サイゴ 公演情報 サイゴ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.2
1-10件 / 10件中
  • 満足度★★★★

    現代の闇に切り込んだ問題作
    ネットを通じて集団自殺する人たちは、それぞれ事情はあるにせよ、どんな心境なのだろうと想像しようにも、自分にはまったく状況が浮かんでこない。この芝居は、それを演劇という形を借りて再現し、個々の心に問いかけてくる。
    現代を切り取った作品だが、作り物めいた虚しさがなく、台詞が自然で、説得力があった。パンフに時系列の説明図があったのも親切だ。舞台の間口が広く、ワゴン車も登場させられるほどで、照明を暗くし、舞台空間をよく生かした演出だと思ったが、もう少し狭い舞台のほうが集中でき、観やすい気はした。実質2時間30分と上演時間が長く、集中するだけに疲労感が残った。

    ネタバレBOX

    何度か登場する踏み切りの遮断機の装置が生きていて、人間だけで電車を表現したのにも感心した。
    俳優では、自殺した警察官の遺児、大木昇の川元文太、昇の同級生でフリーター・須藤勇気の村田光、性的虐待から妹を救うため父を殺した湯田の林灰二の3人に実在感があった。自殺サイトの管理人でリーダー的存在の吉井怜は透明感あふれる演技で悲しみが観る者の心に染みとおる。デニーロ気取りの運転手、浮浪者、不気味な医師、3役を演じ分けた宮崎敏行が面白い。
    普通、作・演出家は軽い役に回ることが多いが、林灰二は主要な役で出番も多いのだから感心する。
    自殺した父の後を継いで警察官になった昇の兄・大木肇の古山憲太郎は、弟に「うまいものを食いに行こう」と誘う場面が自然で良かった。こういうストイックで情味のある役を演じると出色の人。役者は普段の生活が演技に出るという見本のようだ。ブラボー・カンパニーの「大洗に星はふるなり」では慣れない喜劇で悪戦苦闘したようだが、彼は本来、今回のような役柄が合う俳優なのだ。林灰二が自らこの役にオファーを出したのもうなずける。
    不倫離婚スキャンダル以来、いまやすっかりTVから姿を消したお笑い芸人、長井秀和が肇の上司松尾を演じている。俳優に転向したいのだろうか。幕開きは口の中でモゴモゴつぶやいているので台詞が聞き取りにくかったが、後半はよくなっていた。なぜ、最初から声を出さないのか。芸人としても滑舌はよくなかった人で、いまにも得意ギャグで「集団自殺、まちがいない!」と言い出しそうだった(笑)。
    自殺動機があまりよくわからない登場人物もいたのが気になったが、1人1人、車の向こうに消えていく場面、湯田が昇に電話する場面は切なくてやりきれなくなった。
    死にたいだけなら1人で死ぬだろうが、ネットという仮想世界で知り合った通りすがりの他人同士であっても、同じ目的につかのまの繋がりを求めて死んでいく。言い知れない絶望と孤独の淵に立った人たちの姿が胸に突き刺さった。
  • -
    体調不良の時に観てしまったので観たという記録だけ・・・

  • 満足度★★★

    観てきた。
    観ました。

  • 満足度★★★★★

    どこまでいけば?ここまでくれば。
    脚本が素晴らしく、見終わった後無駄なセリフがなかったと感じた。
    尺が2時間30分と長い芝居だったが、それでもまだ有り余るようだった。
    座・高円寺は初めての観劇だったが、壮観な外見とは裏腹に椅子は普通・・・
    それだけに2時間30分は長く感じるはずが、
    もっと書き手の紡ぎ出すセリフを味わいたかった、とさえ感じた。

    空間演出もいい。
    派手さはないが、どこか印象的なスタイルのお話によく合って、幻想的な空間を感じさせる。
    舞台上には至極現実的なものを敢えて?置いていたのが、そういった意味で見事に効果的だった。

    役者はレベルが高く、特に、岸建太朗氏、長井秀和氏の演じたキャラクターは、
    『きっとあんな人なんだろう』とこちらに想像させた。
    完全に物語の中の人になっていた。素晴らしい。
    他のコメントにも多くある「台詞の聞き取りずらさ」という点は否めない。

    演劇はどこまでいけば自慰行為というカテゴリから逸脱するのか、
    と言う問いには、ここまでくれば、と言える作品に出合った。

  • 満足度★★★★

    初おいすける
    この作品、好きです。前半は絶望の匂いがぷんぷんしますが、最後は小さいけれど生きる事の可能性みたいなのを感じました。なんか色々な思いがぐるぐる頭ん中で渦を巻いて、終演後トイレの中で号泣してしまいました。

  • 満足度★★★★

    奇妙な世界観
    奇妙な世界観を演出していて、すっかり引き込まれている自分気付かされるいい作品でした。

  • 満足度★★★★

    ゆるやかにひっそりと
    座・高円寺という小屋を初めてみました。
    横に広く天井の高い、広がりのある劇場でした。
    そのためか、役者の声は端で通常のトーンで話されるとさっぱり聞こえません。
    何が話されているのかわからないまま進んでしまったしーんもありました。

