フォルケフィエンデ ー人民の敵ー 公演情報 フォルケフィエンデ ー人民の敵ー」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
1-14件 / 14件中
  • 満足度★★★★

    人民の敵
    イプセン戯曲を約2時間に短縮したがっつり会話劇。やはり凄い戯曲…いつ上演しても普遍的なんだろうな。L字客席で客席通路を演技スペースに。

    石田圭祐さんが『明治の柩』と正反対の役柄。鳥越さやかさんが良かった。こりっち俳優賞受賞の小野寺ずるさんがストレート・プレイもイケるとわかって嬉しい。今後もこういう芝居に出てくれたらと思う。

    ネタバレBOX

    医師家族が周囲の何らかに追い詰められていくような演出で終幕。
  • 満足度★★★★★

    現代に通じる社会、人間劇
    とても古典で他国の話とは思えない切実感がある物語であった。裕福な生活環境を手に入れ、その恩恵を優先する現代社会...そのために将来のリスクに目を瞑り、自己矛盾していることを薄々感じながらも、今の生活水準・富を手放したくない。しかし、その手には危険というメッセージが見えているのだが。
    住民投票に向けた演説、多数が正しいのか、少数はそうでなはいのか。またその逆に少数にこそ真実がある...という主張は真の問題「把握」と「対処」によって違うと思う。その極端な選択肢の突きつけはどうか(比喩的なメッセージと承知しつつ)。

    内容の捉え方は、(現在)社会情勢と人間の内なる思い、そして周りの環境・状況によって一律ではないだろう。しかし、過去においてこのような壮大なテーマを身近な設定で描き出したことに驚嘆した。

    ネタバレBOX

    梗概は、「温泉町の鉱泉汚染をめぐって、真実を公にしようとする医師と、それをもみ消そうとする町長率いる町民との戦い。。〈人民の敵〉呼ばわりされても、あくまで戦う医師は、正しいのは常に選ばれた少数派だと叫ぶ。」

    「自分なりの正義」を信じて行動し、家族を始め周囲の人々を巻き込んで集会の場へ...その場での発言は一瞬正しいように思われる。
    その集会後...家族の行く末不安時に遺産の話。やはり足元の生活優先という小心で狡猾な面もチラリと垣間見える。この学究肌、正義感だけではない人間臭い側面も描く。やはり社会批判と人間内面を抉る、二面性を持つ芝居は秀作であった。

    脚本・演出はすばらしい。また演技は、役者が夫々の役柄をしっかり現しており、熱演・怪演であった。このキャラクターを立たせるためのデフォルメした演技...本当に迫力、臨場感があり観応えがあった。
    この役者が観せるラスト...向背の決は観客に自分で考えてほしい、とのメッセージを投げかける家族の後姿。見事な余韻を残した。

    なお、気になると言うほどではないが...
    舞台一面に広げられた新聞紙、その中に「辺野古」の文字が多く見える。その気持はなんとなく解るが、敢えて特定の地域や出来事をイメージさせるのではなく、普遍的なテーマとして大局的見地から捉えても良かったと思う。なぜなら、もともと古典なのだから。

    次回公演を楽しみにしております。
  • 満足度★★★★

    古典とは思えない話であった・・・
    日本が舞台と思ってたら普通に英語名での舞台でした(^^;)
    (温泉地が主題でした)

    故郷を愛して故郷の為にと働いていた主人公が、個人の利権などに巻き込まれて弾き出される話は今でも通ずる不変の話なんですねぇ=進歩していない人類・・・。

    熱くなるのは解るが、台詞がチョイ聞き取り辛くなるのはチョット・・と思えた全席指定の約2時間強。(開演時間が守られてて嬉しかったさ)

