おるがん選集 春編(上演台本付き/カフェ営業あり)  公演情報 おるがん選集 春編(上演台本付き/カフェ営業あり) 」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.8
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  • 満足度★★★★

    桜-和服の所作に気配りが必要
    今回の公演、カフェのスタッフの女性は全員和服姿で、マダムは女優が日替わりで勤めていたようだ。なかなかよいアイディアですね。
    和服を着たときの立ち居振る舞いというのは本当に難しい。
    今回、お客の中にも和服姿の若い女性がいたが、席に着くと、みな正座ができないらしい。訪問着を着て、体育座りをして観ているのには絶句した。
    いくらきれいな着物を着ても、これでは着物が泣く。興ざめである。昔から「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」って言うでしょう。和服を美しく着こなすには、着ただけではダメ。まずは正座の練習から始めないと(笑)。
    小劇場でも時代劇が増えてきたが、役柄、年齢によって所作も違うが、出来ている女優はほとんどいない。わたしが小劇場の時代劇を観たくない理由もそこにある。そのへんのことをネタバレでも述べてみたい。「濹東綺譚」の項で。

    ネタバレBOX

    「寡婦」。モーパッサン原作だが、華族令嬢の話に置き換えている。令嬢が問わずひとり語りで、血の繋がらない甥の弦(ゆずる)との悲恋を回顧する。
    この令嬢は未婚で寡婦という設定。寡婦といっても、心の妻だったのですね。何やら最近のフジの昼ドラみたいな話。松木美智子は青海波の総模様の振袖姿が美しい。
    鉄仮面のように無表情な女中の上野理子がいい。弦の五十嵐勇は背が高いせいか、猫背で姿勢が悪いのが残念。姿勢が悪いと高貴な役に見えないし、和服は着映えがしないのだ。
    「濹東綺譚」。客の大江は青年団の芝居でもおなじみの篠塚祥司。こういう役は彼のように年のいった俳優でないと無理だろう。良い配役だ。上野のマダムは、「寡婦」の女中とは正反対で饒舌な役だが、生活感を出すのには、ちょっと演技がぎこちなかった。雪の津田湘子は、商売女の色気がないので玉ノ井の女には見えない。どう見ても、この芝居は女子大生のアパートを訪ねた援助交際の中年男といったふうだ。蚊帳を吊る後姿ももっと肩の線に気をつければきれいに見えるのに。結果、雪の所作が気になって、芝居として楽しめなかった。
    女郎は、腰で立つといい、外股で歩くのが所作の決まり。たて膝や体育座りも実は女郎特有の仕草で、私などは家の中でうっかりこれをやると、「はしたない」と母に膝をパチーンと叩かれたものです。ラブシーンでも、和物は上からガバッと抱きついては色気が出ない。下、斜め横から抱きつくのですよ。「濹東綺譚」のような芝居は、そういう所作ができていないと無理です。
    五十嵐勇の小僧は庶民の役なので、猫背でもまあ、よいでしょう。
    レトロな芝居は、演出とは別に、所作指導や時代考証が必要。きちんとやれば、深みが違ってきます。総ざらいのときにチェックしてあげたら、だいぶ違ってきたと思う。
    豊田四郎監督の映画「濹東綺譚」でも観て、学んでください。山本富士子のお雪をお手本に。あれが玉ノ井の女ですよ。
    和物の所作に自信のない劇団のかたは、無料で教示しますので、私までご連絡ください(笑)。
    次の「おるがん選集」の際、せめて、わたしが所作のお手本に集めた美人画画家の小説挿絵のコピーでも差し入れましょう。



