忘却曲線 公演情報 忘却曲線」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.6
21-35件 / 35件中
  • 満足度★★★★★

    ニュートラルに、やや背筋を立てて
    物語の巧さではない。創りだす情景と紡ぎだす台詞の巧さが際立っている。人間関係の描写にほんの少し過剰さを感じる部分もあったが、単体での人間の描き方は作者の絶妙なバランス感が発揮されていて、決して一面的な描き方をしないところに、こだわりというか固執といえるぐらいの迫力があった。

    ネタバレBOX

    子供が無邪気に話す将来の夢は希望に満ち溢れている。大人になるにつれ、未来に希望を持つことは困難さを増すが、負けないと自ら誓った幹子が言った最後の一言は、奇蹟的にも、希望に満ち溢れていた。
  • 満足度★★★★

    曲線の波には乗らず
    一つの節目?なにかの記念として覚えておきたい舞台でした。初見だな~とか思ってたら、そういえばちょいと前に15分の短編を観てました。そのころから、丁寧にお芝居を作るなぁ良い芝居だなぁと思っていたのですが、とてもおもしろく満足でした!

  • 満足度★★★★★

    観てよかった!!できればもう一度…
    オープニングからもう心を鷲づかみにされた!そして家族一人一人の背景が浮き彫りにされて行く中で、希望の光を予感させる終盤へと私たちを引き込んで行く。その脚本と演出の妙に脱帽!!またそれに応える役者たちもすばらしい!!井上みなみは若干16才?信じられない!!!
      新たな魅力を加えた吉田小夏の世界に、もう一度浸りたい。

  • 満足度★★★★★

    全ての人に捧げる子守唄
    物語は抒情詩的な描写で表現されていたが、家族の心理状態をキャストらが吐くセリフとそれらを結ぶ情景で絶妙に舞台を作り上げていた。導入音楽も素敵だった。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    作家で詩人のパパは交通事故で粉々になって死んでしまう。心底、夫を愛していた歌手のママは夫の「日記を書きなさい」との提言を実行していた。ママにとって日記は過去の悲しい出来事を忘れさせてくれるものだった。そして子ども達にも「日記を書きなさい。できるだけ丁寧に・・。」と口癖のように教えるのだった。

    子どもたちはママの言葉通り、毎日、日記を紡ぐ。それらはいつしか習慣になっていったが、7年後の夏に今度はママが夫を追うように失踪してしまう。

    残された子供達はママとの過去を忘れられず、ママと過ごした家からも離れることが出来ずに、悲しみと切なさと思い焦がれる望郷の上に人生を歩んでいた。

    その後の4人の兄弟は必ずしも幸せそうではない。こういった物語の紡ぎ方が小夏の独特のセンスでもある。生きてる人達の多くが不幸せと幸せを絶妙なバランスで交互に綱渡りをしているようなものだと思う。誰でも生きてる人は、みなそこにある死に向かっているのだから、怖がらずに生きてる間は生きてるあいだを自分らしく楽しく過ごせばいい、とも思う。

    ここで登場するママは娼婦のようなメイクで4人の母でありながら生身の女を印象付ける。このことから失踪した後の女としてのママの生き様をも想像できてしまう。そのママも彼女らの故郷へ帰ってきたようだったが、小さな猫をかばって交通事故に撒き込まれ夫と同じように粉々になって死んでしまう。

    夏の思い出、それは潮風と共に突然やってきて、彼らの記憶を鮮明にさせるだけさせて、また突風のごとく走り去ってしまうのであった。

    愛する人の死。それは二度と逢えなくてもそれで終わるわけではない。4人の子供のママ。世間と言うものは錯覚しがちだけれど、親になったとたん聖人に変身する訳じゃない。その人の性格というものはさして変わらない。個性だからだ。ママは女としての自分を捨てきれなかっただけだ。

    私達はこれからも、そう変わらない人生を生きていくだろう。しかし未来は私達を見捨てない。


  • 満足度★★★★★

    帰る家がある幸せ!
    母の家があることできょうだいの求心力が増します。今後のきょうだいの前途もいい方向に進むように希望します、無縁社会にならないように。

    ネタバレBOX

    船のデッキのような舞台…、横浜出身の小夏さんがイメージした港を感じさせる真島家のリビングルームです。

    愛人と一緒にいた父を交通事故で亡くし、その後母は出奔してしまい、母の帰りを待ち続けるきょうだいの話。

    女3人、男1人のきょうだいの特徴付けが際立っていました。母親代わりできっちりしていて何でも形から入ろうとする長女、長女は結婚しています。他は、口べたで人付き合いの悪い長男、自由奔放だが心は寂しい次女、自分の殻に閉じこもっている三女。

    暫く帰省していなかった次女が東京のデパートを辞めて帰って来たところからスタート。

    とりあえず家族の許に帰ってきたというのが良いですね。親が亡くなった後のきょうだいの関係は微妙、現在問題になっている無縁社会になる第一歩です。母親を待つための家ということもありますが、求心力があることが救いです。

    帰ろうとして、逡巡していたであろう母が交通事故で死んで、葬儀が終わったころで終了。

    三女には恋の予感が、長男もしっかりしていることが分かりました。これから、めいめいが独立して行くでしょう。いつまでもいいきょうだいでいてほしいと思いました。

    母の、日記は忘れるために書くのよ…、私もここにコメントを書くと安心したように忘れていきます…。

    子供のころに戻ったり、現在に戻ったり、流れが自然でした。いつものように食事は本当に食しており、細部に丁寧な演出に大満足でした。
  • 満足度★★★★★

    今のところ今年1番♪
    とにかくまだ見ていない人は必見です。見なきゃ損です!!

