永遠の一秒 公演情報 インヘリット東京「永遠の一秒」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    命の繋がり
    本公演は、第27回(2015年)池袋演劇祭優秀賞受賞作品で昨年観たかったが、都合が合わず観ていなかった。今年も東京公演はスケジュールが合わず諦めかけていたが、神奈川の千穐楽・最終公演回を観ることが出来た。

    この公演、カーテンコールで脚本・演出の畠山貴憲氏から「命の繋がり」がテーマである旨、挨拶があった。当日パンフにも「永遠の一秒」は特攻隊をモチーフに、命の繋がりを描いていると。

    とても面白く感動していたが、終盤近くにその余韻を損なうような演出があり、少し勿体なく残念でもあった。
    (上演時間1時間45分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、紗幕・縦長の木枠が3つ。まるで棺桶のような感じでもあるが、そこを爆撃機「銀河」の操縦席に見立てたり、1945年と2016年を繋ぐ橋のようなイメージにも受け取れる。

    梗概...1945年-海軍宮崎赤江基地
    特攻隊員である3人の若者が、怪我を負い出撃できなくなった仲間の原口に遺言を託し、爆撃機「銀河」に乗り込み、敵艦へ特攻した。そして21年という短い生涯を終えた…はずであったが。
    目覚めた彼らがいた場所は、戦後70有余年を過ぎた現代の日本。状況を理解できず、現代を「死後の世界」(六道の一つ)と思い込む。そのうち就職・家探しを通じていつの間にか、原口の残した子や孫を通じて本人(原口)の元へと導かれていく...。

    一度出撃すれば、二度と生きて戻れない、まさしく人間爆弾である。爆撃機「銀河」に見立てた箱、その狭い空間の中で悔しい自分の死を嘆くこともできない。本公演では、その極限状態を描き、単に表層の平和のみを主張した作品とは違う。特攻兵を現代へ呼び戻し、戦時と現代を対比させながら、観客一人ひとりに考えさせる。ヒロイズムや救いのなさ、生き残る者の感傷もないような...。原口は出撃できず生き残ってしまった、この老人の死んでいた戦友の亡霊とともにのみ生き延びてきた。その最期を看取るかのように現れた3人との魂の共鳴が感動的である。

    現代の平和...そこには戦時を生き残り、命を繋いだ人々の苦しみ痛みの上にある、ということを忘れてはならない。この忘れてはならない記憶、それを直接知る世代が少なくなっている。体験を次世代に伝えるのが戦争体験者の責任だ、といわれる。それでは戦争を知らない者はどうすべきか。
    戦争・戦後の混乱の記憶も今は風化しつつ、年表の記載に閉じ込められそうである。様々な思い出を抱えた世代は、どう対応するのだろうか。語るべきか、それとも心中に黙するのか。戦争(後)を知らない世代は、その未体験をどう受け取り、次世代へ語り繋ぐか、それが問題だ。

    さて、気になるところ...終盤に紗幕に記録映像(実写)を映写していたが、あまりに直裁的であり、芝居らしい余韻が興醒めしてしまう。
    物語は、原口の死期が近くなり、3人が迎えに来た。または原口の走馬灯のような回顧録であったかもしれない。どちらにしても夢か現か幻か...、映像よりは役者の息遣いに、今を生きていると感じていたかった。
    そして音楽...クラシック、宗教音楽、軍歌などが挿入されているが、場当たり的な印象を受けたのが残念。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/10/23 13:08

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