紙芝居活劇オペラ『怪人フー・マンチュー』 公演情報 紙芝居活劇オペラ『怪人フー・マンチュー』」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.7
1-4件 / 4件中
  • 満足度★★★

     
     

  • 満足度★★★★

    面白い!
    独特の世界観と役者の身体表現は迫力満点で一見の価値あり。

  • 満足度★★★★

    これが万有引力のオペラだ!
    すなわち、芝居仕立てのロックライブ、「名画組曲:怪人フー・マンチュー」!

    ネタバレBOX

    義和団事変の際に、出兵してきた列強の軍隊に家族を殺されたフー・マンチュー博士によって、軍人とその家族を次々に毒殺する事件が起こる。
    フー・マンチュー博士を捕まえるために、イギリスから探偵とスコットランドヤードの刑事、そして医者がやって来る。
    フー・マンチューはそれを察し、探偵の家にインド人に化け忍び込み、赤い毒蜘蛛を放つものの、探偵は気づき一難を逃れる。
    探偵たちは、フー・マンチューを追い、銀幕へ入り込む。
    フー・マンチューは、なおも欧米人たちを殺害するのだが、結局、探偵たちに追い詰められ、殺されてしまう。
    しかし、死んだはずのフー・マンチューが現れるのだ。
    そんなストーリー。

    大音響のゴジラのテーマから幕が開き、 J・A・シーザーらによる生演奏と歌で物語は綴られる。途中までは原作どおりであろうが、中盤からは、万有引力のオドロオドロしく、どこか滑稽さもある世界に突入する。

    この舞台、万有引力を見慣れていない方には少々わかりにくく、伝わりにくいものかもしれない。
    それは「オペラ」というレッテルだけに気を取られてしまっているからだろう。
    何も「オペラ」と銘打っているからと言って、演じられるのが、誰もが知っている「オペラ」の形式とは限らない。つまり、オペラだ、と言ったとしても、それは、台詞を歌ってストーリーを進めるものだけとは限らないのだ。そんな、いつもの安全な場所にいて観ているだけではわからないのかもしれない。固定された概念にしがみつくことなく、積極的に受け入れる、頭の切り替えが必要だ。
    これが「万有引力のオペラ」なのだ。

    観ていればわかることなのだが、ストーリーそのものについては、狂言回しや登場人物たちの台詞や絵によって示されていく。
    それにプラス「音楽=歌」があると言っていいだろう。
    特に合唱部分の歌詞は、いつもの万有引力、あるいはいつものJ・A・シーザーさんの曲のように、聞き取りにくいかもしれない。しかし、リフレインはなんとなく耳に残るし、聞かせたい歌は(特にソロ)、聞き取れるように歌っている。
    例えば、合唱で聞こえてくるリフレインの1つ、「上海という女がすすり泣く」なんていうのは、「怪人フー・マン・チュー」が持っているテーマそのものなのだから。

    ご存じのとおり、ロックには、「歌詞が聞き取れないもの」と「歌詞を聞かせるもの」とがある。この舞台ではそれを使い分けていると思っていいだろう。

    ちなみに、歌詞は、言葉の遊びと過剰な言葉の羅列、さらに中国語も入っていたようで、内容を聞きながらロジックに組み立てることは、難しいと思われる。
    だから芝居にプラスして、音楽を楽しむというということだ。

    いや、逆に、ライブが「芝居仕立て」である、と言ってもいいかもしれない。

    ロックのライブに、芝居仕立てのストーリーがあり、ダンスもあるというパフォーマンスである。「怪人フー・マン・チュー」という素材を、おどろおどろしく、ロックにアレンジして弄んだ、と言ってもいいかもしれない。
    これが寺山修司さんとJ・A・シーザーさんが結局完成させるに至らなかった作品の、2012年時点における現在だ。

    つまり、当パンでも、劇中でも「名画組曲「怪人フー・マン・チュー」」とあったが、まさにそれなのだ。そういう意味においても、音楽としてのカッコ良さは抜群で、まさにロックしてた。

    好みのロックだ。J・A・シーザーさんの曲は、やはり合唱がいい。
    冒頭からやられた。

    客席から観た舞台ビジュアルも計算ずくであったし、左右に分かれた生演奏では、今回特にビートの強いパーカッションの響きがよかった。ひょっとしたら、先日のJ・A・シーザーさんのライブよりも、音の抜けはよかったかもしれない。

    ダンスもキレがあったし、活弁士を演じた森ようこさんの歯切れのいい台詞もよかった。名前はわからないが、フー・マン・チューの手下で、剣の使い手の殺陣もなかなか。さらに熱を帯びた合唱もいい。

    そして、なにより、J・A・シーザーさんとa_kiraxxさんの2人だけで(録音部分もあるが)、あの素晴らしい演奏をしたことには大きな拍手を送りたい。

    ただし、ストーリーにはもうひとつ深みはほしかったところだ。
    「フー・マン・チューとは、列強に踏みにじられた中国の数万の民の意志の総体なのかもしれない」(意訳)という締めはよかったと思うのだが。

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