飛び出す鹿パレードvol.3 公演情報 飛び出す鹿パレードvol.3」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 満足度★★★★★

    札幌の才能
     札幌からやって来た2人組(谷口 健太郎・深浦 佑太)のユニット。4月から今月迄、毎月東京公演を打って来たが、深浦は会社員なので、月曜日出社する為に、観客が帰るより先に蜻蛉帰りすることもあった由。今回は、夜の公演開始が17時なので何とか観客より先に帰らずに済みそうである。
     今回の演目は、「叩いてかぶってジャンケンポン」「Man-hole~鹿ver~」「ザ・バースデイ」の3作をオムニバス形式で上演。一篇約20分の1時間強である。見る前は、全然、別の作品と思いきや、さに非ず。何と掴みのジャンケンポン地獄とマンホールは時間的に逆転しているものの最後のバースデイを加えて序破急を形成しており、而も、これが実に弁証法的なのだ。

    ネタバレBOX

     どういうことかというと、初っ端、地獄におとされた2人は、30万年間ジャンケンをし続け、勝った者が、叩き棒を持って相手を叩く、負けた者はダメージを避ける為にヘルメットを素早く被るということを寝ても覚めても繰り返してきたのである。これを怠ると、鬼に金棒で殴られる訳だ。死んだりすれば蘇生させられ延々と続けることを強制されるのである。但し、この地獄を抜ける方法がある。1兆回目のジャンケンに勝った者はここを出ることができるのである。回数を覚えていたのは深浦、演ずるA。谷口演ずるBが、提案する。30万年も一緒に居たAと別れるのは、辛い。アイコを出して、引き分け、1兆回目を先延ばししよう、と。2人はちょきを出し合うことにするが、Bの出したのはグー。自分が地獄を抜け出すのだと、出し抜いた感覚に溺れるBであったが、Amo抜け目は無い。こんあこともあろうかと態と回数を少なく言っていたのである。そして本当の1兆回目、後出しで勝利したのはA。然し、中々変化は現れない。Bが後出しだから神様が認めないのだ、などと言っているうち、どこからか声が聞こえて来た。声のする方を辿ってみると、ニポポの木彫があった。声は、このニポポからである。何でもマグノリアに関することを述べているようだが、マグノリアは、萼と花弁が明確に分化していないことが特徴だと言う。2人はジャンケンのグー、チョキ、パーについて考える。グーは石で固くて頑丈だ。チョキは鋏で切れる。然しパーは紙で最も弱く、情報を伝達する為に、何かを書く、知識を伝える為に本を作るなどコミュニケーションに用いられるばかり・・・。そうか力でなく、互いに心を通わせ、協力し合ってゆく。互いに争っていた者が手を取り合って協調する。それは、尊い行為だろう。木蓮の花言葉は、崇高や持続、それがマグノリアの意味する所だと気付く。この場面、2人はパーを出して互いの手のひらを握り、さらに残った手のひらを重ね合わせて、マグノリアの花と萼を表現する。つまり異質な物同士の融和を象徴して、武器を捨て去る。だが、このように試練を越えても2人は地獄を出て何処へ行くのかを知りはしない。
     2話は、マンホールの底である。Aは、どうやらここに墜ちて来た後、気を失っていたらしい。気付くと体中が痛む。だが、ここには先客がいた。Bである。Bは、力を合わせて脱出しようと言うが、Aは余り乗り気になれない。戻った所でどうせ「お前の代わりなどいくらでも居る」と言われ続ける人生しか無い。そんなことならここで朽ち果てた方が良い、と考えているのであった。誰もが、日常感じているアイデンティティーの危機。存在意義の喪失という問題が、ここではさりげなく、上司の言葉として呈示されている。実際に、上司にこのように言われなくても、営業コンテストで常に上位の成績をとっていても、事情は変わらない。下らないシステムの奴隷と化してしか金を得る術の無い自らを振り返るだけの知性を持ち合わせる総ておの人間が感じる虚しさだからである。総てが茶番、そんなものを生きた所で、それが人生と呼べる代物か? このような疑問は、皆持っているハズである。持っていないと答える者があれば其処まで誤魔化しているか、“みむめも”かどちらかであろう。何れにせよ、2人は、これが地獄に落ちる前の自分達の姿だということに気付く。
     最終話の3話では、地獄を出た後の可能性に思いを馳せるが、思い出された来し方を踏まえて、今後、どのような可能性があり得るか? 幾つか選択肢がある場合、どれをを選ぶかに話の重点が移る。話は、輪廻転生に思い及び、この可能性が高いことを認めることで2人の意見は一致した。無論、未だ不確実性は残る。ニポポに訊ねることにしたが、輪廻は当たっていたものの、火星の二足歩行ゴキブリだとか、ゴリラだとか、兎に角、人間以外の生物にしか生き返らないと知らされ、悩むことになる。Bの選択は、このまま此処に留まることであった。Aの思考によって、世界はパラダイムシフトさえすれば、違ったものになるという発想を応用したのである。かつて地獄であった、この場所に留まり、自分達の理想とする地球を創造すること。これが、彼らの目標である。彼らが此処に来てから30万年後の地球は、渺茫たる風の吹く荒れ果てた大地でしかなかったから。
     因みに「バースデイ」というタイトルは、新たに2人によって創られる、新地球の誕生日を指すのは無論のことである。

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