  • 満足度★★★★

    藤-風情のある会場にて
    ルーサイトギャラリーのことは以前、TVの情報番組で知ったが、詳しく場所が紹介されず、開館されていない日もあるとのことだったので、行く機会もないままになっていた。今回おるがん選集の会場がそこと聞いて、大変嬉しく、早速予約した。
    建物の持ち主だったという芸者さんは元祖美人歌手の市丸姐さんのことだった。お若いかたは市丸という芸者歌手をご存知あるまいが、わたしは生の歌も聴いたし、一度だけお会いしたこともある。父の学生時代の友人がレコード歌手をやっていて、その人のスポンサーが市丸さんとも親しく、うちの隣家に住んでいた関係で、リサイタルのお祝いに行った。そのとき、市丸さんがゲストで来ていた。昭和32,3年ごろだったと思う。当時、わたしが熱中していたのは日本髪の女性の絵を描くことだったため興奮して、楽屋の艶やかな市丸さんの傍を離れず、市丸さんは自分の簪を抜いてわたしに見せながら、「お嬢ちゃんはよっぽどこういう物が好きなのねぇ。大きくなったら、いくらでもお着物着れるし、簪も付けられるわよ」と言われて期待に胸がふくらんだものだ。そんなことを併設のカフェで懐かしく思い出していた。
    今回は、桜、藤、両公演とも続けて観劇した。まずは「藤」から。

    ネタバレBOX

    太宰治の「親友交換」。太宰がモデルであろう津島(浅倉洋介)という作家が、終戦直後、田舎に帰っているところへ、幼馴染だと言ういけずうずうしい男・平田(好宮温太郎)がふらっと現れ、支離滅裂なことを言い散らかし、応対を強要した津島の奥方(松木美智子)にも悪態をつき、ウィスキー、毛布、金、タバコ、いろんなものを略奪同然に受けとり、酔っ払って帰っていく。
    結局、平田は金や酒を無心しに来たのであり、津島の旧友というのもたぶん口から出まかせなのだろう。しかし、終戦直後のどさくさにはこういうでたらめな嘘を言って縁もゆかりもない他人の家に上がりこみ、「押し借り」という悪事をはたらく者が多かったという。それほど、終戦は世相が混乱していたということである。終戦からだいぶたった私の幼いころでさえ、こういう輩はいて、家にもやって来た。父の知人を装って戦時中の話をし、事情を知らない母が金品を渡してしまったこともあった。
    好宮は、こういう「どさくさ男」のうす気味悪さをよく出していたが、時折、ふとした瞬間にこの役ではなく、現代人のような表情をしてしまうのをわたしは見逃さなかった。残念。玉に瑕です。
    浅倉は、この時代の人物がとてもよく似合っていた。
    カフカの「流刑地にて」。判決文の紙を機械の中にセットすると、自動的に罪状を囚人のからだに刻み付けたうえで殺害するという「人の胴体型」をした実に残酷な死刑執行の機械の話。
    流刑地を訪れた旅人=外国の皇太子殿下(五十嵐勇)と従者(松木美智子)は、そこの裁判官だという将校(浅倉洋介)から、その機械の説明を受ける。機械はこの国の前司令官が考案・施行したものだという。
    将校は殿下に処刑を見学するように頼むが、殿下はこの刑罰制度に反対の考えを述べる。全否定されたと解釈した将校は刑の執行を待っていた囚人(好宮温太郎)を放免し、手に持っていた「正義をなせ!」という判決文の紙を機械部品にセットし、機械のある別室に入っていく。たぶん、機械の中に入り、自らの刑を執行したのだろう。
    この芝居のもうひとつの主役はこの機械の立体設計図。詩森さんによれば、専門家に製図してもらったそうだ。著作権料の関係でダメだったのかもしれないが、願わくば、当日のお土産台本に図版として入れてほしかった。
    役名は「旅人」とは言え、軍服の将校、ジャケットを着た従者に比べ、殿下の衣装だけがいまふうのニット・カーディガンというのが気になった。ミリタリー調の感じを出すマオカラーのジャケットでも着てほしかった。
  • 満足度★★★

    【藤】編
    先攻後攻を入れ替えて和ものが先で洋ものがあと。
    時代性がよく出た太宰の「親友交歓」、ある拷問具を想起させるカフカの「流刑地にて」とも桜の二編と異なり、それぞれに面白い。

  • 満足度★★★★

    【桜】編
    モーパッサン原作の「寡婦」(約30分)は翻案による和洋折衷ぶりが面白い。
    永井荷風の「墨東綺譚」(約50分)は江戸情緒の残る昭和の下町風情満載でモノクロの大映映画的な味わい(個人的なイメージです)がステキ。
    それにしても「寡婦」と「荷風」…いや、何でもないです。(笑)

    ※ 4月21日からスタイルを変え、ツイッている一口レビューをまずアップして後日加筆することにしました

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