江戸系 諏訪御寮 公演情報 江戸系 諏訪御寮」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-20件 / 22件中
  • 満足度★★★★★

    不思議な魅力に包まれて
    見る前は、江戸時代かなんかをテーマに、不思議な能力を持った人たちの物語を見せてくれるのかと勝手に思っいたが、いい意味で裏切られた。

    和のテイストとオールディズなPOPSが見事に調和しているところに堀越マジックを感じる。

    役者が適材適所。特に笹木皓太がすごい、わざとだと思うが、あの絶妙の下手さ加減、あれがとてもマッチしていて、そういう演出をした堀越涼の遊び心とバランス感覚に拍手を贈りたい。

    途中からぐいぐい引きこまれた。

  • 満足度★★★★★

    観てよかった
    素晴らしかった。120分という上演時間はやや長かったですが、最後まで飽きさせない作りになっていました。どんな発想からこんな物語が出てくるのか不思議です。意外性もあり、切なさもあります。

    役者さんはさすがの演技力。生演奏の音楽(兼、効果音)も良く、小劇場演劇という雰囲気も良かったです。

    自分の公演準備で忙しい中、かなり無理して行ったのですが、観てよかったです。

    ネタバレBOX

    御寮さん役の金子侑加さんは、本当に良い雰囲気をお持ちです。
    少女役の土佐まりなさんは、少しあまちゃんを思い起こさせました。
  • 満足度★★★★★

    初志貫徹!!
    伝えたいこと、目指したいとこ、やりたいことが、全くぶれていない。根底に流れる純粋さ、温かさ。。生きていく上での悲哀は、深く沈むことなく、軽妙に笑いとばしてみせる根の明るさ。。いつもながら生き方のヒントが繊細に隠されていて、観ていて救われる。。私自身が間違いなく、あやめ十八番の信者になってしまった。
    それにしても、恐らくネチッコイ(失礼)であろう演出に応えられている役者さんたちに感服いたしました!!今後も妥協無しのさらにさらにネチッコイ(重ねて失礼)演出に期待しております。

    ネタバレBOX

    やはり、今回もリピート必須であった。リピートしていなかったらホントの良さも奥深さも感じられなかったであろう。そう思うと、一度しか観られない人の立場は??みんなに二回以上は観てねって言って回るわけにもいかないっしょ。そりゃぁ、あなた、あまりにもったいない!ッテもんで。
  • 満足度★★★★★

    良かった!!
    語られる民話や人間関係、時間軸など、一歩間違うとわかりづらくなりそうな要素がいっぱいなのに、構成や演出、そして生演奏やダンス等が効果的で、きっちりまとめられた良い作品だった。キャスティングも絶妙だし、スタッフワークも素晴らしかった。

    ネタバレBOX

    朗読による民話の導入の後、”琴美”(金子侑加)の一声、「一魂清浄~」の祝詞で瞬時に世界に引き込まれた。 あとはまさに追体験、時間のたつのをすっかり忘れた。桟敷席で胡坐をかいて観ていたのも良かったかも。

    鬼・拝み屋・裏のあるデイサービス等、ダークサイドな要素の多い中、
    篠塚弓子・久(中島美紀・北沢洋)と、
    その娘夫婦、
    黒川弥生・両輔(大森茉莉子・熊野善啓)の笑えるシーンと、
    生演奏のオールディーズナンバーがいいアクセントになっていて、
    終始嫌な気分にならずにすんだ気がする。

    「楽園」のやや難しい空間も、柱や扉までも世界に取り込まれていてとても良かった。

  • 満足度★★★★★

    良かったです!!
    あやめ十八番の公演、初めて観ましたが、
    すごい楽しめました。
    あっという間の2時間で、
    『もっと観ていたい』と思いました。
    演技力抜群のみなさんの演技も
    良かったし、演出も良かった!!
    客席の方に来てくれるのも、ファンと
    しては嬉しいもの♡
    もっと難しいかと思ったけど、
    分かりやすくて良かったです!!
    1回だけでなく、2回、3回と観れば、
    もっと内容を理解出来てより一層
    楽しめるはず!!
    素敵な時間を過ごせました。
    今後もあやめ十八番観にいきます!!

