ことほぐ 公演情報 ことほぐ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.2
1-8件 / 8件中
  • 満足度★★★★

    祝祭の儀式として!
    三人の妊婦が舞台上に登場した瞬間にこの作家の感性に恐れ入った。
    臨月の近い妊婦が三人だけで暮らしている。そのシチュエーションだけでどれだけ劇的なことか。

    そして、劇中叫ばれるが、本来最も幸せであるべき妊婦が不幸せを競うという状況に胸打たれるものがある。彼女たちは何から逃亡し、何と戦っているのだろう。

    ことほぐというタイトルがいい。演劇は祝祭の文化だ。円形の舞台に祭りという要素を取り込み、神に祝福されるべき妊婦の悲喜劇を見事に凝縮して見せてくれた。北の国に演劇の神髄を観た気がする。

  • 満足度★★★★


    盆踊りの音楽はセミの声よりちょっと遅い夏を感じます。まだ6月で長袖なのに、夏が終わりそうな寂しい気分になりました。そんなにあつくはない。

  • 満足度★★★★

    北国のダークホース
     わたしにとってまったく未知の、名前すら聞いたことのない劇団だったintro。今回のCoRich舞台芸術まつり!のダークホース的存在。「ロストジェネレーション」問題が勃発して久しい、もはや貧しさがデフォルトになった現代的な町の片隅を舞台に、異なる価値観をぶつかり合わせながら、女が(人が)この先ゆき不透明な時代をどのように生きていくかを描いた物語。
     キャラクターとそのバックボーンがやや類型的に描かれすぎていると感じるところもあった。しかし貧しさの中にもささやかな幸福を追求しようとする人々への温かな眼差しには、同時代を生きる人間としてシンパシーを感じます。特に、北海道の盆踊りの特徴であるらしい「子供の部/大人の部」という二部構成をモチーフにした物語の構造は秀逸(だからこそディテイルはもっと冒険していい気もする……)。そして簡単に物語を投げてしまわない粘り腰がある。なるほど妊娠というのは、2つの生命体が特別な共存関係を持ちうる特殊な時間であり、にも関わらず、結局は人間はひとりなのだあ、と感じさせるものがあった。そのことはむしろ希望であり、清々しいもののように思えます。イトウワカナ(作・演出)の別の作品もまた観てみたい。『ことほぐ』は東京でも上演されるそうです(2012年9月@こまばアゴラ劇場)。
     ただ、序盤の時間があまりスリリングではなく、しばしば入るツッコミもグルーヴを損なっていたと思う。もっとアブストラクトでシュールな不条理劇に接近してみるとかいう方法もあるのかも。余談ながら、まだ全貌を把握しているわけではないので断言はできないのだが、地方演劇の弱さのひとつは、そうした抽象性への耐性が弱いところにあるのかもしれない。よく「分かりやすくしないとお客さんに通じない」と地方の演劇関係者が口にしているのを耳にするのですが、しかし、それは本当にそうだろうか? 観客のポテンシャルをもっと信じていいのではないか? 意外と大丈夫、という手応えを感じる実例に接することが、増えてきているので。(以下、ネタバレボックスに続く)

    ネタバレBOX

     演劇のガジェットのひとつに「ちゃぶ台」がある。生活感も表現できるし、空間的にも(サザエさん的な)求心力をつくることができる。しかしこの『ことほぐ』ではおそらくわざとちゃぶ台を登場させていないのだと思う。安易に道具に頼らないそのこだわりはなんか、いいことのような気がした。
     3人の良き理解者にも思えた隣家の貧乏青年(今回の座組に単身大阪から参加した俳優・加藤智之が好演していた)が、突如裏切って妊婦たちを罵り始めてどんづまりになったところで、炊飯器の炊けた音がチャララーと鳴るシーンも印象に残った。善や悪、敵や味方といった区分けがすべて無効化されるような静けさがあり、あの時間がずっと続いてもいいなと思った。ラスト、力強く鳴り響く太鼓の生音がGood。
  • 満足度★★★★★

    「ここにいる」ということ
    ブラックボックスの中に楚々と立つ電信柱を見た瞬間、「あぁ、北海道まで来てよかった」と思いました。円形にとられた演技スペースの周囲にはバス停や自転車が置かれ、その上を電線が走っています。

