追熟しない果実 公演情報 「追熟しない果実」の観てきた!クチコミ一覧

★ 満足度の平均 ★ ★ ★ ★ ★ 4.6
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白い、お薦め。
    表層的には ニホンザルとタイワンザルの交雑種をめぐる問題を描いているが、その 底には排他的な人間関係や地域事情といった個人や社会の問題が複雑に絡まった重層的な物語になっている。タイトル「追熟しない果実」とは獣(食)害であり、成熟しない社会を表しているよう。

    公演の魅力は 分かり易い展開だが、描かれている内容は含蓄に富むもの。演劇の面白さ、しかし観る者に媚びず しっかりテーマを伝える。勿論 脚本(横山拓也 氏)の力や演出(西本由香サン)の巧みさであろうが、何といっても俳優陣の演技がみごと。当日配付された参考資料、そして劇中の台詞にあったマイクロアグレッション(微妙な攻撃)を体現しているようで、心に刺さる。見応え十分。
    (上演時間2時間 休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は 薪刈山(マキガリヤマ)の登山口付近にある食事処「つどい」の店内…後景は平板を竹串のように立て 山並みをイメージさせた壁。舞台となっている(自然)環境と店内を巧みに表している。上手は住居に通じる珠暖簾の出入口、下手は店の出入口と看板、中央にカウンター席とテーブル席3つ。そのシンプルな空間での会話が実に濃密で心に響く。登場人物は7人、主人公とその親戚、そして町の住人といった構図が物語の肝。

    物語はチラシにあるとおり、薪刈山のニホンザルの群れにタイワンザルが紛れ込み交雑種が生まれた。その命を守るため 町は保護管理施設を開設。それから20年、コロナ禍による観光客減や町の財政難から存続が危うくなっている。今 施設から抜け出したサルによる作物への食害が住民感情を悪化させている。サルだけではなく昨今のクマ被害の話も出てくる。そんな時、店の女将 嘉瀬原律子(亡き夫 浩一)の甥っ子 嘉瀬原渉と妻 美幸、息子の芙羅武が関西からやってくる。律子を母とも慕う町議会議員 小木谷奈央がはっきりとした理由もなく毛嫌いする。この地で果樹園を営む梅田陽子と弟 則夫が地元住民を代表した存在。店は 浩一が亡くなり閉店して1年、律子は平穏に暮らしていたが…。

    甥っ子一家は 或る事情で実家のある関西にはいられない、そこで律子を頼ってやってくる。懐かしさ親しみといった勢いで食事処をカフェにする話へ。奈央は思い入れのある「つどい」が無くなることが堪えられない。そこで 一家を律子の家とは別のところへ住まわせようとする。また登場しないが、町にはハーフでアジア競技大会に出場する選手がいる。小学生の頃 ハーフということで苛められ、今また壮行会の席上で町長から心無い言葉(挨拶)。

    浩一と律子が「つどい」を開店させたのが35年ほど前、今でこそ地域に受け入れられているが、移住当初は”よそ者”ということで冷たかったと回述する。サルの交雑種に絡め、ハーフや移住者問題を点描し「共生」を考えさせる。さらに特定外来生物と指定された親ザル(殺処分)と施設に保護された交雑種の"命の線引き"という重い問題を突きつける。単に「共生」というだけではなく、そこに「命」という尊厳を考えさせる。同時に人口4万人という町の存続---移住者への支援金や有名選手による町の知名度といった、排他的な行為とは矛盾する感情や行動に人としての葛藤が透けて見える。食事処「つどい」を例にとれば、「共生」の問題には長い年月がかかるということ。
    次回公演も楽しみにしております。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    横山拓也氏の新作を名取事務所への書き下ろしという事で久々に観に出かけた。と思っていたが最後に観たと思っていたトラムでの「モモンバ何とか」(枝元萌主演)も2023年秋、その年明け2024年2月に「う蝕」なる作品を観ていた。これはちょうど能登震災の直後であったから、まだ二年半だが随分昔観た感覚だ。
    いずれにしても注目は我が(とまで言うか)名取事務所に、著名劇作家の中で中庸に見える横山氏が一体どんな話を?というもの。俳優陣は上演中思い出した松本紀保、西尾友樹、枝元萌に、名取事務所の常連(又は所属)の面々の達者振りと、後で確認した演出・西本由香による所も大であろうが、この作品、「食堂」という人情喜劇が展開しそうな舞台と台詞劇の導入から、幾つもの社会テーマを内包する重層的な芝居にぐぐっと舵を切って行く。横山氏だけに過激な台詞は喜劇的受け止めも可能な幅で置いて来るがいつの間にか笑っていられぬ厳しい局面に持ち込まれている。その展開の速度と物語が内包するテーマの多様さに、内心舌を巻いていた。個を巧く描く横山氏の筆致が、個の向こうに広がる普遍的問題群へと手を届かせる。
    排外主義にそういう切り口から言及させるとは・・。それぞれ、居そうな人物たち、欠点も含めて人間を描く横山氏、松本紀保が担った役ところが、今作の見所。さすがと思った。