  • 満足度★★★★★

    境界線を飛び越えて
    桟敷席の存在がとても気に入りました。
    あとはネタバレBOXにて。

    ネタバレBOX

    ただ座布団の上に座って、芝居を見るだけの席ではなくて。劇中で、役者が桟敷席の観客に話しかける。そこに座っている観客は観客のままで、舞台を降りていない役者もまた役者のままだけれど。役者の声に観客が頷いたり、時にはマイムに応じて受け取るしぐさをしたり。
    すると、客席と舞台上という、別の時空にあるはずの二つの場が、いとも簡単に繋がってしまう。観客と役者の、見る者見られる者の関係を壊す、タブーともいっていい行為。
    しかしこうやって軽やかに禁忌を飛び越えるのが、あやめ十八番の持ち味なんじゃないかな、と思った。

    ラブコメと謳っているものの、主人公春平の想い人は、彼の祖母である。
    それでも、ただ一人このひとだと決めてしまったら、禁忌など軽がると超えていってしまう。
    これからも、どんな「幸せ」の形が見られるのか、とても楽しみです。
  • 満足度★★★★★

    とても良い作品でした
    導入部分から最後まで目を離せないほど作品の世界観に引き込まれました。心地よい怪しげな雰囲気がうまく出ていたと思います。初めは「?」と感じた選曲も、劇が進むにつれピタリと合うような感じでした。通路やスペースをうまく使った舞台(席によっては見づらいところもありましたが)、テンポの良さもあり、まったく飽きのないとても良い作品でした。

  • 満足度★★★★★

    堀越流絶品古典演劇。
    初日こそ情報過多に思えて全体的に未完成と感じたものの、リピートしたら演技も生演奏もスタッフワークも驚くほど完成度が高まっていて、たった2回でここまで上げて来るかとこの劇団の持つ底力に心底震えました。今回の演目は、島に根付いた人喰い鬼伝説に絡む人の業をオールディーズナンバーの生演奏とともに郷愁感に満ちた空気で描き出すファンタジー。語り口の上品さ、絶え間なく漂う演出の妖艶さに終始酩酊。神道に馴染んだ日本人の心にいとも簡単に転がり込む堀越流古典演劇は類を見ないジャンルで絶品。将来演劇界の宝になるであろう「あやめ十八番」の公演を、楽園というキャパシティの劇場で観られたことをまずは誇りにしようと思います。

    ネタバレBOX

    2時間の上演時間の演出の緻密さ。役者さんの立ち居振る舞い全てに指導が行き渡っていてその一つ一つにときめきを覚える、つまりはセクシー。転換やシーンの繋げ方にさえ研ぎ澄まされたセンスを感じて、ああ何で堀越涼という人は2年前までこの才能を眠らせておいたのだろうと不思議でなりません。彼の口からよく聞く「まねぶ」という言葉ですが、WSを見ていると彼が演じて様を見せて役者さんに真似をさせる・所作を体に叩き込むということなのだろうと思いますが実はこれはとても危険だと思っていて、役者さんに技量がないとただのお人形になってしまう、感情も情景も見えないつまりは人間不在の演劇になってしまう。実を言うと初日はそう感じてしまったんですね、心に何も響いてこなかった。何の色気も感じずに、あやめのファンとして悲しくなってしまったのです。

    しかし2回目以降空気がガラッと変わってとても濃密になっていて、役者さん達それぞれが生き生きと生命力に満ち溢れていて、2日でここまで変わるものかと嬉しくてたまりませんでした。ここからはいつものあやめ。歌に踊りにときめいて、素敵な役者さん達に終始うっとり。特に印象に残ったのは、金子さんのラスト・・・本当に祖母(しかも孫を殺す鬼のような拝み屋)が乗り移っていたかのようでした。北沢さんの大人気ないはしゃぎっぷりも、嫌われていると思っていた弟から相談されて至福の笑みを見せる熊野さんも好き。役者としてこんなに色気のある演技をみせてもらえると思っていなかった吉田さんも(音楽は相変わらず絶品)、出番は少ないものの素敵な狂いっぷりを見せてくれた紗弓さんも印象的、安定の好きっぷりはもちろん涼さんと笹木皓太くんですですが(笑) ああ書き足りないので後日ちゃんと追記しますね。