物語の主人公は3人の祝福されない妊婦たち。頼れる男もいなければ、水道代さえない彼女らは、悪態をつきながらも、なんとか身を寄せ合って生きています。

    ネタバレBOX

    一見閉じた設定のようですが、舞台装置と同じく、彼女たちもまた、外部との繫がりを完全に絶つことはできないし、またそうした隣人や兄弟とのかかわり(それはけっこうハチャメチャなものだったりもするのですが)を通じて、自ら「ことほぐ」ことに近づいていくわけです。水道も止まった、ある夏の1日の終わり。三人に小さな転機が訪れようとしたその時、遠くに聞こえていた「北海盆踊り」の節が、子供バージョンから大人バージョンに変わり、やがて太鼓の音が劇場中に鳴り響きます。それはこの作品が、作り手たちの生きる場所、現実のコミュニティへと接続される、感動的な瞬間でした。

    誰に向けて何を届けたいのか——。この作品とカンパニーは、普遍的なテーマを扱いながら、自らの拠って立つ場所をしっかり見据えていると感じました。でも、考えてみれば、個人の創造的営みを、集団で共有し、さらに社会の中におく演劇は、はじめからそうした普遍性と固有性のあいだにあるものなのでしょう。輪になって一緒に踊っていたはずの登場人物たちが次々といなくなり、家主の妊婦一人が踊る、そのシルエットで、芝居は幕を閉じました。

  • 満足度★★★★

    みんな、ことほがれたい
    誰もが不安と闘いながら生きているんです! みんな、祝福されて暮らしたいんです! 登場人物からそんな心の叫びが聞こえてきました。

    ネタバレBOX

    不幸な3人の妊婦は、ジュースを万引きするわ、隣人のお金を巻き上げるわ、焼き鳥をせびるわ、悪事を重ねているけどなんか可愛らしく、逞しく、うっかりすると美しさまで感じてしまう。下品にならないのは、脚本・演出のセンスの良さにあったと思います。
    ラストの盆踊り、狂ったように踊る人々から、生き辛いこの社会を戦って生き抜いて行くのだという強い意志と気迫を感じ、こみ上げてくるものがありました。舞台装置も素敵でした。
  • 満足度★★★★

    “不幸”な妊婦と陽気な仲間たちの夏のファンタジー
     演技スペースをぐるりと囲むように、客席が四方に分散して設置されています。床には円の模様が放射線状に描かれ、灰色に塗られた電信柱、ジャングルジム、バス停の看板などが、中央の円を囲みつつ点在。輪郭のはっきりしない円形劇場ともいえます。昭和歌謡が流れる、メラコンリックでどこか空虚な空間でした。劇場に入るなり期待度アップ。

     舞台は貧困状態にある妊婦3人が同居するアパートの一室、とはいえ壁がなく、玄関の位置も曖昧です。女性3人の閉じられたひ弱なユートピアに、彼女らとゆかりのある男性たちが入り込んできます。会話に若干のまどろっこしさを感じましたが、ある意味のん気な妊婦たちと、彼女らを叱咤激励する男性陣にはそれぞれに憎めない魅力がありました。

     子供ができたことを素直に幸せだと思えない、そして祝福もされない妊婦たちの悲しみ、憤りが、強がり混じりの切実な叫びとして直接セリフで語られる場面もあり、現代日本の若者の疑問や諦念を代弁しているようにも受け取れました。そんな悲壮感が漂う設定に軸を置き続けることなく、余白を多く残しながらコミカルに飛躍させていく演出には、演劇の力を信じて委ねる余裕と意気込みが感じられました。

     北海道の盆踊りは子供の部と大人の部に分かれていて、音楽も振付も違うそうです。このことが当日パンフレットに書かれていたおかげで、作品から伝わる意味がずいぶんと味わい深いものになったと思います。
     作・演出のイトウワカナさんが開演前にCoRich舞台芸術まつり!およびCoRich舞台芸術!の宣伝をしてくださいました。札幌でも公演登録やクチコミが増えて欲しいです。

    ネタバレBOX

     妻子ある男性との不倫の末に妊娠し、相手に内緒で1人で産んで育てようとしている愛子。DV夫から逃げて、同じく妊娠中の妹えりこと一緒に愛子のアパートに転がり込んだ、わがままで厚かましい人妻さとみ。えりこはアルバイターで、男好きかつ奔放ゆえに誰の子を妊娠したのかがわかりません。愛子、さとみ、えりこの手持ちの全財産は1万円に満たず、さとみのせいで真夏なのに水道も止まってしまいました。ワケあり妊婦の3人は親に頼ることもできず、給料日までの数日間をどうやって乗り切るのか…。

