中二階な人々 公演情報 中二階な人々」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    味わい深い...
    同級生の男女6人が共同生活している一軒家が舞台で、そこでの暮らしが坦々と描かれる。変化に乏しい内容かと思ったが、30歳前後の微妙に揺れる心情がしっかり伝わる秀作。
    映画であればロング、アップなど画面処理で距離感なりを表現することが出来るが、芝居は舞台と客席の距離は一定で、観る範囲は同一になる。それでも映画にはない、役者の息遣い、客席からの笑い声など、場内一体となったライブ感が演じている人物の心の機微、各人の距離感を表現している。
    そう、生活は坦々、心の動きは淡々であるが、それぞれが悩み迷っている姿は、その年齢の人の等身大を見事に映し出した。

    ネタバレBOX

    舞台セットは、同居している一軒家の共同スペース(リビングか?)で、中央にファッションソファー、テーブル、上手にBOX棚とその上にコーヒーカップ等。下手は観賞葉のみ。上手が玄関、下手が別部屋への廊下か階段のようである。

    この公演の時代背景は、2002年。主宰・演出家の秋葉由美子女史が当日パンフに「2002年は、内閣府の調査でニート(就職する意思がなく、職業訓練もしていない若者)数が85万人になったことで話題になった年だそうです。大学に行って、就職して、結婚して、子どもを産んで...という”人生のレール”に疑問を持つ若者が、それだけ増えてきた頃。」と記載している。
    まさにその書いたこと、感じたことが、この公演に現れている。変化に乏しい物語のようであるが、上演時間2時間は飽きさせない。そこには日常の中にあるちょっとした出来事が、ざわざわ、もやもや...表現し難い心境を同居人宴会の中で吐露する。そのキッカケは外部のバイト後輩・ワタナベミユキ(古河遥香サン)を同居人・タカギ(奥村俊サン)への愛告白という形で刺激を与える。その小さい波風を立てる演出が巧い。
    仲が良い時ばかりではないだろう。嫌悪の部分を描けば、メリハリは出るだろうが、敢えてそのシーンは使わない。そこに優しさ、信頼というポジティブ面だけで描くという信念のようなものを感じる。

    タイトル「中二階な人々」は、若者と呼ばれる年齢ではなく、もう少し自立を迫られそうな中途半端な感じが読み取れる。”今”の居心地は良い、しかし本当にそれでよいのか、日常に流されているのでは、自分が本当にしたいことは、その疑問の数々と自分でも捉えきれない本心...その”もどかしさ”が、その年齢を通り過ぎてしまった自分には愛らしく思える。今だから言える”ガンバレ!

    この舞台設定の前年(2001年)には、アメリカ同時多発テロ(9.11)が発生しており、日常の生活に埋没して苦悩する姿も描く。平和集会から帰ってきたであろうシーンは少し唐突感があったが、さりげなく911をイメージさせるTシャツを着るなど、細かい所にも配慮している。

    物語に変化が少ない分、演技力が試されると思う。会話する面はテンポがあるが、無言...いわゆる”無の間(ま)”は若干長いシーンもあったと思う(自分感覚)。
    繰り返しになるが、日常をしっかり捉え、そこに内在する人の揺れる危うさのようなものが共感できる、そんな秀作であった。

    次回公演を楽しみにしております。

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