第63回東京都高等学校演劇コンクール地区発表会 公演情報 第63回東京都高等学校演劇コンクール地区発表会」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.7
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  • 満足度★★★★

    都立青山高校「モンタージュ」~はじまりの記憶~
    ある公園で2人の老女が会話をしている。片方の老女は昔の思い出を楽しげに語っていた。しかし、もう片方の老女は語られる思い出すべてを覚えていなかった。それどころか、何を思い出しても嘘のように思えてしまうと言って・・・。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    鈴木瑞穂(1年)と篠本雪乃(2年)の二人芝居。
    この二人の会話が絶妙でひじょうに素晴らしい作品だった。
    作・高泉順子・伊沢磨紀とあるから、ふたりで本を作ったのだろうか・・?
    とにかくものすごい才能だと思った。

    舞台の始まりは椅子に腰掛けた老女2人のシーンから。
    この設定でも篠本の老婆っぷりが板についてる。笑
    老女1は老女2に昔の記憶を話しかけるところから物語は始まるが、自分たちが住んでいた細い裏路地のパン屋の話は実におとめちっくだった。まるで絵本を読んでるような世界。
    そのパン屋は狭い路地をカニ歩きでメロンパンを抱えながら入っていく。そんな歩き方をしないと狭い路地に入ることが出来ないからだ。メロンパンの入った箱を両手で持って顎で押さえながら入ると、パン屋は自分の周りにメロンパンを20個置いただけのちっさなパン屋だった。狭い路地でパンを売っているけれど誰も気がつかない。
    この話を老女1は老女2に「先に私が貴女に教えたのに他のみんなに自分が見つけたみたいな話をしたでしょ?どうして貴女はいつもそんななのよ。昔っから貴女はそうだったわね?」と、かつての少女だった頃の回想シーンに移る。
    その回想シーンではお互いの写真のこと、缶けりをして遊んだ記憶、少年と少女の淡い恋物語、お互いの家族のことなどを子供のようにお互いをいぢりながら描写していく。この二人の関係がいい。

    少年と少女の恋物語では老女2は少年を好きだったのに、少年の気持ちに正直に答えられなかった記憶が蘇る。老女2は自分の気持ちとは反対に少年に『老人になったらここで逢いましょう。』と約束してしまった自分がいた。「何故あのとき、少年を好きだって言えなかったのだろう。ずっと後悔してた。いつも片意地張って素直になれない。そんな自分が嫌で嫌で、嫌なことはすべて嘘にしてしまいたかった。すべてを嘘にしてしまったら、そうしたら、自分が何処にも居ないんじゃないか?って思ったの。」と老女1に告白する。

    そうして場面は最初のシーンに伏線を繋げ、お互いに老女たちは「貴女が必要なの。」とちっさい頃から友達でいた事に感謝する。そうして記憶を失ったこのように思えた老女2はかつて埋めた写真を掘り起こして、最初のお互いにお互いを楽しくいぢり合うシーンに戻る。

    脚本も素晴らしいことながら、演じた高校生2人のタッグがよかった。
    この年齢で老女独特の持つ風景や世界観を上手に描写し、また、過去に遡っての少女たちのシーンが素敵だった。
    まるで映画の中のワンシーンのよう。
    セットの配置を自分たちで配置していた為、暗転のなかバタバタと少し中断したが、それでもそんな事を払しょくしてくれる舞台だった。
    お互いを楽しくいぢり合う姿はほのぼのとした空気感を演出しながらも笑いどころも満載で、セリフのセンスが良かった。

    素晴らしい芝居をみました。

    来年はもっと沢山の高校演劇を観たい。
    案外、レベルが高いのにびっくりした一日でした。


    余談:インフルエンザの為、学校閉鎖で公演中止が相次いでいます。ひじょうに残念!ちなみに評価は大人が公演してる舞台と同じように評価しております。ワタクシの中で高校生も大人も演劇人として同等と考えています。
  • 満足度★★★

    目黒高校演劇部「ザ・ヒューマンリニューアル」
    2100年くらい、世界中の人々はあAタイプ・Bタイプに分かれる。
    Aタイプは遺伝子操作による社会の中枢を担うエリートが人口の20%
    BタイプはAタイプの下でおとなしく働く歯車、人口の80%
    ちなみに2:8の法則はパレードの法則による。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    上記に記載したパレードの法則は優劣をつけると、例えば企業で働く社員の2割は有能で他の8割の無能な社員の給料を稼いでいるという仕組み。
    だから、この2割のうち誰かが働かなくなると、代わりに8割のうちの誰かが有能ぶりを発揮して、この法則の数値は変わらないという。