  • 満足度★★★★

    今の時代にあった古典作品で面白かったです。
    いつもいろいろなお芝居を観るたび思うのは、なぜ、いま、ここでこれが上演されているのだろう。なにを伝えたくて、この人たちはこれを上演しているのだろう。そういったことで、舞台というものが一期一会の瞬間的なものであるからこそ、その時代の文脈をしっかりと受け止めた、生きた作品に出会えると気持ちが大きく揺さぶられます。
    そういう空気に気づかない、あるいは気づかないフリをして、作られたものには、どんなに楽しくその場で笑えたり泣けたりするものであっても、心に響くことはありません。
    そんなことばかりを考えて劇場へ足を運んでいますが、このイプセンの名作は、とても130年も前に書かれたとは思えないほど、今という時代にあった物語で、こういうものを取り上げて上演されていることに何より深く感動いたしました。
    こちらの劇団さんは初観劇でしたが、これからも注目したいです。

  • 満足度★★★★

    130年前の洞察力・筆力に唖然とする。
    ありそうな話である。温泉を売りにしている村全体の利害が、ある事実の発見と、その事が約束するはずの「公への貢献」という発見者の栄光を、奪い去る。安全でないものを安全と言い募って原発の危険と被爆の実態を覆い隠している日本と、ほとんど違わない構図に恐ろしくなる。裸にされるようだ。主人公の医師が直面する現実を、観客は追体験する。彼の家族、地元の新聞記者と出版社、村長といった人物たちの立場、その変節が、利害に裏付けられていてリアルである。
     医師の辿る道は、ユダヤの律法学者の欺瞞を鋭く指摘したがために磔刑となったキリスト・イエスの足跡に重なり、恐らくは欧州ではドラマ構造の下敷きとして当然に踏まえられていると想像される。主人公の妻が、それまでは反対であった態度を、周囲が寝返ったのを機に夫の味方に転じるという展開にも、そうした背景を思わせる。日本ではそんな事が起こり得るだろうか‥。物語の終盤、住民を集めた集会で医師が「新たに発見した真実」として叩き付けるのは、多数は間違っており、正しいのは少数である。この世界の圧倒多数を占めている愚者に、なぜ少数の正しい者が従わねばならぬのか。‥ほとんど吐きつけるように語る医師。
     観客は彼とともに、自身が少数側である苦痛を追体験する。 さらに劇場を出ると、そこでも「少数者」の孤独が待っている。だがこのドラマは医師に語ることをやめさせず、最後の最後、医師に快哉を叫ばせている。そして暗転。イプセンの筆の力に屈服する瞬間である。

    ネタバレBOX

    この回は、半端なく「噛み」が多かった。それでもなお気持ちを持続し芝居を最後まで持って行ったのには敬服するが、熟練の役者が出演する舞台としては、記録に残りそうな頻度。勿体ない事この上無しであった。
  • 満足度★★★★★

    金銭が絡むと
    その上での職業倫理を問う今日的問題でした。

    ネタバレBOX

    工場排水によって細菌に汚染された土地の近辺に温泉の取り入れ口を設置したことから温泉水に細菌が混入していることを発見し、公表しようとした温泉医と公表に反対する市長たちの話。

    今日的な問題をイプセンが取り扱っていたことに素直に驚きました。温泉の配管の埋め変え工事を温泉業者の負担で済むと思われた時点では公表に賛成していた新聞社が、町民の負担となるとする町長の意見を聞くや反対に転じる姿勢に、マスコミを潰すには広告をなくせば良いにも繋がるマスコミの脆弱性を感じました。

    単に温泉客の安全を無視し観光産業を守るための秘匿と職業倫理の対立を問うだけでなく、町民負担の問題、義父が温泉株を買い占めて妻子への遺産という形で医師に迫るなど、より具体的な金銭問題が絡んだことで奥深さが増しました。

    演説シーンを使うことには古い芝居の共通点のようなものを感じました。会場をようやく借りられたのに、式次第に従って意見表明が自由にできないことに、当時のこの地の制度を知ることができました。インターネット社会となった現代ではどう描くのか気になります。
  • 満足度★★★★★

    君はどちらだ?
     難しい劇である。科白解釈や演出内容がではない。逆にそれらはコンセプチュアルで、良く噛み砕かれ、他に意味が取りようもないほど明晰、非常に分かり易いものである。(追記2015.7.26)