    トカゲが印象的。

    全体的にはとてもゆるやかで静かで、けれど確かにそこに存在しているものがあって。
    とても異質な空気が流れていました。

    派手なシーンはありませんが、ひきつけられる何かがある舞台でした。
    特に後半はよかったです。

  • 満足度★★★★★

    「生きろ!」
    「講釈師、見てきたような…」で反語的に、また正面からも語る「生きろ!」がイイ。
    終盤の電話による会話にもホロリ。
    「林文法」による時系列的なシャッフルも当日パンフに目を通しておけば多分大丈夫。

    ※ 4月21日からスタイルを変えて、ツイッている一口レビューをまずアップして、後日加筆することにしました

  • 満足度★★★★★

    超大絶賛!
    とにかく素晴らしいの一言。「Oi-SCALE 」という劇団を今の今まで知らなかったことを残念に思うくらい素晴らしかった。薄暗い照明、それぞれのキャラクターの特性を存分に生かした演出にセンスを感じ、またそれに応えるキャストらの演技も見事だった。セリフの所々にアメリカンジョークを飛ばしながら、ともすれば陰鬱になりがちな物語をそれらのセリフで巧みにカバーしていたと思う。惜しむらくはセリフが聞き辛い箇所があってそれだけが残念だった。セリフの声の大小は劇場のキャパに合わせてほしい。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    物語は大木昇を主軸に回す。昇は警察官の兄の世話で現在の仕事を手に入れた。だけれど何だか満たされない。まだ未熟な大人だった。トカゲのようにしっぽが生えたら何処ででもバランスをとって生きられるのに・・なんて考えていた。一方で交番で自分の頭を撃ち抜いて自殺した警官の父親のことが昇の頭から離れない。何故自殺したのか・・。
    またもう一方では最近別れた若い彼女のことを考える。自分から彼女と別れてしまった昇は付き合っている間中、「彼女に恥じかかせてちゃ悪いな」とか、「守らなきゃいけない」とか、考えるとその責任の重圧に耐えられなかったのだった。だから彼女と別れた後はなぜかホッとした。頼られる事が得意な人間もいると思うが昇はそうではなかった。

    場面は変わって自殺系サイトで集まった7人の内の一人、湯田は昇の同級生だった。彼は死ぬ間際に昇に電話をかける。昇の自殺した父親の事で昇に「羨ましい。俺もお前んちみたいに解るオヤジが欲しい。」と笑った湯田は昇との間に目に見えない深いしこりが残っていたのだった。父の自殺で苦悩する昇。家族関係で悩む湯田。彼らの歪みは得体の知れない大きな膿となって渦巻き、少しずつ心が壊れていったのだった。

    これらの物語を共通の友人・須藤を絡めながら、彼らの住む街の人々の情景、月の丘総合病院のドクターと看護婦、秩父警察署警察官らを絶妙に割りこませ舞台を動かしていく。中でも警察官・松尾のキャラクターの立ち上がりは秀逸でイタリア映画に登場するようなセンスの良さ!また、ドクター池田のイッチャッテルキャラもお見事で、この二つのキャラクターの存在で物語に味わい深いスパイスとちょっとした爆弾を落とす。

    こうして昇は湯田からの電話を受けたものの、どうすることもできなかった経緯を悔やみながらも相変わらず少しずつ大人の仲間入りをしていく。だから表情のないトカゲのお面をかぶった大人たちは世の中と上手にバランスを取りながらスーツを着て今日も仕事をするのだ。遮断機の向こうの大人たちと同じように・・。

    このスーツトカゲ人間はアニメで見たような気がする。タイトルは忘れたが・・。心が壊れそうになったとき脳が一時停止して心を守るというセリフにやたら感動した。「危ない!」というときに脳が作動する警報は実に素晴らしい働きだと思う。神秘的だとさえ思う。

    「みんなが自分の事を大切にしてちょっとずつ周りも大切にしたら世界は良くなるんじゃないかと思う。無理するなよ。」と昇を励ました兄は湯田の自殺を止めに入って誤って刺されたのかどうかは定かではない終わり方だったが、それらを全部ひっくるめて才能を感じる舞台だった。
    ああ、久しぶりに感動!
  • 満足度★★★★

    見終わって…、
    いくつかの謎が残りました。いい感じです!!

    話の内容が内容だけに、小声のシーンが有るのは良く分かりますが…、

    下手側で背を向けていると上手側では良く聞こえませんでした。役者さんによっても異なり、誰とは言いませんが、口先でぼそぼそ言うタイプの人の声は聞きづらかったです。

    ネタバレBOX

    舞台の横幅が広すぎ、客席に奥行きがないことも要因!!

    下手と上手に立っての会話は、あんなに離れなくてもいいのにって感じでした。

    聖子は自殺したのでしょうか?殺人狂?

    昇の兄、警察官の肇はどうなったのでしょうか?殺された?もしそうなら、田舎に帰った昇がかわいそう。

    それにしても、人間がトカゲに見えたら吐き気をもよおすくらい気持ち悪いか、アバターですね。

    私にとっての吉井怜さんは『四十雀ノコイ』以来、お元気でしたか!

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