    ※「肥後系 麗月」(ツイートをそのまま転記)

    ・アフターイベントでの「肥後系 麗月」は、コロさんのために書き下ろした一人芝居のセルフカバー。三味線、そして楽隊の生演奏はもとより、目の前に立つ堀越涼という方の存在そのものに圧倒される。フェティシズムというよりもはやエロティシズム。あんなにしっかりと着物を着込んでいても。

    ・コロさんのお芝居を観ていたときに透けて見えた涼さんの姿以上のものがそこにあった。紡がれる時間に連れて高鳴る鼓動、そして最後の「見て見ぬフリするな」で心臓崩壊。これだけの艶気を醸し出す男性は他にいるだろうか。元々セクシーな人が狙ってやってるのだから手に負えない。水巴を越えた。
  • 満足度★★★★

    鑑賞日2014/03/16 (日)

    フライヤーに惹かれて、下北沢の(柱が邪魔な、笑)L字の劇場まで足を運んでしまいました。

    ネタバレBOX

    祈ることで、死んだはずの赤子まで蘇らせる、ヒト喰い鬼を祭る社(やしろ)。ただし、それは命を借りた、ということ。いつの日か、家の外からコツンと小石が当たる音がします。そう、それは鬼が貸した命の代償を取り立てに来たのです…

    時代設定は「現代」なんですが、反抗期の孫の前に少女の姿で現れた祖母と孫との恋愛悲話、娘や孫娘を犠牲にしてまで命永らえる女(彼女は孫娘の姿で「祈り屋」として現世に残り続けています)などなど、といったエピソード満載の、伝承民話テイストのおはなしです。
    で、そんな「伝承民話テイスト」にもかかわらず、場面転換の際、キーボードやサックス、ヴァイオリンの生演奏が、場の雰囲気にそぐわない(☜他のヒトの意見、笑)洋楽・邦楽のオールディースを奏でます(「口直し」的で、ワタシには好感度大でしたけど)。

    役者さんは老若男女そろい踏み。とりわけ、小劇団の観劇ではめったにないことなんですが、ワタシより年上!の女優さん、声音がおはなしとすごーくマッチ♪した演技に、とても感銘を受けました。

    …とつらつらと感想を書き連ねてみましたが、どうも文章では表現し切れない、不思議テイストなお芝居でした。今日が千秋楽でなかったら、もう一度、観てみたかったなあ!
  • 満足度★★★★

    綺麗で純粋な優しさ
    序盤に架空の昔話を配し伏線を走らせて回収していくストーリー。舞台となる現代での出来事が絡んでの多重構造で、陰鬱な設定と切ない恋物語が絡まって終盤泣かされた。堀越涼の世界感には綺麗で純粋な優しさを感じる。

    ネタバレBOX

    後半に展開される諏訪伝説のくだりは、それはもう複雑。今まで眼前で展開されていた現代でのストーリーと混ざって理解が追い付かなくなりそうだった。最後の伏線回収に必要なのだろうがその前に脱落しそう。

    金子侑加が大変にいい雰囲気。キャスト表見てたのに最初分からなかった。序盤から終盤までその存在感と美しさが増すばかりで最後の伏線回収でいろいろ納得。静謐な様がハマっていた。印象刷新。

    堀越涼の所作が素晴らしい。で、最近どっかでこの雰囲気体感してると思って、出てきた答えが「柿喰う客『世迷言』での篠井英介」そらそうだなと。鬼は出てくるし、花組芝居だし、女形だし、中屋敷だし。妙につながっているなと一人納得。

    劇中の音響が全部生演奏というのは楽園レベルならありかも。ムラ出やすいので、狭くないと。とはいえ、席によって全然違うのかも。一番遠い方だったし。なお、劇中歌はやっぱり合わない。工夫はしていたけど。但し「ガラスの十代」は吹いた。
  • 満足度★★★★

    堪能しました
    劇団初見。これは実に見事な和モノダークファンタジー。レトロな選曲のあやしげな生演奏もとても効果的。堪能しました。

  • 満足度★★★★

    宗教というより
    拝み屋のお話ではあるのですが、宗教というより、日本の民話をベースにしつつ、今の家族を描いたものというのが私の解釈です。ユニットの命題通り、本当の幸せを考えるきっかけになるんじゃないかな?