    ネタバレBOX

     だからこそ、観ている我々観客に“お前自身は、どちらを選ぶのか?”を真っ直ぐ突きつけてくるのである。曇りの無い良心に従えば、どちらを選ぶべきかは明らかである。だが、大多数が、それとは反対の立場を、現実には選ぶであろう。今作で大多数がそうしたように。そのことが予め予測出来乍ら、尚且つ自らの信じる良心に恥じないことを、地元で最後迄貫き徹せるのか? この問いに現実生活の実践を通して応えることが難しいのだ。
     舞台床上に敷き詰められた新聞紙。目の悪い自分には、内容迄読めなかった所、辺野古のことが書かれていたと知人から教えて貰った。舞台奥の壁にも新聞紙が貼られ、丁度、北斎の「男波」のような形に切り抜かれている。これは無論、バイキングの故郷の一つであるノルウェーの海を、そして沖縄の海を象徴している。その広さ、優しさ、外敵から守ってくれる砦と偏見の無いそして自然の厳しさに鍛えられた真の強さをも。深読みすれば、船長だけが博士一家の味方につくのも、このことと無関係ではあるまい。
     もう1点、大事なことを指摘しておくならば、博士が地元で生きようとする点である。自らの生活と関わりの薄い、国政レベルではなく、家族の生死迄、左右されかねない具体性の中で、彼が生きることを選択している点にこそ、今作のラディカリズムが存するのである。ラディカルは、その本義、急進性及び本質である。
     ところで辺野古では、地質調査も終えぬうちから、政府は、次の手続きである図面提出を強行している。このこと自体に法的瑕疵があるのではないか? 民意は示されている。通常、民意を活かす場合、新たなものが優先されるであろう。先の沖縄選では、辺野古移設反対を訴えた議員が当選している。自民党は4選挙区総てで敗れた。民意の意味する所は明らかであろう。ヤマトンチューよ、恥を知れ!! そして、同情だとかのレベルでなく、真に日米安保条約と地位協定を考えるのであれば、キチンと己が被るリスクも引き受けて見せよ。それが、民主主義であろう。その程度の覚悟もなくて、何の民主国家か?
  • 満足度★★★★★

    今日、余りに「今日的」な主題である戯曲
    イプセン『民衆の敵』の翻案。公益に資する行動が既得権益と対立し、当の(当時でいうところの)公によって民衆の敵と認定され粛清される話。
    130年前の戯曲だが民主主義の構造的欠陥を指摘した終盤の弁論部分が今に新鮮。見応え感極太。

    ネタバレBOX

    この戯曲は我々が生来乗っかって(しまって)いる「しくみ」の構造的欠陥を眼前に具現化するためのものであり、観客に主張のどちら側に立つか?を突きつける…というような種類のものではないと思う。なぜなら我々はこの板の上に展開される架空の話に「既に共に乗っかっている者」であるからであり、そもそもそこには実質的に選択肢がないからである。

    「あー日本でも同じだ~」とか思ったり「ストックマン博士のような人がいれば~(自分はヤだけど)」という想念に囚われた瞬間、既に観客は「多数(=悪)」側であるわけで、いろいろ言い訳をしたとしてもそこから逃れるのは困難だろう。

    そんな観客に対して「オマエの事だよ逃げてもムダだよオマエだよ」といいつつ「だからね、多数決はシステム破綻してるんだよ。しかも一世紀以上前に暴露されてるし」と説明するわけである。130年前に指摘されたこの民主主義の瑕疵は、その後「新・社会システム」で再構築しようと試みられて世界規模の大実験と大虐殺で大失敗を来たし今に至るんあだなあと。
     
    しかし、情緒的には主役のストックマン博士が全面的に「良いヒト」風に演出されている(まあ当たり前だが)ようにもみえるが、よく考えると「オレは絶対正しいんだから(当時としての民主的な)手続きトバシて進めても全く問題ないんだよ」という横柄で選民的な人物にも見える。「手続きトバシて専制政治」という点では今日的な主題でもあるなと。今日上演する意義は高いと思う。
  • 満足度★★★★

