ヒミコ 公演情報 劇団熱血天使「ヒミコ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2017/01/13 (金) 19:00

    この駅に降りるのは3回目。
    最初は6年前の2月に昭和音大の中にあるテアトロ・ジーリオ・ショウワでの同大ミュージカルコース及び舞台スタッフコースの卒業公演「FAME The Musical」に高校の後輩の娘さんが出演するというのでそれを観るためだった。
    前回は一昨年9月にやはり熱血天使の「天地に咲く 幕末編」を観るために来たのだったが、この時は九州と四国に記録的な大雨を降らせた台風16号が関東にも接近して強い風を伴った激しい雨の中をずぶ濡れになりながらこのアルテリオに着いたのだった。 

    さて、今回感覚的にはかなり遠い新百合ヶ丘までまたも足を延ばしたのは(といっても、小田急の快速急行だと新宿から25分程度。コンサートを聴きによく行くミューザ川崎よりも近いのだが…)、この作品にハグハグ共和国の伊喜真理が客演しているという、その一点につきる。 

    演出は吉野翼(“よしの・たすく”と読む)。私は彼の演出作品をリオフェス(岸田理生アバンギャルドフェスティバル)で2回観たことはあるが、演出家としてよりもむしろ江戸川橋にある絵空箱のカウンターの中にいる店主としてのイメージが強い(笑)。 

    ごく一部(後述するミヨとイヨのみ)ダブルキャストの内、天チームを鑑賞。 

    前方2列が指定席。私は最前列のほぼセンター。自由席もかなり空いており、これならば自由席でも良かったか…と思っていたが、指定席には終演後に特典が渡されるとのスタッフからの声掛けが。そんなことすっかり忘れていたのだが、受け取ってみれば、伊喜真理のメッセージとサインが入ったA4判のポートレイト。私は演劇関係のグッズは(劇団チョコレートケーキの台本を除いて)購入しない主義なのだが、正直言ってコレは嬉しかったゾ(爆)。 

    (以下、ネタバレBOXにて…)

    ネタバレBOX

    舞台の奥は上手→下手→中央の順に高いステージが設けられ、開場時からその一番高い中央部に白い布を頭から被った女性が背を向けて座っている。
    中央の階段の左右に黒い紗幕を掛けて生演奏の奏者が2人座り、静かに演奏も始まっている。下手側はギターや打楽器の男だというだけであまり注意も払っていなかったのだが、上手側から聞こえてくるのが二胡だと気づき、奏者をよく見てみると何と中川えりか。同姓同名の女優・中川えりか(AND ENDLESS)と朗読と音楽のユニット“なかがわ・なかがわ”を通して知っている奏者だ(今回の「ヒミコ」では歌声の美しさも再認識させられた…)。 

    定刻の8分前から舞台にダンサー陣が登場し、踊り続ける中で開演。上演時間2時間5分。 

    題名からも察せられるように邪馬台国を舞台にした物語である。中国の歴史書「三国志」の「魏志倭人伝」に現われる邪馬台国の所在は現在でも九州か近畿かで論争されているが、ここでは阿蘇の山と共に暮らしている設定となっている。女王・卑弥呼は老齢のこともあって力が弱まっており、次の女王候補としてかつて自分が統治権を奪って殺したトヨの2人の娘・ミヨとイヨを指名し、2人のいずれかがその能力を身につけるのを待っていた。が、そこに攻め入ろうとする国が現れる。冒頭に描かれた阿蘇山の噴火、その阿蘇の怒りを鎮めた卑弥呼は続けて占卜(せんぼく)を行なう力はなく、傍に使える4人の鬼道衆を通じて、ミヨとイヨにそれを命ずる。時を同じくして、トヨが怨霊ムハラジョとして復活してくる…
    こうして内部抗争も加わって邪馬台国が滅び、人々が漂泊の民となっていくまでが描かれていく。 

    骨太で観どころの多い作品だが、この舞台で最も注目すべきは、贔屓目ではなく、伊喜真理だろう。彼女は卑弥呼の弟(魏志倭人伝でも卑弥呼の弟が政治を補佐していたことが書かれている)の娘であり戦人でもあるヤヤクを演じているが、ハグハグ共和国をはじめ、これまで伊喜が演じてきたことのない役柄にも関わらず、立ち姿も武人らしさを漂わせ、声も口調も力強い。そして幼い頃から面倒をみてきてこよなく愛するイヨに対して見せる笑顔の美しさ。さらに歌まで…(イッツフォーリーズの藤森裕美が歌わないのに、笑)。彼女が舞台を引き締めているといっても決して過言ではない。彼女の新しい一面を観ることができたのは望外の喜びだ。 

    卑弥呼役の藤森裕美、ムハラジョ役の菅沼萌恵、オシヒコ役の柊木軸など霊力を持った女性役に存在感が強いのは物語の性質上か。終盤の卑弥呼とムハラジョの対決の場面は息詰まる空気感だった。 

    が、ミヨ役の山崎愛美がいまひとつ弱い。後半の、自身が卑弥呼に代わる女王になろうとしてから以降も全身から気迫が溢れてこないどころか、立っている時に足に力が入っていないことすら多い。 
    あとダンサーたちがコロスとしてストーリーに入ってくる時に、物語の登場人物という気持ちに欠けて表面的に演じているのが散見される。だから戦闘場面でも勇ましさや哀しみが伝わってこない。
    ダンスでポールダンスっぽい個所もあるが、前述した吉野演出「恋 其之弐」での宇津木彩乃のポールダンスには及ぶべくもない。 

    秀作の部類に入る舞台ながらも、そうした点が目については集中が途切れてしまう。ラストもやや物足りなさが残る。 

    ところで劇中では占卜と言っているが、大きな動物の骨を焼いているので、正確には太占(ふとまに)だろう。 

    さて、疑問なのはなぜミヨとイヨだけダブルキャストなのかということ。この劇団の公演にはこうしたことが多い。まさか両バージョンでDVDを作って高く売ろうとしているため…ではないだろうが。

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    2018/01/14 10:50

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