    ネタバレBOX

    前回の『淡仙女』でもちゃぶ台のある居間が描かれていました。ちゃぶ台を囲む家族って、何があってもやっぱり幸せなんだろうと思います。そして、若者は恋をして、また家族をつないでいくのです。
    春平役美斉津さん、本当に初めて恋をした高校生でした。
    『はちみつとクローバー』で人が恋に落ちる瞬間を初めて見たという台詞がありましたが、冒頭その台詞が浮かびました。鬼の話とか、宗教団体の経営とか、いろんなことが語られたけど、私は春平クンのはかない恋だけで胸がいっぱい。堀越さんの思惑どおりです。
  • 満足度★★★★

    脚本力と演出力のアンバランスさ
    拝み屋という一種のファンタジー的な要素を含んだ主題に、仄かな恋愛模様と家族の絆が絡んだお話。
    登場するオブジェクトは多いものの2時間で全てを語りきらない感じは、完結しなかったというより、脚本の懐の広さすら思わせ、余白を残す形としての余韻がありなかなか好みでした。

    しかし音楽面では色々と疑問が残る惜しい作品でもありました。
    雰囲気に溶け込まない素人っぽい歌い方。
    楽器を使った擬音と、楽園という狭い空間での生演奏。
    そして過剰なまでに挟まれるレトロな選曲。

    メインの役者さんたちも本当にハマっていて素敵だったので、
    音楽だけ終始疑問だらけだったのが本当に残念。

  • 満足度★★★★

    あやめらしい劇場進出
    ブラックで闇があり、でも家族の暖かさが心地よく、神秘的で不思議な雰囲気を持つ作品が多いあやめ十八番を、私は気に入っています。
    堀越ワールドは、あのざらっとする感じというか、あのざわめく感じが好きで、心惹かれてます。
    あらすじは、観た人にしかわからない書き方も好きです。
    今回は、民話をベースにした2つの家のお話。
    民話、鬼、狭い島という閉鎖空間での土着とも言える風習、普通の家族の生活(篠塚家)と拝み屋(諏訪家)の呪いというか因縁というか。そんな2つの家のお話。そして宗教とデイサービス。
    篠塚家のエピソードが落ち着いても、諏訪家のエピソードは、大どんでん返しはあっても、結局は続いていく風習なんじゃなかろうか。
    というか、根本的な人食い鬼の存在が続いていくのが、ぞっとするラストでした。
    犠牲が当たり前になっている風習が、怖い。
    でもそれが、日本の民話っぽさでもある。そんな不思議な作品でした。

    生演奏でBGMだったり、効果音を出していて、すごいこだわり感を感じました。
    そういうの、私も好きだし、素晴らしいと思いますが、楽園だと狭すぎて、ボリュームが大きすぎる気も否めません。
    セーヌ・フルリサイズなら、あの編成で丁度いい気がするんですが、楽園だとうるさいと感じる場面もいくつか。
    歌は、堀越さんの年齢がわからなくなるような古い歌謡曲とか、洋楽とかがセレクトされていて、嫌いじゃない。
    暗い場面で明るい曲をアレンジしてたり、使い方も面白い。
    …けど、曲数は多いかも。バランスが悪く感じる場面もありました。

    あ、北沢洋さんが歌い踊るガラスの十代は、個人的に大好きです!素敵すぎる!