    イプセン
    やっぱりいいですね。正しいのは少数派だと叫ぶところなど、こちらの感情も、一緒にもりあがりました。

  • 満足度★★★★

    シンプルに良さがあるものの、
    そらぞらしい人たちによる構図が分かりやすくも吸引力が今一つ物足りない舞台。全体的に自分には展開がやや性急に感じた。位置によっては数人の役者の体が全く見えぬ客席配置にも最後まで馴染めなかったかな。

  • 満足度★★★★

    新鮮さと懐かしさ
    権力者と民衆、最近はこんな単純な構図は珍しくなりより複雑な対立関係が扱われるケースが多いので、逆に新鮮さを感じた。正義を振りかざして真っ向から権力に挑む姿は最近ではあまりお目にかかれなくなったヒーローものを連想させ、ある種の懐かしさは覚えたが、対立を作り出す点に疑問も感じて感情移入し切れない。現実の世界では対立を避け円満解決の道を探ることが多いだけに、それを意図して作られたものではないにせよ、そこに一石を投じる結果になっている。

  • 満足度★★★★

    ただ独り立つ!
    ストックマン博士のような人がいつの時代にもいれば良いのだが!
    現実に背を向け、自分の利益しか考えない人、日和見ジャーナリズムはいつの世も変わらない。
    役者の力量はあるものの、会話劇だけに肝心な所でのミスが目につく。

  • 満足度★★★★

    素晴らししい演劇でした。
    とりわけ兄と弟の対決は迫力ありました。

    ネタバレBOX

    私が観たイプセン作品は、人形の家など、人間関係とか、愛憎を扱ったものが多い。そのような物語とは、やや雰囲気を変えている。社会派正義ものとでもいえる。

    地質学にも詳しい医者は、健康を害する公害を内部告発し始めるが、実兄である町長を敵に回すことになる。温泉施設の汚染水対策は、莫大な工事費用となるだろう。

    汚染水を垂れ流すことは、地球環境を破壊するので放置できることではない。しかし、学者のデマカセに町の行政は振り回されるべきではないとされる。

    彼は、職も失い、多くの友と喧嘩する。家族も巻き添えとなる。社会派正義の実現とは、実際にはもっと陰湿である。その意味では、悲劇というより喜劇だと思う。

    いままでのイプセンで、もっとも激しく、ドタバタ劇だった。でも、勇気ある正しきものが、挫折してゆくさまは、あわれでやり切れないものがあった。
  • 今年人気のイプセン
    『ペール・ギュント』や『海の夫人』など今年よく上演されているイプセン。海の夫人が面白くてハマって、民衆の敵も読んだので、8月にも吉祥寺でやるようなので両方見る予定。セットはシンプルながらもこだわってるので要チェック。狭い劇場なので入場口からも役者が出入りするので、今回遅刻は特にダメ!間に合うように行ってください。

    ネタバレBOX

    民衆の敵は、ほとんどの登場人物が180度態度を変えるシーンがあり、面白いのだけれど、予想外の態度で笑いが起きてびっくり。客席に男性が多いのもびっくり。これがイプセンパワー?
    本を読んだだけでもわかる見せ場が、主人公の演説シーン。ここで客席がはさみというか、二面になっている意味がわかるのだが、客席あかりがその他のシーンも基本ずっと明るいままなので、より印象的な見た目になるのにはあと一押し足りなかったかも。大きな劇場でやりたい民衆の敵を、小さいサンモールスタジオに詰め込んだという感じで、逆に演説シーンはもっと近くの客に語りかけたり、狭い劇場でやってる距離感を取り入れても良いかも。
    ラストはあの一言と明かりがぐっと迫りとてもいい。初日だったので今後ブラッシュアップされたらよりアツイお芝居になりそうで期待大!男性陣がとてもよかった。何と言っても、こないだまで明治の柩で鉱毒と戦った石田さんがなんと市長役。男性陣は皆ハマってて、その個性に比べて女優陣が少し弱かったかも。新聞社の彼が、本を読んでてもどうして裏切るのか私の中で決着がつかなかったのだけれど、あの娘とのシーンはオリジナル?なるほどと納得。

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