  • 満足度★★★★★

    まさに大人のための子守唄
    作家が、繊細な散文詩のように物語を紡ぎ、
    役者が、きちんと通った演技でそれを体現する。
    当たり前のようでいて、なかなか出会えない、希有な舞台。
    きっと、作家と役者たちの間に、羨ましいような信頼関係があるのだろう。

    観終わったあと「救い」が心に残る。
    これからも、いくつもの忘却を重ねていくであろう、この家族へのあたたかい眼差しが、お芝居であっても嬉しい。

  • 満足度★★★★★

    観てよかった
    冒頭から舞台に引きずり込まれました。限られた世界で奇抜な設定なしに会話の積み重ねでこれほどの作品ができるとはすごいです。

    ネタバレBOX

    「反芻は大人の楽しみ」いい言葉ですね。
  • 満足度★★★★★

    力作だった
    タイトな構成に緻密なテキストを重ねた脚本を、役者陣が丁寧に演じた力作だった。人間を根本では信じていることが感じられ、希望を見せるエンディングも印象的だった。

    ネタバレBOX

    高校生の井上みなみを、3姉妹+弟の記憶の中の母を演じる、という配役にはやられた。それが意味を持つ脚本が見事。
  • 満足度★★★★

    素敵なお芝居でした
    終盤の流れがとてもきれいでした。

  • 満足度★★★★

    いい作品と思う
    しかしすこし昔の文学作品のような、静かにじわりと観せる作風がちょっと好みに合わず多少体感時間に長さを感じた。舞台にはもっとガチャガチャしたものを期待してしまう性質なので。

  • 満足度★★★★★

    初日観劇
    うーん、すごいなあ。唸ってしまった。吉田小夏さんは進化し続けている。それに応える俳優陣も見事でした。素晴らしい作品。

  • 満足度★★★★★

    いつも「忘却曲線」の外にある
    丁寧で淡々としながら、なにげない台詞が活きてくる。
    あいかわらず時間と空間を交錯する演出は巧み。

    吉田小夏さんは、どんどん研ぎ澄まされていく印象だ。
    いろんなモノをそぎ落としたというわけではないのに。

    ネタバレBOX

    母は、子どもたちにとって、「過去」の象徴である。「過去そのもの」である、と言ってもいいだろう。
    母の残した「日記を書け」という言霊は、残された子どもたちに「呪縛」として刻みこまれた。「日記」は「過去」そのものである。

    母という地場は偉大である。トラックにぶっかって砕けてしまった父は、もう「いない」ので、過去なのだが、母は「過去であって過去ではない」。
    つまり、「そこにいない」ことで「過去」でもあるし、「現在進行形」でもある。これは辛い。しかも、母の両親がかつて住んでいた家に住み続けているということも相まって、二重三重に掛けられた呪縛からは、子どもたちは絶対に逃れられないのだ。

    呪縛を解くのは母しかいない。
    だから、母は戻ってきて、その「死」によって、子どもたちを解放する。

    母と子、姉妹と弟、そして、夫婦という「家族」という絆は、微妙にそのズレがある。そのズレが、ときには辛く、ときには温かい。声を荒げる姿は、誰しも自分の姿と重なって見えてしまうのではないだろうか。家族だからこそ、声を荒げてしまうことがある。これは他人から観るとキツイ。
    その意味においても、本作で唯一の(今のところ)「他人」である山中という視点を入れたことは、うまいと思った。

    実家から独立して暮らすということは、ある意味、ここの家族のように、誰かが家を出てしまったことに等しいだろう。

    だから、この設定や台詞に実感できる部分がある。
    遠くにいる両親や兄弟を想い、そこからは、弱いようで強い引力にいつも引っ張られている。
    たぶんそれは、実は「死」ぐらいでは断ち切れることはないのだろう。
    つまり、「家族」は「記憶」ではないということ。したがって、「家族」は「忘却曲線」の外にいつもある。

    母と家の地場にがんじがらめの妻を夫は理解できない。しかし、たぶんこの夫だって、自分の家族の引力から逃れることはできていないはずだ。
    2つの家族の引力に引っ張られつつ、夫婦は一緒になっているのだ。
    だからぶつかりもする。相手側の引力しか目に入らないし。