    2時間の中に盛り込みすぎも感じましたが、作品は素晴らしかったです。
    ちょっとマニア向けな気もしますが。
    楽園では狭くてちょっと長いかもですが、(あそこで通路も2本使い、扉も使っているので、客席は本当に狭い。)最後まで飽きない作品でした。
    もう少しシンプルにすることも出来そうですが。(話的には、複雑で難しい気もするので。)

    ネタバレBOX

    私の印象に残った役は、

    篠塚家側
    ・春平役の美斉津恵友さん
    美斉津さん演じる春平くんは、本当に高校生(正しくは中退)18歳でした。
    ご本人は「18歳ですよ。いいのかな?」なんて言ってましたが、全然違和感ないし。ハマり役でした。
    なんてピュアで、真っ直ぐなんでしょう!
    そして一目惚れからの淡い初恋は、甘酸っぱく、ときめきました。
    思いきりも良すぎです。そのエネルギーが羨ましい。
    あんな告白、されてみたい!
    にやにやが止まりませんでした。
    …でも、その恋は叶わない。
    何故なら…相手はお祖母ちゃん(見た目、少女。)だから…。
    切なく悲しく純粋な、初恋でした。

    ・お父さん役の北沢洋さん
    養子に入った婿殿ですが、それでも一家の主として、家族を考え、支える頼もしいお父さんでした。
    たまにお母さんに甘えるのも、はしゃぐのも可愛い!
    前回の淡仙女の時の水下さんが演じたお父さんを受け継ぐような、しっかりと家族を想い、ポジティブで、器の大きく、暖かい父親っていうのは、本当に理想的な。きっと堀越さんの理想でもあるのだろうなと思います。

    ・お祖母ちゃん役の加藤素子さん
    民話の朗読も素敵だし、自然に溢れる笑顔に慈愛を感じる、素敵なお祖母ちゃんでした。
    孫の為に英語を教えたり、すごく暖かい雰囲気を感じました。
    倒れて言葉が不自由になった時に、孫の春平が通訳してくれるシーンがすごく素敵だった。好き。

    そんなお祖母ちゃんが、デイサービスに行き、そこで間違ったご祈祷のせいで呼んでしまった鬼に、寿命を「借りて」しまい、記憶をなくした少女(土佐まりなさん)になった後の天真爛漫さ、純真無垢な感じが、明るく眩しかった。
    でも最後、孫(大森茉利子さん)と産まれてくる曾孫を守る為に、恐怖に震えながらも鬼に立ち向かう毅然とした姿は、美しかったです。

    諏訪家側
    ・琴美役の金子侑加さん
    拝み屋さんです。
    とにかく雰囲気があり、美しく、圧倒的な存在感と、カリスマ性を感じる威圧感。素晴らしい。そりゃ信じたくなるし、信仰しそう。
    そしてまた、別役とのギャップがすごい!

    ・志郎役の堀越涼さん
    とにかく胡散臭いチンピラ的な長男。神通力もなく、信仰心もなく、ただの欲深い人間であるからこその、裏側を支える胡散臭さ。
    ぞっとする。
    でも、宗教とデイサービスの抱き合わせで金儲けを考える商才は素晴らしく、経営能力は高そうだ。
  • 満足度★★★★

    騙りのための語り!
    とにかく堀越涼の語りが巧くて惚れる。堀越によるオープニングの怪談を聴いているとき、彼は笑顔なのに鬼の面をかぶっているような得体の知れなさを醸していた。芝居の始まりは、劇団主宰の挨拶という体で、そこから生演奏&歌(歌謡曲)、台詞で、現実と物語の境界が溶けていく。

    舞台美術の陰陽の模様が、浮き上がることもなく衣装、俳優たちと溶け込んでいた。この劇場には、真ん中に大きな柱が一本あるのだが、その柱をうまくつかって陰から顔を出すことにより、不穏な空気を盛り上げていく演出はさりげなくて見事。

    作品の後味の悪さというか、不気味さは最後まで残って、ぞっとさせる。こんなおぞましく美しい語りは堀越だけのものだと思うし、彼を観ていると「語り」が「騙り」として人々を虚構の世界にいざなうものであることを、しみじみと感じる。前作『淡仙女』での、神への生け贄の花嫁と、都会のストリッパーとを重ねる描写はとても魅力的で、堀越の美学(演劇、女性、すべての虚構への)がびしびし伝わってきた。これからも、あのような意外性のある人間像と、聖俗の融解する境目を見せてくれるような団体であってほしい。

