くじら 公演情報 くじら」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    くじら 本物を何度か見た
     若い劇団の旗揚げ公演である。今時の若者らしく集約点を持っていないようだ。物語全体を俯瞰する主体が欠落していて、それ故にと言えなくもない所迄細分化され、捉えようのない存在が業(カルマ)に翻弄される有様を描いている。

    ネタバレBOX

     これはこれで時代の表出ではあろう。然し乍ら、地球の害虫たる存在と堕したヒトという生き物が、なお食物連鎖の最上位にあって、最悪の捕食生物として地球上のあらゆる命を蝕んでいる、という認識に立っている所も観られるのだから、もっと鋭角的に描いてもよかったのではないか? 
     実際、自分達で制御できない核いう技術を持って以来、ヒトは明らかに他のすべての生命の敵でしかない。何故なら、制御できない核技術とは、DNA破壊技術でしかあり得ないからだ。生命の設計図はDNAの配列で基本が決まる。然るに核の排出する放射性核種は、その膨大なエネルギーで、ありとあらゆるDNAの結合を破壊する。結果、破壊されたDNAは、活動を停止することもあるが、誤った結合をすることもある。誤って結合したDNAが、転写されて新たな遺伝情報を担った時、生命の設計図は狂ったまま再生産されてゆくのである。その結果が癌や白血病など放射性核種を原因とする症状である。無論、プルトニウムやウランなどは化学毒性も半端でなく強いから、その毒性によって悪影響を与えている可能性も否定できないが、こちらの可能性も精査しなければならない。その両方が影響し合っているケースもあり得るから、その点もキチンと追及しなければならないのは当然のことである。何れにせよ、人間だけが、現在、地球上に存在する生き物の中で自然を改悪してきたし、現在もしている訳だから、そのことを鯨という海洋に棲む高等哺乳類であり、地球最大の生き物である存在に託して寓意として語ったらよかったのではないか? そのことのスーパーというレベルの危機ではなくハイパーというレベルの危機として。
     演技自体は旗揚げとしては上手だと感じたし、ピアノの生演奏が入り、いい音色を聞かせて貰った。ポテンシャルは高いと評価したい。ポテンシャルと若さ故の未成熟を勘案して星は4つ。今後への期待値である。

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