見よ、飛行機の高く飛べるを 公演情報 ことのはbox「見よ、飛行機の高く飛べるを」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    最初に戯曲を読み、後に青年座公演を観、そして今回。三つの体験の差異について考えてしまうのも、秀作戯曲である故か。青年座のは男の演出家、今回は酒井若菜という名からすれば女性に思われるが、性差のためかどうかは分からないが実は随分違う所があった。
    青年座は広い舞台で喜劇タッチに描き、ベルエポックと呼ばれる大正の「良き時代」を振り返るノスタルジーの背景の上に、暗鬱な時代の予兆という色の線が引かれる感じがあった。二兎社じたい大人の喜劇色がある。
    だが今回の小劇場での上演には、台詞の一つの活かし方としての日常性が相対的に減退し、全寮制女学校の生徒にむしろ相応しい緊張感が漂う。逼迫した物言いが「劇的」を増すありがちな様態とも言えるが、それぞれのエピソードがそのドラマ性を凝縮して提示されている印象だ。それは「時代」の色彩にも及び、女教師が芝居後半で取る行動がそれを余す事なく伝える。(大逆事件とその時代背景が脳裏をかすめる自分特有の見え方なのか、歴史をそれほど知らない者にも届いたのかは、判らないが。)
    喜劇タッチは経験を重ねた役者が演じるのに力量的にも合致するとすれば、この作品の中心である女学生を演じるに相応しいのは彼ら年輩ではない。一々、激情の迸るのがこの作品に相応しい光景で、私は今回最も戯曲世界を具現した舞台に最後には思われた。
    初見の劇団だが、秀作戯曲をきちんと舞台化する、という自分の中の予想に違わず。
    プロデュース公演の常、来歴異なる人らが集う人間交差点の様相を終演後のロビーは呈しており、良い舞台なればこそ。だが一期一会の淋しさも。

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    2018/02/17 01:49

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