    ラストに、母が町に戻ってきて死を迎えてしまうのだが、それは、「母による束縛と解放」の手段ということらしいのだが、やっぱりイマイチ納得がいかない。

    戻る理由(つまり出た理由)を具体的に示してほしいわけではないのだが、私にとっては、納得できる戻り方ではなかった。
    まるで、「物語を終わらせるために死んだ」ようにしか思えなかったからだ。

    私は、観ている間、後半で、母がネコに変わるあたりで、「ネコのように死んだ姿を見せないで消えていくのか」と思ったのだ。
    だから、母の死は具体的な形ではなく、家族が「察してしまう」という方向で解放されていくのだと思ったのだ。
    それは、すなわち、子どもたちの「独立」や「独立の芽生え」によってだ。
    長女は、夫と家族を作り直し(てっきりラストに自分が「母」になって「母」との決別と、「母」とのさらなる強い関係性を構築するのかと思った)、次女は長い休息を終え旅立ち、三女は新たな家族の予感をさせ、長男もさらに一歩を踏み出すというような。

    母役の方がたぶん一番若い方ではなかっただろうか。母は歳を取らないのだ。そして一番色っぽい。それは「パパに恋している」から。
    それにつけても「パパ」は可哀想(笑)。

    最後に母親に渡すのは、昼顔だったらよかったのにとも思った。

    この舞台からは少々逸れてしまうのだが、こんな「家族」のカタチさえも、まるでメルヘンや昔話のことのように思えてしまう事件が多発することも事実でもある、というのも悲しいことだ。

    役者はすべての方が、とても丁寧に演じていた。母を演じていた井上みなみさんは、過去の中で、艶々と活きている生命感が溢れていた。次女(小瀧万梨子さん)の強がった感じと、三女の大西玲子さんが印象に残る。

    青☆組は、吉田小夏さん個人のカラーがとても強い印象だ。本人はすべてフィクションであるとおっしゃっているが、どうも「素」の本人がさらけ出されているように思えてくる。
    具体的な吉田小夏さんのご家族の様子や内容ではない、「コア」の部分がだ。
    それがコアであればあるほど、自分をさらけ出し、さらに他人をもさらけ出すことになる。そういう鋭さがあると思えてきた。
  • 満足度★★★★★

    芸術の香り高い上質な芝居。
    まるで職人が手掛けたような手作りで、ていねいに作られた作品。細部にまで神経が行き届き、誰もが感情移入する。

    井上みなみが今までやったことのない役を初チャレンジ。こんな役まで見事にこなすのだとまたまた感心。井上みなみフアンには見逃せない作品だ。

  • 満足度★★★★★

    秀逸な叙情小説の味わい
    吉田小夏さんの作品を拝見するのは2度目ですが、今回の作品は、前回以上に、感銘を受けました。

    あんなにお若い作家がよく、これだけの、人生機微を小説のようにきめ細かく舞台上に、具現化できるのかとただただ感嘆します。

    役者さんも、全員が、その役として舞台上で生き、本当の家族がそこにいるようでした。

    モノローグはあっても、説明台詞は一切なく、小説なら行間から滲み出る、家族間の切ない思いが、観る側の胸の隙間に染み渡り、終始、目の奥に涙が出番を待っているような、ジーンとする芝居でした。

    本当に、素晴らしい!
    昨日まで、行くか行かざるべきか迷いましたが、やはり行って良かったと、心から思います。

    大西玲子さんが御出演でなければ、二の足を踏んでいたかもしれません。
    こんな素敵な芝居を見逃さずに済んだのは大西さんのお陰です。
    ありがとうございました。

    ネタバレBOX

    失踪した母親の誕生日を毎年祝う兄弟、姉妹の、母を慕う思いが切なくて、何度も涙が出そうになりました。

    「祝うことは祈ること」、「いつの8月?」、「母さん、お帰り、さようなら」…、心の琴線に触れる珠玉の台詞が幾つも幾つもありました。

    母がまだいた時の過去の記憶と、今現在の家族の、微妙にすれ違う愛と、苛立ち、理解されない淋しさ…。その表現配分も秀逸なら、場面転換や、一瞬の子供から大人へのキャスト陣の変化など、照明、音楽、演技、演出…、どれも、皆遜色なくて、舞台芸術のお手本にできるような完成度の高い舞台でした。

    キャストの皆さん、誰も皆、申し分ない演技でしたが、やはり、大好きな大西さんの演技には今回も泣かされました。

    太郎の記憶の中の若き母が、現実に引き戻されると、猫に変身する様もお見事でした。

    東京から、挫折して帰郷した次女の、タバコを燻らすシーンも、切なくてなりませんでした。

    母が失踪した日から、兄弟の母親になろうと決めた長女のいたいけな思いに、共感して胸が苦しくなるラストシーン近く。そして、やっと、これからは俊輔の妻として、再生しようとする幹子の夫へのさり気ない語りかけで、幕となるラスト、最初から最後まで、本当に、寸分の隙もない、傑作舞台だったと思います。

    欲を言えば、テーブルがベットにも変身すのなら、もう少し、抽象的なテーブル仕様のセットの方が良かったのかなとは思いましたが…。

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