黴と鉄道 公演情報 黴と鉄道」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    闇の中に醗酵するもの
    究極の環境に置かれた時、人間はどんな行動を取るのだろう。もしも何者かに試されているとしたら?それが姿を現さないとしたら?あまりにも恐ろし過ぎて身震いすることすら忘れてしまいそうだ。本作は、生物兵器の実験台になったとある町の話。人々が恐怖感を抱く隙を与えずに生物兵器を投入したため、人々はただ、崩壊してゆく様を見届ける間も無く息絶えていく。悲しくて、絶望的だ。

    蜘蛛の巣に囚われ、身動きのとれない小さな虫のように無力な人間たちの複雑な境地が、妖しく醗酵する黴と艶やかに絡みあう。体をくねらせ宙に舞うように町を泳ぐ黴。心に届くまえに皮膚の上をすべり落ちる言葉。とぎれとぎれの会話。断絶された線路。絶滅する生命体。歩いても歩いても光のない、温かさのかけらもない世界で人間の本能が絶叫する。

    ネタバレBOX

    リレー方式で行われる今回の公演はセットも楽屋もないらしく、舞台に上がった4人の役者がウォーミングアップをするところからはじまった。柔術を応用したような動きが合図によって繰り返され、瞬く間に世界が作られた。リラックスしていていいですよ。主宰はそうアナウンスしていたが、客席にいる誰もが目を見張り、その張りつめた空気感の中に息つく間もなく取り込まれてしまっていた。

    簡素な照明装置と音響、何もない真っ黒な舞台で4本の白いロープを使い、物語のすべてを構成する発想力にも脱帽した。特に目立った演出は、Pit 北区域の特徴でもある宙二階の二階部分の柵に2本のロープを引っ掛けたものを両サイドで引っ張り、行き止まりを表現していたこと。この町が、外部と遮断されていることがより強く伝わってきた。

    又、ウォーミングアップ時に見た柔術を応用したような動きは手の施しようのない町や町を侵食し、人々をストイックに追い詰めていく黴を立体的に造形していて、見えない何かは確かに見えた。

    パンフレットの挨拶を読み、この作品が主宰の亡き祖父へのオマージュを捧げたものなのだと知る。最後、夜空に降り注ぐ星のような雪黴が先人が笑って希望を与えているような。そんな風に受け取れた。

    それから本編には直接関係はないが終演後、主宰自ら出口に立ち、観に来た一般客に対して挨拶をする姿は好印象だった。こうした誠実な姿勢が、作品にも顕著に表れていると感じた。
  • 満足度★★★

    装置は使わずにロープ4本のみ
    B兵器的な黴によって壊滅的な被害を受けた町を描いたもので内容はワカり辛かったものの、表現方法が非常に面白い。
    いろんな催しがあるイベントの中の1作ということもあり装置は使わずにロープ4本のみであれやこれやを時に具体的に(例えば冒頭で十字路だったのが十字架になったりとか、最後はハンギングロープだったりとか)時に抽象的に見せるスタイル。
    まっすぐに置いたロープに縦の波を送るなんて「あぁ、そういえば子供の頃やったっけ」なんて懐かしかったなぁ。

  • 満足度★★★★

    なんとも独自の世界観
    当劇団初見。
    私の知るかぎり、ほかのどの劇団とも交わることのない独自の世界観を有する作風。

    ネタバレBOX

    生物兵器として計画中の「黴」(完成品ではないため、人を殺すほどの毒性はない)を積み込んだ列車が(故意か否かは別に)爆破され、「黴」がとある町に放出され、3日で町を飲み込むほどに成長する「黴」の栄枯盛衰を独自の視点で描く。
    あるときは、「黴」の視点から。あるときは、「黴」を撲滅すべく、奮闘する科学者の視点から。あるときは、「黴」を撲滅することを使命とする「きのこ」の視点から。また、あるときは、爆破された鉄道の駅員の視点から。
    舞台は、シンプルで、4本(ときに5本)のロープと4人の役者の体のみで表現されるが、見るものの想像力をかき立てる。
    せりふは極めて詩的で、時に、くさくも聞こえるが、そのくささが心地よい。
  • 満足度★★★★

