ことほぐ 公演情報 intro「ことほぐ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    おかずはないが飯はある
    本来めでたいはずの妊娠を誰からも祝福してもらえない3人の女が
    ひとつ屋根の下で貧乏共同生活をしている。
    根拠のない希望を食い散らかして、絶望を蹴散らして
    生まれて来る子どもと2人分あがきまくる女たちに、私はいつしか寄り添っていた。

    ネタバレBOX

    劇場へ入ると、舞台を挟んで奥と手前に向かいあうかたちで客席があった。
    奥の客席へは黒い敷物の上を歩いて舞台を横切って行く。
    舞台中央が3人が共同生活するアパートの部屋。

    北海道の盆踊りには「子供の部」と「大人の部」があり、曲も踊りも違うのだそうだ。
    隣の公園からその「子どもの部」の盆踊りが流れて来る部屋で
    お腹の大きい女3人が元気に喧嘩している。
    水道代として渡した2千なにがしのお金でピザを食べてしまったさとみ(のしろゆう子)を
    その妹えりこ(柴田知佳)と家主である愛子(菜摘あかね)が責めているのだ。

    愛子は不倫相手の子を妊娠している。
    さとみはDV夫から逃げて来て別れたいと思っている。
    えりこは誰の子かわからない子どもを産もうとしている。

    いやー、落ち込んだり文句言ったりしながらもたくましいやね。
    一環して「産むのだ」ということに迷いが無い(妊娠初期には迷ったかもしれないが
    結果として産むと決めた)、後悔する発言が皆無であることはすごいと思う。

    社会のせい、相手のせい、自分のせい・・・たぶん全部あるだろうが
    “複合貧乏”みたいなこの状況をどう見るか、その視点によって道は決まりそうだ。
    役所へねじ込むか、相手に慰謝料を要求するか、プライドを捨てるか。
    3人はそのどれをもしないで「妊婦が幸せじゃないなんておかしい」と憤り、
    「私たちは貧乏じゃない」と呪文のように唱えている。

    多分ひとりではこの状況を受け容れられないだろう。
    だから3人は喧嘩しながら、「出てけ!」とキレながら、それでも一緒に丸くなって眠る。
    親切ごかしに近づいてきた隣人(加藤智之)の、“自分より下を見たかった”という告白に
    ようやく誰かのせいにしている場合じゃないと目が覚めて
    さとみは離婚を決意、一番行きたくなかった場所、実家へ頭を下げて戻ろうと決める。
    えりこはパートナーが必要だと、自分達を下に見て喜んでいた隣人に
    「この子の父親になりませんか?!」と言ってみたりして相変わらず懲りない女だ。

    出演者全員の盆踊りが賑やかに繰り広げられ、ひとり、また一人と舞台を去って
    愛子だけが取り残されたように佇んで終わる。
    盆踊りが「子どもの部」から「大人の部」に移って、
    時間の経過と地域性、妊婦たちの変化が映り込んでとても良かったと思う。
    照明がまたとても繊細で効果的だった。

    妊婦は皆孤独だが、救いが無いわけではない。
    愛子の兄や、えりこのバイト先の上司だって優しい人達で心配してくれている。
    文句言いながらもさとみの実家は助けてくれるだろう・・・。
    社会を代弁するような隣人の無職男だって、水は提供してくれる。
    この男を含めた4人が、おかずも無しで白いご飯を食べる場面が良かった。
    米と水と、互いにあるものを持ち寄った結果の白いご飯だ。
    全員丁寧に「いただきます」と箸を取って無言で食べた。
    本来あるべきおかずはないが、白いご飯はあるじゃないか・・・。
    切ないながら希望が見えて、何だかちょっとほっとしたのだった。

    「ことほぎ」「ことほぐ」と来て、次は何だろう?
    「ことほいだら・・・」どうなったのか、続きを見てみたい気がする。

    1

    2012/10/01 23:43

    0

    0

  • ご来場まことにありがとうございます。
    細やかな視点からご感想いただきありがとうございました。

    三人の妊婦たちのように?たくましく、
    introはこれからも前進し続けて行きます。

    今後ともよろしくお願いします。

    2012/10/04 10:57

このページのQRコードです。

拡大