『駈込ミ訴ヘ』『トカトントンと』 公演情報 『駈込ミ訴ヘ』『トカトントンと』」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.2
1-5件 / 5件中
  • 満足度★★★★★

    『駈込ミ訴ヘ』
    「普通な演劇」とは大きく異なる演出手法で、これだけ惹き付けるのは凄すぎ。

    震えるほど凄い。
    面白い。

    ネタバレBOX

    太宰原作の『駈込ミ訴ヘ』と『トカトントンと』(再演)の2本立て。
    両方とも一人称の小説。
    逆八百屋(手前が高くなっていて、奥のほうが低くなっている)舞台。


    『トカトントンと』は天皇(制)、『駈込ミ訴ヘ』はキリスト教。
    2つの小説が描く内容を、こうして並べて、解体して再構築すると、別の作品であるという感じがしない。
    日本の近代化、近代の日本という視点から考えると避けては通れない、2つが象徴するモノをテーマとしているからだ。

    西洋文明(文化)の象徴たるキリスト教と、戦後日本の象徴となった天皇(と天皇制)。
    結局、どちらもうまく取り込んだようでいて、歪みがある。

    『駈込ミ訴ヘ』ではユダは悩み、『トカトントンと』では私が悩む。
    ユダは訴え、私はトカトントンが脳ミソに響く。
    この2本の作品を2本立てにして、さらに意味を持たせた、あるいは気がつかせてくれた地点(演出:三浦基さん)には、観客としては唸るしかない。

    あえて音楽的に表現するならば、『トカトントンと』はインダストリアル・ノイズ・ミュージックならば、『駈込ミ訴ヘ』はケチャ。
    と、書いて、音楽にたとえるのは違うと思い始めている。
    「音」としての面白さはあるのだが(バリトン歌手を使ったり、ボイスエフェクトを使ったり、舞台を叩いたり、歌ったりしているので)、「意味」が見えて来るとなお面白いのだ。

    とにかく役者の力を見せつけられた。
    舞台に立つ役者が、すべてこのレベルな人たちであれば、演劇はもっと面白くなるのではないか、ぐらいのことまで思ってしまった。

    役者による独特な発音の仕方と台詞との距離感。
    異化(効果)という言葉がふとよぎった。

    リズミカル。どこまでもリズミカル。ボイスエフェクト使った台詞。
    バリトン歌手の登場。
    台詞によるリズムの昂揚と台詞自体の昂揚が一体となっていく。
    台詞の感情とは異なる表現で、笑い、怒る。
    台詞を解体し、数人で分け合ったり、繰り返したり。

    逆八百屋舞台なので、役者がこちらにやって来るときは、頭から見えてくる。
    声の響きももちろん奥と手前ではかなり違う。

    「あの人を、一番愛しているのは私だ」
    「あの人を殺して私も死ぬ」

    『駈込ミ訴ヘ』のラストの「ゆーだー」に震え、賛美歌には心から痺れた。


    地点は、京都に固定的な拠点ができた。
    京都に見に行くしかないか、と少し思っている。
  • 満足度★★

    駈込ミ訴ヘ
    地点にしてはつまらなかった。

  • 満足度★★★★

    遊び心溢れる『駈込ミ訴ヘ』
    ジャージをパッチワークにしたような衣装に身を包み、タイトルそのままに駆け続ける中で独特の台詞回しと動きやポーズで進行し、馬鹿馬鹿しさと崇高さが同時に感じられる、独創性の高い作品でした。

    暗闇の中にホイッスルの音が鳴り響いて始まり、緩い感じで駆け足を続けながら、ラップのようなリズムに乗せて特定の音だけを強調するスタイルで原作のテクストが順番を組み変えられながら語られ、キリストに対するユダの愛憎入り交じった悲痛な独白という内容でありながら、舞台上で行われるパフォーマンスには愛嬌があり、5人の役者達がとてもキュートに見えました。
    バリトン歌手が登場してもなかなかステージ上でちゃんと歌わずにじらすのがユーモラスで楽しかったです。
    一般的なドラマ性を排除した作りなのに、90分の間で全く飽きを感じさせない構成力が素晴らしかったです。終盤では、いわゆる感動的シーンとは全く異質なのに感動させられる、不思議な高揚感がありました。

    「生れて来なかったほうが、よかった」という言葉に対して、「生まれて、すみません」という有名な言葉を引用したり、ずっと走っているシチュエーションが『走れメロス』を思わせたりと太宰治の他の作品を仄めかす遊び心が楽しかったです。
    何度も流れる『特賞歌』=ヘンデルのオラトリオ『マカベウスのユダ』が、名前の一致、エルサレムに入ること、走ることといった、いくつものレイヤーで関連付けされていて、バラバラに見える様々な要素をひとつにまとめあげるコアとして機能していたのが見事でした。

    美術や照明はシンプルで控え目ながら、時折とても美しいシーンを作り出していて印象的でした。

  • 満足度★★

    「声の演劇」で何がしたいのか
    地点「駈込ミ訴ヘ」を観る。
    勾配を付けた舞台や、照明と陰の演出は綺麗だった。
    が、おかしな音節で言葉を区切り、イントネーションを変えて、言霊を殺して日本語としての伝達を放棄している。その分、音のリズムを楽しむでもなく、身体が魅力的というわけでもなく。1シーンならともかく、全編通してこれでは拷問のようだった。終盤、歌手がアリア風に歌うのがせめてもの救いだが、これにも役者のおかしな発語の台詞が被り、がっかり。
    「声の演劇」で何がしたいのか、解らなかった。ましてや太宰やユダとか。
    チラシのデザインが素晴らしく期待していたが、残念感満載。

  • 見とどけました!
    新作「駈込ミ訴へ」を観ました。声と発語衝動と身体の再構築。軽みのなかに横たわる重厚なモチーフ。物語の進行にあわせてというより舞台で繰り広げられる事象が沸点に達した瞬間、突如ドッと流しこまれる情報に圧倒されました。泣きそうになりました。

    再演の「トカトントンと」が観られないのが残念です。

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