     「大人になればいい会社に入って、年を取るごとに給料が上がって幸せになれると信じていたのに、ずっとアルバイトで薄給で、すっかり騙された!」というえりこの叫びはもっともです。また、「子供ができたこと(=妊娠)は幸せなことのはずで、無条件に祝われるべきだ」という妊婦らの主張は、現代社会に対して根源的な問いを投げかけています。経済的なことや道義的なこと、世間体もありますから難しいとはいえ、本来なら命はそれ自体が祝福されるべきものだと私も思います。でも、どうすればいいの…と悶々と考えました。

     3人と同じく貧困状態にある隣人男性の杉田、愛子の兄でゲイの英一、えりこの雇い主の山下が、彼女らに水や焼き鳥などの現物支給をしながらも、1人で子供を産み育てることの厳しさを突きつけます。立場も考え方も違う人々が集まった部屋は混乱状態になり、さらには妻さとみに暴力を振るう河野も入ってきてヒートアップ。妊婦たちは男たちの姿としてあらわれた“現実”と初めて本気で立ち向かっているようでした。

     はちゃめちゃな騒動が一段落したところで、隣人の杉田以外の男たちは去りました。杉田が持ってきた水と、愛子の部屋にあった白米を入れた電子炊飯ジャーでご飯が炊きあがり、4人がともに一膳ずつ食べます。「食べる」ことは生きることの基本ですから、そこに立ち戻る姿は感動的でもありました。
     ご飯の残り香が漂う中、杉田が去ったところで終演かと思いましたが、そうはならず。盆踊りの音楽が鳴り始め、妊婦らは踊り始めました。きっと大人の部の振付ですね。現実を直視して生きていこうと決めた妊婦らの、子供から大人への成長が示されたように思いました。その踊りの輪はどんどん広がり、地味な色だった照明もカラフルに変わって、男たちも一緒になって出演者全員が祝祭ムード全開で、飛んだり跳ねたり、独自の振付で踊り始めます。お腹の子供も一緒に踊って、すべての命が祝福されているような、とても幸せな時間でした。

     やがて登場人物が1人ずつ、ゆっくりと消えて行き、舞台には愛子だけがたたずみます。他の2人の妊婦も男たちも夏の盆踊りも、何もかもが愛子の夢だったのかもしれない…と解釈できるエンディングでした。考えてみたら愛子は「(私個人のことなんだから他人は)関係ない!」「(母1人での子育ても)やってみなきゃわからない!」と威勢よく頑な態度を取っていました。彼女はとても孤独で、追い詰められていたのでしょう。でも愛子は夢の中で、母となる自分とお腹の子供を精いっぱい祝福し、他者とともに生きる自分の人生を獲得したのだと思います。

     中盤で説得力にかける展開などありましたが、盆踊りと愛子1人のエンディングを観て、そんなことは重要ではないと思えました。例えば3人のお腹は見るからに臨月の大きさだったので、えりこが堂々とあおむけに寝るのには無理があるな~と思っていたのですが(妊婦はお腹が重くて横向きにしか寝られなくなるため)、すべてが柔らかくファンタジーとして昇華されたので、劇中にどんな嘘があってもいいんですよね。
     最後にひとこと。妊婦3人全員が杉田のことを、「彼氏です!」と紹介するはめになったのが可笑しかった(笑)。
  • 満足度★★★★★

    楽しかった!!
    演劇は永らく見ていなかったのですが、久々に触手が動いたので行ってみたら、これが笑える、共感できる、味わえる!!まだまだ自分の感性を信じても良いなと確信できる劇団でした。冒頭からいきなりカオスに叩き込まれる。でそっからは静と動、程良い緩急でラストのダンスまで連れて行ってくれます。また最後の最後に踊ってるのが誰かってところが面白い!!ずっと出演しているけど姿は一度も見えないヤツなのです。前作「言祝ぎ」の展開よりもより複雑な展開は何ともプログレッシヴでした。次作はBebopか?と今後も楽しみになる劇団でした。演劇の表現の幅広さを感じれましたよ。改めて面白い劇団がいるものだと思い、嬉しくなりました。

  • 満足度★★★★

    見てきました。
    おもしろかったです。
    明日も観に行きます。

    明日は反対側の席に座って観ます。

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