アンナ・カレーニナ 公演情報 アンナ・カレーニナ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
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  • 満足度★★★★★

    笑えて泣ける
    悲劇なのに意外にコミカルな演技が多く、変わってるなと思って前半見てましたが、かえって飽きずに見られて良かったです。

    瀬名さんの熱演も素晴らしかったですが、それぞれキャストの演技も光って、最後は会場内にすすり泣きの声が…

    キティ役の女優さんが1番演技も歌も良かったと思います。
    あと、アンナの冷たい夫が印象的でした。
    両親の愛を知らずに育ったために愛情表現が不器用すぎるんだけど、実はアンナも子供も愛してたんだろうな、というのがわかり、悲哀感が涙を誘いました。

    初心者にもOKな内容で、久々に満足しました。カーテンコールがしばらく鳴りやみませんでした。

  • 満足度★★★★

    観劇
    観劇

  • 観劇。
    一路真輝さんの東京公演千穐楽。ダブルキャストが初めてだという一路さんは、自分一人だけが先に楽日を迎えたことがないのだろう。カーテンコールでの挨拶の際、何を話していいのかわからずといった姿を見せたけれど、「ありがとうございました、という気持ちを伝えたくて」と言う真摯さは、言葉を通さなくてもその素直な感情が伝わってきた。感動を共有した六百人を超える観客の割れんばかりの拍手は、昂ぶった感情をさらに大きく膨らませた。

    ミュージカル「アンナ・カレーニナ」は、幸せな家族を作ることになるキティと、不幸に生きるアンナとの対比が非常にわかりやすく明確に描かれている。原作を読まずとも(つまり話の補完をする必要がなく)、ストーリーを理解できた点を考えると、トルストイの大作をよく三時間に収めたものだと感心する。なお、原作は未読(今年中に読むつもり)

    アンナに感情移入させることができたのは、紛れもない成功である。身勝手な行動をするアンナに観客が拒否反応を起こしてしまっては、この劇の感動が生まれることはない。アンナには感情移入させるべきなのだ。それは第一条件と言ってもいいかもしれない。そういうわけでメインプロットは「アンナに感情移入させる」という大きな柱を見事に成立させていた。

    しかしサブプロットであるキティに纏わる幸せな家族の話は、正直途中でどうでもよくなってしまう。アンナに感情移入させた一方、幸せな家族の方に拒否反応を起こさせてしまった。異論はあるだろうが、少なくとも僕はそう感じた。幸せをぬるま湯のように感じさせることで、不幸を強調して同情を誘う。ここに鈴木裕美演出の強みも弱みもある。

    原作の小説「アンナ・カレーニナ」の冒頭は「幸せな家族はみな同じように見えるが、不幸な家族はそれぞれに不幸の形がある」の一文で始まる。
    一様な姿をもって幸せになっていく家族など見ていても、別に心惹かれることはない。「みな同じに見える」ものをわざわざ意識して見る必要はないではないか。大体、キティの夫レーヴィンの演技が過剰すぎる。あまりにも内気で煮えきらない。しかも最終的には幸福になるのだろうと容易に想像できるから、「さっさと思い告げて幸せになっとけよお前」と思ってしまう。
    つまり僕は、不幸な道を一直線に歩んでいくアンナにこそ感情移入しており、暢気に幸せになっていくであろう家族にはいまいち興味を持てなかったのである。多様な形を持つ不幸の家族に、より強い関心を向けることになったのだ。

    思うに、幸せな家族を描く時間を「長引かせすぎた」のが悪影響を及ぼした。幸せな家族は観客の想像力で勝手に幸せになっていってくれるから、濃く描く必要なんてない。「幸せ」に関して、人は想像するのが得意である。ロマンチックな状況に男女がいたら、ああこの後二人は幸せになるのだな、と想像する。現実ではそう簡単に行かなくても、劇世界では想像力の思うがままだ。
    だから幸せな家族はさっと見せるだけでも、観客の心に強い印象を残していくことができる。不幸との対比をさせるにしても、不幸の家族を描く時間と、幸せな家族を描く時間をイコールにしてしまっては、幸せな家族の方をしつこいと感じさせてしまうのが関の山なわけである。

    不幸な家族としての生を背負ったアンナは、実は幾つもの深い愛情を受けている。ここに、アンナの夫カレーニン役を演じた山路和弘さんを讃えたい。世間体を気にし、妻アンナの不貞に気にもかけないはずの冷酷なカレーニンを、実に愛情深い人物に作り上げていた。台詞の上では、完全にアンナを突っぱねているのだ。しかしその卓越した演技力によって、心の奥に秘めるアンナへの強い愛情が、観客には痛いほど見えてくる。
    不倫相手であるヴロンスキー伯爵を演じた伊礼彼方さんも上手であった。一度「エリザベート」で彼のルドルフ役を観ているが、そのときに比べ演技力が上達したなと感じる。若く情熱的な愛からアンナの心を奪いつつも、しかし罪悪感によって傷ついていくアンナを救えないことへの苦悩が見える。彼もまた最後までアンナを愛し続けた男であったのだ。
    それでいてアンナは、自分に向けられるそれら深い愛情に気づかずにいたり、また或いは目を背けたり、罪悪感のために正面から愛に向き合えなくなってしまったりする。どうしようもなく不幸に堕ちていくのである。そんなアンナの姿を見ていると、「幸せになり得ない人物」というのが現実に存在するのではないか、などと思ってしまい、強い恐怖感を抱いた。

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