この響きを聞いただけでここに来てよかった!と感じさせてくれます。

    上演前、この音楽に合わせてキャストが軽快にダンスするシーンがありますが、こちらもひじょうに素晴らしい。
    観ていてパラダイスな気持ちになるのでした。。




    さて、物語は世界を支配する帝国シハージャと辺境の国ドレ、虐げられる民・カソーミの3者の戦争と『世界の終わり』を書くルドン少年をリンクさせながら進みます。


    シハージャの将軍ケアルガ(篠田光亮)は世界を支配する為には殺人という手段を選ばない方法で強大な大国を保って来ました。
    ところが、その妹でシハージャの次期女王・マリア(満島ひかり)はそんな兄に疑問を感じ「身分の差のない、分け隔てのない世界」を夢見ます。それに共感するドレ国の家臣イズワル(川口覚)と恋仲になりますが、将軍ケアルガの策略によりイズワルは怪我を負ってしまいます。
    その看護に尽力を尽くしたカソーミの族長のマレア(安川結花)とも恋仲になります。


    やがて戦争は激化し、ドレと虐げられた現状を打開しようとするカソーミが手を組み、シハージャと全面対決の様相になるも、将軍ケアルガの巧みな罠と策略で暗転します。


    一方、マリアは戦争と言う現実の中で可愛い純粋な女性から帝国シハージャの冷酷で残忍な女王へと変貌してしまいますが、その悪魔のような変貌ぶりが美しいです。
    残忍な美しさ!
    圧巻です!
    セリフ回しといい、表情といい、ゾクゾクしました。
    実力のアル演技派です。
    可愛いだけじゃないです。
    素晴らしい女優です。


    「人間は一人一人違っているもの、身分の差、生きた環境の差を埋める事は出来ない!」と言い放ち、シハージャへ反乱するものすべてを取り押さえ、秩序を乱すものは処刑するよう命じます。
    更に、世界を支配する者は二人もいらない。と将軍ケアルガを殺してしまいます。


    場面は変わって・・・ルドン(柳浩太郎)の死後、小説を受け継いだ母親は希望に目覚め「終わらない世界」を書きます。

    それによって、死んだはずのカソーミの族長のマレアが生き返りますが、この場面、甦りの演出がとても美しく素敵です。
    ライトの演出効果と二十五弦箏と歌が絶妙でした。


    場面から他の場面へ移行する展開がスピーディで間がありませんが、逆に間の無い空間の持っていき方が上手いです。
    更に、「今はこういう場面です!」といったナビゲーター付きなのでひじょうに分かりやすい。



    一つ残念だったのは役柄に見合った年配のキャストが居なかったこと。
    重厚さを演出する為にもそれなりのキャストを起用して欲しかった。



    ルドンの母親を演じたキャスト・・・ひじょうに素晴らしい演技でした。
    地味な演技でしたが表情が素晴らしい。


    今回は脇役はいません。
    全員のキャストが素晴らしかった。。



    物語の密度もルドン少年の『世界の終わり』から時は始まって『終わらない世界』に繋ぐという完成された脚本でした。



    本当に素晴らしい舞台を観ました!(^0^)
    ブラボーーー!!!




  • 満足度★★★★

    観応えあり。
    想像以上、って言ったら失礼かもしれませんが、中心にアイドル的キャストを据えてるという点を差し引いて、おもしろく観られる作品。テーマとしては壮大で、扱いようによっては手に負えなくなるリスクも背負いながら、あえて素直に自分の持つ感覚にしたがって描く世界には共感できます。作者の持つその感覚、迷い悩んでもその過程を提示するという姿勢に引き寄せられました。

    ネタバレBOX

    この世界の受け止め方が、ある意味不器用でもあるけどすんなりなじむものでもあるんです。それぞれの立場で持たざるを得ない正義のあり方。それを否定も肯定もせず、その正義を抱かざるを得ない哀しみや切なさを丁寧に描いています。

    その世界観に俳優がついていっているかは、少し別の話としておいといて。
  • 満足度★★★★

    シンプルで深く美しく・・・
    新国立劇場小劇場が、これほどまでに高く、広がりを持っていると感じたのは初めて・・・。

    それは舞台美術の力でもあるのですが、同時に物語のスケールがそう感じさせてくれているのだろうとも思います。

    人間の根源を見据えたような、見事な作品でありました。

    ネタバレBOX

    三重構造の物語でしたが、語り部の導き方が実に秀逸で、すうっと物語が入ってきました。

    しかし、コンテンツとしては実に重たい物語でもあります。
    個人の内心から世界観にかかわるところまで、人間の原罪を考えさせる内容でありました。

    でも満島・安川をはじめ、役者たちの演技が、その重さに潰れることなく、しっかりとテーマを背負いきっていて・・・

    戯曲的にも、演出的にも、さらに良くなる余地はあると思うので、評価として満点にはしませんが・・・、現時点でも十分出色、しかし再演があれば、さらに優れた作品になる可能性を秘めた、作品でありました。
  • 満足度★★★★

    重いと言うよりはむしろ重厚
    終末が近づいた世界で、書いた小説の内容が現実となる少年ルドンのストーリーと、遥か未来、かつての支配層と下層民がそれぞれ種族として分かれている世界での物語が併行して語られ、やがて第3の物語が現れた時にそれらがまとまる、というスタイル。
    終末が近かったり、種族間・種族内での争いだったりで、トーンはやや重めながら、重いと言うよりはむしろ重厚な感じ?
    「予言」に逆らおうとしながら結局予言通りになってしまうという流れはギリシア悲劇を思わせるし、「黙示」という語句や、救世主的な存在がいて最後に奇蹟が起こるなんてあたりで聖書を想起させるのでなおさら。
    また、場が変わる時に状況説明(ト書きじゃなくて指定された台詞だよね?)が語られるのもわかり易くてヨロシイ。

  • 満足度

    ・・・何がしたいのだろう。
    テーマもわかる。画家オディロン・ルドンから取ったであろう題名。

    魅力的な35人の出演者もわかる。


    だけれども、全く何も伝わらない。

    35人の出演者を捌けていない。



    この演出は、生きていること、人間を舐めている。

    そう感じてしまった。140分。


    何がしたかったのだろうか?


    新国立劇場クラスはクオリティに対してある程度『保障』というものがあったのだけれど(値段の面でも)それが崩れるのを感じた。


    好きな小劇場の役者さんも出演なさっているのに、残念。


    (沢山思うところがあり、以下ネタバレBOXへ)

    ネタバレBOX

    最初から最後まで駄々すべって終わってしまった感じ。


    主役級のカップルふたりが全く意味を成していない。

    そのせいで音・光・殺陣、全て素晴らしいのに、お互い殺しあってしまっていたように感じる。

    脚本も蛇足が多すぎて、困惑する以前に疲れて諦めてしまう。


    柳浩太郎君演じるルドンは、流石の存在感。

    赤のテーマカラーの悪役?だったシハージャの一団は、満島ひかりさんを中心に他の演者に比べ段違いの完成度だった。

    彼らがメインでいいと思うのだが。

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