    ネタバレBOX

    脳溢血で倒れた祖母をデイホームに連れていった時、美斉津恵友演じる孫だけが「お化粧してくればよかった」という祖母の言葉をすくいあげて聞き取ってあげる細やかな描写に思わず涙した。同様に堀越は、記憶を失った居候の少女、巫女としての能力に目覚めてはいないがポテンシャルは絶大な末娘など、女性のか弱さ、たおやかさを表現する設定、筆力では確かなものを持っている。しかし、そのために女性観、特に結婚観が少し古いのは否めない。

    伝統的な日本の「田舎」が舞台だからしかたないのだが、優しく孫を見守る、謎めいた言動で男を振り回す、だめな亭主をどやす、という女性キャラクターたちの描き方が類型的であるという弱さがある。「幻想」は「物語」と紙一重のところにあるので、用心しなければならない。もちろん、それだけでは済まないのが堀越流で、中心人物である「御寮さま」たる金子侑加が、真の「ラスボス」だった場面はとても非情な描写で、胸が締め付けられた。(そして彼女が着物で軽やかに光GENJIの『ガラスの十代』を踊る姿はとっても可愛らしかった!) 
  • 満足度★★★

    なんだかんだで
    色々とチャレンジはされていたが、どれもこれも中途半端になってしまったごった煮な公演でした。もっとシンプルに物語を表現出来ていたらグッとくるものになったのではないでしょうか?

    ネタバレBOX

    音楽が生演奏ということで楽しみにはしていたのですが、どうも選曲の問題もあるのか、イマイチでした。もっと芯が通った感じになっていれば印象も違ったのでしょうが、脚本の方に一つのテーマ性のあっただけにやはり音楽がゴチャゴチャだったのでより心が離れてしまうのが残念でした。
  • 満足度★★★

    序盤に惹きつける展開が欲しい
    題材もシナリオも演出も役者も悪くはなかったが、どうしても中盤まで物語の展開が物足りなかった。いかに序盤でつかんで、どう期待させ引っ張るかかという視点を強くもってもらえると、今後に期待がもてる。

  • 満足度★★★

    大河ドラマの趣がある和風ホラー恋愛譚
     小劇場楽園は大きな柱を挟んでL字型に客席が設営された劇場です。ほぼ正方形のステージ中央には陰陽魚の模様が描かれ、壁は障子で囲まれ、舞台上の出入口の1つにはタイトル文字が書かれたのれんが掛けられています。怪談が似合う和風の空間で、現代服の人々が歌い、舞い、演じます。ステージから柱を挟んで反対側には電子ピアノ、サックス、ヴァイオリン、パーカッション等の演奏者が控える場所があり、一部には演奏と出演を兼ねる人もいました。客席通路も含め劇場内全体を使ったお芝居でした。

     戯曲は力作で、本筋にまつわるサイド・ストーリーも面白いので、休憩込みで3時間の大作にしてもいいのではないかと思いました。2つの家族の話だと、たとえばケラリーノ・サンドロヴィッチ作『百年の秘密』(約3時間25分休憩込み)もあります。生演奏を含むさまざまな演出的趣向については、戯曲が複雑な構成であるせいか、全体的に盛り込み過ぎの印象を受けました。

     客席通路で大きな声を出す場面が少なくなく、私個人としては耳がつらかったです。大劇場でも通用する声量をお持ちの役者さんは、そのあたりの調整もしてもらえたらと思いました。
     印象に残った役者さんは、篠塚家長男・春平役の美斉津恵友さんと、諏訪家長女・琴美役の金子侑加さんでした。

    ネタバレBOX

     幕開けに朗読劇の体裁で、十六島という架空の島を舞台にした“人食い鬼の出てくる昔ばなし”を語ります。そして作・演出・主宰の堀越涼さんが口上で、現在の十六島における「みやげもの屋を営む篠塚家 VS 介護デイサービス業を営む“拝み屋”諏訪家」という本編の構図を解説しました。

