エレクトラ 公演情報 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館「エレクトラ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    昨年見逃した『オフェリアの影の一座』に続くりゅーとぴあプロデュースによる、こたびも白石加代子出演の舞台だったが、ギリシャ悲劇(32作あるという)の世界であり、その中のアトレウス家の物語(10近くあるらしい)を再構成したとの事。アガメムノン(父)とクリュタイムネストラ(母)、その娘エレクトラ、イピゲネイア、息子オレステス。トロイア戦争。・・耳に馴染みのある名前だから、知る人には有名な話なのだろう。後で調べたものと照合すれば、母は前夫を殺した男アガメムノンとの間に生まれた、上記の子らに囲まれて暮らしていたが、子らにとってはアガメムノンこそ父であり、物語はトロイア戦争から凱旋したばかりのその父を、母と結託して殺し、王座に収まったアイギストスと同じ屋根の下に住まうエレクトラ(高畑充希)の苦吟の様から始まる。そこへ亡くなったと聞いていた弟オレステス(村上虹郎)が現われ、父母に復讐の刃を向ける作戦として自分が死を偽装した事を告げ、エレクトラと共についに敵を取る。だが命乞いするアイギストスの口から、彼らの親とその親からの血塗られた因縁を聴かされ、またクリュタイムネストラ(白石加代子)が最後に見せた母の顔を目に焼き付けてしまった二人は、実母を殺めた罪で裁かれる拘留の身にあって気が触れんばかりに苦悩する。・・時系列に進む比較的分かりやすい一幕の後、休憩を挟んで二幕に進む。ここでは一幕で登場しなかったイピゲネイア(中嶋朋子)による長い一人語りに始まり、途中オレステスらの登場はあるものの、主に「語り」に終始して芝居は終わる。イピゲネイア(エレクトラの姉=長女)がトロイア戦争に勝つためアガメムノンが神に捧げた生け贄であり、幽閉された身でひっそり生きている、という事は一幕にも台詞に一度は出てきたように思うが、これは前知識がなければ分からない。生きながらえたエレクトラを中嶋が演じているのか、と暫くみてしまった。混乱し、眠くなり、二幕は睡魔の内に終えた。
    以上は3階席で観てのコメント。世田谷パブリックの3階席は、1ランク料金が下がるだけの事はあって、いまいち芝居に入り込めない事は多々ある。今回もその嫌いはあったと思う。

    ネタバレBOX

    しかし今回の舞台、高畑や白石ら役者を見る楽しみはあった(のだろう、客によっては)にしても、上演の狙い、つまり今この時代にこれをやる視点というものが、今一つみえてこなかった。
    ギリシャ悲劇の「アトレウス家物語」を一度やってみたかった作者の年来の願望が、形を成したという事だろうか? 
    舞台の美術、照明の「闇」の醸し方や、打楽器生演奏の音楽(作曲演奏:芳垣安洋、演奏:高良久美子)。視覚、聴覚に訴える美的要素は浸透力があったのだが・・。
    (芳垣氏は20数年前、新宿ピットインの若手枠の朝の部や昼の部で名前をみていたドラマーだが、当時みる事はなく今回漸く目にするとは・・全く個人的感傷だが。)
    テキストにピンと来なかった。判りやすさはあったが、原典からどのあたりに趣向が凝らされたのか、知識のない者には分からなかった。
    いささか説明的に感じたのは、アポロンの神託で復讐を遂げたにもかかわらずオレステスとエレクトラは放逐され、ゼウスの神の裁きの前に立たされようとしている、という所で、この矛盾について作者は台詞でケリを付けさせようとしており、これは原典通りであるのかどうか分からないがアポロンの神が二人の前に登場して、もっともらしい事を偉そうに(神だから偉そうなのだが)言ったりする。言い訳っぽい。
    そもそもがギリシャ悲劇、この矛盾を論理的に説明するのに割かれた時間は不要ではないか・・それとも現代への翻案として必要だったのか?やや疑問として残った。
    白石加代子は、初であったか。狂気に手を届かせるあの様は別の舞台でぜひまた見たい。

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    2017/04/18 00:23

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