公演情報
「追熟しない果実」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。
表層的には ニホンザルとタイワンザルの交雑種をめぐる問題を描いているが、その 底には排他的な人間関係や地域事情といった個人や社会の問題が複雑に絡まった重層的な物語になっている。タイトル「追熟しない果実」とは獣(食)害であり、成熟しない社会を表しているよう。
公演の魅力は 分かり易い展開だが、描かれている内容は含蓄に富むもの。演劇の面白さ、しかし観る者に媚びず しっかりテーマを伝える。勿論 脚本(横山拓也 氏)の力や演出(西本由香サン)の巧みさであろうが、何といっても俳優陣の演技がみごと。当日配付された参考資料、そして劇中の台詞にあったマイクロアグレッション(微妙な攻撃)を体現しているようで、心に刺さる。見応え十分。
(上演時間2時間 休憩なし)
実演鑑賞
満足度★★★★★
横山拓也氏の新作を名取事務所への書き下ろしという事で久々に観に出かけた。と思っていたが最後に観たと思っていたトラムでの「モモンバ何とか」(枝元萌主演)も2023年秋、その年明け2024年2月に「う蝕」なる作品を観ていた。これはちょうど能登震災の直後であったから、まだ二年半だが随分昔観た感覚だ。
いずれにしても注目は我が(とまで言うか)名取事務所に、著名劇作家の中で中庸に見える横山氏が一体どんな話を?というもの。俳優陣は上演中思い出した松本紀保、西尾友樹、枝元萌に、名取事務所の常連(又は所属)の面々の達者振りと、後で確認した演出・西本由香による所も大であろうが、この作品、「食堂」という人情喜劇が展開しそうな舞台と台詞劇の導入から、幾つもの社会テーマを内包する重層的な芝居にぐぐっと舵を切って行く。横山氏だけに過激な台詞は喜劇的受け止めも可能な幅で置いて来るがいつの間にか笑っていられぬ厳しい局面に持ち込まれている。その展開の速度と物語が内包するテーマの多様さに、内心舌を巻いていた。個を巧く描く横山氏の筆致が、個の向こうに広がる普遍的問題群へと手を届かせる。
排外主義にそういう切り口から言及させるとは・・。それぞれ、居そうな人物たち、欠点も含めて人間を描く横山氏、松本紀保が担った役ところが、今作の見所。さすがと思った。
実演鑑賞
満足度★★★★
まず、この役者7人の並び!面白い。
舞台は食堂、店終いするつもりの老婆のところに甥夫婦が転がり込んでくる。それも傍目にはかなり強引に。本人達に自覚ないのが肝。この地域には野生の猿の外来種繁殖問題が深刻で、二重三重の意味で多文化共生のテーマが伝わってきた。最適解を客に委ね、作品がより身近なものになった。
老婆役の竹下景子さん、ドンピシャにハマっていて共感できた。地域住民の3人もうまい。そして、外来種系の親子3人の強烈なふるまいと言ったら!現実そのものではないか。
西本さん演出にしては笑いが多めで良かった。それにしても、うまい役者さんの掛け合わせ、見事でした。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2026/10/03 (土) 14:00
座席1階
iakuの横山拓也の新作書き下ろしということで、期待してでかけた。田舎町の親戚を頼って逃げてきた親子の配役の妙もあり、横山作品らしい味のある軽快な会話劇に仕上がっている。共生という理念を目指しながらも、マイクロアグレッションという微妙な差別意識なども浮き彫りにする物語は、社会派劇ファンをうならせる出来栄えだ。
舞台は、登山客目当ての商売で細々と繋いできた人口流出に悩む田舎町。亡き夫が開いた喫茶店がある家に残された女性は、店を閉めるかどうか揺れていた。この山では日本猿と台湾猿の交雑で生まれたサルの保護活動をしている町議らのNPOがあり、喫茶店の女性はこの町議と親子のような支え合いを続けてきた。そこに突然登場した、大阪に住む亡夫の甥一家。強烈な関西弁でずけずけものをいう姿に、町議の女性は母のように慕う喫茶店の女性を奪われるのではないかと反発する。
さすが関西出身、横山作品の大阪人や大阪弁の描写には味わいがある。それを見事にこなしたのが枝元萌だ。悪気はないが笑いと突っ込みで事を丸めようとするところはなかなかおもしろい。亡くなった店主の妻を演じた竹下景子も存在感たっぷりだった。
保護対象の交雑種が地元農家の野菜を食い荒らしたり、人を襲ったりする状況は昨今のクマ騒動に通じるところがあって、保護か殺処分かという論争も他人事ではない。さらに、街にやってきた大阪の一家が抱える事情が後半で明らかになるが、その社会的な問題などはかなりリアリティーがある。
横山作品の魅力はこうした様々な社会的テーマを織りなした群像劇、会話劇だと思っている。その点で、今作は横山作品の中では注目すべき面白さだし、客席の期待に応えた秀逸な舞台であると言っていい。見ないと損するかも。