    ネタバレBOX

    全く余談だが・・「う蝕」で当時をありありと思い出したので。。

    能登地震に対する政府の冷たさと言ったら無かった。国会議員の現地入りを「道路事情」を理由に制限しておきながら、その後の道路事情の詳報は一切なかった。あれで現地入りを控えたNPOやボランティアも多かったはずだ。
    私は国会議員による殆ど犯罪に近い行状だったと思っている。(一時的な状況における措置のメリットが、それによるデメリットを超えて当面続いた故にその後の道路事情に関する政府判断を出さなかったのか? 否、目的は別にあっただろう。
    あれによって国会議員は面倒な仕事を「しない」事が免罪され、逆に行った議員が加害者呼ばわりされた。
    多くの議員にとって被災地入りは失点を重ねないための建前的行為、もしくは売名行為、と捉えられているからこそ、一律に皆が皆「行かない」事で丸く収まると考える。つまり、国会議員が現地に入る事は儀式と同様、実質的なメリットはない、という事なのだろう。一人、二人の議員が現地入りする事はそれによる交通渋滞等への影響より視察のメリットが上回るはずだ。裏金問題で揺さぶりを掛けられていた自民党にとっては被災地を「専門家」に任せ、素人の政治家が陣頭指揮を取る責務から逃れる事は渡りに船、有り難かった事だろうが、ならば現地で情報収集した野党議員がいたらむしろ感謝すべきである所、現地のニーズを伝える事は国会に余計な仕事を持ち込みやがってと言わんばかりの扱いだった。国民を見ない政治家であり政府の姿を見せられて絶望、というよりそんなもんだと政治に益々期待しない国民が増えた事だろう。
    悲しいのはネットに現地入りした議員が被災地の復旧復興活動を妨害したと非難し、非難する事が被災地への貢献だと信じる投稿がただ見られた事。彼らも自民議員と同じく、被災者に対し何もしていない自分を人を悪者にする事で免罪していた。自分が何もできない事は居心地が悪い。だがその疾しさを「人を悪者にし、叩く」事でごまかす。最低の人間共が量産された。
    こういった転倒した事態が、いつ起こるか分からないという事。お話にならない改憲草案も、通りかねない。国が壊れ、いずれ破滅を迎える。その繰り返しを続けて行くのか、それとも僅かなりとも学び、良くなって行くのか・・。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    まず、この役者7人の並び!面白い。
    舞台は食堂、店終いするつもりの老婆のところに甥夫婦が転がり込んでくる。それも傍目にはかなり強引に。本人達に自覚ないのが肝。この地域には野生の猿の外来種繁殖問題が深刻で、二重三重の意味で多文化共生のテーマが伝わってきた。最適解を客に委ね、作品がより身近なものになった。
    老婆役の竹下景子さん、ドンピシャにハマっていて共感できた。地域住民の3人もうまい。そして、外来種系の親子3人の強烈なふるまいと言ったら!現実そのものではないか。
    西本さん演出にしては笑いが多めで良かった。それにしても、うまい役者さんの掛け合わせ、見事でした。

