脱出前夜 公演情報 脱出前夜」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.7
1-7件 / 7件中
  • 満足度★★★★★

    バス停と線路
    登場人物全員に共感するものがあり、観ている私も否応なしに揺さぶられる。
    誰もみんな後悔しているし、希望を持ってはその分挫折している。
    弱いダメダメな人間同士が幸せになろうともがく姿が愛おしい。
    無駄の無い台詞と、役者陣の緊張感あふれる応酬が素晴らしい。
    バス停と線路といういわば“人生の点と線”が、巧みな設定となっていて効果的。
    アフリカン寺越、橋本亜紀、末廣和也の安定感が光る。
    他の役者さんたちもキャラがくっきりしていて魅力的。

    ネタバレBOX

    バス停のそばには建設途中の線路がある。
    その先には観光の目玉となるはずの滝がある。
    だがバス会社の社長の“鉄道を走らせる”という長年の夢は、
    大雨による滝の崩落により、とん挫している。
    その線路を見下ろすアパートの2階に住む時生(アフリカン寺越)と薫(土屋咲登子)、
    ある日二人は言い争いになり、薫が窓から飛び降りて半身不随になってしまう…。

    トラックの運転手をしながら小説を書いていた時生は、
    後悔の念に苛まれながら介護の日々。
    介護士を目指していた薫は介護される立場になり、ますます感情的になる。
    バス会社の社員鳴神(橋本亜紀)は
    介護に疲れて母親を施設に入れたことで自分を責めている。
    薫の元カレで彼女を捨ててアパートを出て行った小山田(末廣和也)は
    怪しいセールスを転々としながら自分を見失っている。
    そんな中、市の職員蟹江(河内拓也)だけは、滝の復活を信じて
    もう一度鉄道を走らせようとしている。

    みんな現実に溺れそうになりながら苦しい呼吸をしている感じ。
    現実を変えたくても、身体は言うことを聞かないし、向き合う相手も思うようにならない。
    その閉塞感が痛いほど伝わってくる。
    それを打破するのは、淡々と信じることを積み上げる蟹江のような行動なのだ。
    最後に時生は捨て身の行動に出る。
    それがすべてを変え、薫を変えたのであろうことは、
    ラストに一瞬見せる包帯をした薫の表情で何となく察せられる。
    鉄道も新しい会社の元で建設が続行されることになる。

    鳴神が言うように
    「辛いという字に一本棒を引くと幸せという字になる」(相変わらずこういうのが巧い)、
    その棒一本が私たちにはとても難しい。
    難しいからこそ、幸せを感じて大切にするんだなあ。

    あのアパートが2階だということが分かりづらくてもったいない気がしたが
    バス停と線路、とりあえず出来上がっている駅のホームという設定が良かった。
    人が集まっては帰っていく場所として自然に機能している。

    一瞬たりとも気持ちが晴れやかになれない時生と薫の途切れない緊張感が素晴らしい。
    小山田のキャラが、よくある“戻って来ためんどくさい元カレ”でなくて良かった。
    鳴神のぶっきらぼうな台詞の中に真実を言いとめる重さがあって
    説教臭くない含蓄がある。
    蟹江の、マイペースに信じることを淡々と行動に移すキャラがとても清々しく
    ストーリーの中盤から一筋の明るい兆しになっていた。
    時生に“行動することが何かを変える”ことを無言のうちに示しているのがとても良い。

    私は「いつも今がピーク」だといいなと思う。
    洪水のように幸不幸を味わって、知らなかった時より知っている今の方が
    ずっと豊かに違いない。
    だから次回公演もますます楽しみにしています。







  • 満足度★★★★

    儚い夢か...
    場内に入るとしっかりした舞台セット。そこで展開される物語に期待・気持が高鳴る。「脱出前夜」という意味深なタイトル...多くの人が感じ持っている気持かも...。その表現は少しイラッとさせる。
    (上演時間1時間30分)

    ネタバレBOX

    まず舞台美術が素晴らしい。駅舎ホームかと思っていたが、そこはバス待合所。建設途中で途切れている線路、いずれ鉄道を通したいという。そのホームのようなところの柵うしろ...上手奥にはアパートの窓。下手は待合ベンチ、伝言板や時刻表が掲げられている。冒頭はアジサイ。中盤に桜など季節感を出している。