     主軸になるのは不思議な少女と篠塚家長男との恋愛で、その少女の正体が実は篠塚家の祖母だったというエピソード。祖母が記憶喪失の状態で少女の体に乗り移ったのは、諏訪家代々の呪いの誤った効力のせいでした。呪いの原因をたどっていくと、“人食い鬼の出てくる昔ばなし”に突き当たります。大河ドラマのような重厚さに感心しました。人食い鬼(正確には子鬼に若い女を食わせる母鬼)は今も存在しており、篠崎家の悲恋のエピソードが一件落着した後も、諏訪家の呪いと生贄の歴史は続いていきます。諏訪家長女は実は本人ではなく、鬼の呪術で延命した赤子・千代だったという結末は、痛快などんでん返しになっていましたが、2時間に収めるには要素が多すぎたと思います。

     篠塚家と諏訪家の人々が同じ場に登場しながら、別の空間(それぞれの家の居間)にいる演技をしたり、中盤あたりにある少女と篠塚家長男が出会う場面を、プロローグ的に冒頭付近でも演じていたり、歌謡シーンで出演者が本編には関係のない話題を観客に話しかけたり、その他にもさまざまに演劇ならではの手法が採用されていました。やる気も工夫も素晴らしいと思いますが、削れるところは削ってシンプルにした方が、物語が分かりやすくなると思います。たとえば諏訪家が今に至るまでのエピソードは難解に感じました。

     「恋の片道切符」「ダイアナ」「すてきな16才」「悲しき16才」「お嫁においで」などのオールディーズや「ガラスの十代」といった80年代ポップスなど、古い目の名曲を生演奏とともに歌い踊ります。明るい音調に悲しい思いを乗せるなど、あえてギャップを持たせることで感情や展開を粒だたせていました。しかしながら、ただでさえ複雑な物語の流れを寸断してしまっており、持ちうる最大限の効果が出ていたとは言い難かったです。まず、2時間のドラマに対して歌謡シーンの数が多すぎたのではないでしょうか。ある場面を演じてからそれに合った歌謡シーンになる場合、観客にとっては同じ意味の場面を重複して観ることになるので、その点でもテンポが落ちていました。いっそのこと演じる場面はカットして、歌謡シーンだけで表現してもいいのではないかと思いました。
  • 満足度★★★

    重厚なドラマ、ミスマッチの美学?
     土地に伝わる「鬼」伝説をめぐる、二つの家族の物語。まるで大河ドラマのような濃厚な設定に、今どきあまりない(スタンダードな意味での)「物語」への強い意欲を感じました。伝説や呪詛といった土俗的な題材を使って人間の情念を描く作風には、どこか懐かしさも漂いますね。
     口上があり、歌もあり(生演奏つき)、一つの空間を二つの場で分け合う工夫もあり、「楽園」という狭く特殊な空間で、いかにエンターテインメント性を高めるか、さまざまな創意が凝らされた舞台でもありました。オールディーズを中心とした歌の場面は「和」風の舞台に対するミスマッチの面白さがあり、内容に合っていないような、合っているような微妙なところが味だったのですが、ストーリーが複雑なだけに、あまり頻繁だと、むしろ意識が途切れてしまう面も。
     華やかな仕掛けとしての演出もあれば、グッと耐えて戯曲に添う演出もあっていいのだと思います。演技もしかり。もう少し「引きどころ」があると、いっそうの豊かさを味わえたのではないでしょうか。



  • 満足度★★★

    取り上げたものは良いのだが・・・!
    日本古来の創作民話に宗教を絡め、生演奏の音楽とで新しい形式にチャレンジはとても良い。ただ興味深いネタなので、音楽は効果にとどめ、話の方をもっと膨らませた方が良いのではなかろうか。
    そのほうがより劇団の命題である”他人の為に生きる尊さ”がより打ち出せたと思う。

    ネタバレBOX

    挿入歌としてのオールデイズ、昭和歌謡の選曲は疑問符。
    暗い話に明るめの音楽(当然歌い方にも疑問)は違和感を抱いた。
    後半、劇場内に冷風が流れたが、これも演出なのか。
    もし演出なら、まだこんな陽気なので寒すぎた。

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