    世界の中枢にいる更生センターはBタイプの人々を管理していたが、近年、Bタイプの中でも特に落ちこぼてしまう人々が目立ってきた。センターでは落ちこぼれを更生させてうまく働かせようと、落ちこぼれの一人・只野を更生させる場面から始まる。

    その更生の方法は「只野さん歌手デビュー」とか「只野さん2年計画」とかギャグみたいな計画。笑
    しかし、演じてる彼らは大真面目で完璧なプログラムによる再生計画だという。劇の半分以上がコメディとして笑わせる、という様で、最後に只野さんと一緒にセンター職員アダチが同調してセンターを脱出する「脱出計画」も実はセンター側の只野更生計画の一つだったことが分かる。
    この脱出計画でアダチはセンター側に捕まったと見せかけて、只野一人を逃がしたと思い込ませる事によって、センターを脱出できた自信と勇気を植え付け、ついでにアダチへの恩も植え付けた。というオチ。笑

    舞台慣れしてないせいか、一部の生徒に棒読みセリフな演技があった為、ちょっと世界感に入れなかったのと、コメディとシリアスの境があいまいだった。
    高校生がパレードの法則を引用するあたり・・どうよ?笑


    余談:インフルエンザの為、学校閉鎖で公演中止が相次いでいます。ひじょうに残念!ちなみに評価は大人が公演してる舞台と同じように評価しております。ワタクシの中で高校生も大人も演劇人として同等と考えています。
  • 満足度★★★★

    都立駒場高校演劇部「告白」
    とある高校の定時制に通う元いじめられっこ、柴田俊也。全日制に通ういじめられっこ、宮崎南。
    偶然再会する二人を中心に、日常は少しずつ動き始める。個性豊か過ぎるクラスメイトと共に、彼らは励ましあい笑いあい、言えなかった隠し事を告白する。

    以下はねたばれBOXにて。。

    ネタバレBOX


    舞台は同校の定時制に通うかつてのいじめられっこ柴田俊也と現在のいじめられっこ宮崎南を軸に教室での風景を描写する。

    定時制高校に通う柴田のクラスメイトは現代の社会をそのまま表現したような多様な面々。特にオカマの美しさには驚愕!笑
    そんなクラスに詩織らにいじめられて泣きながら日誌を探していた全日制の南は中学の同級生だった柴田と遭遇する。南は定時制に通う面々に関わりながら、人生の機微を学んでいく。

    いじめっ子のリーダーの詩織らをはじめ、高校生の演劇のレベルの高さに圧倒される。大人顔負けでした。そういえば・・昨年の「転校生」の演技力にも仰け反るほど驚いたものだった。ただ、芸術劇場のキャパでの役者の声出しに問題があってちょっと不満が残ったものだが、今回のアゴラのキャパは丁度いい。

    担任が生徒の顔も名前も覚えていなくて、いじめを訴える生徒に対して、話も聞かず「お前誰だっけ?」発言には笑うしかない。(苦笑!)
    「クラスに生徒が40人もいるだろ?先生、そんなに覚えきれないだろ?」みたいな発言にも苦笑!(^0^)

    「あいつ暗いよね。」
    するとまわりは、とりあえず「ん、そうだね。」
    すると誰かが、「なんか変だよね。」
    するとまわりは「ん、そうだね。」
    こんな些細なことがきっかけで集中的にいじめが始まる。

    「告白」は、かつていじめられっこだった俊也が頑張って登校していた姿に南が憧れていた事を告白するシーンと柴田の高校選びの告白シーン、それぞれの好きな人に告白するシーンを織り交ぜて完結した本だった。もうちょっとひねりが欲しかったところだが、制限時間内での描写はここまでなのだろう。

    余談:インフルエンザの為、学校閉鎖で公演中止が相次いでいます。ひじょうに残念!ちなみに評価は大人が公演してる舞台と同じように評価しております。ワタクシの中で高校生も大人も演劇人として同等と考えています。




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