    ネタバレBOX

    猿の保護、殺処分。メリットデメリット(人間側のですが)どちらもウーン…となり、それが地元民の主張も微妙に意見が分かれ、更によそ者がよかれと思って争いの傷口を広げてしまう。渦中にいると見えないものを丁寧に見せてくれたと思う。
    議員の奈央さんの個性がやや強引過ぎたと感じたが、それはあくまで自分の好みの問題かな。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    ネタバレ

    ネタバレBOX

    名取事務所の『追熟しない果実』

    戯曲はiaku・横山拓也

    あらすじ:
     山奥の集落に住む律子は、亡夫と営んだ食堂に住みながら、ひとり年金暮らしだ。律子を親のように慕う村民議員の奈央は、律子を気に掛けながらも、日本猿と台湾猿が交雑種した事により、村民が被害を被っている事に頭を抱えている。
     そこに大阪から律子の甥っ子夫婦がやってきて、食堂をカフェにしようと強引に立て直しを図ろうとするが、計画性の見えない提案に、「乗っ取りでは?」と村民から疑いをかけられてしまったのである…。

    感想:
     地方の人口減少問題に、特定外来生物問題と外国人問題を重ね合わせていく。甥っ子は外国人ではないが、静かに暮らしている村民からみたら騒がしい外国人と同じだ。
     子供の頃から外国人との接点がなく、生活を脅かされてしまえば憎しみすら感じてしまい、拒否してしまうのは致し方ない。
    とはいえ同じ人間同士、避けてはいけない問題だと認識しながらも、一定の期間をおいて、自身で追熟出来るかどうかではないか?という問題提案が見えてくる。外国人問題と特定外来生物問題が、ぴったりと重なり合う瞬間でもあるのだ。
     甥っ子夫婦を演じた西尾友樹と枝元萌の大阪人役に「これでは受け入れられないよ」と思えてしまうほど上手く、嫌悪感を感じてしまったのはいうまでもない。彼らの上手さによって、テーマが染み込んでくるのだ。
     横山拓也の戯曲、俳優の西尾友樹が目当てだったが、なかなかの良作であった。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2026/10/03 (土) 14:00

    座席1階

    iakuの横山拓也の新作書き下ろしということで、期待してでかけた。田舎町の親戚を頼って逃げてきた親子の配役の妙もあり、横山作品らしい味のある軽快な会話劇に仕上がっている。共生という理念を目指しながらも、マイクロアグレッションという微妙な差別意識なども浮き彫りにする物語は、社会派劇ファンをうならせる出来栄えだ。
     
     舞台は、登山客目当ての商売で細々と繋いできた人口流出に悩む田舎町。亡き夫が開いた喫茶店がある家に残された女性は、店を閉めるかどうか揺れていた。この山では日本猿と台湾猿の交雑で生まれたサルの保護活動をしている町議らのNPOがあり、喫茶店の女性はこの町議と親子のような支え合いを続けてきた。そこに突然登場した、大阪に住む亡夫の甥一家。強烈な関西弁でずけずけものをいう姿に、町議の女性は母のように慕う喫茶店の女性を奪われるのではないかと反発する。

    さすが関西出身、横山作品の大阪人や大阪弁の描写には味わいがある。それを見事にこなしたのが枝元萌だ。悪気はないが笑いと突っ込みで事を丸めようとするところはなかなかおもしろい。亡くなった店主の妻を演じた竹下景子も存在感たっぷりだった。

    保護対象の交雑種が地元農家の野菜を食い荒らしたり、人を襲ったりする状況は昨今のクマ騒動に通じるところがあって、保護か殺処分かという論争も他人事ではない。さらに、街にやってきた大阪の一家が抱える事情が後半で明らかになるが、その社会的な問題などはかなりリアリティーがある。

    横山作品の魅力はこうした様々な社会的テーマを織りなした群像劇、会話劇だと思っている。その点で、今作は横山作品の中では注目すべき面白さだし、客席の期待に応えた秀逸な舞台であると言っていい。見ないと損するかも。

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