    物語はアジサイ咲く6月某日...豪雨(音響)が印象的であった。物語は同年の桜が咲く時期に遡る。伝言板には3月23日と記される。そして1年後のアジサイが咲く時期を迎える。当日パンフにも記されているが、3日間の物語である。

    長距離トラックの運転手だった男・若竹時生(アフリカン寺越サン)とその恋人・石月薫(土屋咲登子サン)が主人公である。二人はアパート二階で同棲しているが、最近気持ちにズレが生じてきているような。時生は小説家を目指し、習作に励んでいるような...一方才能に見切りを付けているような節も見受けられる。そんな中途半端な気持ちを察して、薫はイラツキ心配もしている。この二人を中心にアパート大家、バス会社の社員などが絡む。

    生き甲斐を見つけ、それに向かって進む気持、そこには才能という見えない自身の壁が描かれる。その悶々とした気持とそれを処理できない苛立ちが見える。それが優柔不断のようであり、うまく アフリカン寺越サン が演じている。それに呼応するかのような土屋咲登子サンの演技も迫真。

    実際、自分の”やりたい事が出来た”と言える人が何人いるだろうか。例えば仕事にしても後から辻褄あわせで、やりたかった事と刷り込ませているかもしれない。本作でも夢を叶えた人・リハビリ学校の教師、夢を諦めて、詐欺まがいの営業をしている人。悲喜こもごもの人生模様が垣間見える。この物語の結末はハッキリしないし、させない。敢えて観客に委ねたような…。
    自分では、敷かれたレールに乗る(冷徹に俯瞰する)こともあるが、途中で途切れた先を自分で敷設して行くことを望みたい。劇中にある、「辛い」と言う一線(一筆加え)を越えたところに「幸」があると言っていたのだから。

    次回公演を楽しみにしております。
  • 満足度★★★★

    出口なし
    復帰おめでとうございます。

    ネタバレBOX

    企業誘致と観光開発を目的に建設中だったものの、観光目玉の滝が大雨によって崩壊したことで頓挫した鉄道路線の途中駅のホームと隣接するアパートの2階を舞台に、小説家になれない男と介護士になれなくなってしまった女を軸にして、思うようにいかない人たちとそんな人間世界を応援するような、ただ見ているだけのような死神みたいなものを描いた話。

    部屋が2階部分だとは少し分かりづらかったですが、前面に線路があり、美しいセットでした。

    登場人物の中に鳴神という名字の人がいたので不思議には思ってました。歌舞伎を思い出していましたが、そういうことでした。自身の案件実現に熱心だったのに頓挫したアフリカン寺越さんの復帰が喜ばしくて、そちらの方に気を取られていましたが、鮒田直也さんの作風からするとSFっぽいのが特徴でしたね。精神的に押しつぶされるだけでなく、身体的にも押しつぶされてしまうとは。

    そもそもですが、地方で、今の時代に鉄道を建設しようとする企業があるのかという点は疑問でした。

    先が見えてしまう人、実現不可能と思わず積極的な人、どちらが幸せなのでしょう。障がい者の女性を捨てるというフレーズが痛く、繋がり心に刺さりました。乙武夫婦が離婚するそうです。同じようなフレーズが聞こえてくるかもしれません。

    障害を負った女性の声が大竹しのぶさんの声のようで、迫力がありました。
  • 満足度★★★★

    やるせないですね
    贖罪の話なのかな。注意一秒怪我一生じゃないけど、この代償は痛い。とても丁寧な作りで、リアルに響いて、身につまされます。

  • 満足度★★★★

    イライラさせられる
    人生の出口の見えない男。
    もう、主人公の男の生き方にイライラしてしまいました。
    そんな男を演じてたアフリカンが妙にはまってました。
    そして、土屋さんの演技に魅了させられました。
    でも、結局、どうなったのかを知りたかったです。

  • 満足度★★★

    よかった
    ストーリーは緻密に出来ているし、役者の演技もよかったです。
    欲を言えば音響がもう少し良ければよかったと思います。

  • 満足度★★

    イマイチ
    主演と思われる土屋咲登子さんの演技だけが飛び抜けてて他を置いていってしまってる感が。
    それぞれの登場人物が苦悩しているんでしょうが表現が白々しく見えてしまいます。

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