    遊び心
    ストーリーがなんとなく見えた。

    ネタバレBOX

    とにかく影と光、走るロープが印象に残りました。
    アンケートにも書きましたが、どこか「小学校時代」を連想させる空間ですな。

    もっと遊んで。
  • 満足度★★★★★

    みたーーー
    面白い
    今回、セットなど、本公演ではない?
    次は、きっちりセットの組んだものも見たい

    ネタバレBOX

    詩的な言葉が多く、言葉に、もう一個、欲しい感じを受けました。
    世界観は、セットもないところで、役者が作っていた。
    体を大事にしている分、ちょっとのすきも逆に見えてしまう。
    見えなくなったら、とんでもないことになるかなあー
    最初に、準備体操してた。
  • 満足度★★★★

    「風の谷のナウシカ」のフカイを連想す
    とある町の化学者と黴と近くにいた人たちの目線で観ると解り易い。

    以下はねたばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    舞台のセットは何もない。セットを作ることが出来ない空間だからだ。今回の催しがセットを許さない。そこで高橋は白いロープを使って、キャストの4コマの立ち位置や汽車の車輪、線路、縛りに見立てて演出する。相変わらず上手い。そうして意外にも高橋の役者としての演技力にも圧倒された。あんなに上手かったんだね。笑

    物語は平和だった町が戦争の被害を受けて爆発した。それによって発生した雪黴が町を覆い尽くし、その日を境に町は力を失いフカイの町となる。化学者たちはこの状況を何とかするべく雪黴を排除する為に研究を重ねるが、この化学者・きのえ君をとりまく3人の人間関係の描写が面白い。

    一方で爆発によって視力を失った鉄道職員と先輩鉄道員の絡みも面白い。視力を失った鉄道職員は町の人々が最後の一人まで乗り終えるまで職務を全うするが、先輩鉄道員は「人を呼んでくる」と詭弁を吐きながら、さっさと逃げる。こういう人間の闇の部分の描写は相変わらず上手い。

    雪黴を排除する力を持つのはきのこだが、雪黴はきのこから遠ざかりながらも勢力を増して一つのコロニーを作り出す。ここでの雪黴の擬音を発するような言葉(音)が異次元の世界を思わせる。「ムーミン」に登場する白いニョロニョロのような言葉(音)だ。笑

    やがて世界は雨が降り注ぎ一人のぼうやが生まれる。ぼうやには今は亡き母親の声が聞こえ、自分たち一族の先祖が世界を支配していた事柄や、きのこという化け物の話を伝え、自分の仲間を探すべく旅をするようにと、教える。

    そこに、きのこが現れ友達のふりをしてぼうやの仲間がいる場所まで誘導させる。ぼうやを利用して雪黴を排除しようとしたのだ。それでもぼうやは「君も僕の仲間だよ」と言いながら死んでしまう。きのこはぼうやの心にふれて号泣するが、やがて雨が降ってぼうやはまた生まれる。目の前にいるきのこに「あなたは僕のお母さんですか?」「そうだよ。君のお母さんだよ」と目を光らせながらにやりと悪魔のような笑いでぼうやを見つめる。歴史は繰り返されるのだ。

    ぼうやが鉄道職員にだだをコネながら鉄の道を進んでいくシーンは、キャストのキャラだろうか?それともこういう演出だったのか、ちょっとセリフが幼稚に思えたものの、まあ、年端もいかないぼうやという設定だから仕方がないのかも知れない。

    きのえ君をとりまく場面は面白かったし、こずるい先輩鉄道員の言動も絶妙だった。キャストは4人だったがそれぞれの役割をきちんとこなして、素晴らしい舞台だったと思う。何よりも二人の女優が自分たちを綺麗に見せようなんて露ほども思ってなくて演技力で勝負したのがこの舞台の醍醐味だ。

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