蟹工船 公演情報 蟹工船」の観たい!クチコミ一覧

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    村山知義とマヴォ
     「元祖ワーキングプア」としてブームになってしまった小林多喜二の『蟹工船』であるが、果たしてプロレタリア運動による「革命」を本気で画策し、反政府運動家として虐殺された多喜二と、バブル崩壊後の自業自得的格差社会の中での低所得者層とを、簡単に重ね合わせていいものかとは疑問に思うのである。ブームというものは多分に宣伝が実態を過剰に修飾することで成り立っている。『蟹工船』を再評価することを否定したいわけではないが、現代との接点を具体的にどう見出すのか、それが提示されなければ、それは単に歴史的名作を観てみました、というだけの意味にしかならないだろう。

     『蟹工船』を舞台化し、最初に演出したのは村山知義である。彼の名前も若い人には忘れ去られているだろうが、映画ファンには山本薩夫監督の『忍びの者』シリーズの原作者として知られている。盗賊石川五右衛門を組織の中で使命に苦悩する個人の忍者として描き、この五右衛門像は『ルパン三世』の五右衛門に直接の影響を与えた。
     近年、再評価が進んでいるのは、芸術振興団体「マヴォ」の中心人物としての活動においてである。彼はもちろん左翼活動家であったが、小説、劇作だけに留まらず、建築、美術、デザインにおいてまで、多岐にわたるそのアヴァンギャルドな活躍には、左翼家という一括りで語るには計り知れない自由さがあった。村山知義は思想を超えたスタイリッシュな存在であった。
     その村山知義の演出を再現するのが、今回の『蟹工船』だというのである。プロレタリア文学の短絡的な舞台化なら、たいして興味はない。村山舞台演出としての『蟹工船』なら観てみたいのだ。

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