焼跡のイエス 公演情報 焼跡のイエス」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 満足度★★★★★

    確かに、石川淳でした!
    観劇させて頂きました。この作品は、石川淳の戦後まもなくに発表された「焼跡のイエス」を原作とした作品でした。しかし、「焼跡のイエス」の物語を基本にしてはいましたが、大幅に解釈・加筆された作品でした!公演タイトルは「焼跡のイエス」でしたが、作品に描かれていたのは「石川淳そのもの」でした!もともと「焼跡のイエス」は非常に短い小説で、そのまま演劇作品にしたのならば10分もあれば済んでしまうのではないかとも思える程の短編作品です。個人的には石川淳の作品を演劇作品にするならば、中篇の「鷹」や「紫苑物語」あたりの方がそのまま演劇作品にでもなりそうな物語だとも思いますし、そもそも芸術祭公演のために書かれた「おまえの敵はおまえだ」「一目見て憎め」といった、ちゃんとした戯曲があるのにもかかわらず、なぜ短編の「焼跡のイエス」を選ばれたのかが、個人的には非常に興味がありました。本公演時間は80分でしたが、10分もあれば済んでしまうだろう「焼跡のイエス」には大幅に加えられた物語がありました。本作品は石川淳の中期以降の作品を思わせる、極めて日常的な世界から出発してどこまでも広がっていく世界観、場合によってはSFとも思える世界にまでたどり着いてしまいますが、そこに行き着いても描かれるのは「人間の姿」、と言う世界観そのものが本作品の物語でも展開されていました!そして、その中では石川淳そのものの考え方が多く観られました!石川淳の小説は非常に重厚で読み応えがある作品ばかりなのですが、なぜか出てくる女性をさながら崇拝するように描くところがあります。その他にも、いろいろと独特な考え方がありますが、本作品は「石川淳」そのものが描かれていました!石川淳をよく調べ、理解していると個人的には思います。石川淳の小説は非常に読み応えがある幻想感と独特の文体で書かれていますが、そのまま演劇作品にしてはまず大半の観劇客には理解できないかと思いますが、本作品では非常に分かりやすい比喩表現と呼ぶよりもいい意味で洒脱で軽妙な言葉遊びと言いたくなる表現と、詩的とも思える非常に短い台詞で構成されています!人によっては難解に感じられる方もいらっしゃるかもしれない石川淳の独特の文体がこれ以上ないほどに分かりやすい台詞で構成されています!そして、石川淳の小説の幻想的物語を舞台演出で表現していました!舞台上にはほとんど何も無いのですが、役者さんたちが単純な小道具や身体表現等で本作品全体に幻想的世界観を創り出していました!この作品は「焼跡のイエス」とされていますが、基本的なところにはその話があっても、全体としてはほとんど別物の作品とも言ってもいいような作品でしたが、石川淳は演劇についても書いており「原作を忘れさせるものこそ芝居」「芝居は総合芸術だが、その総合という操作を役者がどのように引き受けるかが見もの」とも述べており、自分としてはその日・その時で「その通り」とも思うし、「ちょっと違うのではないのか」とも思ったりしてしまいますが、本作品においては石川淳がもし知ったら大喜びしそうな作品になっていました!今回の作品の評価においては、自分の年代には少し懐かしい気がする台詞表現・舞台演出などでしたが、今ではもうすっかり観ることが出来なくなり、久しぶりに観るとやはり「いいなぁ~」と思ってしまいますし、もし今の若い方が観劇されたのならば恐らく観たことがほとんどなくて、むしろ斬新的に思われるかもしれません。個人的には、いい意味で巧みな言葉遊びとも思える饒舌な台詞表現と詩的とも思える台詞表現の組み合わせ方は良い構成だとは思いますが、少しせっかくの詩的な台詞表現の全てまで説明してしまうくらい饒舌なところもあるようにも思えましたが、好みなのでしょう。むしろこの方が分かりやすくて良いと思われる方もいらっしゃるかも知れません。ですが、本作品においては舞台上に発想力と創造力だけを持ち込んで、総合力により本作品を創り上げたところが、ちょっと古いように思えても逆に今ではまず観ることの出来ない、自分の好みの点による満足感と確かに「石川淳の作品!」と満足させて頂いた点による、二重の満足感による星の評価です!本作品を観劇させていただき、押入れの奥の方にしまいこんでしまった石川淳の小説を引っ張り出し、久しぶりに読みたくなってしまいました!本作品については、確かに「石川淳の作品」でした!

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